追う恋は追われる恋に勝る!

びわ子

第八話 「傷触れて 落ちた蛇衣 まじまじと」(脚本)

追う恋は追われる恋に勝る!

びわ子

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〇空
「きょー うもー、おててをー♪」
「つぅーないでぇー、あーるーくぅー♪」
アヤト「ふーあんもぉ、なーやみーもぉ♪」
「はーんぶんこぉ──♪」

〇駅前ロータリー(駅名無し)
とーちー(アヤトのパパ)「アヤト、幼稚園までもう少しだよ」
アヤト「うん、とーちー!」
アヤト「じゃあ2番、うたおー」
とーちー(アヤトのパパ)「よしきた!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「親子か・・・、いいもんだな・・・」
  恋がバイクで早退して、
  先生達を巻き込んだ大騒動が
  理事長の耳に入り、問題となったが
  山田先生と
  海野先生による嘆願のお陰で
  謹慎処分の代わりに
  ”二週間バイク通学禁止”となった
  それで電車通学となった恋を
  待ってるのだが──
古林 一咲(こばやし いっさ)「ん──、どこにいるのやら」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あっ!いたいた!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「お──い!恋!!」
与謝野 恋(よさの れん)「ちょっと!大きな声で呼ばないでよ! 恥ずかしい!!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「はぁ?いつも言ってるだろ?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「お前は毎日、恥ずかしがっていたのか?」
与謝野 恋(よさの れん)「そういうことじゃなくて!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「じゃあ、どういう事だよ?」
与謝野 恋(よさの れん)「うるさい!もういい!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「痛いって!キーホルダー当たったぞ!」
与謝野 恋(よさの れん)「ふん・・・、”あぽ一咲”」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・ったく、なに怒ってるんだよ」
古林 一咲(こばやし いっさ)(もしかしたら事故を思い出して、 ナーバスになってるのかな・・・)

〇散らかった職員室
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「一咲!」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「恋を見つけてくれてありがとう」
古林 一咲(こばやし いっさ)「先生・・・、俺は人の気持ちとか、 よくわかんないけど」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あいつも色々あるんでしょうね・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「そうだな・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「あ──、」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「それでだな、一咲・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「お前にもう一度 頼みたいことがあるんだ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「えぇ!?なんですか?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ムチャは絶対言わないでくださいよ!」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「恋が、バイク通学禁止になるのは 聞いているか?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ええ、あいつ相当落ち込んでましたよ」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「そこでだ。悪いけれど一咲」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「暫く毎朝、恋と一緒に通学して欲しいんだ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ええっ!?なんで──!」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「実は、アイツは路面電車に 1人で乗ったことがないんだ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「いやいや、今時小学生でも 教えたら乗れるでしょうって!」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「ICカードも持って無いし 切符の購入、乗車の場所とか」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「数日でいいから教えてあげて欲しい!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・いや先生が教えれば いいじゃないですか?」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「本来なら、そうするんだが」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「俺も明日から出張があってな、 ・・・すまん!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「・・・というのは建前で、」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「恋が過去と立ち向かえるか気になってな」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「実は恋は家族を・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「事故で亡くしているんだ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)(・・・そういえばアイツそんな事を)
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「それから人が運転している乗り物を 乗らず過ごしてきた恋は」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「特に事故と同じバスには 絶対乗ろうとしなくなった」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「あれから数年が経っているが 路面電車に乗れるかもわからない」
古林 一咲(こばやし いっさ)「先生、でも恋は バイク乗ってるじゃないですか」
古林 一咲(こばやし いっさ)「それなら乗れるんじゃ?」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「恋は「自分が運転するならいいんだ」」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「「他人に運転されるのが怖いんだ」と言っていた」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「当日、乗れなきゃ引き返してくれてもいい」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「もしかしたらパニックになるかもしれない」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「だから恋の側で 見守ってあげてくれないか・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「無理を言ってるのは承知している」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「ペコリ(お辞儀)」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「頼む──」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「先生、顔をあげてくださいよ。 わかりましたから」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ちゃんと見守りますよ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ダメだったら またなんか違う手を考えましょう!」
山田 山東火(やまだ さんとうか)先生「一咲──!! ありがとう!ありがとう!」

