第1話 宇宙人の姉妹ができました(脚本)
〇学生の一人部屋
時任ミナ「今季のアニメは豊作だったね!」
時任リナ「どれも覇権を獲れる出来だった」
時任ミナ「大好きな声優さんがたくさん出てたからもう最高だったよ」
時任リナ「作画もハイレベルだった。アニメーターさんたちには感謝してもしきれない」
時任ミナ「そういえばお姉ちゃんが好きなアニメーターさんが今度同人イベントに出るって告知してたよ」
時任リナ「何と! それはもう絶対に行くしかない! 一緒に来て!」
時任ミナ「もちろんだよ! 今から楽しみだね!」
時任一樹「あの、俺の部屋で何をしてるんだ?」
時任ミナ「何って、寛いでるんだよ?」
時任リナ「部屋が散らかってる。ゴミ箱からも変な臭いがする」
時任ミナ「変な臭いってどんな臭い?」
時任一樹「待て待て! ゴミ箱に興味を持つんじゃない」
時任一樹「それはそうとお前たちは一体誰なんだ?」
時任ミナ「誰って、妹のミナだよ」
時任リナ「私は姉のリナ。この顔を忘れたとは言わせない」
時任一樹「いや俺一人っ子だから! 親父に恨みがましく娘が良かったっていつも言われてるんだからな!」
時任ミナ「えっ?」
時任リナ「えっ?」
時任一樹「えっ?」
時任ミナ「──お姉ちゃんもしかして記憶操作するの忘れてた?」
時任リナ「私はミナがしたんだと思ってた」
時任一樹「もしもし警察ですか?」
時任ミナ「待って待って待ってー!」
時任一樹「な、何をするんだ! 背中に胸が当たってるぞ! エッチだな! 好きだ!」
時任ミナ「君欲望にストレートだね!?」
時任リナ「今すぐ電話を切って。さもないと知る必要のなかった恐怖を味わうことになる」
時任ミナ「物騒なこと言わないでお姉ちゃん!」
時任一樹「あっ、大丈夫。これ時報にかけただけだから」
時任ミナ「そ、そうなんだ」
時任リナ「ミナ、そのまま押さえてて」
時任ミナ「お、お姉ちゃん? 何をするつもりなの!?」
時任一樹「さ、さっき記憶操作がどうとか言ってたけどまさか!?」
時任リナ「私も胸を当てる」
時任一樹「うひょー! ありがとうございます!!」
時任ミナ「何してるのお姉ちゃん!? 今の内に記憶操作しなきゃ!」
時任リナ「もう手遅れ。一度存在を認識されたら記憶を上書きしても無駄」
時任ミナ「そ、そっか。そうだよね。これからどうしよっか」
時任一樹「記憶を上書きすると何か不都合なことでもあるのかい?」
時任ミナ「廃人になるリスクがあるんだよ」
時任一樹「な、なるほど」
時任リナ「そういうことだから仕方ない」
時任リナ「君には死んでもらう」
時任一樹「満面の笑みで何言ってるのこの子!?」
時任ミナ「そんなのダメだってば! 君もおとなしくしてて! 悪いようにはしないから!」
時任一樹「さっきは前からも後ろからもおっぱいで挟んでくれてありがとうございました!」
時任ミナ「君びっくりするくらい煩悩の塊だね!?」
時任リナ「胸を揉ませておけば何でも言うことを聞いてくれそう」
時任一樹「例え世界が敵になっても俺はお前たちの味方だ!」
時任ミナ「おっぱいのためにそこまでするんだ」
時任リナ「これなら手荒なことをしなくても事情を説明すれば何とかなりそう」
時任一樹「事情? どういうことなんだ? お前たちは一体何者なんだ」
時任ミナ「実は──」
時任茂雄「さっきから騒々しいな。一人で何をしてるんだ?」
時任一樹「あっ、親父」
時任ミナ「お父さんおかえりなさい!」
時任リナ「パパおかえり」
時任茂雄「おお! 可愛い娘たちよ! ただいま」
時任茂雄「今日はドーナツを買ってきたぞ。姉妹で仲良く分け合って食べなさい」
時任ミナ「ありがとうお父さん!」
時任リナ「パパ大好き」
時任リナ「そういえばマンションを買ってくれるって話はどうなったの?」
時任茂雄「い、いやー、さすがにパパの稼ぎじゃマンションは買えないよ」
時任リナ「やだやだやだ! マンション買ってくれないとやだやだ!」
時任ミナ「その駄々でマンションを買わせるのは無理があるよ」
時任リナ「パパのウソ吐き! また赤スパしてたってママに言い付けるから」
時任茂雄「そ、それだけは勘弁してくれ! カレンちゃんからはもう卒業して今はお前たちに一途だから!」
時任ミナ「そこでお母さんの名前は出ないんだ」
時任茂雄「スパチャ、そうだ。娘がいたらスパチャはしないって思ってたのに何でスパチャをしてたんだ?」
時任ミナ「大変! 記憶が混濁してるみたい! 急いで記憶を操作しないと!」
時任リナ「ちゃんとマンションを買うように刷り込んでおかないと」
時任ミナ「もう! お姉ちゃんいい加減にして!」
