家族戦隊ファミリーレンジャー(連載版)

ひであき

第5話 恋は複雑(脚本)

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ひであき

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〇可愛い部屋
  私、広瀬桃香! どこにでもいる普通の小学生の女の子!
  でもそれは仮の姿! その正体は正義の味方ファミリ―レンジャーの一人、シスターホワイトなんだ!
  お勉強に正義の味方と私の日常は大忙し!
  お休みする時間がないのが最近の悩みなんだ
  たまには旅行に行きたいけど、パパの安月給じゃ海外に行きたいなんて言えないよ
  ワガママを我慢する私って本当に良い子だよね!
  あっ! そろそろ学校に行く準備をしないと! 遅刻したらママに怒られちゃう!

〇おしゃれなリビングダイニング
広瀬桃香「おはよう!」
広瀬静流「あらおはよう。今日は早かったわね」
  この綺麗な人は私のママ! 普通の専業主夫に見えるけど、その正体はファミリ―レンジャーのリーダー・マザーレッドだよ!
  いつも優しいけど怒らせたら大変! 大怪獣が暴れたみたいになるから要注意だよ!
広瀬久美子「あー、眠ぃ。昨日練習しすぎたかな」
  この強そうな人は私のお姉ちゃん! 格闘技のジムの経営をしながらシスターイエローとしても活動してるんだよ!
  昔武者修行で海外に行ってたこともあるんだって! 何を目指してるのかな?
広瀬純一郎「おはよう、みんな」
  この人は私のパパ! 普通のサラリーマンだけどそれは仮の姿! その正体はファーザーブラックだよ!
  優しいけどちょっと抜けてて頼りないんだよね。ところで何で学生服を着てるんだろ?
広瀬静流「ちょっとあなた! スーツと間違えて学ラン着てるわよ!」
広瀬純一郎「あれ、本当だ。これはうっかりしてた。気付かなかったよ」
広瀬静流「しっかししてよ、もう。ああほら、目ヤニも付いたままだし。顔を洗ってきなさい」
  さっきちょっとって言ったけど訂正するね。うちのパパはすっごく抜けてるみたい。
広瀬英雄「おはよう。今日も賑やかだな」
  あっ、やっと来た! このカッコイイ人は私のお兄ちゃん! 俳優とモデルを兼業してるんだ!
  そして何とその正体はブラザーピーチ! どっちの姿もカッコ良くて、私の自慢のお兄ちゃんなんだ!
広瀬桃香「お兄ちゃんおはよう!」
広瀬英雄「おっと、お前はいつも元気だな」
広瀬桃香「朝から大好きなお兄ちゃんの顔が見られたからだよ」
広瀬英雄「はっはっは! 子供は愛情表現がストレートだな」
広瀬英雄「どちらかと言えば俺もそうだけど、何で上手くいかないんだろうな?」
広瀬桃香「むむっ!」
  私知ってるんだ。こういう顔をしてるときのお兄ちゃんは他の女のことを考えてるんだって
  あの女、そう、私からお兄ちゃんを奪おうとする泥棒猫〈悲恋〉のレンカのことを考えてるんだ!
広瀬久美子「朝からシケた面してんな。気合い入れてやるからうちのジムに来いよ」
広瀬英雄「行かねえよ。顔に怪我でもしたら仕事に影響が出るし」
広瀬久美子「そんなに売れっ子でもねえのに色気づきやがって。良い顔しておきたい女がいるだけじゃねえのか?」
広瀬桃香「やっぱりお兄ちゃんあの女のこと考えてるんだ!」
広瀬英雄「何だよ二人して朝っぱらから。面倒臭えな」
広瀬純一郎「なあ母さん、お小遣いについてなんだけど」
広瀬静流「ほらみんな、ご飯できてるから冷めないうちに食べなさい」
広瀬純一郎「あの、お小遣い──」
広瀬静流「はいはい。お小遣いね。はいこれ、今月の分」
広瀬純一郎「今月!? 今日の分じゃなくて!?」
広瀬静流「増税に物価高でうちも余裕がないのよ。桃香が大学に行けるように貯金もしなきゃだし」
広瀬純一郎「それはそうだけど一ヵ月五百円は切り詰めすぎじゃないかな?」
広瀬静流「我慢して。私もエステサロンに行くのを週一に抑えてるんだから」
広瀬純一郎「エステサロン!? その話初耳なんだけど!?」
広瀬静流「前は週四で通ってたけど週一に抑えてるのよ? だからパパも我慢して。はいこれお弁当」
広瀬純一郎「ま、待ってくれ母さん! エステサロンの話を詳しく──」
広瀬英雄「大丈夫。俺とレンカはああはならない。ああならないはずだ」
広瀬桃香「もうお兄ちゃん! 私が目の前にいるのに他の女のこと考えないで!」
広瀬久美子「やっぱり喝を入れてやる必要がありそうだな」
  もう! お兄ちゃんの浮気者!
  猫は好きだけどあの泥棒猫にはおきゅーをすえないとだね!

