運命の出会いなんてあってたまるか!

今乃遊

第4話 「離れゆく運命」(脚本)

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今乃遊

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〇学生の一人部屋
  俺は布団に潜り、
  用具室から出た後の事を考えていた――。

〇体育館裏
  早乙女さんの事で瑞希からは
  言いたい放題だった。
八王子瑞希「女の子泣かすなんてサイテー」
八王子拓馬「・・・よくここ分かったな」
八王子瑞希「アンタを閉じ込めたって 笑ってる連中がいたのよ。 ったく、こいつはウチのオモチャだっつの」
八王子拓馬「誰がオモチャか」
八王子瑞希「ンな事より! ちゃんと夢姫ちゃんに謝り行きなさいよ?」
八王子瑞希「あんな子に好かれるなんて もう一生無いから!」
八王子拓馬「お前、早乙女さんが 俺の事好きだって知ってたの・・・?」
八王子瑞希「まああの子、 昔から分かり易かったからねえ・・・」
八王子拓馬「昔からって、ちょまっ・・・」
  チャイムに阻まれ、
  それ以上は聞けなかった。

〇学生の一人部屋
  そして今――。
  「アンタのせいで――」、
  俺が早乙女さんに放った言葉が
  脳内で反響する。
八王子拓馬「あああもおおおおっ・・・!」
  思い出し笑いならぬ、
  思い出し後悔に体をよじる。
八王子瑞希「何してんの?」
八王子拓馬「ノックしろよ!」
  言われてからノックする瑞希。
八王子拓馬「それじゃ意味ねえの!」
八王子瑞希「まあどうでも良いけど。 てか中間の範囲見せてくんない?」
八王子拓馬「うわ明日からじゃん・・・忘れてた」
八王子瑞希「はあ・・・使えな」
  俺は布団を翻して瑞希に詰め寄る。
八王子拓馬「てかお前! 早乙女さんの事知ってるのか?」
八王子瑞希「全然憶えてないの? 幼稚園から小学校まで一緒だったのに」
八王子拓馬「・・・憶えてねえ」
八王子瑞希「普通に有名人だったけどなあ。 めっちゃお嬢様で、 中高一貫のお嬢様学校行ってたし」
八王子拓馬「・・・道理であの言葉遣い」
八王子瑞希「もうさあ、じれったいから言うけど。 あの子、アンタに会う為に 転校してきたんだからね?」
八王子拓馬「は?」
八王子瑞希「夢姫ちゃんね、毎年文化祭に来てたの」
八王子拓馬「それは・・・、聞いた」
八王子瑞希「そん時に会ったから話したの。 もうアンタは演劇部を辞めたって事だけ」
八王子瑞希「そしたら高校どこに行くか 教えて欲しいって」
八王子拓馬「そんで教えたの? でもその頃はまだ 進学先なんて決めてなかったぞ」
八王子瑞希「ん」
  瑞希はスマホの画面を見せてきた。
  そこには早乙女さんの連絡先が
  載っていた。
八王子瑞希「そんで結構仲良しになった」
  ドヤ顔でピースされた。
  つまり、こいつと早乙女さんは
  今も連絡を取り合っているということか。
八王子拓馬「フゥウウ・・・。じゃあ早乙女さんと 出会ったのは偶然じゃないって事?」
八王子瑞希「むしろ必然?」
八王子拓馬「でも好きな人がいるからって 学校まで変えるか普通」
八王子瑞希「そういうもんなんじゃないの? 本当に人を好きになるって」
八王子拓馬「おかしいって・・・。どうかしてる」
八王子瑞希「あのねえ! 夢姫ちゃん、お父さんに 許可貰うの超大変だったんだから!!」
八王子拓馬「・・・・・・」
八王子瑞希「あんたにも、好きな人がいたんでしょ。 ちょっとは気持ち分かるんじゃないの? まあアンタの場合、相手が悪かったけど」
  告白して振られた日の事が
  一瞬でフラッシュバックする。
八王子拓馬「うっさいなあ! 知った風な事言うなよ!」
  思わず大声を出してしまった。
  瑞希は少し面食らったような顔をすると、黙って部屋を出て行った。

〇教室
  翌日。
  教室を覗いたが、
  早乙女さんは居なかった。
  正直ホッとした。
  中間試験のため、
  今日は午前で授業が終わりなのも助かる。

〇教室
  放課後。
  俺は運悪く掃除当番になってしまった。
  しかし、試験中だから掃き掃除だけで
  済むのは不幸中の幸いだ。
八王子拓馬「あっ・・・」
  机を運んだ拍子に
  ノートが落ちてしまった。
  それは早乙女さんの机だった。
  弾みで開いたページが目に入る。
八王子拓馬「『運命の出会い』、雪乃姫・・・」

〇教室
  誰も居なくなった教室で、さっき見かけたタイトルと名前を検索してみた。
八王子拓馬「雪乃姫・・・。 立古文庫、恋愛部門優秀賞・・・⁈ 早乙女さんが賞獲ったって、コレのことか」

〇土手
  俺は書店名が入ったレジ袋を片手に
  帰路に就いていた。
  ふと川岸を見ると見覚えのあるデカい犬
  ――ゴンが目に入った。
八王子拓馬「あ・・・」
  そして、そのゴンに顔を埋めるようにして
  彼女の姿があった。
八王子拓馬「俺のせいだよな・・・」
  一旦足を止める。
  『ちょっとは気持ち分かるんじゃないの?』と瑞希の言葉が甦った。
  分かる。
  痛いほど。
  好きだった人から酷い事を言われた時の
  辛さも――。
  俺は彼女に歩を向けた。
八王子拓馬「あの・・・」
早乙女夢姫「え・・・?」
  振り向いた彼女は涙を流していた。
早乙女夢姫「ご、ごめんなさい!」
  慌てて涙を拭い、立ち去ろうとする。
八王子拓馬「待って!!」
  俺は彼女の手を掴んだ。
早乙女夢姫「ごめんなさい! 私、拓馬さんが 辛い思いをされたとは知らず・・・」
八王子拓馬「早乙女さんは悪くないって!! 俺がバカで弱かっただけ・・・」
  彼女はただ首を振る。
八王子拓馬「・・・瑞希に聞いた?」
  彼女はコクっと頷く。
八王子拓馬「・・・ちょっと座らない?」

〇公園のベンチ
  俺は彼女と近くのベンチへ座った。
  ゴンも空気を読んでいるのか
  彼女の足元で大人しくしている。
八王子拓馬「その、ごめん! あの時俺、すごく勝手で酷い事言った」
早乙女夢姫「いいえ・・・。ばだぐじ(わたくし)の 配慮がだりながっだんでず (たりなかったんです)・・・」

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コメント

  • いやいやこれはたまげましたね

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