宇宙人姉妹に居候された(連載版)

ひであき

第8話 デート当日(脚本)

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ひであき

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〇駅前広場
時任一樹「少し早めに着いたかな」
時任一樹「それにしても同じ家に住んでるんだから一緒に来れば良かったんじゃないか?」
時任一樹「わざわざ待ち合わせがしたいなんて変わってるよな」
時任一樹「これも文化の違いってやつなのかもな」
時任ミナ「あっ、お兄ちゃんもう来てる」
時任リナ「待ち合わせの時間より早く来るなんて感心」
時任一樹「ミナと、リナ姉? あれ? ミナと二人って話じゃなかったか?」
時任ミナ「私と二人? そんなこと一言も言ってないよ?」
時任一樹「えっ──」
  ごめーん! ちょっと遅くなっちゃった!
時任一樹「あっ──」
天野唯華「もう来てるなんてびっくり。待たせちゃった? 約束の時間は過ぎてないと思うんだけど」
時任一樹「ゆ、唯華? 何でお前がここに?」
天野唯華「何でって、今日は私と二人で遊園地で遊ぶ約束でしょ?」
時任一樹「何だって? これは一体どういうことだ?」
時任ミナ「二人とも楽しんできてね!」
時任リナ「私たちそろそろ行かないと」
時任一樹「行かないとってどこに?」
時任ミナ「実は今日遊園地の隣の会場で同人イベントがやってるんだ」
時任リナ「私は推しのアニメーターさんの同人誌を買いに来た。楽しみで仕方がない」
時任ミナ「私はお姉ちゃんの付き添いだよ。せっかくだから二人に挨拶しようと思ってここに来たんだ」
時任一樹「お、おい、さっきから何を言って──」
時任ミナ「それじゃ私たちはもう行くね」
時任リナ「困ったことがあれば連絡して」
時任一樹「ウソだろ。こんな予定だったなんて聞いてないぞ」
天野唯華「何ぼさっとしてるのよ? 私たちも行こ」
天野唯華「今日はせっかくので、でででデートなんだからしっかりリードしなさいよね!」
時任一樹「ここまで来て知らなかったはさすがに最低だよな」
時任一樹「仕方ない。腹を括るか」
天野唯華「ほら何してるのよ。早く行くわよ!」
時任一樹「お、おい! 腕を引っ張るなって!」
怪しい人影「許さない。許さない」

〇遊園地の広場
天野唯華「遊園地なんて久しぶりだわ!」
天野唯華「ねえどこから回ろっか?」
時任一樹「別にどこからでもよくないか?」
天野唯華「私リードしてって言ったわよね!?」
時任一樹「わ、わかった。わかったよ。そんなに怒るなって」
時任一樹「女子と二人で遊びに行くなんて初めてなんだ。あとで順番がおかしいとか文句言うなよ」
天野唯華「子供の頃に私と遊んでたでしょ」
時任一樹「あれはカウントしてない」
天野唯華「何よそれ!」
時任一樹「だから怒るなって! せっかくの遊園地なんだから楽しもうぜ」
天野唯華「そ、それもそうね」
天野唯華「早く行きましょ! 私今日を楽しみにしてたんだから!」
時任一樹「そ、そうだったのか」
時任一樹「いかんいかん。唯華相手に何を考えてるんだ俺は」
天野唯華「ほらほら早く早く!」
時任一樹「だから手を引っ張るなって! おいってば!」

〇大きい展示場

〇コミケの展示スペース
時任リナ「おおっ! これが夢にまで見た同人イベントの光景!」
時任ミナ「こんなにたくさん人がいるなんてすごいね!」
「お、おい、何だあの二人。メッチャ可愛いぞ」
「姉妹か何かか? 二人だけで来たのかな」
「さ、さっき擦れ違ったけどすげー良い匂いした。た、堪んねー!」
アニメーター「新刊売ってまーす。よろしくお願いしまーす」
時任リナ「初めまして。私リナと言います。あなたの大ファンです」
アニメーター「えっ!? あっ、ありがとうございます」
時任リナ「〈演劇の刃〉第19話の雫ちゃん覚醒回の作画すごかったです。感激しました」
アニメーター「あ、ありがとう。あそこは特に苦労したからそう言ってもらえると嬉しいよ」
アニメーター「そ、それにしてもびっくりしたな。いきなり君みたいな可愛い子に声をかけられるなんて」
時任ミナ「お姉ちゃんほどじゃないけど私もファンなんです。氷みたいに冷たい目をした雫ちゃんの作画にドキッとしました」
アニメーター「う、うわっ! 美少女がもう一人!?」
アニメーター「お、お姉ちゃんってことは二人は姉妹なのかな?」
時任ミナ「はい。私はミナと言います」
アニメーター「み、ミナちゃんとリナちゃんか。今日はわざわざ来てくれてありがとう」
時任リナ「観賞用・保存用・布教用で新刊三冊ください」
時任ミナ「私もお願いします」
アニメーター「う、嬉しいなぁ。本当に僕のファンなんだ」
アニメーター「この仕事を頑張ってきた甲斐があったよ。うっうっ」
「あの二人に囲まれるなんて羨ましー!」
「一芸に秀でるとああいう美味しい思いもできるんだな!」
「俺帰ったらペンタブ買うわ」

