読切(脚本)
〇黒
かつて天文学者の
カール・セーガンは言いました
〇宇宙空間
広大な宇宙から見た地球は
とても小さな点にしか見えない
〇地球
この小さな点に全ての人が住んでいる
〇水の中
愛する人も
知人も友人も
今まで存在した全ての歴史上の人物
人間ならばどこの誰であろうと
〇雑踏
ここに生きていたと・・・
〇SHIBUYA SKY
そのとても小さな点の中の
優季「・・・きれい」
翔「この景色ずっと優季に見せたかったんだ」
〇SHIBUYA SKY
あなたと過ごした時間なんて
翔「優季・・・」
翔「好きです」
この広大な宇宙から見たら
翔「僕と付き合って下さい」
最初から
優季「・・・はい」
〇SHIBUYA SKY
存在していなかったのと同じ・・・
〇黒
〇渋谷駅前
北海道の田舎に住んでいる私と
優季『渋谷に着いたよー』
渋谷に住んでいるあなたとの出会いが
翔『もうすぐ終わるからちょっと待ってて』
勝手に運命的なもののように思って
〇渋谷スクランブルスクエア
連絡が来る度ドキドキして
翔「ここで食事しようか」
〇渋谷スクランブルスクエア
優季「このビルって翔君の会社が作ったんだよね?」
一緒にいる時間がとても幸せで
翔「そうだよ」
優季「大きなビルだよね!」
渋谷という都会で生きているあなたが眩しくて
翔「渋谷の再開発はこれからどんどん進んで」
翔「もっと素晴らしい街へと進化していくよ」
あなたに強く惹かれていきました
〇SHIBUYA SKY
それはこの地球という小さな点の中で
翔「夜景きれいだね」
優季「・・・うん」
全ての人類の歴史がそうであるように
翔「ここは僕達の思い出の場所になるね」
優季「・・・翔君」
互いに強く惹かれ
〇空港の外観
優季「じゃあ北海道着いたらまた連絡するね」
翔「うん、また渋谷か北海道でね」
愛し合い・・・そして
〇綺麗な部屋
翔『今月は北海道に行けないかも』
優季『そうなんだね』
優季『こんなに会えないの初めてだね』
疑い誤解し合ってしまう
翔『仕方ないじゃん、仕事が立て込んでて』
優季『本当に・・・仕事だよね?』
なぜゆえ人類は
〇イルミネーションのある通り
この小さな点の中の
翔『ごめん優季』
翔『クリスマス北海道に行けなくなった』
こんな小さな国の中で
優季『そうなんだ』
優季『お仕事大変だね』
優季「今年も1人ぼっちのクリスマスか」
どうしようもない程に距離を感じ
〇黒
孤独を感じてしまうのか・・・
〇オフィスのフロア
優季「え?合コン?」
それでも人の気持ちが変わるのは
同僚「今付き合っている人居ないんだよね?」
優季「居ないというか・・・」
この世の常と言うけれど
〇大衆居酒屋
いまだに胸を締め付ける
同僚「もう半年くらい音信不通なんでしょ?」
同僚「それってもう終わってるよー!ねぇ?」
同僚の友達「ま、まあ・・・」
痛みにも似たあなたへの思いは
同僚の友達「え?じゃあ俺と付き合っちゃう?!」
〇川に架かる橋
一体いつになったら
同僚「じゃあまた月曜日にねー!」
同僚の友達「じゃあ優季ちゃん、いつでも連絡ちょうだいね!」
消えるのだろうか・・・
同僚「飲み過ぎちゃったねー あんた顔真っ赤」
同僚の友達「おまえの方が赤いわ!へっへっへ!」
もういい加減
同僚の友達「・・・え!?」
優季「・・・」
前に進まなければいけない事くらい
同僚の友達「・・・大丈夫?」
私にだってわかっている・・・
〇公園のベンチ
でも・・・なぜだろう
優季「もう、大丈夫です」
優季「すみません、ありがとうございます」
涙が止まらない
同僚の友達「1人で帰れる?」
