第4話「カーネリアの生涯」(脚本)
〇黒背景
近衛尊文「貴様といると、あの方は不幸になる」
近衛尊文「前世で貴様が犯した過ちを また繰り返すつもりか」
〇学生の一人部屋
大和要「俺といると、葵さんが不幸になる 尊文さんは確かにそう言った」
大和要「でも、それってどういうことなんだろう」
〇黒背景
姫野葵「私は私で、愛する人に先立たれた悲しみに 暮れる暇もないほど忙しく過ごして とても充実していました」
大和要「・・・幸せだった?」
姫野葵「ええ、とても」
〇学生の一人部屋
大和要「葵さんは幸せだったと そう言ってたじゃないか」
大和要「・・・やっぱり尊文さんの言葉には 納得できないよ。――よし」
大和要「やっぱりちゃんと、もう一度 尊文さんに話を聞きに行こう」
〇商業ビル
――1時間後
〇綺麗な会議室
近衛尊文「突然会社にまでやって来て いったい何の用だ」
大和要「急だったのは謝るよ。でも、尊文さんだってこの間いきなり学校まで来たじゃないか」
近衛尊文「ふん。そんなことより早く本題に入れ お気楽な学生と違って、私は暇ではない ――どうせ、葵さんのことだろう」
大和要「うん。この前の話 もっとちゃんと聞きたくて」
大和要「俺と一緒にいると 葵さんが不幸になるってどういうこと?」
近衛尊文「言葉通りの意味だ それ以上でもそれ以下でもない」
大和要「前世と同じ過ちって言ったよね」
大和要「確かに俺は早く死んでしまって、悲しい 思いをさせたし苦労をかけたかもしれない」
大和要「でも葵さんは、俺がいなくなった後も 充実した暮らしを送って、幸せだった と言っていた」
大和要「不幸なんかじゃなかったはずだ」
要の言葉を聞いた瞬間
尊文が激高して立ち上がる。
近衛尊文「貴様は・・・っ それを言葉通りに受け取ったのか?」
近衛尊文「だから貴様は間抜けだと言うのだ!」
大和要「なっ・・・じゃあ 葵さんが嘘をついてるって言うの?」
近衛尊文「はっ! 馬鹿もここまでくると 憐れみすら感じるな」
近衛尊文「いいか、あの方はお優しい方だ そして不本意だが、前世で想い合っていた 貴様を傷つけたくないとお考えなのだろう」
近衛尊文「だから、貴様には敢えて伏せているのだ 魔王が滅んでから、姫様がどのような 茨の道を歩まれたのかを!」
大和要「・・・どういうこと?」
近衛尊文「いいだろう、聞かせてやる」
近衛尊文「オニキス亡き後 姫様が受けた仕打ちをな・・・!」
尊文は痛ましい記憶を呼び起こすように
目を伏せ、とつとつと語り始めた。
〇闇の要塞
魔王とオニキスが相討ちとなった後
カーネリアはオニキスの遺志を継ぐため
人間と魔族の共存を唱えた。
〇西洋の城
しかし――・・・
〇謁見の間
カーネリア姫「光と闇は互いになくてはならないもの 共存する道はきっとあるはずです」
カーネリア姫「だから人間も魔族も種族の垣根を超えて 平等に生きていけば良いではありませんか」
カーネリア姫「なぜわかってくださらないのです お父様!」
スフェーン王「カーネリアよ、この世界の理・・・ 光の信教の教義を忘れたわけではあるまい」
スフェーン王「『闇の象徴である魔王が現れる時 光の象徴である勇者もまた現れる 闇と光が同時に存在することは――』」
カーネリア姫「『クリスタリアが滅びの道へ 進むことを意味する』」
カーネリア姫「もちろん知っています ですがお父様、それは違います」
カーネリア姫「その証拠にオニキスは旅した各地で 人も魔族も関係なく絆を結んできました」
カーネリア姫「魔族だって人間と変わらないのです 家族もいれば、心もある」
カーネリア姫「だから手を取り合えば、きっと──」
スフェーン王「もう良い! カーネリア お前をスフェーン王国から追放する」
カーネリア姫「っ、お父様・・・」
ベリル「王よ! それはあまりにっ・・・」
スフェーン王「本来なら、光の信教への 背教行為は極刑じゃ」
スフェーン王「だがお前は他でもないワシの娘じゃからな」
スフェーン王「今夜のうちに荷物をまとめ この城から出て行くが良い」
スフェーン王「命が惜しくば、二度と顔を見せるでないぞ」
カーネリア姫「・・・わかりました」
カーネリア姫「お父様、お元気で 今までのご恩は忘れません」
ベリル「姫様! お待ちください!」
スフェーン王「ベリルよ。カーネリアを追うならば そなたにも相応の覚悟をしてもらうぞ」
ベリル「・・・このベリル、覚悟の上にございます」
ベリル「カーネリア姫様のためならば 地の果てまでもお供する所存です」
スフェーン王「そうか。なら止めはすまい」
ベリル「は! 姫様は、このベリルが 生涯をかけてお守りいたします」
ベリルは王に向かって深く敬礼すると
カーネリアの後を追って走り出した。
〇綺麗な会議室
大和要「まさか・・・スフェーン王は 姫を溺愛していたじゃないか」
大和要「なのに追放だなんて、信じられない!」
近衛尊文「貴様が信じようと信じまいと、事実だ!」
近衛尊文「王は姫様を国外追放とし 姫様は王族の称号を剥奪された」
近衛尊文「その後姫様は、何の後ろ盾もないまま 各地の縁故の者たちに声をかけて 回られ・・・」
近衛尊文「その者たちの助けを借りながら、北の辺境地にフローラ共和国を建国なされたのだ」
近衛尊文「フローラ共和国は多様性を尊び 種族にかかわらずすべての者を受け入れ 後にクリスタリア随一の大国になった」
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