シオン

深都 英二

シオン(脚本)

シオン

深都 英二

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シオン
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〇近未来の病室
シオン「ねえ、お願いがあるの」
シオン「私はもう長くはないわ」
シオン「私の気がかりはただ一つ」
シオン「あの子が・・・娘が心配なの」
シオン「お願い。私の代わりにあの子に会いに行って」

〇団地
アンナ「ここか・・・」
アンナ「ん?」
藤沢未来「・・・」
アンナ(この子か?)
  藤沢未来(ふじさわみく)
  データと一致
アンナ「こんにちは」
アンナ「あなたが藤沢未来ちゃんね?」
藤沢未来「・・・うん」
アンナ「大丈夫。私はあなたの味方よ」
アンナ「シオンってわかる?」
藤沢未来「ママ!?」
アンナ「シオンに言われて会いに来たの」
藤沢未来「ねえ、ママは元気なの?」
藤沢未来「ママに会いたい!会いたい!」
アンナ「落ち着いて」
アンナ「ママは・・・大丈夫よ」
藤沢未来「ママ、ケガしちゃって・・・病院にいて・・・」
藤沢未来「でも全然戻ってこなくて・・・」
アンナ「ママは、あなたのことをとても心配していたわ」
アンナ「ママはあなたのことが大好きだから」
アンナ「それだけ伝えたくて。私が代わりに会いに来たの」
藤沢未来「ママ・・・」
アンナ「ミクちゃんはどう?何か困ったことない?」
藤沢未来「っ・・・」
藤沢結衣華「何してるの!?」
「っ・・・!」
藤沢結衣華「ちょっと何なの?あんた誰?」
藤沢結衣華「うちの子に何か用?」
アンナ(もしかしてこの人が・・・)
  藤沢結衣華(ふじさわゆいか)
  藤沢未来の母親
アンナ(なるほど)
アンナ(この子の“本当の”母親か)
藤沢結衣華「ミク、部屋に戻ってなさい」
藤沢未来「はい・・・」
藤沢結衣華「あんた誰?何の用?」
アンナ「アンナと申します」
アンナ「シオンの頼みで来ました」
藤沢結衣華「シオン?」
アンナ「数ヶ月前、あなたの家で働いていましたよね?」
藤沢結衣華「っ・・・」
藤沢結衣華「ああ、あいつか」
藤沢結衣華「あいつ、まだ生きてたの?」
アンナ「怪我をしたそうで」
藤沢結衣華「自分で階段から落ちたのよ。ほんと使えないやつだったわ」
アンナ「怪我の状態が酷くて、手の施しようがないそうです」
藤沢結衣華「自業自得でしょ」
アンナ「階段から落ちて怪我をした」
アンナ「本当にそうでしょうか」
藤沢結衣華「え?」
アンナ「知っていましたか?」
アンナ「アンドロイドって意外と丈夫にできているんですよ」
アンナ「階段から落ちたぐらいで、あんな致命傷を負いません」
藤沢結衣華「・・・」
アンナ「私は、誰かが意図的にシオンを壊したと思っています」
藤沢結衣華「なっ・・・!」
藤沢結衣華「・・・証拠でもあるの?」
アンナ「証拠はありません。あくまで憶測です」
藤沢結衣華「変な言いがかりはやめてよ」
アンナ「これから話すことは、すべて私の憶測です」

〇アパートのダイニング
  児童相談所から、とある母子家庭に派遣されたアンドロイドは
  育児放棄をした母親の代わりとなって、娘の世話をしていました
シオン「ミクちゃん、よろしくね」
藤沢未来「うん・・・!」
  お手伝いアンドロイドとして献身的に尽くしたアンドロイドは
  やがて娘と仲良くなり
  次第に娘はアンドロイドのことをママと呼ぶようになった
藤沢未来「ママ!絵本読んでー!」
シオン「いいわよ。ミクはこのお話が好きなのね」
藤沢未来「うん、大好き!」
藤沢結衣華「・・・」
  母親は、それに嫉妬したんです

