ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第20話「ふたりで歩む未来」(脚本)

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〇ゆるやかな坂道
大和要「俺、葵さんのことが好きなんだ」
  包み込んだ手のひらに力を込めると
  葵の瞳が戸惑いに揺れる。
  ――けれど次の瞬間
  葵は悲しげに首を横に振った。
姫野葵「・・・ごめんなさい」
大和要「えっ・・・どうして?」
姫野葵「要くん、その気持ちはきっと、思い込み です。好き、というのとは違います」
姫野葵「最初に言ったでしょう? 前世の約束はもう忘れてくれて構わないと」
姫野葵「――あなたには 今の人生を歩んでほしいんです」
  微笑んで離れようとする葵の手を
  要が力強く引き寄せる。
大和要「前世の約束とか、そんなの関係ないよ!」
大和要「俺は今、俺の目の前にいる葵さんのことが 好きなんだ。傍にいたいんだ!」
姫野葵「だから、その気持ちは・・・」
大和要「確かにね、葵さんと再会する前は、なんとかしてカーネリア姫を見つけて、今度こそ守ってあげたいって思ってた」
大和要「幸せに、してあげたいって」
大和要「でも葵さんと出会って、一緒に過ごして 考えが変わったんだ」
姫野葵「変わった・・・?」
大和要「うん。葵さんは俺のこと、優しく 見守ってくれたし、導いてくれた」
大和要「今世では勇者スキルのない ただの俺だっていうのに」
大和要「そんな葵さんとなら、一緒に幸せに なれるって思ったんだ」
大和要「片方が片方を守るとかじゃなく 2人一緒に、未来をつくれるって」
姫野葵「未来なんて・・・私は、姫だった頃と 違って男なんです。そんなの」
大和要「姫だったとか、今は男だとか そんなの関係ないよ」
大和要「俺は葵さんのことが好き。葵さんだから 好きなんだ。一緒にいたいんだよ」
姫野葵「・・・・・・」
大和要(ここまで言っても 俺の気持ちは通じないのか?)
大和要(・・・いや、まだ諦めない)
大和要「俺、葵さんに渡したいものがあるんだ」
姫野葵「私に、ですか?」
  要はバッグから綺麗にラッピングされた
  箱を取り出し、葵の手に乗せる。
大和要「プレゼント。開けてみて」
姫野葵「ありがとう」
姫野葵「・・・え、これって・・・」
  リボンを解くと、中にはシックな
  デザインの時計が入っている。
  そして要は、それとまったく同じデザインの時計をもう1つ、バッグの中から取り出した。
大和要「俺とお揃いの時計」
大和要「葵さんにはたくさんお世話になったから 何かお礼をしたいって思って」
大和要「バイトで貯めたお金で買ったんだ」
姫野葵「バイトって、まさかあの海の家も そのために・・・?」
大和要「うん。何がいいかなって かなり悩んだんだけどね」
大和要「葵さんと一緒に、同じ時を刻みたいって 思ったから時計にした」
大和要「へへ、ちょっとキザだったかな」
  照れ笑いする要から眩しそうに顔を背けた葵は、手の中の時計に目を落とす。
姫野葵「こんな、私のために・・・ 要くん、ありがとう」
姫野葵「あなたの気持ちは、とても嬉しいです だけど・・・」
大和要「貸して。つけてあげる」
姫野葵「えっ」
  要は葵の腕に時計を巻きつける。
大和要「ほら、これでお揃い」
姫野葵「お揃いの・・・時計 私と・・・同じ時を・・・」
大和要「うん。俺は、葵さんと一緒に 幸せになりたい」
大和要「そのためには、葵さんの一番傍にいなきゃ いけないって、そう思うんだ」
大和要「でも、それって葵さんも同じように 思っていてくれなきゃ、意味がない」
大和要「だから・・・葵さんの気持ちを 聞かせてほしい」
姫野葵「私の、気持ち?」
大和要「そう。オニキスとかカーネリアとか クリスタリアとか全部抜きにして 葵さんは俺ことをどう思ってるの?」
大和要「やっぱり俺が年下で、勇者じゃなくて ・・・男だから、ダメなの?」
姫野葵「それは・・・」
姫野葵「あ・・・」
  葵は自分を見上げる要の目線の位置が
  以前よりも少し近くなっていることに
  気づき、はっとする。
姫野葵「要くん、少し背が伸びましたか?」
大和要「えっ、そう? それだったら嬉しいんだけど」
姫野葵「・・・あなたは成長している 変わり続けているんですね」
姫野葵「けれど私は、変わることを恐れて 逃げていただけなのかもしれない」
姫野葵「でも・・・」
???「あなたの、本当の気持ちに正直になって」
姫野葵「――え?」
  尚も決心がつかない葵の頭の中に
  ある映像が流れ込んでくる。
  それはカーネリア姫――葵の前世の姿
  そのものだった。

〇白
カーネリア姫「――・・・」
姫野葵「あなたは、カーネリア・・・?」
カーネリア姫「ええ、私はカーネリア」
カーネリア姫「ずっとあなたの心の中にいたけれど こうしてお話するのは初めてですね」
カーネリア姫「亡くなる直前オニキスは、生まれ変わっても私を見つけると言ってくれました」
カーネリア姫「そしてその言葉通り、私を――あなたを 探し当て、この平和な世界で再び縁を 結ぶことができました」
カーネリア姫「クリスタリアで、私たちが交わした約束は もう終わりました」
カーネリア姫「ここから先は、あなたたちだけの 未来なのです」
姫野葵「私たちの、未来・・・?」
カーネリア姫「そう。オニキスとカーネリアではなく 大和要と姫野葵の未来」
カーネリア姫「――あなたはこの先 どんな未来を望むのですか?」
姫野葵「・・・叶うのならば 要くんの傍にいたいと思っていました」
姫野葵「でも所詮それは、今の私には過ぎた夢だと 気持ちを抑えて・・・」
カーネリア姫「どうしてそう思うのですか?」
姫野葵「だって、今の私は男性だから」
姫野葵「カーネリアだった頃のような、女性としての顔も声も体も失ってしまったから・・・」
カーネリア姫「それでも、要くんはあなたのことが 好きだと言ってくれたじゃないですか」
姫野葵「それは・・・」
カーネリア姫「――本当は、あなたももうわかっている はずです」
カーネリア姫「さあ、彼にあなたの本当の気持ちを 伝えてあげて」

〇ゆるやかな坂道
姫野葵「あ・・・」
大和要「葵さん!?」
姫野葵「要、くん・・・」
大和要「気がついた? ああ、良かった!」
大和要「急に座り込んだと思ったら、話しかけても反応しなくなっちゃって、心配したんだよ」

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