読切(脚本)
〇山中の川
「なあなあなあ菖蒲〜」
村雨「どうだった どうだった 100年ぶりの俺はぁ?」
妖刀村雨(むらさめ)
妖刀村正によって造られた刀
将来の夢は菖蒲と夫婦になる事
菖蒲「・・・」
菖蒲「なんか 煩かった」
「なんか 煩かった!?」
妖刀菖蒲(あやめ)
妖刀村正によって造られた刀
人間の男に憑依しては呪い殺す
村雨「前から思ってたけど」
村雨「お前 本当に淡白だよな」
菖蒲「・・・」
菖蒲「そんなことないよ」
菖蒲「好いた男が相手だったなら 私だって」
「てめwww このっwww この野郎www」
村雨「なあ 菖蒲」
村雨「本当に 村正を殺す気なのか」
これは 村正との決戦の前夜のお話
村雨「分かってると思うけど」
村雨「お前は 村正に憑依された自分の旦那を 失うことになるかもしれないんだぞ」
菖蒲「・・・」
菖蒲「それより 私の頼んだ通りに動いておくれよ」
村雨「もう一度よく考えなお・・・」
菖蒲「村雨 頼んだよ」
村雨「わわっ」
ナデナデ
村雨「ななな」
ナデナデ
村雨「何 すんだよ」
ナデナデ
村雨「・・・」
ナデナデ
菖蒲「どうした 好きだろう」
ナデナデ
村雨「いや もう子供じゃねえんだぞ」
菖蒲「ほう」
ナデナデ
村雨「ん〜」
ナデナデ
村雨「分かってるよ 俺が村正の刀を折れば良いんだろ」
菖蒲「そうだ」
菖蒲「頼りにしているよ」
村雨「・・・」
村雨「全く 菖蒲は 我儘だな」
ナデナデ
村雨「ぐう」
菖蒲「おやすみ」
菖蒲「・・・」
菖蒲「私だって お前が嫌いなわけじゃないよ むしろ愛しているさ しかし」
菖蒲「お前を男として 愛そうとすると」
菖蒲「それだけは駄目だと 思ってしまうんだ」
菖蒲「何故だろうね」
「うぅ 菖蒲ぇ」
ナデナデ
えさん...さん...
〇黒背景
「姉さん姉さん」
少年「姉さん 沢山新鮮な野菜が採れたよ」
菖蒲「ありがとね 美味しそうだねえ」
少年「へへ へへ」
菖蒲「ん」
ナデナデ
少年「わ わ 姉さんてば」
少年「やめてくれ 俺はもう童じゃない」
菖蒲「ん ふふ ごめんね つい」
ナデナデ
ナデナデ
ナデナデ
少年「むぅ」
「菖蒲」
菖蒲「ああ 分かってる」
菖蒲「じゃあね 行かないと」
少年「もう行っちゃうの」
菖蒲「仕事だからさ」
少年「うん」
刀鍛冶の男「いつも 新鮮な野菜ありがとな」
少年「うん!また持っていくよ」
刀鍛冶の男「楽しみにしておくよ」
〇黒背景
少年「姉さん 忘れ物をしている」
少年「今から行くとつくのは夜か しかし仕様がない」
少年「俺はなんて出来る弟なんだ」
〇古民家の居間
少年「姉さん 誰もいないの」
少年(あれ 中から声が聞こえる)
「あっ あぁっ ・・・さん」
「菖蒲 菖蒲 んぅう」
少年「・・・」
「・・・ッ!!」
「・・・!!・・・!!」
少年「・・・」
「そこに 誰かいるの」
姉さんを
女として好いていたわけじゃない
菖蒲「あらこれは」
只 小さい頃から知っている姉さんが
刀鍛冶の男「菖蒲 どうかしたか」
菖蒲「弟が来たんだわ」
見たこともない 女 になった気がして
刀鍛冶の男「なあ 菖蒲」
刀鍛冶の男「この間は少し待って欲しいと言ったが 夫婦になろうか 俺達」
菖蒲「えっ」
菖蒲「名刀を作るまでは一人でいるって」
刀鍛冶の男「そう言って 菖蒲を待たせてしまってたんだな」
刀鍛冶の男「すまない」
刀鍛冶の男「まずは 傍にいてくれる人を 大事にしないとな」
刀鍛冶の男「その家族も」
針を 飲まされた 心持ちになった
菖蒲「うん」
〇古民家の居間
「おめでとう」
「めでたいね」
程無くして 姉さんはあの男と
祝言を上げた
刀鍛冶の男「よお」
