〇黒
フニク　エマメ「＂コードゼロ＂、聞こえるかメ？」
コードゼロと呼ばれた者「──」
コードゼロと呼ばれた者「──瓶（かめ）？」
フニク　エマメ「ふざけている場合ではない！」
フニク　エマメ「全く、オーレンジといいアンタといい‥」
フニク　エマメ「今は緊急事態だ 用件は解っている筈だよな？」
コードゼロと呼ばれた者「ああ」
コードゼロと呼ばれた者「お前こそ、オレが必要だという事の意味を‥」
コードゼロと呼ばれた者「ちゃんと解って、物言っているんだろうな？」
フニク　エマメ「・・・」
フニク　エマメ「承知の上だメ」
コードゼロと呼ばれた者「交渉成立だ」
コードゼロと呼ばれた者「返してもらうぞ？ ──オレのオリジナルを」
フニク　エマメ「──ああ」
コードゼロと呼ばれた者「んじゃ、分（ふん）で準備してくるから」
フニク　エマメ「ミニット（minute）かよ！」
コードゼロと呼ばれた者「現実的だろう？ ──また後でな」
コードゼロと呼ばれた者「あー早く娘達に会いたい」
コードゼロと呼ばれた者「エマメ」
コードゼロと呼ばれた者「声が聞けて嬉しかったぞ」
フニク　エマメ（小生は、アンタを‥）
フニク　エマメ（認める訳にはいかない）
フニク　エマメ（認めてしまえば──）
フニク　エマメ（あの人の死を＂認めた事になる＂から）

〇魔物の巣窟
フニク　アズキ「それじゃあ、手筈通りに頼んだよ」
らでぃっしゅ様「任せてくださいよ〜！」
らでぃっしゅ様「マスターを演じる事が出来る野菜は このボクしかいないのだから」
フニク　アズキ「なんだか心配だなあ〜」
フニク　アズキ「この役割、キミだけが頼りだから」
フニク　アズキ「らでぃ、任せたよ！」
らでぃっしゅ様「マスターに愛称で呼ばれちゃった‥」
らでぃっしゅ様「これが──『愛』!?」
フニク　アズキ「ちゃうわ！」
らでぃっしゅ様「でもマスター？」
らでぃっしゅ様「失敗、しないよね？」
フニク　アズキ「らでぃ‥」
フニク　アズキ「──大丈夫」
フニク　アズキ「ママみたいには、ならないから」

〇池袋西口公園
研究員ぞんび「ぞびった!?（撃たれた!?）」
ぞび太「び、ぞんだ？（え、呼んだ？）」
のぞびちゃん「びびえ（いいえ）」
ぞび太「ぞ　び　か　な‥（よいかな‥）」
のぞびちゃん「びびね‥（イイネ‥）」

〇テクスチャ
オーレンジ「うさってぇ！ なかなか当たらないうさー！」
フニク　エマメ「バカ兎メ！ 乱射してムダ撃ちする奴があるか！」
ナンパぞんび「ヤア　ソコノ　カーノジョ」
ナンパぞんび「コンヤ　ボクト　ゾ飯デモ──」
オーレンジ「だってぇ！ この注射器重たいんだうさ〜！」
オーレンジ「ひとつ持つだけでも、すっごい重いのに‥」
パンデミック・キャメラマン「ぞーい、ぞびってぇ？」
オーレンジ「こ、こぅうさ？」
パンデミック・キャメラマン「ぞん、びゅーてぃふぉーう！」
フニク　エマメ「じゃあなんで二丁にしたんだメ？」
オーレンジ「効率アップの為うさ！」
フニク　エマメ「ダウンしとるじゃないかメ！」