〇通学路

〇教室
  むむっ。お兄ちゃんとあの泥棒猫のことが気になって勉強に集中できないよ
  私から見てもわかるくらいぞっこんだし、あの女のどこが好きなんだろ?
  敵同士なのに恋愛するなんておかしいよ。そんなの映画やドラマみたいなシチュエーションだもん!
  羨ましいとかズルいとか思ってないからね! おかしいことをおかしいって言ってるだけだからね!
  あっ! そっか! お兄ちゃんはおかしくなってる。つまりあの女に洗脳されてるんだ!
  人の心を操るなんて許せない! 私の愛でお兄ちゃんの目を覚まさせてあげないと!
  それで将来はお兄ちゃんと──
  きゃー!
  あっ、授業が終わっちゃった。今日は全然集中できなかったよ
クラスメイト(女の子)「桃香! 一緒に帰ろう?」
広瀬桃香「うん! 準備するからちょっと待ってて」
クラスメイト(男の子)「広瀬! 俺らと野球しようぜ!」
クラスメイト(女の子)「するわけないじゃん! あんた誘う相手間違えてるんじゃないの?」
クラスメイト(男の子)「広瀬が来るとやる気出す奴が多いんだよ。あれ何なんだろうな?」
クラスメイト(女の子)「桃香目当てのバカ男子ばかりだってことでしょ! 桃香相手にしちゃダメだよ?」
広瀬桃香「野球じゃなくてドッジボールだったらやっても良かったんだけどな」
クラスメイト(女の子)「そういう問題!?」
クラスメイト(男の子)「嫌だよ。お前顔面ばっか狙ってくるからおっかないし」
クラスメイト(男の子)「また今度誘うから気が向いたら来てくれよな!」
クラスメイト(女の子)「あいつは下心ないから良いけど他の男子はダメだね」
クラスメイト(女の子)「桃香、男子の相手なんかしちゃダメだからね!」
クラスメイト(女の子)「も、桃香は私とだけ遊んでればいいんじゃないかなーなんて」
広瀬桃香「大丈夫だよ。私お兄ちゃん以外の男に興味ないもん」
クラスメイト(女の子)「うっ、あのイケメンのお兄さんが相手じゃ分が悪いよ」
広瀬桃香「どうかしたの?」
クラスメイト(女の子)「ううん。何でもない」
クラスメイト(女の子)「それより帰ろっか」
広瀬桃香「うん!」

〇市街地の交差点
戦闘員「車が来てないかちゃんと見てから渡るんだぞー」
戦闘員「ああほら走らない! 自転車にぶつかったらどうするんだ!」
戦闘員「電動キックボードにも気を付けろよー!」

〇通学路
クラスメイト(女の子)「ねえねえ! 今度二人でどこか遊びに行こうよ!」
広瀬桃香「良いけどどこに行くの?」
クラスメイト(女の子)「駅前でお買い物なんて良いんじゃないかな? 映画を観に行くのもいいかも!」
広瀬桃香「映画! 今度お兄ちゃんと二人で行きたいなー」
広瀬桃香「それで暗がりであわよくば──」
広瀬桃香「きゃー!」
クラスメイト(女の子)「むー、やっぱり桃香はお兄さんのことばっかりだね」
クラスメイト(女の子)「それはそうだよね。そもそも女の子同士なんておかし──」
広瀬英雄「あれ、桃香。学校はもう終わったのか?」
広瀬桃香「あっ! お兄ちゃん!」
広瀬英雄「おいおい、いきなり抱き着くなよ。友達が見てるぞ」
広瀬桃香「えへへ、こんなところで会えると思ってなかったから嬉しくてつい」
広瀬桃香「お仕事はもう終わったの?」
広瀬英雄「今日は雑誌の写真撮影だけだったからな」
広瀬桃香「すごい! 表紙はお兄ちゃん? 私お小遣いで百冊買うね!」
広瀬英雄「いやいや、俺はたくさんいる読モの中の一人だからひっそりとしか載ってないぞ」
広瀬英雄「それに雑誌もただで貰えるし、わざわざお前が買う必要なんてないんだからな」
広瀬桃香「編集部にアンケートをたくさん出してお兄ちゃんの扱いを良くしてもらうようにするんだよ!」
クラスメイト(女の子)「も、桃香?」
広瀬桃香「あっ! ごめん! そういうわけでお兄ちゃんと帰るからまたね!」
広瀬英雄「いいのか? 俺より友達といたほうが──」
広瀬桃香「いいの!」
広瀬桃香「それじゃまた明日学校で! ばいばい!」
クラスメイト(女の子)「い、行っちゃった」
クラスメイト(女の子)「──私も帰ろっと」

