読切(脚本)
〇教室
利佳子「ひまだわ」
利佳子「あんたもひまそうね ツトム」
ツトム「失礼な 俺は窓に頬をくっつけて真剣に真理について考えてるところだ」
利佳子「ひまじゃないの」
ツトム「人生ひましかないだろ」
利佳子「それもそうね」
利佳子「ひましかないなら、真剣に考える真理なんてないんじゃないの」
ツトム「ひまだから真剣にやるんだぜ」
利佳子「あらやだカッコイイこと言うわね」
ツトム「惚れたか」
利佳子「いいえ あたし彼ピッピいるから」
ツトム「ほお 恋バナとやら聞かせろ〜」
利佳子「ふふ これを見て」
ツトム「スマホの中のイマジナリー彼ピッピか・・・」
利佳子「作ってもらったのよ AI彼氏チャットボットを・・・」
利佳子「24時間即レスだし、何といっても上品な言葉遣いがたまらないわ」
ツトム「そりゃ機械だからだろ」
利佳子「機械といっても、いろんな人の言葉を学習しているから、人間味あるわよ」
ツトム「ふうん おもしろいか?」
利佳子「おもしろいというより癒やしね あたし、人間関係におもしろさは求めていないの」
ツトム「変わらないな」
利佳子「落ち着いてたら、感情のぶつかり合いも、喧嘩も起きないと思うの」
ツトム「そうだな」
利佳子「あたしの家、親が喧嘩ばかりしていて・・・懲り懲りよ」
利佳子「ああ、喋りすぎたわ」
ツトム「喧嘩は珍しいことではない お前が優しすぎるんだ」
ツトム「騒音が気になるなら、うるせえ!!!って喧嘩中の親に言えばいいぞ」
利佳子「ええ・・・」
利佳子「それはちょっとおもしろそうね」
利佳子「ありがとう 元気になったわ」
ツトム「早速今日から試してみるといい」
利佳子「迫力ある声が出せるかしら」
ツトム「迫力ある声をネットで見つけて、スマホから再生したらいい」
利佳子「名案ね」
ツトム「連続再生もいいと思う」
利佳子「あはは もうコントね」
ツトム「この世はコントだろ?」
利佳子「あらま悟っちゃってる」
ツトム「これが悟りなのか・・・?」
ツトム「悟りはもっと具体的な言葉にできるはずだ うーん」
利佳子「真剣で、おもしろいわね」
ツトム「惚れたか」
利佳子「惚れてほしいの?」
ツトム「モテたい」
利佳子「誰でもいいのね」
ツトム「実際問題、一人の人を思い続けるって重くないか」
利佳子「あーね 重いと嫌われるわね」
ツトム「元々、人間はポリアモリーだったんじゃないか」
利佳子「一人の人でなければというのも、近代的な価値観なのかもね」
ツトム「一人の人、一つの家族、一つの学校・・・」
利佳子「ひとりとひとつって同じものだったりして」
利佳子「悩みも望みも大体似通っているってことは、構造が同じってことじゃない?」
ツトム「なんだか呆気ないな」
利佳子「なんでもないって清潔だわ」