〇炎
オーレンジ「う　ぴ　ゃ　あ　っ　！　！」

〇壁
フニク　アズキ「泣き止みたまえオーレンジ！ 一体何が起こった──」
「あら？ こんな所に泣き兎がいらっしゃいますミ」

〇池袋西口公園
レイチ「ごきげんよう、我が妹」
レイチ「残るは──この壁の向こう側ですミね？」
レイチ「ふふっ♪ もう一度爆破したら壊せそうですミ！」

〇壁
オーレンジ「ダメうさ！」
オーレンジ「たとえレイチ姉ぇでも、 この先には行かせないうさ！」
　　ライチ爆弾（ボム）──
　　ここまでの威力とはな‥

〇巨大ドーム
フニク　エマメ「レイチよ 今はワクチンを提供中だ」
フニク　エマメ「出来れば配り終えるまで 待っていてほしいメ」
セコイ　コウカツ「オイオイ、エマメさんよお！ 本当に大丈夫なんだろうなあ？」
セコイ　コウカツ「──俺にも寄越せ！」
フニク　エマメ「それは‥」
フニク　エマメ（まあ、いいメ）
フニク　エマメ「何がだ？」
セコイ　コウカツ「タメ口!? 相変わらず無愛想だなあ！」
セコイ　コウカツ「お前さんが設計した防壁システムの事だよ！」
セコイ　コウカツ「当然、突破なんかされないだろうな!?」
フニク　エマメ「このままだと破られそうだメぇ」
セコイ　コウカツ「『破られそうだメぇ』じゃねぇ!! なんとかしろよ!?」
フニク　エマメ「だから防壁作動を機に 女性区にワクチンを提供してるだろうが!!」
セコイ　コウカツ「逆ギレッ!?」
フニク　エマメ「そもそも貴様の為にやっている訳ではない」
セコイ　コウカツ（き、『貴様』だと!? この俺に!?）
フニク　エマメ「人類の‥」
フニク　エマメ「シェルター民の為にやっているんだ」

〇池袋西口公園
レイチ「『はいそうですミ』と‥」
レイチ「そうは問屋（とんや）が 卸（おろ）さないですミよ！」
モノクル「てぃるてぃる〜 （マスターからの通信だぜ〜）」
レイチ（いよいよですミね‥）
レイチ「ふふふ♪」
レイチ「皆様、モニターをご覧くださいまし！」
レイチ「我が主（あるじ）による ありがた〜いお告げの始まりですミよ！」
モノクル「てぃるる〜だいこん！ （正確には〜大根だけどな！）」
レイチ「だいこん!?」

〇魔物の巣窟
らでぃっしゅ様「シェルター民の諸君！ ごきげんいかがかな？」
らでぃっしゅ様「ボクの事、覚えているかい？」
「知らねーよ　　　　　　　誰だよオメー」
らでぃっしゅ様「まあ犯罪者の事なんて 知りたくもないのは当然だよね」
らでぃっしゅ様「──＂フニク アズキ＂ この名前に聞き覚えがあるだろう？」
らでぃっしゅ様「ボクは彼女の代弁者 ──＂らでぃっしゅ様＂さ！」
らでぃっしゅ様「あ、ボクの名前を呼ぶ時は ちゃんと＂様（さま）＂を付けるんだぞ？」
らでぃっしゅ様「ココ重要！ テストに出るよー？ よーく復習しておくように！」
「出ねえよー　　　　　　　大根がよー」

〇巨大ドーム
セコイ　コウカツ「何だあの大根はァ？ 着ぐるみかァ？」
フニク　エマメ（アズキ── あんなモノまで生み出すとは‥）
フニク　エマメ（成長したメ‥妹よ）

