Ep.16 / THE RELENTLESS ENFORCER#3(脚本)
〇大会議室
御子柴勇馬「さて・・・何から話そうか」
父さんは窓の外に目をやり、街の中にそびえるゼニスのビルを睨んだ。
御子柴勇馬「連中がやってきたのは、5年前のことだ」
御子柴勇馬「財政破綻したこの街の行政と提携し、街の運営の支援をするという名目でな」
御子柴歩「でもそれは、嘘だった?」
御子柴勇馬「ああ。奴らの目的はこの街を牛耳り、ゼニスに都合の良い条例を制定」
御子柴勇馬「さらには国に圧力をかけて経済特区に指定させること」
御子柴勇馬「つまり、街を買い取ることだった」
御子柴歩「経済特区? 買い取る?」
御子柴勇馬「この街は、人道的に許されない犯罪まがいの研究や実験のしやすい街になったということだ」
御子柴勇馬「巧妙に隠蔽しているが」
〇殺人現場
ゼニス関係者の住む住宅地や、ゼニス関連施設のセキュリティは維持されているが、他の地域の治安は悪化
ゼニスのおこぼれにあずかろうという犯罪組織の温床になっている
〇大会議室
御子柴勇馬「だから父さんはゼニスの悪事の証拠を掴もうとしているんだ」
御子柴勇馬「証拠さえあれば、この街を取り戻すことができるはずだ」
御子柴歩「・・・僕にできることはない、よね」
御子柴勇馬「お前が大きくなったら、手伝ってもらおうか」
御子柴勇馬「だがその前に決着をつけるさ」
御子柴歩「でも、危険ですよね・・・」
御子柴勇馬「父さんは、危険と戦うのが仕事だからな。 大丈夫。正義の味方は負けないさ」
父さんは明るく笑うと「奇傑ゾロ」のようにサーベルを構えるまねをした。
でもその少しあと──
父さんは、殺された。
〇葬儀場
葬式の祭壇には、笑顔の父さんの遺影が飾られていた。
俺は何も考えられず、涙に霞む目で遺影を見つめることしかできなかった。
御子柴歩「・・・・・・」
弔問客の中から、聞き覚えのある声が聞こえた。
〇葬儀場
神保五郎「・・・勇馬さん、なんでこんなことに」
吉田毅士「交通事故だってな。道路に飛び出したって。 自殺だって話もあるが」
神保五郎「そんなこと、あるはずないです!」
吉田毅士「・・・だろうな」
吉田毅士「あいつずっとゼニ・・・連中のことを嗅ぎ回ってた」
吉田毅士「止めろと忠告はしたんだが」
神保五郎「連中の仕業、なんですかね」
吉田毅士「わからん。最近、あいつが犯罪の証拠を掴んだ、という噂はあったな」
神保五郎「ということは、つまり」
吉田毅士「状況だけなら真っ黒。 だが、捜査を進めても潰されるのがオチだ」
吉田毅士「上の方にも連中の圧力がかかっている」
吉田毅士「近々、連中は俺たちの飼い主になる予定だしな」
神保五郎「警察の民営化の話、ですか」
吉田毅士「ああ」
吉田毅士「表向きはゼニスが警察のスポンサーになるって話だが、要するに俺たちは連中の犬になるってことさ」
吉田毅士「国も連中に鼻薬嗅がされて、黙認って話だ」
神保五郎「・・・!」
吉田毅士「妙な気は起こすなよ。神保五郎巡査。 御子柴は無茶をしすぎた」
吉田毅士「言いたくはないが、自業自得だ」
神保五郎「それで、悔しくないんですか・・・!」
年配の刑事が神保刑事の胸ぐらを掴む。
吉田毅士「悔しいさ・・・! だが、俺たちに何ができる!?」
〇葬儀場
御子柴歩(父さん・・・父さんは殺されたの?)
御子柴歩(僕には何もできないの? 父さん・・・)
〇綺麗な一戸建て
〇書斎
その夜、俺は父さんの書斎に忍びこんだ。
御子柴歩「・・・・・・」
〇葬儀場
吉田毅士「最近、あいつが犯罪の証拠を掴んだ、という噂はあったな」
〇書斎
父さんの机の上にタブレットがあった。
手に取ると電源が入り、俺と父さんと母さんが笑っている写真が現れた。
御子柴歩「・・・AI。端末、起動」
写真が消え、ログイン画面に切り替わる。
そこには「Face(顔)」と「Voice(顔)」いう項目が表示されていた。
御子柴歩「顔認証と声紋認証?」
御子柴歩「まぁ、そうだよね・・・生体認証じゃ手も足も出ない、か」
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