〇団地
アンナ「自分ではなく、アンドロイドに懐く娘」
アンナ「あなたはそれが許せなかった」
アンナ「身勝手な話ですよね」
アンナ「今まで散々ほったらかしにしてきたくせに」
藤沢結衣華「っ・・・!」
アンナ「だから、壊すことにした」

〇アパートのダイニング
藤沢結衣華「・・・」
シオン「奥さま?どうされました?」
シオン「っ・・・!」

〇黒背景

〇団地
アンナ「あなたがシオンを壊したんですよね」
アンナ「何度も何度も殴りつけて!」
藤沢結衣華「勝手なこと言わないで!証拠もないくせに!」
アンナ「証拠はありません」
アンナ「言ったでしょう。あくまで憶測です」
藤沢結衣華「・・・」
アンナ「シオンは警察に本当のことが言えなかったんでしょうね」
アンナ「もしあなたに壊されたなんてことが知られたら、あなたは逮捕される」
藤沢結衣華「っ・・・!」
アンナ「そうしたら、ミクちゃんはどうなると思います?」
アンナ「シオンがウソをついたのは、あなたのためじゃありません」
アンナ「ミクちゃんのためです」
藤沢結衣華「・・・」
藤沢結衣華「・・・アンドロイドのくせに」
藤沢結衣華「母親のマネなんかして気持ち悪い」
アンナ「・・・」
藤沢結衣華「誰が何と言おうと、あの子の母親はあたしよ」
藤沢結衣華「これ以上変な言いがかりをつけるようだったら通報するから」
アンナ「・・・」
藤沢未来「お姉さん、待って!」
アンナ「ミクちゃん!?」
アンナ「どうしたの?」
藤沢未来「これ、ママに渡して」
アンナ「これは?」
藤沢未来「これね、紫苑ってお花なの」
藤沢未来「ママと同じ名前!」
アンナ「っ・・・!」
アンナ「わかった。必ず渡すわ」
藤沢未来「あとね、ママに大好きだって伝えて」
アンナ「っ・・・」
藤沢未来「元気になったら、ミクに会いに来てって伝えてね」

〇大きい研究所
  アンドロイド処理施設

〇病院の廊下
職員「はあ・・・」
職員「どうしたの?」
職員「かわいそうだなって」
職員「・・・」
職員「あなた、いつここに来たんだっけ?」
職員「先週、配属されたばかりです」
職員「ああ、そっか」
職員「ここは、廃棄処分が確定したアンドロイドの待機場所」
職員「毎日たくさんのアンドロイドが運ばれてくる」
職員「毎回悲しんでいたら、心が持たないわよ」

〇近未来の病室
職員「ここにいたアンドロイドは・・・」
職員「ああ、女性のアンドロイドね」
  シオン──お手伝いアンドロイド。
  データ消去、廃棄済み。
職員「昨日データが削除されて、廃棄処分されたようね」
職員「データも消されちゃうんですね」
職員「アンドロイドには個人情報が詰まってるからね」
職員「うっ・・・かわいそう・・・」
職員「・・・」
職員「かわいそうなことばかりでもないかもよ」
職員「え?」
職員「そのアンドロイド、ずっと花を抱えていたそうよ」
職員「花?」
職員「そう、紫色のキレイな花」
職員「とても大事そうに抱えていたって」
職員「きっと大切な誰かからの贈り物でしょうね」
職員「最後まで、幸せそうだったって」

〇丘の上
アンナ「シオン」
アンナ「あなたを忘れない」
アンナ「紫苑の花言葉だそうよ」
アンナ「あの子がシオンに贈った言葉」

〇アパートのダイニング

〇丘の上
アンナ「あたしも忘れない」
アンナ「娘を命がけで愛した、一人の母がいたことを」

〇空

コメント

  • 「シオン」は感動的なヒューマンドラマですね。アンナが病床のシオンの代わりに彼女の娘に会いに行くと、予想外の展開が待っていました。アンドロイドのシオンが娘のミクと本当の母親の結衣華の間で揺れ動く姿がとても心に残ります。作品は家族の絆や愛について考えさせられるもので、感情が揺さぶられました。登場人物たちの思いや葛藤がリアルに描かれているので、共感できる部分も多くありました。物語の進行もスリリングで、一気に読み終えてしまいました。素晴らしい作品だと感じました。

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