〇お化け屋敷
天野唯華「ね、ねえ、本当に行くの?」
時任一樹「俺のリードに任せるんじゃなかったのか?」
天野唯華「だ、だけど、いきなりお化け屋敷とか。 せっかくのワクワクが台無しなんだけど」
時任一樹「何だよ。早速文句か? 嫌なら帰ってもいいんだぞ」
天野唯華「そんなの嫌!」
時任一樹「ならさっさと行こうぜ。暗くなってから入るより明るいうちに入っておいたほうがいいだろ」
天野唯華「うー。わ、わかったわよ」
時任一樹「わっ! 腕に絡み付くなよ! 歩きにくいだろ!」
天野唯華「こ、こうしてないと無理だから! お願いだから我慢して!」
時任一樹「本気で恐いなら止めてもいいんだぞ? お前昔から恐いの苦手なんだし」
時任一樹「冗談で言ったつもりがまさか入ることになるとは思わなかったな」
天野唯華「あ、あんたから言い出したんだから最後まで責任取りなさいよね!」
時任一樹「はいはい、わかったわかった」

〇暗い廊下
天野唯華「ね、ねえ、ここ雰囲気が本格的すぎなんだけど」
時任一樹「俺もびっくりしてる。これ子供が入ったらトラウマになるんじゃないか?」
天野唯華「は、放さないでよ! 私の手を放さないでよね!」
時任一樹「フリか?」
天野唯華「フリじゃないから!」
時任一樹「冗談だって」
時任一樹「それに放そうにもこんなにしがみ付かれたら放せそうにないし」
天野唯華「か、勘違いしないでよね! これはあんたが恐がるといけないからしがみ付いててあげてるだけなんだからね!」
時任一樹「その言い分は無理があると思うぞ」
時任一樹「何か昔もこんなことがあったような気がするな」
時任一樹「ほら、ガキの頃に行った夏祭りで──」
天野唯華「あんたが帰り道を間違えて神社の山で迷子になったときのことでしょ! 覚えてるわよ!」
天野唯華「あのときは本当に散々だったわ。雨まで降ってきて体がびしょびしょになったし」
時任一樹「翌日俺が風邪を引いてお前が見舞いに来てくれたんだよな」
天野唯華「あれは本当にびっくりしたわ。あそこは普通私が風邪を引くところなのに」
時任一樹「バカは風邪を引かないのにってしつこく言われたの今でも根に持ってるぞ」
天野唯華「あんただってあの頃は私のこと雌ゴリラ呼ばわりしてたんだからお相子でしょ!」
時任一樹「あの頃はお前のほうがデカかったからなー」
天野唯華「それがいつの間にかあんたに抜かされちゃったわね」
天野唯華「体もこんなに男らしくなっちゃってさ。一樹のくせに生意気よ」
時任一樹「どんな理論だよそれ」
時任一樹「でも話してたら何か平気になってきたな!」
天野唯華「う、うん。そうね」
時任一樹「さっさと行こうぜ。せっかくここまで来たんだ。色んなところを回って遊び尽くさないとな」
天野唯華「しっかりリードしてよね」
天野唯華「あ、あのさ、これからも私とずっと一緒に──」
天野唯華「ひぃ! 今音! 今音がした!」
時任一樹「音よりお前の悲鳴のデカさにびっくりしたぞ」
天野唯華「ほら音! 音がするってば!」
時任一樹「わ、わかってる! わかってるからそんなに締め付けるな! あばらが軋んでる!」
  して えして
天野唯華「な、何この声!?」
時任一樹「い、痛い痛い! あばらが折れる!」
お化け「返して 俺の腕 返せー」
天野唯華「い、嫌ああああ!!」
時任一樹「ぐふっ!」

