ひめおと~ 姫が男に転生しても勇者の愛は変わらないのか?~

イトウアユム・いわさきなおみ

第2話「再会」(脚本)

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〇ショッピングモールの一階
大和要(姫野葵さんが、男? カーネリア姫じゃないのか?)
大和要(いや、でもまさかそんな)
姫野葵「あの・・・?」
  目の前の男性――姫野葵に差し出された
  大きな手を、要はしばし呆然と見つめる。
大和要「カーネリア・・・?」
姫野葵「まさか、オニキス・・・!?」
大和要「! やっぱり、あなたが・・・」
大和要(カーネリア姫が 男に転生していたなんて・・・!)
  要の瞳の奥に微かな落胆の色が浮かんだ
  のを、葵は見逃さなかった。
姫野葵「・・・ええ」
姫野葵「ぼ――私がカーネリアの生まれ変わり 姫野葵です」
姫野葵「・・・驚いたでしょう?」
大和要「あ・・・いや」
姫野葵「いいんです。私自身、記憶が 戻ったときには驚きました」
姫野葵「まさか私が男性に転生してしまう なんて・・・と」
姫野葵「それならオニキスが女性になっているかも と少し期待していたのですが」
姫野葵「ふふ、そううまくはいきませんね」
大和要「・・・なんだか、ごめん」
姫野葵「いえ、いいんです」
女性「きゃああっ! ひったくりよ!」
大和要「!」
姫野葵「っ、オニキス・・・」
大和要「おい待てっ! このっ・・・!」
ひったくり犯「うわっ! こいつっ、なんだ・・・離せ!」
大和要「このバッグ! あの女の人に返せって・・・ 逃げるな!」
ひったくり犯「くそっ、うるせーガキだな! このっ・・・!」
大和要「うわっ!」
ひったくり犯「うおっ、くっそ・・・離せよ!」
ひったくり犯「ちくしょう あのガキが邪魔しなければ・・・!」
大和要(犯人はちゃんと捕まったみたいだな 良かった)
大和要(それにしても、なんだか気が、遠く・・・)
姫野葵「オニキス! 大丈夫ですか、オニキス!」
大和要(カーネリア・・・ せっかく、会えたのに・・・ どうして、男になんて・・・)

〇警察署の医務室
大和要「・・・ここは?」
姫野葵「ショッピングモールの医務室ですよ 気分はどうです?」
大和要「! 姫野さん・・・なんで」
姫野葵「あなた、ひったくり犯に体を吹き飛ばされて、その衝撃で気を失ってしまったんです」
姫野葵「医者は、軽い脳しんとうじゃないかって」
大和要「そっか あの時は無我夢中だったから・・・」
大和要「ずっと看病してくれたの?」
姫野葵「はい。・・・迷惑でしたか?」
大和要「まさか!」
大和要「・・・あれくらいで気を失うなんて 俺、かっこ悪いよね。ごめん」
姫野葵「いいえ。颯爽と悪に立ち向かっていく姿 昔と変わらず、格好良かったですよ」
大和要「・・・! そ、そう、かな。ありがとう」
姫野葵「ええ。ところで、オニキス」
大和要「あ、それだけど・・・ 今は、大和要っていうんだ」
姫野葵「そうですか、大和要さん・・・クリスタリアのことは、どれくらい覚えていますか?」
大和要「死ぬまでの記憶は、一通り。でもその後のことはわからない。どうなったの?」
姫野葵「あの後・・・魔王が滅んだ後 クリスタリアに平和が戻りました」
姫野葵「人間も魔族も皆平等 あなたが望んだ世界になったのです」
姫野葵「私は私で、愛する人に先立たれた悲しみに 暮れる暇もないほど忙しく過ごして とても充実していました」
大和要「・・・幸せだった?」
姫野葵「ええ、とても」
姫野葵「オニキスと最後に交わした約束が ずっと私の支えになってくれましたから」

〇闇の要塞
オニキス「ありがとう、姫・・・」
オニキス「俺は生まれ変わっても 必ずあなたを探しあてる」
オニキス「今度は平和な世界で共に結ばれよう」
オニキス「だからそれまで、待っていて、くれ──」

〇警察署の医務室
大和要「・・・・・・」
姫野葵「・・せっかくこうして、平和な世界でまた オニキス、大和さんに巡り会えたけれど」
姫野葵「私はこのように男性になってしまいました」
姫野葵「だから、前世の約束は忘れてください 私にもう会いたくないと言うなら それでも構いません」
大和要「え・・・?」
姫野葵「大和要さん、今日は私に会いに来てくれて ありがとう」
姫野葵「――そして、さようなら」
大和要「待って」
  出て行こうとする葵の腕を
  要がとっさに掴む。
姫野葵「大和さん・・・?」
大和要「正直、まだ混乱してる。でもこれで ハイさよならにはしたくないんだ」
大和要「・・・また、会えるよね?」
姫野葵「・・・いいんですか?」
大和要「うん。それとさ、呼び方 さん付けじゃなくていいよ 今は俺、年下なんだし」
姫野葵「そうですか? じゃあ、要くん」
大和要「うん。・・・葵さん」
姫野葵「・・・はい。よろしくお願いしますね」
  ぎこちないながらも2人は
  視線を合わせ握手を交わした。

〇教室
大和要「おはよー・・・」
黒須雫「キタキタキタキタキター! か・な・めクンッ! チーッス!」
江西紫「雫、興奮しすぎだ。うるさいぞ」
江西紫「――要、どうだったんだ? 昨日は」
大和要「え? あ、ああ・・・いや、それが 握手会には間に合わなかったんだ」
黒須雫「エッ、マジかよ! じゃあ姫野サンには会えなかったワケ?」
大和要「いや、うーんと 会えたには会えたんだけど」
江西紫「前世の話は? やはり彼女がカーネリア姫だったのか?」
大和要「それが・・・ なんて言えばいいのかな・・・」
大和要(まさか、カーネリア姫が男になってた なんて言えないよ)
江西紫「なんだ、ずいぶんと歯切れが悪いな」
黒須雫「・・・要、わかった」
黒須雫「わかったぜ! もうこれ以上聞くのは 野暮ってモンだよなぁ!」
大和要「えっ?」
黒須雫「いいんだぜ、つらいことはパーッと泣いて パーッと忘れちまえば! オレの胸ならいつでも貸すからよォ!」
江西紫「そういうことか・・・ま、初恋は 実らないものだと相場は決まっている」
江西紫「要、あまり気を落とすんじゃないぞ」
大和要「え、ええっ? いや、そういうことじゃ・・・」
大和要(2人とも、他人事だと思って 勝手に盛り上がって・・・)
大和要(でも、似たようなものかもしれないな)
大和要(葵さんが男だったってことは、つまり 俺たちは今世でも結ばれることはない ってことだもんな。失恋したのと同じか)
  勝手に盛り上がる2人に背を向け
  要はぼんやりと窓の外を眺めていた。

〇学校の校舎
大和要(今日も疲れたな。昨日、ひったくりに投げられたときの体の痛みもまだ残ってるし 今日は早く帰って休も──)
???「おい、貴様」
大和要「えっ?」
大和要「・・・俺ですか?」
???「他に誰がいる 貴様の目は節穴か、オニキスよ」
大和要「!」
大和要(俺がオニキスだって知っている・・・ この人、いったい誰なんだ?)

次のエピソード:第3話「騎士団長ベリル」

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