第3話「騎士団長ベリル」(脚本)
〇学校の校舎
放課後、要は校門前で長身の男に
「オニキス」と声をかけられた。
大和要(俺がオニキスだって知っている・・・ この人、いったい誰なんだ?)
???「ふん、『こいつ、誰なんだ?』という 顔をしているな 感情が顔に出すぎだぞ、大和要」
大和要「!? なんで俺の名前を・・・」
近衛尊文「貴様の名を探るなど容易いことだ 私は近衛尊文という この顔に見覚えはないか、大和要」
大和要「・・・? そう言われてみると 確かにどこかで・・・」
大和要(面影はある。だけど、どこで会ったんだ? 思い出せない)
近衛尊文「ふん、相変わらずとぼけた奴だ そのめでたい頭の中は クリスタリアの頃と変わらんようだな」
大和要「クリスタリアの頃って・・・」
大和要「あっ」
〇西洋の城
???「くどい! 何度も言わせるな。貴様にこの門を通させるわけにはいかぬぞ、オニキス!」
オニキス「そんな固いこと言わないでよ 俺は姫と片時も離れたくないだけなんだ」
???「笑止! 貴様が魔王城に行くのを止める理由はない」
???「だが、姫様は置いていけ! 危険に晒すだけだとわからぬか!」
オニキス「大丈夫だよ、ベニスさん。俺が、姫には 傷ひとつつけさせないから――・・・」
ベリル「貴様っ、とぼけたことをぬかしおって」
ベリル「私を愚弄するか! 私の名はベリル スフェーン王国騎士団長のベリルだ!」
〇学校の校舎
大和要「――もしかして、ベニスさん?」
近衛尊文「ベリルだ、馬鹿者! 貴様は転生しても私を愚弄する気か!」
大和要「ごめんごめん、冗談。ベリルさんだよね」
大和要(騎士団長のベリルさん カーネリア姫直属の騎士で とにかく姫に心酔していた人だ)
大和要(だから俺は嫌われてたっけ)
姫野葵「尊文さん!」
近衛尊文「っ、葵さん!」
大和要「え・・・」
葵の姿を見た尊文は、先ほどまできりきりと釣り上げていた眉を下げ、ふにゃりと表情を緩ませる。
近衛尊文「葵さん、どうしてここに?」
姫野葵「どうしてじゃありませんよ あなたが要くんのところへ来ていると 知って、飛んできたんじゃないですか」
大和要「ちょ、ちょっと待って 2人は今世でも知り合いなの?」
姫野葵「要くん、驚かせてしまってごめんなさい 尊文さんのこと、ちゃんと説明しますね」
姫野葵「ただここは少し目立つし 要くんにも都合が悪いと思うので」
姫野葵「場所を変えましょう 2人とも、私の車に乗って」
近衛尊文「葵さん、私が運転しましょうか」
姫野葵「いいえ、大丈夫です」
大和要(この2人の今の関係性はわからないけど 基本的には昔と変わらないみたいだな)
〇レトロ喫茶
姫野葵「改めて・・・要くん、いきなりでびっくりしましたよね。本当にごめんなさい」
姫野葵「もうわかっていると思うけど、尊文さんは前世で私の騎士をしていたベリルです」
姫野葵「そして今は、出版社の編集者として 私を担当してくれています」
大和要「編集者・・・そうだったんだ」
近衛尊文「左様。前世でも、そして今世でも、私は 姫様――葵さんをそばでお支えする立場に ある、というわけだ」
大和要「うん、それはわかったよ。でも、出版社の編集者がどうしていきなり学校まで押しかけてきたの? それに、俺の名前も」
姫野葵「それは・・・」
近衛尊文「昨日、私も握手会の会場にいたのだ 控室で葵さんの帰りを待っていたのだが あれだけ騒ぎになれば耳に入ってくる」
近衛尊文「勇敢な学生がひったくり犯に飛びかかった」
近衛尊文「怪我をした彼を、ベストセラー作家の 姫野葵が介抱したそうだ、とな」
大和要「・・・・・・」
近衛尊文「葵さんはお優しい方だ たとえ赤の他人でも、目の前で怪我をした 人間を放ってはおけぬだろう」
近衛尊文「だが私は違和感を抱いた」
近衛尊文「いくら葵さんでも、見ず知らずの人間に 付き添って医務室まで行くだろうか? しかも目が覚めるまで、何時間も」
近衛尊文「・・・待機していた私を 先に帰らせてまで、な」
近衛尊文「これは何かあると 騎士の勘でピンときたのだ」
大和要(もう騎士じゃないのに・・・)
近衛尊文「貴様を診察した医師に話を聞いてな 持ち物の中に学生証があったから 名前も高校もすぐに判明したそうだ」
大和要「そんな話 なんで医者がペラペラ喋るんだ?」
近衛尊文「姫野先生の担当編集だと名乗ったら 簡単に教えてもらえたぞ?」
近衛尊文「貴様は未成年だからな 万一のことがあった場合親御さんに連絡を とひとこと言えばいいだけのことだった」
大和要(俺の個人情報・・・っ!)
姫野葵「はあ・・・ 尊文さん、それはやりすぎですよ」
姫野葵「要くん、ごめんなさいね」
大和要「いえ、葵さんのせいじゃないし それに俺は全然構わないよ」
大和要「だって俺、こうしてまたベリルさんに 会えて嬉しいから」
近衛尊文「嬉しい、だと?」
大和要「うん。だって、前世で親しくしていた人とまた再会できるなんて、嬉しいことじゃないか」
近衛尊文「私は貴様と親しかった覚えはない!」
近衛尊文「むしろ危険な場所へ姫様を連れ回す 貴様のことを憎らしいとすら思っていたぞ」
大和要「まあまあ、もう昔のことじゃない 水に流そうよ」
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