優季「ここから近いので大丈夫です」
お願いだから
優季「失礼します・・・さようなら」
同僚の友達「え?ちょっと」
もう少しだけ・・・
〇水の中
このままで居させてください・・・
〇黒
〇高架下
この地球が
大きくて暗い宇宙空間の中で
〇渋谷の雑踏
ティッシュ配り「どうぞー」
たくさんの星々と距離を保ちながら
ひっそりと孤独に存在しているように
〇渋谷のスクランブル交差点
たくさんの人が行き交う
スカウト「お姉さん夜のお店興味ある?」
この広い渋谷という街で
優季「ないです・・・」
私は最初から
〇宇宙空間
1人ぼっちだったのかもしれない・・・
ただそれだけの事・・・
〇オフィスのフロア
同僚「あんた1人で渋谷に傷心旅行行っちゃったの!?」
優季「傷心旅行って訳じゃないけど・・・」
全ての人類はきっと
同僚「やばいね!ストーカーだと思われるよ!」
優季「別に家とか行った訳じゃないし・・・」
色んな事に折り合いをつけて
優季「でも・・・」
優季「なんか・・・吹っ切れた気がする!」
みんなそれぞれの人生を生きてきたのだろう
同僚「そう・・・それなら良いんだけど」
〇大衆居酒屋
同僚「じゃあ優季の新しい門出を祝って」
同僚「カンパーイ!」
私には頼もしい友人と
同僚の友達「え!優季ちゃんなになに!?どうしたの!?」
優季「え!別に何もないよ!」
愉快な仲間が居て
同僚の友達「・・・なんか元気そうで良かった」
〇個別オフィス
社長「優季さん、あなた最近とても頑張ってますね」
社長「取引先のお客様からたくさんお褒めの言葉を頂いてるわよ」
やりがいのある仕事がある
優季「ホントですか!?」
優季「ありがとうございます!」
〇明るいリビング
同僚「心機一転って訳ね」
優季「うん、思い切って引っ越しちゃった」
私はそれで十分幸せだったんだ
同僚「にしてもまた来週渋谷に行くの!?」
優季「別に今度はただ用事で行くだけだよ」
〇SHIBUYA SKY
それに気付けただけで
優季「きれい・・・」
たぶん私は恵まれている
〇SHIBUYA SKY
この広大な宇宙から見たら
通行人「・・・すみません!」
通行人「ハンカチ落としましたよ」
小さな点に生きる私達の人生は
〇SHIBUYA SKY
翔「・・・優季!?」
優季「・・・翔君!?」
たぶん一瞬の瞬きにも満たない
翔「・・・ずっと連絡出来なくてごめん!」
翔「あれから海外出張があって、その後のパンデミックで帰れなくなって・・・」
とても儚いものだけれど
翔「しかもSNSのアカウント消えちゃって」
翔「優季と連絡取れなくなっちゃって」
だからこそ胸を締め付ける切なさも
〇SHIBUYA SKY
孤独を感じる苦しい時間も
翔「こんな事言える立場じゃないけど・・・」
そして込み上げるこの愛しさも
翔「これからもまた・・・会ってもらえるかな?」
〇SHIBUYA SKY
全てが私の人生だと思うから
優季「・・・はい」
〇地球
どんな瞬間も
大切に生きていこうと思うのです
〇宇宙空間
〇黒
遠距離恋愛ってお互いの気持ちが大切なんですよね。
たぶん彼女も気づいてると思うんですが、他の人じゃうめられないほど、彼の存在が大きいんだと思います。
壮大な導入とナレーションの効果で、映像作品の様な雰囲気を味わえました。
すれ違っていた2人が再び出会えたのは偶然だったのかもしれないけど、前向きになれた彼女が行動を起こしたからこそ起こった奇跡だと思います。
宇宙の中の地球から始まり、遠距離恋愛の二人にストーリーを持っていく。そこから人間の世界を繊細面と情緒豊かな精神論の描写に感激しました。