エピソード1(脚本)
〇洋館のバルコニー
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・」
アドルフ「今宵は、月が一段と綺麗ですね‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あら、アドルフ‥。何かご用かしら?」
アドルフ「あまり夜風に当たられますと、お身体が冷えてしまいます‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「フフっ‥。人間みたいなことを言うのね」
アドルフ「お嬢様‥。私はまだ‥」
アドルフ「人間です‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「‥そうだったわね‥。少しからかっただけよ」
アドルフ「・・・」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「‥ところで‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「そろそろ決心は、ついたのかしら?」
アドルフ「‥いえ‥」
アドルフ「以前にも申し上げましたが、私はお嬢様の【眷属】になるつもりはございません‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・そう‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「理由は‥今回も教えてくれないのね‥」
アドルフ「‥はい‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「はぁ‥。もういいわ」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「じゃあっ! 【アレ】を持ってきてくれるかしら?」
アドルフ「はて、お嬢様。【アレ】とは‥なんのことでしょうか?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「いつものよ」
アドルフ「はて‥いつものとは‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・からかっているつもり?」
アドルフ「‥お返しでございます」
アドルフ「デザート、でございますね。ただいまご用意してまいります」
アドルフはお嬢様に一礼し、バルコニーを後にした。
お嬢様はひとり想いに耽る。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「こちらの世界にアドルフが来て、気づけば3年経つのね‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様(私は、人間である彼を連れ去った‥。 夢を追いかけていた彼を夢から遠ざけた‥)
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様(ただ私の‥身勝手な我儘によって‥)
と、胸の痛みに浸っていたが、こちらに近づく静かな足音に気づき、その痛みを奥底にしまい込んだ。
アドルフ「お待たせしました。【ブラッディフォンダンショコラ】になります」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あら素敵‥」
アドルフ「‥では、私はこれで‥」
アドルフはそう言ってお嬢様に一礼し、バルコニーを後にした。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「そんな顔で月を見つめる貴方を‥もう‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「みたくないわ‥」
そして時は遡り、3年前の2人の出会いのお話になる。
〇西洋の城
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「今宵は‥私がこの世界に生を授かること1000歳‥(いっせんさい)」
私の名は【ルノ・ヴァレン・リスターナ】。
闇夜の世界に生きる、見目麗しき貴族令嬢。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「この素晴らしき日を華々しく飾るためにも、初(う)い人間の生娘(きむすめ)の血が沢山必要ね‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「そう‥。この純白のドレスを真紅に染め上げるくらいに‥。フフ‥♡」
ルノ・ヴァレン・リスターナは、これから始まる最高の宴を想像し、
恍惚とした笑みを浮かべながら人間の世界へと向かうのだった‥。
そして、とある町へ辿り着く。
〇中東の街
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「いい♡‥いいわあ♡」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「みるみるうちに私のドレスが生娘の血で染まっていく‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あと一匹ね‥。最後の美を飾るに相応しい生娘は‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「フフっ‥♡決まりね‥」
ナターシャ「‥あ‥」
ナターシャ「っ‥‥‥ふ‥‥ ‥ .」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「んっんっ♡」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「んはあああっ♡最っ高に美味だったわ♡」
ルノ・ヴァレン・リスターナは、13人の生娘を手に掛け喉を潤し、純白のドレスを真紅のドレスへと変貌させた。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「?何かしら‥手に持っている袋は‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「食べ物?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「‥とても綺麗だわ‥」
私は、その月夜に輝く真紅のルビーのような食べ物を口にした。
その瞬間、衝撃が私を貫いたと同時に、1つの衝動が生まれた。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ああ‥もっと‥ほしいわあ♡」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ん? 【アドルフ洋菓子店】‥」
この時、彼の想い人を手に掛けていたことを‥
《 ‥‥‥私は知らない‥‥‥。 》