時任一樹「──この二人は一体何なんだ?」
〇学生の一人部屋
時任一樹「何だって!? 君たちは宇宙人!?」
時任ミナ「信じられないかもしれないけど」
時任リナ「本当の話。口で言われても信じられないなら──」
時任リナ「体に直接教え込んでもいい」
時任ミナ「お姉ちゃん乱暴はダメだよ!」
時任一樹「ら、乱暴? 一体俺はナニをされてしまうんだ!?」
時任ミナ「君そればっかだね本当」
時任リナ「胸を揉ませたら私たちの話を信じてくれる?」
時任一樹「信じる!」
時任ミナ「お姉ちゃん自分を安売りしないで!」
時任リナ「ミナの胸なら好きなだけ揉んでもいい」
時任ミナ「私を安売りしないでお姉ちゃん!」
時任一樹「話が本当だとして、何でまた俺の家に来たんだ?」
時任ミナ「えっとね、実は私たちの故郷の星は寿命を迎えて滅んじゃったんだ」
時任リナ「それで移住に適した星を探して宇宙を旅していたらこの星に辿り着いた」
時任ミナ「せっかくここまで来たはいいけど住む場所がなかったから君の家族に成り済まそうとしたんだけど」
時任リナ「あなたへの記憶操作を忘れてこうなってしまった」
時任一樹「なるほど。ちょっと様子がおかしくなってはいたけど、親父の記憶操作は成功してるってわけか」
時任明美「一樹! ご飯できたわよー!」
時任明美「あら、ミナとリナも一緒だったのね」
時任ミナ「お母さんいつもありがとう! もうちょっとしたら行くから待ってて!」
時任リナ「愚弟に立場をわからせてから食べに行く」
時任ミナ「恐いこと言わないでお姉ちゃん!」
時任明美「またおかしなことを言って。今度また三人で買い物に行きましょうね」
時任ミナ「うん! 楽しみにしてるね!」
時任リナ「帰りは回らないお寿司が食べたい」
時任明美「嬉しいわ。私娘と買い物に行くのが夢だったのよ」
時任明美「あれ? 私今何を? リナとミナとは昔からよく買い物に行ってたわよね?」
時任明美「あれ? 私に娘なんていたかしら?」
時任ミナ「まただ! お姉ちゃん急いで!」
時任リナ「帰りは焼肉でもOK!」
時任ミナ「お姉ちゃん!」
〇学生の一人部屋
時任一樹「──事情はわかった。つまりお前たちはうちに居候したいんだな?」
時任ミナ「お父さんとお母さんの記憶も操作しちゃったし、そのほうがお互いのためだと思うんだ」
時任一樹「その割には仕事が雑すぎないか?」
時任リナ「道具に頼らず直接脳味噌を弄り回せば完璧に記憶操作できるけどやったほうがいい?」
時任一樹「そんなのダメに決まってるだろ!」
時任ミナ「絶対ダメだからね!」
時任リナ「それは残念」
時任リナ「それでどうするの? 事情を理解してもらった上で私たちを本当の姉妹だと思って受け入れてくれると助かるんだけど」
時任一樹「うーん」
時任一樹「まあ、そういうことなら仕方ないな。どうやら話は本当みたいだし、うちに住んでもいいぞ」
時任ミナ「本当!? ありがとう!」
時任リナ「物分かりが良くて助かる。死ぬより辛い苦痛を与えずに済んでよかった」
時任ミナ「だから恐いってばお姉ちゃん!」
時任一樹「それより知ってたか? 地球では兄妹は一緒にお風呂に入らないといけないんだってこと」
時任ミナ「私たちここに来る前に地球のこと色々調べてるから嘘を吹き込もうとしてもそうはいかないからね!?」
時任リナ「兄妹は一緒に寝ないといけないとも聞いた」
時任ミナ「お姉ちゃん!?」
時任一樹「うおおお! やったあああ!!」
時任ミナ「すっかりその気になっちゃったけどどうするの!?」
時任リナ「私は”姉”だから除外認定を受ける。いえい」
時任ミナ「野獣を私一人に押し付けないで!」
時任一樹「姉も同じ条件だぞ?」
時任リナ「それなら仕方ない」
時任リナ「今日はこれで背中を流してあげる」
時任ミナ「後ろから撃つつもりだよねそれ!?」
時任リナ「痛いのは最初だけ」
時任一樹「何かエッチな響きだな!」
時任ミナ「君ってすごくおバカなんだね」
時任一樹「こんな美少女姉妹と同じ屋根の下で暮らせるなんて最高だぜ!」
時任リナ「アニメみたいな展開だから私も嬉しい」
時任ミナ「私もアニメ大好きだけどさ」
時任一樹「地球だと妹は兄と同じ部屋で暮らさないといけないからよろしくな」
時任ミナ「だから騙されないってば!」
時任リナ「兄の朝勃ちも妹が処理しないといけないと聞いた」
時任ミナ「それエッチな漫画だけの話だからね!?」
時任一樹「い、いや、そういうのは大人になってからじゃないと」
時任ミナ「そこはピュアなんだね」
時任リナ「これからよろしく、カズくん」
時任一樹「おう! リナ姉!」
時任ミナ「──私たちこれから大丈夫かな」