少年「・・・」
刀鍛冶の男「悪いな お前の姉さんとっちまって」
少年「・・・」
刀鍛冶の男「なあ」
刀鍛冶の男「必ず幸せにするから」
刀鍛冶の男「絶対に売れる刀鍛冶になってみせる」
少年「・・・もし」
少年「もし 叶わなかったら?」
刀鍛冶の男「俺の作った作品で 俺を殺してくれ!!」
少年「・・・ふ」
少年「大袈裟だなあ 義兄さん」
義兄さんなら
姉さんを任せられると思った
でも その日 は突然訪れた
〇原っぱ
〇森の中
〇村に続くトンネル
〇寂れた村
少年(また刀を作ってる)
〇血しぶき
少年「おお〜い 久しぶり 野菜持ってきたよ」
少年「義兄さん?」
少年「うっ なんだこの臭い!?」
少年「いっ」
部屋一面は 血の海だった
「其処にいるのは誰だ」
村正「ああ お前は菖蒲の」
村正「喜べ お前のつまらん姉さんはなぁ」
村正「こうやって美しく生まれ変わった」
駄目だ 来るな
少年「姉さん?」
少年「姉さんに 何をしたんだ」
村正「俺の作品になってもらったんだ これは祝言を挙げた時より喜ばしいことだ」
少年「こ この」
少年「人殺し 人殺しい」
少年「よくも大事な姉さんを よくも俺の姉さんを」
村正「ああ お前そうか ははは」
村正「自分の姉を本気で愛していたもんな」
村正「大事な姉を この男にとられた時の気分はどうだった」
村正「俺はこの女と 何度も身体を交えたぞ」
少年「お前 誰なんだよ」
少年「義兄さんじゃないな お前は」
村正「はは」
村正「お前 良いなあ」
村正「器に丁度いい」
少年「何のことだよ」
村正「いいなあお前 いいなあ、 菖蒲が一人で寂しそうだったから」
村正「お前 丁度いいなあ」
逃げろ!お前も殺されるぞ!
少年(姉さん!?)
村正「あああー!」
村正「菖蒲が人を斬ったのはお前が初めて」
村正「初めて、だなあ」
村正「嬉しいだろう」
村正「斬られて嬉しいだろう」
村正「ははは」
村正「はは」
村正「お前はこの先永遠に」
村正「菖蒲を愛し続ける」
村正「しかし 菖蒲は絶対に手に入らない」
村正「それでもお前は愛し続ける 美しいだろ? なあ」
村正「村雨」
菖蒲を 近くに感じると
俺はこの 少年の夢を繰り返し見る
だだ ただ 憐れだと
そう思う
〇花模様
菖蒲(嫁)「村雨♡」
村雨「おう おおっ 吃驚したぁ」
村雨「なんだ 菖蒲 お前なんか変じゃね」
菖蒲(嫁)「変? どこかだ♡」
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なんというか、この作品に出てくる男連中は勝手な人が多いですね。共通して自己中心的だし、自身の欲望に呑まれるし。
しかし弟だったとは意外でした。いつか思い出すのかな、思い出したらどうなるのかなと考えてしまいました。
コメディ+昼ドラといった具合が新鮮です。いびつな愛情が独り歩きして凄惨な事態となっても、それが吹っ飛ぶほどのシーン切り替わりを描けるのはさすがです!
「雨夜の月 菖蒲刀短篇」は、ホラーの要素を含んだ素晴らしい作品でした!菖蒲と村雨の関係性や、村雨がどのように刀になったのかが描かれていて、とても興味深かったです。ストーリーは短編ながらも十分に楽しむことができました。性描写や暴力シーンもあるとのことですが、緊迫感やドキドキ感を味わうことができました。また、菖蒲と村雨の関係に共感する部分もあり、心を揺さぶられる感じがしました。この作品はホラージャンルなので、怖い場面やシーンもありましたが、それが作品の魅力となっていました。短いながらも一気に読ませるストーリー展開で、読後感も満足感がありました。ホラーが好きな方には特におすすめの作品です!