エピソード4(脚本)
〇神殿の門
ロズールとファリンは城の中を進む
ロズール「今日も探索か・・・」
二人がいるのは城の廊下
壁際には棚が並び、使い道の良くわからない品物が並べられている
ロズール「なあ、あそこにいろいろ並んでいるけど あれは何だ?」
ファリン「ただのガラクタですよ」
ロズール「まだ使えそうに見えるぞ 使い道はわからないけどさ」
ファリン「呪いのアイテムとかあると思います 私なら触りませんけど」
ロズール「そっか・・・」
やがて二人は大きな扉の前にたどり着く
ロズール「また二人で起動するタイプかな?」
ファリン「はい・・・あっ!」
ファリン「この扉の魔方陣、両方とも氷属性ですね」
ロズール「えっ、てことは?」
ファリン「ロズールさんにも氷属性を使ってもらう必要がありますね」
ロズール「俺もか・・・」
二人はそれぞれ、扉の左右に立ち、魔方陣に手をあてる
ファリン「いきますよ?」
ロズール「おう!」
ファリンは氷属性魔術を起動するが
ロズールはもたついている
ファリン「ロズールさん? まだですか?」
ロズール「や、やってる ちょっと待ってくれ」
ファリン「ロズールさん? ダメ! 魔術を止めて!」
ロズール「な、なんでだよ ほら、起動できた、だ、ろ?」
ファリン「ロズールさん! だから言ったのに!」
・・・
涼しい風がふいている
ロズールが目を開けると、すぐそばに心配そうに見下ろすファリンの姿があった
ロズール「・・・あ、あれ?」
ロズールはファリンに膝枕されていた
ロズール「どうなったんだ」
ファリン「あなたは倒れたんです あと少しで頭がゆで上がるところだったんですよ」
ロズール「魔方陣は?」
ファリン「起動しました、けど、今はそれどころじゃなくて・・・」
ファリン「ロズールさん、私はあなたに氷属性魔術を二段階で発動するように教えましたよね?」
ロズール「あ、ああ」
ファリン「実はあれって本当は良くないやり方なんですよ」
ロズール「そうなの?」
ファリン「水を冷やす、つまり熱を奪う、その熱ってどこに行くんですか?」
ロズール「うーん、どこに行くんだろう?」
ファリン「ロズールさんの場合、自分の体内に送り込んじゃってるみたいですね」
ロズール「えっ?」
ファリン「だから高熱を出した時みたいになって倒れちゃうんですよ」
ロズール「それは、どうしたらいいんだ?」
ファリン「エネルギーを消すしかありませんね」
ロズール「そんなことできるの?」
ファリン「水を生み出すのにもエネルギーを使います 熱エネルギーをそっちに変換すればいいんですよ」
ロズール「はぁ?」
ファリン「実際に水を生み出すエネルギーに比べると全然足りませんけどね」
ファリン「それでも節約と温度調節を同時にできるわけです」
ロズール「・・・」
ファリン「もちろん、水を先に出さないと行けないので、水を数回に分けて出すことになります」
ロズール「同時に二つでも難しいのに10個ぐらいの魔術を起動しろって言ってる?」
ロズール「それって難しくないか?」
ファリン「図書室に練習用の魔方陣があったはずです」
ロズール「そうか、ちょっと行ってきてもいいか?」
ロズールは立ち上がる
ファリン「もう大丈夫なんですか?」
ロズール「ああ、なんとか」
ロズールは箱庭から立ち去ろうとしてファリンの方を振り返る
ロズール「女の子に膝枕なんかされちゃったの、生まれて初めてだよ」
ファリン「そうですか・・・」
ロズール「気持ちよかったぞ、ありがとうな」
ファリン「・・・」
〇英国風の図書館
ロズールは図書室にやって来た
ダングが何か調べものをしていた
ロズール「あれ? ダング? 何やってるんだ?」