〇池袋西口公園
オーレンジ「にんじんがしゃべってるうさ〜！ カワイイー♪」
オーレンジ「タ　ベ　テ　ミ　タ　イ　ナ　ア〜」
レイチ「声がゾンビになってますミ‥」

〇魔物の巣窟
らでぃっしゅ様「ふふふ‥ 画面越しから聞こえてくるよ」
らでぃっしゅ様「『あの、天才科学者姉妹の妹!?』」
らでぃっしゅ様「我らの救世主が生きているんだ！ うわあああっ!!」
らでぃっしゅ様「んいっ！」
らでぃっしゅ様「──そんな風に思ってくれてたなんて ボク、とっても嬉しいよ」
「『んい』って何だよー　擦り下ろしたろかー」
らでぃっしゅ様「でもそんな事、微塵も思ってないよね？」
らでぃっしゅ様「だってキミたちは ボクを犯罪者に仕立て上げたんだから」
らでぃっしゅ様「そう──」
らでぃっしゅ様「そ　こ　に　居　る 　　　男　の　所　為　で　ね　！　！」

〇巨大ドーム
セコイ　コウカツ「誰の事だア〜？」
フニク　エマメ「貴様の事だろうがっ！」
セコイ　コウカツ「え、俺っ!?」
フニク　エマメ（コイツ──ッ!!）

〇魔物の巣窟
らでぃっしゅ様「セコイ コウカツ──オマエの所為で！」
らでぃっしゅ様「オマエの身勝手で‥！」
らでぃっしゅ様「一体どれだけの人々がっ！」
らでぃっしゅ様「傷付き‥！」
らでぃっしゅ様「絶望し‥！」
らでぃっしゅ様「犠牲になったと思ってるんだーーーっ!!」
らでぃっしゅ様「ふーっ！ ふーっ！」
らでぃっしゅ様「（スン‥）」
らでぃっしゅ様「だから救いたいんだ」
らでぃっしゅ様「ゾンビビーンのチカラで‥」

〇新緑
　　人類を
　　地上の緑を
　　生きとし生けるもの全てを

〇黒背景

〇池袋西口公園
らでぃっしゅ様「レイチ──やれ」
レイチ「了解ですミ〜♪」
レイチ（大根に命令されるのは癪（しゃく）ですミね‥）

〇壁
オーレンジ「もうやめてうさ！」
オーレンジ「これ以上みんなを──」
オーレンジ「ぞ　ん　び　に　し　な　い　で　え　！」

〇白

〇巨大ドーム
セコイ　コウカツ「防壁が‥！」
フニク　エマメ（やはり破られたか‥）
セコイ　コウカツ「特殊部隊、迎撃しろ!!」

〇白
コーちゃん「──ヒサシブリ　ダナ」
コーちゃん「オマエタチ」

〇巨大ドーム
特殊部隊「沿螺手隊長‥」
特殊部隊「ウソだ──貴方は殉職したはず‥」
セコイ　コウカツ「貴様‥死体が無いと思えば 成程そういう事か‥！」
セコイ　コウカツ「やはりあの女は悪魔だな！ ゾンビを増やして人類を滅ぼすつもりだ！」
コーちゃん「ソレ以上　アズキ　ヲ 侮辱スルノハ　ヤメテモラオウカ！」
コーちゃん「貴様　ニ　撃タレタ　傷‥」
コーちゃん「思イ出ス　度　ニ　痛ム‥！」
コーちゃん「オレ　ハ　誓ッタンダ！」
コーちゃん「貴様　ニ　報復　ヲ──」
コーちゃん「貴様ガ　アズキ　ヲ 陥レタ──アノ時カラナッ!!」
「そんな‥　　　　　　　隊長がトップに‥」
セコイ　コウカツ「バカか貴様ら！」
セコイ　コウカツ「犯罪者の戯言（ざれごと）を 鵜呑みにする奴があるか！」
セコイ　コウカツ「いいか？ あの男はもう死んだ！」
セコイ　コウカツ「アレは悪魔によって生み出された怪物だ！」
セコイ　コウカツ「──弔ってやれ！」
コーちゃん「セコイィッ!!」

