読切(脚本)
〇城下町
「そっちへ逃げたぞー 観念しやがれ!福山詩ー!」
「御用だ!御用だ!」
版元「あーあー やってるやってる」
版元「本一つ 書いてしょっ引かれるなんざ」
版元「全くおっかねえ世の中だよなァ ええ」
版元「ヨッ 旦那! いらっしゃい」
版元「面白い作家先生の読本が今日も 入ってきてるよ」
版元「ん?どしたい」
版元「うひひええ! こっこの本は」
版元「旦那 この本、騒動になってんの 知らねえのかい?ほら」
版元「この読本は 持ってるだけで捕まるんだぜ!?」
版元「こんなとこ 誰かに見られた日にゃ」
版元「ヱ あんだって」
版元「短篇のこっちも 履修済みだから大丈夫?」
版元「余計駄目だよ!」
「おい お主ら そこで何をこそこそと しておる」
版元「げっ 旦那兎に角!こっち!こっちに来な!」
〇森の中
版元「はあ はあ ここまで来りゃ大丈夫だろ」
版元「で?あんた 菖蒲刀なんか好きなのかい トンダ変わりもんだねえ」
版元「あの話は あれだろぉ 後味悪ィし 悪人が山程出てくるしよお」
版元「え? やけに詳しいなって?」
版元「あぁ 実はなこの本の作者 よくうちに来るんだが」
版元「題名の拘りやら 作った時の苦労話やら どうでもいい事をぺらっぺら ぺらっぺら」
版元「耳に蛸が出来るくらい 聞かされてよお」
版元「え? その話聞かせろって?」
版元「いや 金なんかいらねえよ!」
版元「どっから持ってきたんだよそれ えぇ?」
版元「しまいなよ それ 話してやっから 落ち着きなよ」
版元(なんだよ全く ええ? 必死過ぎて怖えぐれぇだよ)
版元「んン゛っ(咳払い)」
版元「さて!菖蒲刀は全部で七話 そこへ加えて短篇は一話だ」
版元「福山がこの話を書き終えたのは最近 八月の末だったんだが」
版元「五話目から更新が止まってな そっから六話目が上がったのは1年後!」
版元「どうしてこうも期間が空いたかってェと 元々五話編成で考えてたみてェで」
版元「でも どっかの御達しを見て 長篇にしやすい話に書き換えたんだと」
版元「まあ そっからが地獄の始まりでよ 焦って続きを書こうとすんだが」
版元「これが 待てど暮らせど 一向にいい案が降りてこねえ」
版元「酢乱腐(スランプ)って奴だなあ こうなったらもう悲惨よぉ」
版元「すっかりやる気と自身を無くした 福山は気持を切り替える為に」
版元「他の応募作品に 手を出そうとするんだが」
版元「書いては没にしちまって 気付けば締め切り日が過ぎたりなんかして」
版元「更に落ち込むんだよなァ これが」
版元「でもな そうゆう時に読んだ 他の読本作家の話は もう一度」
版元「長篇金手頭取(長編コンテスト)に挑戦 してやろうって思わせてくれたってよ」
版元「サ 福山の蚤みてェな 苦労話は こんくらいにしてよ」
版元「お次は 各話ごとの題名についてだ」
〇水の中
版元「題名は妖刀に因んで 刀の部位を交えた諺が入れ込まれててよ」
版元「そっから話の展開を考えたらしいぞ これじゃ 読む前から種明かしだなァ」
版元「一人目「その欲鞘には納まらぬ」は 妖刀菖蒲と娘が出会う最初の場面だな」
版元「粗筋は 首刈りという男が娘の命(首)を狙おうとして菖蒲に返り討ちにされる話だ」
版元「菖蒲刀には悪漢だらけだが こいつは紛れもねぇ罪人」
版元「そうゆう奴の ナニカをしてぇって欲は 気高い武士が持つ刀の鞘に納まらなかった」
版元「こっから 菖蒲は 悪漢から憐れな女を守る」
版元「んまァ 盗賊から窃盗する窃盗犯みてぇな」
版元「ちょいと癖のある正義の罪人、 みてぇに描きたかったみてぇだな」
〇古びた神社
版元「二人目「切っ先眩しく光り、錆びる」 コイツぁ おしどり夫婦が夫の傲慢で 嫁が殺されちまうって話だ」
版元「考えりゃ 菖蒲が救ったのは この女だけかもしれねぇなあ」
版元「まあこの女は霊だったから 救えたのかどうかも微妙だな」
骸骨「カタカタカタカタカタカタ カタカタカタカタカタカタ」
版元「この話はどんなに眩しく光る立派な剣も 手入れをしなければ錆びる、ってことで」
版元「美しい記憶は過去 最初は優しかった旦那が変貌し 今では廃れた住居だけが残っている」
版元「って ことが言いたかったらしいが 本当に綺麗に種明かししてるな題名で」
〇古風な和室(小物無し)
版元「三人目「目貫通りは、お見通し」 透視能力の使える女が 男に騙されそうになるが菖蒲が助けるって話だ」
版元「目貫(めぬき)っつーのは 刀の柄に付けられた装具の部分だ」
版元「目抜き通りっつーのは 主要な大通りの事 だから今回の話は 博打小屋やあんみつ屋」
版元「質屋や裏社会の悪党まで 皆が住む大通りの様子が描かれてたな」
版元「そして「お見通し」とこれまた 目に関する言葉だ」
版元「この話には透視能力を使う優れた 目を持つ女が出て来るが」
版元「そいつは結局男に騙される 更に騙された事にも気づかず話は終わる」
版元「透視で賽の目をミてイカサマ出来ても 男をミる目は無かった、まあ、、皮肉だな」
〇墓石
版元「四人目「鯉口切っても、餡子は甘い」 娘が弟を守る為に暴力親父を殺そうとする が菖蒲が先に殺しちまうって話だ」
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更新止まったなと思っていた秘密が明らかに。どうした、菖蒲。早く斬っちまえばいいんだよと思ってましたが作者はとっととプロット切っちまうわけにはいきませんよね。
タイトルもこだわっててすごいです。オマケ楽しかったです。カイダン×2でも沢山あるのかな。
「鯉口切っても、餡子は甘い」の話は、娘が弟を守るために暴力親父を殺そうとするが、菖蒲が先に殺してしまうという展開です。題名の「鯉口切る」という表現は、刀を抜く前に鍔を押して刃を覗かせておくことを指します。娘が親父を殺そうとする状況を表現するために使われています。この話は、家族の絆や守るべき存在について描かれており、読んでいて心温まるエピソードです。菖蒲刀の物語は、様々な人々が菖蒲刀を通じて助け合い、成長していく姿を描いています。これからも続きが楽しみですね!
制作裏話をユニークな展開で描いていて、単調な説明になっていなかったことが素晴らしかったです!トンデモな当て字がツボ😂
ここに登録してすぐくらいに読んだ作品だったので
こうして最終話だけでなく外伝や裏話まで読むことができて感動しています🥹
更新に一年開いたということでしたが、むしろそこまで悩み抜いたうえで書き切ったことで、完結まで読めたので嬉しいです
次の作品も楽しみにしています💪