〇路面電車
古林 一咲(こばやし いっさ)(さて・・・、 恋の気分を乱さないようにしないとな)
古林 一咲(こばやし いっさ)「はい恋さん、こっち向いて──」
与謝野 恋(よさの れん)「な、何よ!恋さんって急に!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「俺も最初は戸惑ったんだけど」
古林 一咲(こばやし いっさ)「路面電車の乗り方に 決まりがあるのを知ってるか?」
与謝野 恋(よさの れん)「えっ!!そうなの? 開いてるドアから入るんじゃないの?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「地域によって独自のルールがあるんだよ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「俺達が通学する電車は進行方向に対して 後ろのドアから乗るタイプだ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「そして進行方向の1番前のドアから降りる」
与謝野 恋(よさの れん)「じゃあ逆に前から 乗るタイプもあるって事?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「金輝市一帯の路面電車は 全て後ろ乗りだから心配するな」
与謝野 恋(よさの れん)「お金は?私ICカード無いんだけど?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「市内は一律200円」
古林 一咲(こばやし いっさ)「電車を降りるドア付近に お金入れる場所があるからな」
古林 一咲(こばやし いっさ)「俺も今日は現金でお金を払う。 真似をすればいい、心配すんなって」
与謝野 恋(よさの れん)「う、うん・・・」

〇路面電車の車内
古林 一咲(こばやし いっさ)「お!ラッキー、後ろ空いてるぞ」
与謝野 恋(よさの れん)「うん・・・」
「ドサッ・・・ ドサッ!!」
与謝野 恋(よさの れん)(・・・怖い、怖い、怖い!)
与謝野 恋(よさの れん)(いやだ、いやだ!)
与謝野 恋(よさの れん)(目をつぶっても、 いやなことばかり思い出してしまう)
古林 一咲(こばやし いっさ)(・・・震えている?怖いのか)
古林 一咲(こばやし いっさ)(こんな時、どうするのが正しいんだ?)
古林 一咲(こばやし いっさ)(落ち着かせること、 落ち着かせることはなんだ!)
古林 一咲(こばやし いっさ)(なんかないか考えろ、考えろ!!)
古林 一咲(こばやし いっさ)(さっきの親子! これが正しいかどうか、わからないけど)
古林 一咲(こばやし いっさ)(何もせずにはいられない!)
古林 一咲(こばやし いっさ)「手・・・握るぞ!」
与謝野 恋(よさの れん)「きゃっ!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「──恋」
古林 一咲(こばやし いっさ)「お前が怖がるのは当たり前だ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「だから怖がればいい・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ただ、何があっても俺が側にいるから」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「お前の不安も、怖さも」
古林 一咲(こばやし いっさ)「この手から」
古林 一咲(こばやし いっさ)「俺に分けてくれ──」
与謝野 恋(よさの れん)「一咲・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「どうした・・・?」
与謝野 恋(よさの れん)「動いてる間だけでもお願い・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「手を──」
与謝野 恋(よさの れん)「ギュッとしてて──」
古林 一咲(こばやし いっさ)「──わかった」

〇路面電車のホーム
古林 一咲(こばやし いっさ)「お疲れ様・・・、よく頑張ったな」
与謝野 恋(よさの れん)「うん・・・」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「おーい!二人ともおはよー! 待ってたよー!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「お、おはよう!」
与謝野 恋(よさの れん)「絵美!?お、おはよう!」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「どうしたの2人とも?顔赤いよ?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「えっ、えっ!」
与謝野 恋(よさの れん)「あ──、 電車の中まだクーラー入ってなくてさ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「そ、そうそう暑かったよな──」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「ふーん、そうなんだ」
与謝野 恋(よさの れん)「絵美──、頑張ったからお菓子買って──」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「まったく──、一個だけだぞ!」
与謝野 恋(よさの れん)「やった──! じゃあコンビニ寄ろう!」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「じゃあ、一咲君また後でね!!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ああ、また!」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「乗れてよかったね恋、心配してたんだよ」
与謝野 恋(よさの れん)「うん、一咲がお金の払い方とか教えてくれて・・・って!」
与謝野 恋(よさの れん)「ああっ!一咲にお金返すの忘れてた!」
与謝野 恋(よさの れん)「返してくる! すぐ追いつくから先いってて!!」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「オッケー!」
与謝野 恋(よさの れん)(────よしっ)
与謝野 恋(よさの れん)「一咲!!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あれ?先に、いったんじゃないのか?」
与謝野 恋(よさの れん)「お、お礼いってなかったからさ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「そ、そうか」
与謝野 恋(よさの れん)「あのー、あのね・・・、」
与謝野 恋(よさの れん)「正直乗るの怖かったの」
与謝野 恋(よさの れん)「でも一咲が隣にいてくれてさ」
与謝野 恋(よさの れん)「──て、手を握ってくれたから」
与謝野 恋(よさの れん)「頑張れたよ!」
与謝野 恋(よさの れん)「ありがとう!!」
与謝野 恋(よさの れん)「か・・・、帰りもよろしくね!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「お、おう・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「じゃ!」
古林 一咲(こばやし いっさ)(あれ・・・? なんで心臓が高鳴るんだろ・・・)
古林 一咲(こばやし いっさ)(落ち着け一咲! お前は初恋の人を探す事を考えろ!!)
古林 一咲(こばやし いっさ)(・・・ふ────っ! よし!落ち着いた!!)
古林 一咲(こばやし いっさ)(今日はKYのイニシャル、 残り5人を探しに行くとするか!)
山口 香子(やまぐち きょうこ)(・・・さっきすれ違った人!)
山口 香子(やまぐち きょうこ)(もしかして、あの時の・・・)