〇コンサート会場
フニク　エマメ「ふぅ」
フニク　エマメ「女性区の住人は、これで全員か」
？？？「誘導ありがとう、博士」
フニク　エマメ「ニンフさん‥」
秘書ニンフ「ハァ‥」
秘書ニンフ「いつかは＂こう＂なるんじゃないかって ──思ってたわ」
フニク　エマメ「どういう事だメ？」
秘書ニンフ「バチが当たったのよ！」
秘書ニンフ「トップ多妻制度なんて考えるから！」
秘書ニンフ「あの人が居てくれるだけで‥！」
秘書ニンフ「たったそれだけで良かったのに‥！」

〇白
秘書ニンフ「あの人は変わってしまった」
秘書ニンフ「地上が熱砂とウィルスに塗（まみ）れ‥ 彼がトップになってから、ね」
セコイ　コウカツ「たかがゾンビに！ なァにを手こずっている！」
秘書ニンフ「あの人は、昔から負けず嫌いで‥」
特殊部隊「速い‥！」
特殊部隊「本当に、ゾンビなのか‥？」
特殊部隊「──お見事です」
特殊部隊「ＣＱＣによる銃器解体── やはり貴方は本物の‥」
セコイ　コウカツ「銃器を、一瞬で!?」
秘書ニンフ「自分以外の優秀な男を許せない性分で‥」
コーちゃん「元気ソウデ　何ヨリ　ダ」
コーちゃん「タミモリ！ ケンゴ！」
「沿螺手隊長ぉ‥っ！　申し訳ありません‥っ！」
セコイ　コウカツ「クソがっ！」
セコイ　コウカツ「どいつもこいつも‥！」
秘書ニンフ「不都合な存在を蹴落とし‥ いつしか自らの遺伝子を──」
秘書ニンフ「＂なるだけ多く残そう＂ ──という結論に至ったの」

〇巨大ドーム
特殊部隊ケンゴ「沿螺手──たぃ‥ちょぉ‥」
コーちゃん「──ケンゴォッ!!」
コーちゃん「死ヌナ！ シッカリシロッ!!」
特殊部隊タミモリ「隊長、危ないっ!!」
特殊部隊タミモリ「ケガは‥ありません──」
特殊部隊タミモリ「か」
セコイ　コウカツ「──ったく」
セコイ　コウカツ「使えねぇ奴らだな」
ネイキッド・セコイ「やはり＂男＂は──」
ネイキッド・セコイ「俺一人で充分だな！」
コーちゃん「タミモリィ!! ヘンジ　ヲ　シロォォッ!!」
　　ユ
　　ル
　　サ
　　ナ
　　イ

〇白
コーちゃん「仲間　ノ　カタキッ!!」
ネイキッド・セコイ「なかなか良いパンチしてるじゃねぇか！」
ネイキッド・セコイ「よおっ!!」
コーちゃん「グッ‥！」
ネイキッド・セコイ「どうした沿螺手よ」
ネイキッド・セコイ「どんな力を持ったか知らんが‥」
ネイキッド・セコイ「鍛え抜かれた俺の肉体には 敵わないようだなっ！」
ネイキッド・セコイ「圧倒的な力‥！」
ネイキッド・セコイ「知略に長けた頭脳‥！」
ネイキッド・セコイ「そして──愛国心！」
ネイキッド・セコイ「俺だってなあ？ 人類を救いてえんだよ」
ネイキッド・セコイ「その為には優秀な遺伝子が必要不可欠だ」
ネイキッド・セコイ「凡（あら）ゆる環境下にも生き抜ける‥」
ネイキッド・セコイ「より強く、より賢い人間を生み出す為にな！」
ネイキッド・セコイ「だからよお‥」
ネイキッド・セコイ「俺以外の男は必要ねえんだ」
ネイキッド・セコイ「俺が世の女を導く！」
ネイキッド・セコイ「俺が、より多くの子孫を残す！」
ネイキッド・セコイ「その為のトップ多妻制度だ！」
コーちゃん「──フッ」
ネイキッド・セコイ「あ？ 何がおかしい？」
コーちゃん「結局── 貴様　ノ　独リヨガリ　ダナ」
ネイキッド・セコイ「なんだとおっ!?」
コーちゃん「オマエ　ノ　事　ヲ‥」
コーちゃん「良キ　ライバル　ト　思ッテイタンダガナ」
ネイキッド・セコイ「貴様ァ──ふざけているのか!?」
コーちゃん「ライバル　トハナ？」
コーちゃん「互イ　ヲ　認メ合イ‥ 高メ合ウ　関係ナンダ」
コーちゃん「オマエニダッテ 競イ合エル　仲間　ガ　居タハズダ」
コーちゃん「ソレ　ヲ　オマエ　ハ 自ラ　断チ切ッテイタンダ」
ネイキッド・セコイ「黙れェッ!! 俺だけ頂点で在れば良いんだよ!!」
ネイキッド・セコイ「俺よりも強ェヤツなんざ要らねェ！ 在ってはならねェんだよおっ!!」
コーちゃん「グッ──ソレニ‥」
コーちゃん「オマエ　ガ　ヤッテイル事　ハ‥」
コーちゃん「導クノデハ、ナイ‥！」
コーちゃん「女性タチ　ヲ　支配シ ──傷ツケテイル　ダケダッ!!」