〇通学路
クラスメイト(女の子)「あーあ。私って全然相手にされてないみたい」
クラスメイト(女の子)「それはそうだよね。桃香から見れば私なんて友達の一人にすぎないわけだし」
クラスメイト(女の子)「おかしいのは私のほう。この気持ちは秘めたままにしておいたほうが──」
〈邪恋〉のサレンダ「その必要はないわよ」
クラスメイト(女の子)「えっ、あの、お姉さん誰?」
〈邪恋〉のサレンダ「ふふふ。あなたからは私と同じ匂いがするわ」
〈邪恋〉のサレンダ「利己的に相手を求める邪悪なまでの強い想いがひしひしと伝わってくる」
クラスメイト(女の子)「な、何を言って──」
〈邪恋〉のサレンダ「大丈夫。あなたの想いを遂げさせてあげるわ」
〈邪恋〉のサレンダ「この私〈邪恋〉のサレンダの力で、ね」

〇渋谷駅前
広瀬桃香「お兄ちゃん買い物に付き合ってくれてありがとね!」
広瀬英雄「いいって。その服よく似合ってるぞ」
広瀬桃香「お兄ちゃんが選んでくれたんだもん。当然だよ」
  えへへ、兄妹デート久しぶりだから嬉しいな! 新しい服も買ってもらえたし、今日は大満足だよ!
広瀬桃香「ねえ、お兄ちゃん、このあとはどうするの?」
広瀬英雄「どうするって、もうすぐ日が暮れるから帰らないと」
広瀬桃香「本当だ。もうこんな時間」
  こんな機会滅多にないからもう少しお兄ちゃんと二人きりでいたかったな。
広瀬桃香「あ、あのさ、また今度二人で──」
広瀬桃香「騒がしいね。何かあったのかな?」
広瀬英雄「嫌な予感がする。行ってみよう」

