〇荒廃した教会
ギルバート「作るぞ！ 我が「王国再建サークル」を！」
アリス「王国再建サークル・・・？」
ギルバート「我々の力で再びレイク・ビア王国を再建するのだ！」
タクト「サークル作りとか面白そうじゃん」
タクト「新入生歓迎会の出し物は、俺に任せとけよ」
タクト「シャドウ、一緒にコントやろうぜ」
シャドウ「コント？ なんだよそれ？」
タクト「みんなの前でネタやって、笑わすんだよ」
タクト「シャドウ、これだけは覚えておけ」
タクト「おもしろい男はモテるぜ」
シャドウ「オ、オイラやるよ」
ギルバート「ありがとう、二人とも」
ギルバート「しかし、歓迎会の前にまずはサークルメンバーを更に集めなくてはならないな」
ギルバート「アリス、キミ以外にこの付近に人はもういないのか？」
ギルバート「国王は？ 家臣のみんなはどうした？」
アリス「・・・国王様はもういません」
アリス「ヨクト帝国の侵攻によって、家臣の私たちもバラバラに逃げるしかありませんでした」
アリス「今はもう、どこにいるか分かりません」
アリス「ただ、「魔族の谷」に住む「あの方たち」なら今もまだいるかもしれません」
シャドウ「魔族の谷!? 悪魔たちの棲み家じゃねぇか」
シャドウ「あんな危険なところ、魔物のオイラたちでも近づかねぇよ」
シャドウ「やめといた方がいいぜ」
ギルバート「シャドウ、忠告ありがとう」
ギルバート「だが、私に任せてくれれば大丈夫だ」
ギルバート「行ってみよう！ 魔族の谷へ」

〇魔界
タクト「ここが「魔族の谷」か」
タクト「なんか不気味な場所だな」
シャドウ「ここは最強の魔力を持つと言われる悪魔族の棲み家なんだ」
シャドウ「気性が荒くて、気に食わない相手は国ごと滅ぼず凶悪な種族さ」
シャドウ「なぁ、もう帰ろうぜ」
ギルバート「心配ない、私を信じてくれ」
　　誰だ、お前たち！
シャドウ「げっ、この声は」
　　この場所を我ら悪魔族の土地と知っているのか？
ギルバート「我が名は、ギルバート・レイク・ビア」
ギルバート「キミたちに頼みがあって、ここにやって来た」
　　ギルバート？
　　アンタ、ギルバートじゃん！
シャドウ「ひぃ〜、出た！ 悪魔族だ」
ギルバート「久しぶりだな、エマ」
エマ「アンタこそ、しばらく見なかったけど、元気そうじゃない」
ギルバート「すまない、心配をかけたな」
ギルバート「エマ、キミも元気そうでよかった」
エマ「はぁ？ 別に私は、アンタのことなんて全然心配してなかったんだからね」
エマ「まぁ、せっかく来たんだから、ゆっくりしていけば？」
タクト「なになに？ ギル、この美女と知り合い？」
タクト「隅におけないねぇ、この色男！」
ギルバート「彼女は悪魔族のエマ」
ギルバート「子供の頃に魔族の谷に迷い込んだことがあってな」
ギルバート「その時に助けてもらって以来の親友だ」
ギルバート「誤解されやすいところもあるが、心の優しい素敵な女性さ」
シャドウ「悪魔族が優しい!?」
シャドウ「噂では、道端で遊んでた子供が目障りだって理由だけで国を滅ぼしたことがあるって聞いたぜ？」
エマ「はぁ、バッカじゃない？」
エマ「国なんて滅ぼしてどうすんのよ？」
ギルバート「それは妙だな」
ギルバート「悪魔族は強大な魔力を持っているが、人間にも友好的な穏やかな種族だ」
ギルバート「なぜ、そのような噂が広まっているんだ？」
エマ「最近、悪魔族と同じ魔法を使って好き勝手暴れてるヤツがいるのよ」
エマ「そのせいで、悪魔族は凶暴だとか変な噂が広まって、いい迷惑だわ」
エマ「魔族の谷にも、他の種族が全然寄りつかなくなって、静かなもんよ」
ギルバート「そうか、それは寂しいな」
エマ「別に、私は寂しいなんて言ってないじゃない！」
エマ「昔みたいに、もう少し他の種族も遊びに来ても良いんじゃないかとは、ちょっと思うけど」
ギルバート「ドバーッ」
エマ「ちょ、ちょっと、何泣いてんのよ」
ギルバート「キミたちの優しさを国民たちに伝えられなかったのは、王子である私の責任だ」
ギルバート「必ずや私が人々の誤解を解いて、悪魔族が他の種族とも仲良く暮らせる国にしてみせる」
エマ「誤解を解くって言っても、どうやって？」
ギルバート「異世界には「インフルエンサー」と呼ばれる人々の心を掴むスペシャリストがいる」
ギルバート「何百万人ものフォロワーがいる彼女の力を借りれば、キミたち悪魔族の良さも、瞬く間に全世界に発信できるだろう」
