きるみー(脚本)
〇川に架かる橋の下
Round 2
女子高生ちゃん「・・・・・・殺す!」
Ready, Go!
開幕、フライデイは即座に仕掛ける。
EXゲージを支払いランを使用。高速移動で、一気に間合いを詰める。
ランの勢いを乗せ、弱パンチを打つ。威力はないが、素早い打撃。
ハートイーターは打撃をガード。ランを、止められなかった。
密着投げ間合い。フライデイは、投げを仕掛けた。
"投げ抜け"で防がれた。両者は弾かれ、距離が離れる。仕切り直しの間合い。
女子高生ちゃん(知るか、攻める!)
彼女はレバーを左に倒し、フライデイを前進させる。
ハートイーター「・・・・・・!」
前進の、圧。ハートイーターは牽制のキックを振る。――その瞬間、フライデイは前進を止め、後ろ下がりしていた。
フライデイ(ここッ!)
置き技を誘った形。攻撃が空ぶった硬直を、フライデイの大ぶりな蹴りが捉える。
それは、高火力コンボの始動技。
連続打撃が、ハートイーターの体力を削る。そして──
フライデイ「『シュガーアタック!』」
二連続のハイキックが、ハートイーターを吹き飛ばした。ダウン。すぐ後ろは画面端。フライデイは前ステップ、接近。
フライデイ(・・・・・・!)
女子高生ちゃん「このまま決める!」
ハートイーターの起き上がりに合わせて
、彼女はレバーを半回転──『ボムシュガー』のコマンドを入力する。
フライデイ「『爆弾、よ』」
フライデイはハートイーターの胸ぐらを掴むと、そのまま空中にジャンプ。
空中でぐるぐると縦回転、勢いをつけて──ハートイーターを地面に叩きつける!
『ボムシュガー』はガード不能の”コマンド投げ”だ。体力の三割が消し飛んだ。先のコンボと合わせて、ダメージは深い。
女子高生ちゃん「・・・・・・」
レバーとボタンが高速で操作される。そして、思考はもっと速い。相手は何を考えている? リーサルまでのルートは?
ハートイーター「『ライジングタイド!』」
画面端の攻防。ハートイーターはゲージを使って強化されたライジングタイドで切り返す。
フライデイは攻撃を食らい、ダウン。ハートイーターは前進してラインを押し上げる。
女子高生ちゃん「まだぜんぜん有利・・・・・・」
彼女は哀川の反撃を迎撃していく。ラインの有利を活かす。飛びは絶対通さない。
相手の方が追いつめられているのだから、リスキーな選択肢を計算に入れる。そして、心の隙を突く!
女子高生ちゃん「これで終わり!」
"ラン"の入力をした後、即座に"ボムシュガー"のコマンドを入力。中間距離からの、奇襲コマンド投げ。
フライデイ「『爆弾、よ』」
哀川は、防げなかった。フライデイはハートイーターを掴み、地面に叩きつける。
決まった。ハートイーターの体力はゼロ。これで、お互いにラウンドを取り合った形。勝負は、最終ラウンドへ。
女子高生ちゃん「・・・・・・よし」
レバーをガチャガチャと動かす。次へ、次へ。
・・・・・・
哀川「・・・・・・やるじゃんか、お姫様」
〇ゲームセンター
女子高生ちゃん「・・・・・・」
六月のゲームセンター。彼女は一人用モードで、ひたすら反復練習を繰り返す。
CPUがジャンプしてきたら、絶対に対空する。画面端は、覚えるべき連携を指になじませる。技のリーチは完璧に把握する。
淡々と、一人だけで、何時間も練習する。
・・・・・・
哀川「あいつ、ゲーム以外にやることないのか?」
ルル「とりあえず、今はゲームに人生を費やしているみたいだね」
二人は、少し離れた場所で駄弁っている。哀川の手にはチョコレートアイス。ルルの手には煙草。煙が漂っている。
哀川「なんにもならんぜ、ゲームなんてやってても」
ルル「君がそれを言う? もともと"人生なんて、死ぬだけ"なんでしょ」
哀川「あー・・・・・・」
哀川「まあ、そうだな。何をやろうと個人の自由だ。だが、もう一つ気になるんだが」
哀川「あいつは、自殺願望でもあるのかな?」
ルル「・・・・・・」
哀川「たまにあいつは酷い顔をしているし、ことあるごとに自殺の話を持ち出すし、身体を壊す程度にはゲームに打ち込んでるし」
哀川「自分を愛する気持ちが皆無なんじゃねえの?」
ルル「ん、でもセーラー服は気に入ってるみたいだよ。それって、自分を愛せるポイントじゃない?」
哀川「・・・・・・。それは、少しはマシなのかな」
ルル「君は、彼女のことを気にかけるし、よく見ているんだね」
ルル「初対面が最悪だったのに、この数か月でずいぶん仲良くなったね」
哀川「別に? あいつが突っかかってくるだけだよ」
ルル「・・・・・・ふうん。君はそういう感じなんだね」
ルル「彼女は、君に恋しているみたいだよ。そのことは気づいていた?」
哀川「・・・・・・」
哀川「ちょっと違う気がするけど。恋の熱、っていうか、夏風邪みたいなもんだろ。こじれてる」
哀川「そうだな、落ち着いたら、すぐに冷めるさ」
ルル「くっついて、しばらくしたら?」
哀川「やめろよ、そういうのは」
哀川「あいつと俺の関係は、つまり──」
哀川「対戦するだろ。お互いが、相手をぶっ倒したいと思っている。お前なんかに負けてやるかって思ってる」
哀川「――それでいいよ、それで」
〇川に架かる橋の下
女子高生ちゃん「・・・・・・」
Round 3
哀川「どうしようもなくても、これを続けるんだろ。お前も、俺も」
哀川「それでいいんだろ? これは、そういうことなんだろ?」
哀川「だから、お前をぶっ倒すんだよ!」
Ready, Go!
最終ラウンドが始まる。
画面端の攻防、シビレますね。当時ツルんでいた悪友が投げキャラ使いだったのを思い出してしまいました。
←↙↓↘→←↙↓↘→+P
プレッシャーに負けて、いいように投げられて放題でした。笑