〇渋谷のスクランブル交差点
溶怪人コイドロ「グギギ、ドコニイルノ?」
広瀬桃香「お兄ちゃんあれ!」
広瀬英雄「怪人のようだな。桃香!」
広瀬桃香「うん!」
広瀬桃香「変身!」
シスターホワイト「みんなをお助け! シスターホワイト!」
ブラザーピーチ「桃のようにキュートなお尻! ブラザーピーチ!」
シスターホワイト「人々の愛を守るため!」
ブラザーピーチ「ここに見参!」
シスターホワイト「お兄ちゃん! ここは私が何とかするから町の人たちをお願い!」
ブラザーピーチ「わかった! 無理するなよ!」
シスターホワイト「そこまでだよ! 悪い子はお仕置きなんだからね!」
溶怪人コイドロ「グギギ、ミツケタ。モモカ」
シスターホワイト「えっ、何で私のことを知ってるの?」
溶怪人コイドロ「ズットミテタ。モモカ。ソバニイタ」
シスターホワイト「どういうこと? あなたは一体──」
溶怪人コイドロ「コレカラハズットイッショ」
  えっ、ウソ! 怪人の体の中に取り込まれたの!?
溶怪人コイドロ「モモカ、アイシテル。ワタシトヒトツニナロ?」
  何を言ってるの? 何で私のことを知って──
溶怪人コイドロ「ホカノダレニモトラレタクナイ。ワタシダケヲミテ」
  何を言ってるの? でもこの感じは、この気持ちは──
  く、苦しい。息が──
  助けて、お兄ちゃん──
ブラザーピーチ「ピーチヒップアタック!」
シスターホワイト「こほっ、こほっ! お、お兄ちゃん?」
ブラザーピーチ「遅くなってすまない! 町の人たちの避難は完了した! あとはあいつを倒すだけだ!」
シスターホワイト「ま、待って、お兄ちゃん。あの怪人様子が変なんだ」
ブラザーピーチ「変? 怪人はほとんど変な奴しかいないだろ?」
シスターホワイト「そうなんだけど、さっき取り込まれたときに感じたの」
シスターホワイト「あの怪人は私のことが好きなんだって」
ブラザーピーチ「確かなのか? お前を殺そうとしたように見えたのに」
シスターホワイト「ううん。あれは悪気があったわけじゃないみたい」
シスターホワイト「多分だけど、あの怪人は誰かに操られてる」
ブラザーピーチ「操られて──なるほど」
ブラザーピーチ「そこだ!」
〈邪恋〉のサレンダ「あらあら。見付かっちゃったみたいね」
ブラザーピーチ「お前何者だ!?」
〈邪恋〉のサレンダ「私は秘密結社ロンリネスの最高幹部〈四恋王〉の一人〈邪恋〉のサレンダ。恋心を邪心に染める者よ」
ブラザーピーチ「四恋王だって? ということはレンカの──」
〈邪恋〉のサレンダ「あなたがブラザーピーチね? レンカから最低な男だって話を聞いてるわ」
ブラザーピーチ「ご、誤解だ! あいつは勘違いをして──」
シスターホワイト「お兄ちゃんから離れて!」
〈邪恋〉のサレンダ「あら、私に気を取られていいのかしら?」
溶怪人コイドロ「モモカ。モモカ」
シスターホワイト「な、何? 怪人の様子が」
クラスメイト(女の子)「えっ、あれ、私今まで何を──」
ブラザーピーチ「怪人が女の子に!? それに君は確か──」
シスターホワイト「ど、どういうこと? 一体何が起きてるの?」
クラスメイト(女の子)「お、思い出した。私桃香に酷いことを」
クラスメイト(女の子)「ち、違うの。私桃香を傷付けるつもりはなくて」
クラスメイト(女の子)「この気持ちは秘密にするって決めたのに、なのに」
クラスメイト(女の子)「何で? どうしてこんなことに──」
クラスメイト(女の子)「嫌ああああ!!」
〈邪恋〉のサレンダ「そんなに落ち込まないで。恋心は時に相手を傷付けることもあるのよ」
〈邪恋〉のサレンダ「その行為すら愛おしく想っていいの。ふふふ」
ブラザーピーチ「悪趣味な真似を! レンカの姉だからと言って見過ごすわけにはいかない!」
〈邪恋〉のサレンダ「乱暴な男ね。嫌いじゃないわ」
〈邪恋〉のサレンダ「何よりあなたからは素質を感じるわ」
〈邪恋〉のサレンダ「愛と憎悪が入り混じった邪な恋心を、ね」
ブラザーピーチ「何をわけのわからないことを!」
〈邪恋〉のサレンダ「今日は良い物を見せてもらったわ。また会いましょう、ブラザーピーチ」
〈邪恋〉のサレンダ「次に会うときは絶望の舞台を用意して待ってるわ」
ブラザーピーチ「逃げたか!」
ブラザーピーチ「いや、今はそんなことより──」
シスターホワイト「あの──」
クラスメイト(女の子)「嫌! 来ないで! 私は、私は桃香に酷いことを!」
シスターホワイト「大丈夫だから落ち着いて。話を聞いて」
クラスメイト(女の子)「この気持ちは誰にも知られたくなかったのに! もういっそのことここで死──」
シスターホワイト「そんなこと言わないで。本当に大丈夫だから」
クラスメイト(女の子)「も、桃香?」
シスターホワイト「誰かを好きになると毎日楽しくなるけど、辛いときもたくさんあるよね」
シスターホワイト「気持ちはよくわかるよ。私も同じだから」
クラスメイト(女の子)「も、桃香」
シスターホワイト「私怒ってないよ。あなたは利用されただけ。だからそんなに落ち込まないで」
クラスメイト(女の子)「だ、だって、私桃香に酷いこと。それに気持ち悪くないの? 女の子が女の子を──」
シスターホワイト「気持ち悪くなんてないよ」
シスターホワイト「誰かを好きになることはとっても素敵なことなんだよ?」
クラスメイト(女の子)「うっうっ、も、桃香ぁ」
シスターホワイト「これからも私と仲良くしてくれると嬉しいな」
クラスメイト(女の子)「うん、うん!」
ブラザーピーチ「一件落着ってとこだな」
シスターホワイト「あっ、そうだ。一つ訊きたいことがあるんだけど」
クラスメイト(女の子)「何?」
シスターホワイト「お名前何だっけ?」
クラスメイト(女の子)「そこから!?」

〇塔のある都市外観
〈邪恋〉のサレンダ「あれがレンカが入れ込んでいるブラザーピーチなのね」
〈邪恋〉のサレンダ「うっ、頭が──」
〈邪恋〉のサレンダ「最近頭痛が酷いのよね。私疲れてるのかしら?」
〈邪恋〉のサレンダ「まあいいわ」
〈邪恋〉のサレンダ「次に会うのを楽しみにしていなさい、ブラザーピーチ」
〈邪恋〉のサレンダ「ふふ。あははははは!!」
  〈邪心〉のサレンダに目を付けられてしまったブラザーピーチ
  彼の恋の行方は如何に──

次のエピソード:第6話 いつも見ている

コメント

  • 色々な形の愛情ある話でした😃
    親父の小遣い、泣ける😱

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