〇豪華なベッドルーム
ネイキッド・セコイ「おや？ もう帰っちゃうのかい？」
アカサカ　ササ「──私には 付き合っている男性が居るんです‥」
アカサカ　ササ「そのひとに‥ 私の将来を捧げたかったのに」
ネイキッド・セコイ「そんな事言うなよ？」
ネイキッド・セコイ「ライブに居た時点で心を決めてたんだろ？」
ネイキッド・セコイ「大方、彼と無断で相引きしていたのがバレて 二度と会えなくなったんだろう？」
アカサカ　ササ「違う‥」
ネイキッド・セコイ「ま、罪を被るのは男のほうだからな！ バカなヤツだ！」
ネイキッド・セコイ「そんな男なんざ忘れて 俺と家族になろうや？ な？」
アカサカ　ササ「貴方に私の気持ちなんて、解るはずがない‥!!」
ネイキッド・セコイ「なぁんだよそれ‥」
ネイキッド・セコイ「まあいいや、次々ぃ〜♪」

〇個人の仕事部屋
秘書ニンフ「セコイ様！ 私は納得出来ません！」
秘書ニンフ「トップ多妻制度を今すぐ撤廃すべきです！」
セコイ　コウカツ「またその話か‥」
セコイ　コウカツ「いいかニンフ？ これは人類の未来の為なんだ」
セコイ　コウカツ「このままだと少子化が進み‥ 最終的に人類は根絶してしまいかねない」
セコイ　コウカツ「だからこそ、トップの俺が立ち上がって‥」
セコイ　コウカツ「導いてやらなければならないんだ」
秘書ニンフ「女性達の気持ちを考えて下さい！」
秘書ニンフ「貴方のやり方は一方的過ぎます！」
セコイ　コウカツ「だから立候補制にしてあるだろう？」
セコイ　コウカツ「俺のライブに参加してくれた女性達に 寵愛を与え導く‥」
セコイ　コウカツ「何も問題ない筈だが？」
秘書ニンフ「しかし‥」
セコイ　コウカツ「それとも──」
セコイ　コウカツ「お前なら俺の子孫を残してくれるのか？」
秘書ニンフ「──どうして」
秘書ニンフ「そんなひどい事を言うの？」
セコイ　コウカツ「──すまない」
セコイ　コウカツ「解ってくれ‥」

〇白
ネイキッド・セコイ「くそっ！」
コーちゃん「──図星、ダナ」
コーちゃん「ソレ　ガ オマエ　ノ　敗因　ダ　！　！」
ネイキッド・セコイ「くたばり損ないがっ──」

〇血しぶき

〇空
「ぐ　あ　あ　あ　ぁ　あ　ア　ッ　！　！」

〇空
　　絶叫とほぼ同時に
　　シェルター内の
　　ソラが
　　地上のように焼け染まった
　　まだ正午だというのに