〇白い校舎

〇教室
三鷹 哲也(みたか てつや)「なぁ、一咲。 今日はどのクラス調べにいくんや?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「まだ調べてない 5組のクラスにあたってみるつもりだ」
松尾 翔(まつお しょう )「あの・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「どうした?翔?」
松尾 翔(まつお しょう )「さっきからこっちを 見てる人がいるんだけど・・・」
三鷹 哲也(みたか てつや)「え!?どこに?」
松尾 翔(まつお しょう )「今、廊下にいてる 眼鏡の子・・・」

〇学校の廊下
山口 香子(やまぐち きょうこ)「・・・!!」

〇教室
古林 一咲(こばやし いっさ)「あれ?今の人・・・」
三鷹 哲也(みたか てつや)「あの子は確か5組の子やぞ! 見たことある!」
松尾 翔(まつお しょう )「購買行った時も 一咲君達を見てたよ・・・」
三鷹 哲也(みたか てつや)「なんやて!一咲!?」
三鷹 哲也(みたか てつや)「誰や!知ってるなら思い出さんかい!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「グッ、グェェ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「お、おい!クビをしめるな・・・」

〇教室
蒼山 絵美(あおやま えみ)「聞いた、恋! 一咲君を好きな人かなぁ?」
与謝野 恋(よさの れん)「うん・・・、誰だろうね・・・」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「どうしたのぉー」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「めぐみん聞いてよ──」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「一咲君に熱い視線をおくる子がいてね」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「ほぇー、もしかしたら眼鏡かけた子?」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「そ、そうだけど・・・!?」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「もしかして香子ちゃんのことかなぁ」
与謝野 恋(よさの れん)「き、香子ちゃん?」
与謝野 恋(よさの れん)「だ、誰なの、めぐみん!」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「ちょっと恋落ち着いて! どうしたのよ?」
与謝野 恋(よさの れん)「ご、ごめんごめん」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「さ・・・、最近、 文芸部で仲良くなった子でぇ」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「一咲君のこと知りたいって聞いてきたのぉ」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「ヤバっ!!知りたいだって! これ一咲君のこと気になってんじゃん!」
与謝野 恋(よさの れん)「それで・・・」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「私もそんなに親しくはないからぁ」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「今度紹介するので 教室にきてねって言ったんだぁ」

〇教室
古林 一咲(こばやし いっさ)「彼女の名前は何て言うの?」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「香子ちゃん」
時坂 めぐみ(ときさか めぐみ)「山口 香子(やまぐち きょうこ)ちゃんだよ」
三鷹 哲也(みたか てつや)「やまぐち きょうこ・・・」
三鷹 哲也(みたか てつや)「それって・・・KYやんけ・・・」
蒼山 絵美(あおやま えみ)「もしかして、その子 一咲君の初恋の──」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」

次のエピソード:第九話 「梅雨終わり 決意鈍らす ポラロイド」

コメント

  • 男主人公はちょっと鈍感なぐらいがちょうどいいです😆
    震える相手の手を繋ぐなんて、とても良い判断ですね☺️一緒に通学で毎日手を繋ぐなんて、、、青春だわ、、🥺
    新しく登場した子もKY、、、そして、その子の登場に気が気でない恋さん、、、気になる引きですね😆

  • 一咲も恋もみんな可愛すぎですね☺️
    KYの正体がついに!?気になる展開です😚

    そして…あれはあの親子じゃありませんか😭
    この世界では(?)最後まで元気で幸せでいてくれるといいな…
    あの感動を思い出し、胸が熱くなりました🥹

  • 甘酸っぱあああ😆💕💕💕💕💕✨️✨️✨️✨️✨️
    青春!青春ですね!!😆💕💕💕
    一緒に登校する必然性から、お互いときめく自然な流れが良いです😊💕💕💕
    こんなの恋まっしぐらですよ~、と思ったけど、初恋の子候補が現れて波乱の予感??
    昔路面電車の沿線に住んでよく利用してたので、雰囲気が懐かしかったです😊前から出るタイプでした👍

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