僕たちはまだ恋を知らない

悠々とマイペース

高校一年の春(脚本)

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〇学校脇の道
  恋愛なんてモノは一時の感情による『バグ』である。
  それが、中学三年で得た俺なりの解釈だ。
(道行く学生服の奴らは下らない会話で学校に向かっているなんて、なんと時間の無駄だ)
  そんな事を思いながら参考書を片手に猫背で通学していた。

〇白い校舎
生徒A「うっし、俺B組~!」
生徒B「いいな~。 B組には、清水さんが居るじゃんか~」
  張り出されたクラス分けの板を眺めながら次々と集まってくる生徒達。
  たかがクラスを確認するだけで誰かと一緒が良いだの、あの子が居るクラスが良いだの一喜一憂しているのは見ていて苛立つ。
(俺は・・・Bか)
  はっきり言ってどのクラスになろうともやる事は変わらない。
(学年1位を取り続けて良い大学か就職先を見付けるだけだ)
???「ちょっと、良いかしら?」
  背後から聞こえてきた声に反応し、振り返る。
新井橋 京花「わたしは、新井橋 京花。 貴方が、学年1位の進藤 誠一ね?」
  そこには、全く記憶のない美人が居た。
「・・・どちら様でしょうか?」
新井橋 京花「次のテストで貴方を抜いて1位になります!」
「そうですが、それは楽しみです」
生徒C「ありゃあ、宣戦布告って奴じゃないか!?」
生徒D「うぉー! これはすげぇ~、学年2位対学年1位の戦いだ!」
  変に目立ってしまったらしく人だかりがこちらに集まっていた。
(とりあえず、クラスに移動するか・・・)
  よくわからない奴に絡まれたが、何事もなかったかのようにその場を後にする。

〇教室
  小うるさい教室の中、黒板に描かれた番号から自分の席は、窓際の後ろ側の席だ。
  椅子に座り、周囲の声が聞こえなくなるほど集中し、参考書を読み進める。
  だが、その集中すらも破壊する奴が現れた。
清水 小鳥「やぁやぁ、ギリギリセーフっと」
  扉を開けて警察官のように敬礼ポーズで現れたのは、これまた知らない生徒だった。
女生徒A「清水さん遅い~!」
清水 小鳥「いやはや、寝坊してしまってね~」
女生徒B「じゃあ、あの話知らない?」
清水 小鳥「あの話って?」
女生徒C「なんでも学年2位の新井橋さんが、学年1位に宣戦布告したんだって!」
清水 小鳥「なんとぉ! 戦うの? リアルファイトってこと?」
女生徒A「違う違う。 テストで競うの」
清水 小鳥「そうだったんだ~。 でも、私は勉強苦手だからすごいよね~」
女生徒B「だから今その話題で持ち切りなの」
清水 小鳥「へぇー。 それで、その学年1位は誰なの?」
女生徒C「えーと・・・」
  他の友人らしき生徒に目配せするが、知らない様子だった。
清水 小鳥「まさかの謎の人物なのね!」
  そんなこんなしている内に始業の音が鳴り、全員席へ着く。
  静かになった教室へすぐに担当の教師がやって来た。
教師「えー、本日からこのクラスの担当することになった」
教師「皆、分かっていると思うが今週末に実力テストを行う」
  騒がしく頭を抱える生徒達に教師は、2回ほど手を叩いて静かにさせる。
教師「内容もそこまで難しくはない。 真面目に取り組むように」
生徒A「でも、先生〜。 今週末って3日しかないのですが?」
教師「本日から一年生は3日間午前中しかないため、午後から自習に取り組むように」
  当然生徒達からのブーイングの嵐は止まらないが、決まった事を動かす事などできない。

〇図書館
  始業式や学校の説明を受けていたせいで勉強が全然出来なかった。
  そのため、この静かな図書室で帰るまで勉強に専念出来るのだ。
(集中出来るし、頭の中にスムーズに入ってくる)
(まさにここは天国だ・・・)
  最高の環境に高笑いでもしそうだが、ここは図書室。
  それにたった今、最高の環境とは呼べなくなった。
清水 小鳥「およっ? 君は、同じクラスの・・・」
清水 小鳥「・・・・・・」
清水 小鳥「誰だったかな〜?」
  名前すら覚えてないのなら話し掛けて欲しくはない。
「気にするな。 俺も他人に教える気もない」
清水 小鳥「え〜。 そんな事言わないでよ〜」
  そう言いながら彼女は対面するように向かいの席に座った。
「なぜ、目の前の席に?」
清水 小鳥「気になったから」
  至って単純な答えだった。
「・・・・・・」
  気にせずノートにペンを走らせる。
清水 小鳥「すごいね。 もう、自習?」
「・・・いや、暇な時はいつもやってる事だから」
(なに普通に会話してんだ俺?)
清水 小鳥「もしかして、勉強出来る人?」
「人並みには・・・」
清水 小鳥「それなら、お願いがあるんだけど・・・」
  彼女の顔から多分こちらにとって得のすることではない事は間違いない。
(お願い? パシリに使われるとかか?)
清水 小鳥「私に勉強教えて貰えない?」
「・・・・・・なぜ俺に?」
清水 小鳥「多分だけど、君が勉強好きそうだと思ったから」
「・・・面白い推理ですね。 それでは、俺はこの辺で失礼しますので」
(こんな面倒な事に絡まれてたまるか!)
  参考書達をカバンに仕舞い込む俺に彼女は、両手を合わせて頼み込んだ。
清水 小鳥「お願い進藤くん!」
  初めて普通に名前を呼ばれ、帰ろうとする手が自然と止まった。
「なぜ、名前を知っているんですか?」
清水 小鳥「なぜって、同じクラスの同級生でしょ?」
  今まで名前を知っていたのは、単に勉強が出来る人として覚えられる程度だった。
  でも、彼女は俺と向き合って話した上で勉強を教えて欲しいとお願いして来たのだ。
「・・・・・・分かりました。 俺も教えられる範囲でなら・・・ですけど」
清水 小鳥「ありがとう! これからよろしくね進藤くん!」
  これは、勉強だけしか取り柄のない俺と彼女・・・そして、学年順位をかけた戦いである。

コメント

  • 勉強も大事だけれど、誠一が考える「無駄なこと」が実は青春の全てだったりするんですよね。小鳥や京花と関わることによって、計画通りにいかないことが人生にはいっぱいあると気づいて、でもそれが楽しいんだと思えるような青春を謳歌してほしいなあ。

  • 新学園生活の一般的なウキウキ感ではなく、一方で冷静で悪く言えば冷めたテンション、その一方で純粋で温かいテンション。この2つがどう交わっていくのかいかないのか、とにかく今後の展開が楽しみなプロローグでした。

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