〇睡蓮の花園
シェリル「この動画、とてもユニークだと思うの」
シェリル「私だけが見るのは勿体ないくらいに」
サリア「や、やめろ」
シェリル「特にここの──」

〇ハート
サリア「アアアアアアアアアッー！」
サリア「イグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」

〇睡蓮の花園
シェリル「爆発するところとか、花火なんかよりもずっと見応えあると思うわ」
サリア「や・・・やめ」
シェリル「私だけがこの景観を堪能するのは皆に悪いから、お裾分けということで──」

〇SNSの画面
シェリル「全世界に拡散しようと思うの」
サリア「いいいいいッ・・・！」
シェリル「あら、貴方にも人並みの羞恥心があるのね」
シェリル「でもそうよね」
シェリル「気高き吸血鬼である貴方が」
シェリル「人間共の前で、雌豚のような痴態を晒してしまうなんて」
シェリル「耐えられないわよね」
サリア「め、めすぶた・・・」
シェリル「安心して、目線はちゃんと入ってるから」
シェリル「見えちゃいけないとこにもモザイクはかけるわ」
サリア「ふっ・・・ふ・・・」
サリア「ふざけんなよ・・・あまり調子乗ってると」
シェリル「『100万回抜きました』」
シェリル「『こんな可愛い子が・・・うっ』」
シェリル「『目隠し外して、おじさんにお目目見せてほしいナ（^_^）』」
シェリル「『喘ぎ声やばｗ　甲子園のサイレンじゃん』」
シェリル「『まるで狼の遠吠えだな。満月の夜に獣と化すと言うが・・・』」
シェリル「『なんか草』」
シェリル「『最後の爆発何？　CG？』」
シェリル「『絶頂でしょ』」
シェリル「『イキスギにも程がある』」
サリア「やめろおおおおおおッ！」
シェリル「人間たちは面白がって、貴方を素材にしたMAD動画を作るでしょうね」
シェリル「毎年夏になると「イグゥゥの人合作」が世を賑わし、男子中学生たちが貴方のモノマネをしながら下校するの」
シェリル「ナヅキィィィィ！のイギィィィィ！ 気持ち良すぎだろ！」
サリア「やめろっつってんだろおおお！」
シェリル「そして時は流れ──」

〇地球
シェリル「貴方は伝説となる」
サリア「ひっ」
シェリル「貴方の痴態は時を超え、人々に語り継がれる」
シェリル「一生ネットのおもちゃ・・・いいえ」
シェリル「永遠にネットの宝物よ」
シェリル「一生どころじゃないわ、永遠なの」
サリア「永遠・・・」
シェリル「貴方が寄り添いたかった「永遠」よ」
シェリル「貴方の痴態は永遠にネットの海を彷徨い、それは決して滅びることはない」
サリア「あは・・・」
シェリル「花火は一瞬だけれど、貴方の爆発は永遠」
シェリル「ずっと消えることのない無限の煌めき」
シェリル「永遠にイキ続ける女として人類史に名を刻むの」
シェリル「それはきっと──」

〇花模様2
　　吸血鬼なんかより、よっぽど不老不死
　　永遠に枯れない花、それが貴方

〇睡蓮の花園
シェリル「たとえこの勝負に勝っても、貴方は残りの寿命を「イグゥゥの人」として生きるしかない」
シェリル「人の前に姿を現せば、「あ、イグゥゥの人だ！」と指をさされ、その目撃情報は様々な憶測を呼ぶでしょう」
シェリル「『イグゥゥの人、吸血鬼説』と、真実に辿り着く人も現れるかもしれないわね」
シェリル「他の吸血鬼からも、一族の恥だと罵られる」
シェリル「どんなに気高く振る舞っても・・・ 皆の中で貴方はイグゥゥゥゥ！の人」
シェリル「恥ずかしい。恥ずかしいのに死ねない」
シェリル「死んでも動画は残る」
シェリル「私の指先ひとつで、貴方の人生・・・」
シェリル「いえ、魂の尊厳は破壊されてしまう」
サリア「やめて」
サリア「・・・」
サリア「ねえ、やめて？」

〇SNSの画面
シェリル「どうしようかな」
　　やめて・・・
シェリル「あっ」
　　えっ
シェリル「手が滑った」
　　は・・・？
シェリル「投稿しちゃった・・・♡」
　　は・・・は・・・

〇睡蓮の花園
サリア「は・・・は・・・」
シェリル「わっ、すごい！」
シェリル「もう100RTもされてる」
シェリル「このまま行けば・・・」
サリア「消して・・・」
サリア「お願いだから消して・・・」
シェリル「・・・」
サリア「お願いします・・・消してください」
シェリル「あっ、コメント来てる」
シェリル「えーと、なになに」
シェリル「・・・」
サリア「もうやだよ・・・」
サリア「なんで・・・？」
サリア「なんでそんな、酷いことができるの」
シェリル「なんでって・・・」

〇黒
　　それが「勝負」だからに
　　決まってるじゃない

〇睡蓮の花園
サリア「あ・・・あ・・・」
ベアル「サリア様からシェリル様に「40年」渡りました」
ベアル「サリア様からシェリル様に「60年」渡りました」
ベアル「サリア様からシェリル様に「50年」渡りました」
シェリル「貴方はただ、寿命を賭けたつもりなのかもしれないけど・・・」
シェリル「命以上のものを賭けないと、命のやり取りってできないのよ？」
ベアル「サリア様からシェリル様に「70年」渡りました」
サリア「降参します」
サリア「動画、消してください」
ベアル「降参を受理しました」
ベアル「このゲームの収支を発表します」
　　シェリル様　＋960年
　　サリア様　－960年
ベアル「──以上で本日のゲームを終了します」
ベアル「お疲れ様でした」
サリア「消して」
シェリル「貴方、可愛いわね」
シェリル「文香さんもそう思わない？」
土田 文香「あっ」
土田 文香「覗いてたのバレてた・・・」
シェリル「あの子、中々「推せる」と思うのだけど」
シェリル「文香さん的に、どう？」
土田 文香「えーと・・・」