〇展示場
コスプレイヤー「目標捕捉。敵を撃破します」
コスプレイヤー「大海に飲まれて眠りなさい!」
コスプレイヤー「チャンネル登録よろしくニャーン」
時任リナ「おおっ! レイヤーさんがこんなにたくさん!」
時任ミナ「みんなすごいクオリティだね」
時任リナ「それだけ愛情を注いでいるということ。アニメは宇宙を救う」
時任ミナ「避難船に乗ってたときに地球の電波を受信してアニメを観てきたから生きようって思えたんだもんね」
時任リナ「極限の状況に一番必要な物は食料だけど、娯楽も必要だと痛感した」
時任ミナ「体は食事で、心はアニメで満たされて私たちは何とかここまで来たんだもんね」
時任リナ「今日は目一杯楽しもう」

〇遊園地の広場
時任一樹「う、うーん」
時任一樹「はっ! こ、ここは一体!?」
天野唯華「ようやく目を覚ましたわね。この寝坊助」
時任一樹「あれ、俺たちお化け屋敷にいたんじゃなかったか?」
天野唯華「あんたはお化けにびっくりして気絶したのよ。まったく情けないったらないわ」
時任一樹「思い出したぞ。あれはお前の馬鹿力に締め付けられたから──」
お化け「あっ、お連れの人大丈夫でしたか?」
時任一樹「うわっ! び、びっくりした!」
天野唯華「は、はい。この通り何ともないです」
お化け「いやー、本当すみませんでした」
お化け「俺の特殊メイク恐いって評判だけど気絶されたのは初めてでしたよ」
お化け「引き続き楽しんでいってくださいね!」
時任一樹「明るい外で見ても恐いな。あの人のメイク」
天野唯華「あんなの子供の頃に見てたらトラウマになってたわよ」
時任一樹「だなー」
時任一樹「てかいつまで膝枕してるつもりだよ?」
天野唯華「何よ。嫌だっていうの?」
時任一樹「お、お前が嫌じゃないなら別にいいけどさ」
天野唯華「──嫌なわけないじゃない」
時任一樹「えっ?」
天野唯華「はい、お終い。続きをしてもらいたかったらもう一回気絶してよね」
時任一樹「次回へのハードルが高すぎないか?」
天野唯華「次はジェットコースターで気絶したりして。ぷくく」
時任一樹「そ、そんなわけないだろ! 俺の肝はビー玉くらいか!」
天野唯華「ごめんってば」
天野唯華「ほら行こ! ジェットコースターが待ってるわよ!」
時任一樹「俺を気絶させたくて必死だな」

〇大きい展示場
時任リナ「展示場の前もレイヤーさんでいっぱい」
時任ミナ「カメラを持った人たちもたくさんいるね」
時任リナ「私たちも演劇の刃のレイヤーさんを探して写真を撮ろう」
カメコ「あのー、写真撮ってもいいですか?」
時任ミナ「えっ? 私たちですか?」
カメコ「はい」
カメコ「お二人とも”宇宙人”のコスプレをされてますよね?」
時任ミナ「!」
時任リナ「あなた何者?」
カメコ「失礼しました。今はこんな格好をしていますが、私はMIB日本支部の者です」
時任ミナ「MIBの人が何でここにいるんですか?」
カメコ「実はこの辺りに不法入星した宇宙人がいると報告がありまして」
カメコ「地球人を襲う狂暴な宇宙人だそうで、こうして警戒を強めていたのですよ」
時任リナ「私たちに声をかけた目的は?」
カメコ「一刻も早くこの場から避難していただきたいのです」
カメコ「民間の宇宙人にもしものことがあれば外交問題に発展しかねませんので」
時任ミナ「そういうことだったんですね」
時任リナ「わかった。残念だけどそうする」
カメコ「ご協力感謝します。必要であれば係の者をお付けいたしましょうか?」
時任ミナ「大丈夫です。自分たちだけで帰れます」
カメコ「わかりました。ではくれぐれもお気を付けて」
時任ミナ「何か大変なことになってるみたいだね」
時任リナ「わざわざ避難指示をするなんて只事じゃない」
時任ミナ「お兄ちゃんに連絡しないと。何かあったら大変だし」
時任リナ「唯華には悪いけどそうしよう」
時任ミナ「そっちは何も起きてないよね、お兄ちゃん」

次のエピソード:第9話 不穏な影

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