ダング「ロズールか、魔術理論のレポートを書かないといけないんだ・・・」
ロズール「あー、あのめんどいやつか・・・」
ダング「ロズールはやらなくていいのか?」
ロズール「俺はもう終わらせたぞ」
ダング「えっ? おまえそんなにマメだったっけ?」
ロズール「卒業できなかったら嫌だからな 先月のうちに頑張って終わらせたんだよ」
ダング「それで氷魔術の初級を後回しにしてたってどうなんだよ・・・」
ロズール「しょーがないだろ、俺、氷系と相性悪いし、練習してもどうにもならなかったんだから」
ロズールは魔術書を開いて、魔力を流す
警報音が鳴る
司書「ちょっと! 図書室で魔術を発動したらダメって言ってるでしょうが!」
ロズール「あっ!」
司書「しかもその本! 氷系を試そうとしたの?」
司書「本が濡れたらどうするの!」
ロズール「すみませんでしたー」
ロズール「図書室で魔術は禁止か・・・」
ダング「どうすんだよ」
ロズール「しかもこの本、持ち出し禁止じゃないか・・・」
ダング「書き写すしかないな、この紙使うか?」
ロズール「おお、ありがとな」
ロズールは魔方陣を紙に書き写していく
〇英国風の図書館
ロズール「やっと終わった・・・」
ロズール「そろそろ夕食の時間か・・・どうする?」
ダング「俺はダメだ、今日中に一章を終わらせないとヤバイ」
ロズール「そんなにギリギリなのかよ」
〇怪しげな酒場
ロズールは食堂に行く
食堂は込み合っていた
シシュア「あら、ロズール、久しぶり?」
ロズール「シシュアか、こっちの食堂で会うのは珍しいな」
シシュア「図書室に近いから、こっちの方がいいと思って」
ロズール「ん?」
二人は食べ物を受け取るための列に並ぶ
シシュア「そう言えば最近大人しいけど、ダンスパーティーの相手を探すのは諦めたの?」
ロズール「いや、諦めてはいないさ」
ロズール「ただ、先にやらなきゃいけないことがあって、手をつけられないだけだ」
シシュア「・・・パートナーの登録の申し込み、明日の昼までだけど?」
ロズール「えっ? もうそんな時期か? 相手がいなかったらどうなるんだっけ?」
シシュア「最終学年は全員参加! つまり一人寂しく出席することになるわね」
ロズール「おまえはどうするんだよ?」
シシュア「前も言ったでしょ、相手を探すのは諦めてるって・・・」
ロズール「でも、参加しなきゃいけないんだろ?」
シシュア「当日は壁の花に徹するつもりよ」
ロズール「ふーん」
シシュア「あなたもそうしたら?」
ロズール「諦めるってのは、俺の流儀に反するんだよなぁ」
シシュア「流儀に反する?」
シシュア「相手探しに必死なのって、そんな理由だったの?」
ロズール「俺は一度やると決めた事は最後までやり通す主義だぜ」
シシュア「じゃ、あと半日、せいぜい悪あがきしなさいよ・・・」
そんな話をしている間に列が進み、ロズールたちの順番になる
シシュアは、食べ物をカゴに入れていく
ロズール「あれ? ここで食べないのか?」
シシュア「ダングに頼まれたのよ・・・食堂がしまる前に終わらないだろうから、何か買ってきてってね」
ロズール「えっ? ダングに言われた?」
シシュア「そうよ! せっかくだから私も一緒に食べようと思って・・・」
ロズール「ふーん? なんか多いと思ったら二人分か なるほどね」
シシュア「な、何よ! 気持ち悪い笑み浮かべて・・・」
ロズール「なんでもないよ、ダングが卒業できなかったら大変だもんな」
シシュア「そうよ! あんたも頑張りなさいよ」
シシュアはカゴを持って、食堂から出ていった
ロズールは、食堂の端の方の空いた席を見つけて、そこで夕食を食べる
ロズール「はぁ、明日の午前中に片付けなきゃいけないのか・・・」