エマ「インフルエンサー？」
ギルバート「Summon《召喚》」
ギルバート「出でよ、うぉたこ！」
うぉたこ「みんな、うぉたこんにちは〜！」
うぉたこ「それじゃ、今日も配信始めるよ！」
うぉたこ「って、どこだここ!?」
ギルバート「うぉたこ、急に呼び出してすまない」
うぉたこ「ギルちゃん？」
うぉたこ「ってことは、ここがギルちゃんの言ってた異世界？」
ギルバート「ようこそ、我がレイク・ビア王国へ」
タクト「よう、水田！ 異世界も結構良いとこだぞ」
うぉたこ「「みずた」って、本名で呼ぶな！」
うぉたこ「私には水の精霊「ウォータン」のこどもの「うぉたこ」って設定があんのよ！」
うぉたこ「うぉたこちゃんと呼びなさい」
ギルバート「うぉたこ、早速だが何百万人ものフォロワーを持つキミの力を貸してほしい」
うぉたこ「任せなさい！」
うぉたこ「ギルちゃんの頼みなら、たとえ火の中水の中よ」
ギルバート「ありがとう」
ギルバート「こちらは悪魔族のエマだ」
ギルバート「根も葉もない噂によって、他の種族から恐れられて困っている」
ギルバート「うぉたこ、キミの力で彼女たち悪魔族をプロデュースして、人気者にしてくれないか？」
うぉたこ「か、か、」
うぉたこ「かわいい〜！」
うぉたこ「髪も目も綺麗な金色だし、この羽ホンモノ？」
うぉたこ「まじ天使じゃん〜」
エマ「いや、私悪魔なんだけど・・・」
うぉたこ「任せて、エマちゃん！」
うぉたこ「私があなたを最高の人気者にしてあげる」

〇魔界
タクト「任せろって言って消えちまったけど、水田のヤツどこ行ったんだろうな？」
ギルバート「きっと、彼女なりの考えがあるのだろう」
ギルバート「うぉたこを信じよう」
　　待たせたわね！
タクト「あ、水田の声だ」
　　悪魔族を人気者にするための秘策の準備ができたわ
うぉたこ「小悪魔系配信ユニット「AKM48」参上！」
タクト「なんだよ、その格好？」
タクト「水田も悪魔族になっちまったのか？」
うぉたこ「違うわよ、これはコスプレ！」
うぉたこ「羽の制作にちょっと時間がかかっちゃったけど、なかなか良い出来でしょ？」
ギルバート「AKM48・・・」
ギルバート「英語で４《four》は永遠を表す《forever》を連想させ、８も異世界「日本」では末広がりで縁起が良い数字とされている」
ギルバート「さすがは、うぉたこ素晴らしいネーミングだ」
タクト「いや、アイドルグループの名前パクっただけで、そんなに深い意味はないと思うぜ」
うぉたこ「さぁ、エマちゃん！」
うぉたこ「私たち「AKM48」で配信ジャンジャンやって、悪魔族のファンを増やしていくわよ」
エマ「はい」
うぉたこ「まずは手始めに、オリジナルの挨拶を考えましょう」
うぉたこ「私的には「あくまいど！」が親しみやすくて良いかなと思うんだけど、ハイテンションに「あくマンボー！」ってのも良いかもね」
うぉたこ「どっちがいい？」
エマ「じゃあ、「あくまいど」で」
うぉたこ「いいね！ それじゃ言ってみよう」
うぉたこ「あくまいど！」
エマ「あくまいど」
うぉたこ「違う！」
うぉたこ「もっと関西人みたいな親しみを込めて「まいど！」」
エマ「何が違うのよ〜」
ギルバート「エマ、異世界仕込みのプロデュースで、みんなの誤解も解けそうだな」
エマ「アンタ、なんで異世界に知り合いなんているわけ？」
ギルバート「そう言えば、まだエマには話していなかったかな？」
ギルバート「私は、異文化理解を深めるために、「異世界交換留学」に行っていたのだ」
ギルバート「「うおたこ」や「タクト」は、留学先で出会った大切な友人だよ」
エマ「はぁ、異世界交換留学？」
ギルバート「どうしたんだ、エマ？」
ギルバート「急に声を荒げて、何か気に触ることでも言ったかな？」
エマ「どうしたもこうしたもないわよ」
エマ「私たちと同じ魔法を使って好き暴れて、悪魔族が恐れられる原因になったのは、「異世界留学生」のせいなんだから」
ギルバート「なに？」
アリス「ギルバート様、この件はレイク・ビア王国の現状にも深く関わる話です」
アリス「私から説明させてください」
ギルバート「アリス？」
アリス「ギルバート様が異世界留学に旅立たれた後、レイク・ビア王国にも、とある異世界留学生が訪れました」
アリス「その留学生の名前は、「オオツ」」
アリス「レイク・ビア王国を滅ぼした人物です」