第5話『冒険の理由』(脚本)
〇草原の道
エイリ「じゃあ、冒険の旅に出発だ!」
レイド「まさか、こうしてまたパーティーを 組める日が来るなんて思わなかった」
エイリ「レイドはいちいち重いって」
エイリ「せっかくのお天気なのに」
レセ「ルオン、グレン、ナナリー」
エイリ「レセも重いんよ」
エイリ「直近だから仕方ないんだけど」
レセ「そういえば、レイドさんが ソロにこだわってる理由あるんですか?」
エイリ「あ、それ聞いちゃうんだ」
エイリ「さすがレセ君」
レセ「不味かったですか?」
レセ「すみません」
レイド「気にしないでくれ」
レイド「むしろ、知っておいてほしい」
レイド「私が駆け出しの冒険者だった頃」
レイド「期待のルーキー”ブレイド”とか 言われていたんだ」
レセ「あ、聞いたことあります」
レセ「一時期、話題でしたよね」
レセ「そういえば、いたなぁ」
レセ「あ、すみません」
レイド「構わないよ」
レイド「当時はニックネームで売ってた上に 髪型や服装も違うからね」
レイド「分からないはずだよ」
レイド「あのときは、怖いもの知らずだった」
レイド「先輩同業者を圧倒し 同期たちを見下し」
レイド「本当に傲慢だった」
レイド「そんなとき、天罰が下った」
レイド「私は”最低の行い”を行った」
レイド「それからだ 私の運は尽きて栄光から転落した」
レイド「それから、パーティーを何度も組んだ」
レイド「だけど仲間は死んだり、ミッションは失敗」
レイド「いつしか私は『死神』と呼ばれるようになり 誰からも敬遠される立場になった」
レイド「滑稽だろ?」
レセ「今のレイドさんからしたら 想像が出来ませんね」
レセ「あのダンジョンでは 命を顧みず助けに来てくれたのに」
エイリ「だよね?」
レイド「それよりも、2人とも良かったのかい?」
レイド「私と旅すれば、さっき言ったように 危険な目に遭うかもしれないよ」
レセ「その危険な目から救ってくれたのが レイドさんじゃないですか」
レセ「大丈夫です」
エイリ「それぐらいの方が冒険楽しいじゃん!」
エイリ「実力に関しては うちの社長のお墨付きだしね」
レイド「メリティスさんか」
レイド「当時は凄い世話をしてくれたな」
レイド「美味いものを食わせてくれたり 仕事の斡旋もしてくれたな」
エイリ「伊達に”情報伝達魔法”を 最初に発見してないよね」
〇荷馬車の中
ビルデ「さて、次はどうするかな」
ビルデ「とりあえずグレーシア王国に お呼ばれしてるから向かってるけどさ」
カタリナ「A級モンスター2体同時討伐なんてどう?」
ビルデ「悪くないな」
ビルデ「ギリギリの戦いを演出できる」
ビルデ「生中継でやれば、ウケること間違いないな」
ビルデ「リユさんはどう思う?」
リユ「良いと思います」
ビルデ「そうか!なら、そうしよう!」
ビルデ「民間人のキャラバンが 襲われているのはどうだ?」
カタリナ「素敵なアイディアだわ」
ビルデ「だろ?」
ビルデ「そのときは民間人に扮した冒険者を雇おう」
リユ「あ、あの」
ビルデ「ん?」
ビルデ「どうかした?」
リユ「聞きたいことがあるんですが」
ビルデ「何でも聞いてくれ」
リユ「どうして、冒険者をやっているんですか?」
カタリナ「私も聞きたい!」
リユ「富も名声も十分ですよね?」
リユ「あの剣があれば討伐者として 少し働くだけで済みます」
ビルデ「当てつけだよ」
リユ「当てつけ?」
ビルデ「俺をかつてドン底へ陥れた 人間に対してのね」
リユ「ドン底ですか」
ビルデ「昔の俺は学生時代の成績も酷くて 冒険者になれたものの 誰もパーティーを組んでくれなかった」
リユ(そうだったんだ、意外)
ビルデ「そんな俺を ようやく入れてくれたやつがいた」
ビルデ「だけど、やらされたのは 雑用や囮みたいな危険なことばかり」
ビルデ「でも、俺は耐えた」
ビルデ「そこしか俺の居場所がなかったからだ」
ビルデ「だけどだ!」
ビルデ「こんなにも耐えてパーティに尽くした俺を あいつは追い出したんだ!」
ビルデ「しかし、その後が滑稽だよ」
ビルデ「俺を追い出したあいつは落ちぶれて」
ビルデ「俺はたった一度のチャンスを逃さず 今この名声を手に入れている」
リユ「あいつって?」
ビルデ「レイド・ルーツバ」
ビルデ「今はダンジョンのゴミ漁りをしていると聞く」
リユ(レイド・ルーツバって確か?)
〇草原の道
レイド「おせえぞ!ビルデ」
ビルデ「ごめんよ、レイド君」
レイド「何度も言ってんだろ」
レイド「『さん』付けにしろってさ」
レイド「あと敬語だろうが」
ビルデ「すみませんでした」
レイド「ちゃんと自分の立場をわきまえろよ?」
〇暗い洞窟
レイド「お前、先に行って トラップがあるか確認しろよ」
ビルデ「でも、鑑定士が やればいいんじゃないですか?」
レイド「こんなことで鑑定士の体力使うの 勿体無いだろうが」
ビルデ「分かりました」
〇小さい滝
レイド「お前はクビだ」
ビルデ「えっ!?どうして!?」
レイド「お前より優秀なやつ見つけたんだよ」
レイド「うちに役立たずな人員を置く余裕はない」
レイド「それにお前がいると、映えないんだよな」
ビルデ「そんなぁ、俺、どうしたらいいんですか!?」
レイド「知らねえよ」
レイド「他のパーティーに入れてもらえば?」
レイド「お前を雇うパーティーなんて ないと思うけどな」
レイド「少しぐらい金なら出してやるから それで出ていってくれ」
ビルデ「分かりました」
〇戦地の陣営
ビルデ「はあはあ」
ビルデ「まただ」
ビルデ「今だにあの時の記憶が夢に蘇りやがる」
カタリナ「ビルディ、どうかした?」
ビルデ「いや、なんでもないさ」
カタリナ「良かった」
ビルデ(なんだ、この胸騒ぎは)
〇城の客室
カーライン「そろそろ、歌姫様に消えてもらわないとな」
カーライン「エイリが消えれば ロックス社の人気も一気に失墜するはずだ」
カーライン「それに乗じてメリティスに代わり 私が社長の座を奪う」
カーライン「これからは異世界の人間を 崇拝させるようなことはさせない」
カーライン「都合がいいことに 死神が一緒だから庶民は納得するだろ」