15.差し押さえ(脚本)
〇諜報機関
2017.11.10
日本時間20:15
TNテレビ「このように、専門家から見ても 非常に珍しく美しい隕石!」
TNテレビ「オークションに入る前に、いま一度 隕石について振り返りましょう」
TNテレビ「────・・! ──────・・!!」
長官「・・またか 前フリが長過ぎる」
長官「テレビにしても限度があるだろう お国柄というヤツか?」
長官「さっさと本題に入って・・」
長官「・・」
長官「Prof.ウィラメット、聞いてるのか?」
ウィラメット「──────・・」
ウィラメット「コレは・・ まさか適応の残穢か?」
ウィラメット「骨部の黄鉄鉱(パイライト)化 にも見えるが、違う」
ウィラメット「となると、やはりあの隕石の中には 原初の──・・」
長官「上官の世間話を無視か 偉くなったな、ウィラメット」
ウィラメット「もちろん偉いですよ? 高い役職と自負しております」
ウィラメット「・・失礼、長官でしたか」
長官「無礼な態度だが、不問にしてやる」
長官「オークション始まったぞ 見届けなくて良いのか?」
佐渡トキ子「16番が即返すぅ〜〜ッ!!? 200増の3000万円です!!!」
佐渡トキ子「コレは7番と16番のタイマンに なりそうだ〜〜!!!」
長官「ほら」
ウィラメット「いえ、現地の妙高さんから 緊急連絡が入りまして」
ウィラメット「ご覧ください」
長官「腕・・の、なんだ? レントゲンか?」
ウィラメット「隕石落下地点より近い山中で 発見されたそうです」
ウィラメット「おそらく、恒星間天体U-1と隕石は 果実と種子に近い関係でしょう」
ウィラメット「地球に新たな種を・・いや」
ウィラメット「“新たな進化”を促す福音として」
長官「要するに、何だ 「進化の石」とでも言いたいのか?」
ウィラメット「いえ、その石ではなく 意思のような・・」
ウィラメット「おや?」
ウィラメット「長官、オークションが何やら・・」
ウィラメット「────────・・はぁ?」
〇コンサート会場
佐渡トキ子「え〜、ただいま確認しております もう少々お待ちくださ〜い!」
佐渡トキ子(さすがに入札ミスよね 円(¥)とドル($)の押し間違い)
佐渡トキ子(デフォルト設定は円だから 間違えるハズないんだけど・・)
佐渡トキ子(おかげで変な空気になっちゃった)
佐渡トキ子「・・そうね、ちょっとコレは 責任を負ってもらおうかしら」
佐渡トキ子「主調整室(マスター)、聞こえます?」
〇放送室
「柏崎さん! 佐渡さんが85番にカメラまわせと!」
「入札ミスかどうか確認の様子を 映したいそうですが・・」
柏崎ディレクター「何のために匿名でやってんのさ! 入札者特定できちゃうでしょ!」
柏崎ディレクター「あ〜・・でも僕の番組じゃないか」
柏崎ディレクター「いいや、どうでも トキ子ちゃんの指示通り回しちゃえ」
「分かりました!」
〇コンサートホールの全景
カメラマン「・・撮れって? マジかよ」
カメラマン「え〜っと、85番の入札者は──・・」
〇コンサートホールの全景
・・・・・いた!
ADが確認取ってるな
しかし、あの子が1億ドルを?
番組の仕込み・・なワケ無ぇし
今、こっちに気づい──・・
〇コンサートホールの全景
〇諜報機関
ウィラメット「あの少女が・・1億ドルの入札者?」
ウィラメット「長官、これは・・長官?」
長官「・・宣戦布告だ」
長官「ユーラシアのクズどもが! ご丁寧にドル表記と来た!!」
長官「潰せ!殺せ! 必ず競り落とせッ!!」
ウィラメット「待ってください! 急にどうしましたか!?」
ウィラメット「1億ドルなんて払えると思えません ただのハッタリ───・・」
長官「バカがッ! アレは共華団『無常一派』の1人!!」
長官「ウチの職員を5人も潰した 死の運び屋だッ!!!」
ウィラメット「「死の運び屋」・・・ その呼称は、長官が?」
ウィラメット「失言でした」
ウィラメット「しかし、思うのです コレはおそらく挑発──・・」
長官「競り落とされても良いのかッ!? ああ゛っ!?」
ウィラメット「良いわけないでしょうッ!」
ウィラメット「──失礼、取り乱しました」
ウィラメット「しかし、彼女がユーラシアの工作員なら 金額以上に何らかの意図が──・・」
長官「百も承知だッ! 学者如きが口を挟むな!!」
長官「もはや価値なぞどうでもいい! 競り負け自体が国家の恥!!」
長官「国の威信に関わる問題だ 押し潰せッ!」
〇コンサート会場
佐渡トキ子「確認に少々時間を要しています 今しばらくお待ちくださ──」
佐渡トキ子「はぁ!? なんで今入札が──」
$110,000,000
佐渡トキ子「85番・・ではなく51? 51番?」
佐渡トキ子「うええっ!? 51番、まさかの返しましたぁ!!?」
$111,000,000
佐渡トキ子「ウソでしょ、また入ったの!!?」
佐渡トキ子「は、はちじゅうご番ッ! 1億1100万ドルで応札ッ!!」
佐渡トキ子「51番vs85番!!! 異次元の入札合戦に入ったッ!!!!」
長岡茉莉「え、は? 何これ、現実?」
長岡茉莉「喜んで・・喜んでいいの? なに、何なのコレ!?」
〇コンサートホールの全景
$120,000,000
佐渡トキ子「51番すかさず返した! 1億2千万ドルッ!!」
佐渡トキ子「日本円に換算すると・・ 約135億円だぁぁぁっ!!!」
運び屋ちゃん「・・・・・・・・・・・・バクチョー」
ハッハッハ
ありがとう運び屋ちゃん
確定だ、あの隕石は普通じゃない
「北米が動いた」
・・この釣果は大きいよ
共華団の重い腰も
ようやく動くだろう
・・・・・よし
あと2、3度応じたら降りてくれ
運び屋ちゃん「・・・・・・・・・・・・ラジャー」
〇田舎の病院の病室
隕石ハンター「すまないね、待たせてしまって」
阿賀野さん「い〜え〜 お気になさらずぅ〜」
阿賀野さん「でもいいんですかぁ? 事務的な内容でしたけどぉ」
隕石ハンター「・・・・・どういう意味かな?」
阿賀野さん「わたしぃ、死に際って大事だと 思うんですぅ〜」
阿賀野さん「だからぁ、よぉく噛み締めたら よさげっていうかぁ」
隕石ハンター「ハッハッハ 看護師の言葉とは思えないな!」
阿賀野さん「まぁ〜コスプレですしぃ 治す仕事って肌に合いませんしぃ」
阿賀野さん「むしろぉ〜」
阿賀野さん「わたし保険なんですよぉ」
阿賀野さん「不審者は近付けるなってぇ〜 お願いされててぇ」
阿賀野さん「だからぁ」
隕石ハンター「おいおい!いきなりだな!」
隕石ハンター「もう少し自己紹介とか・・」
隕石ハンター「参ったな あまりケンカは・・」
隕石ハンター「得意じゃないが── 何とかしよう!」
〇田舎の病院の病室
???「あ────ぐっ──・・」
〇おしゃれな大学
1億2500万ドル!
1億2500万ドルです!
日本円にして140億円を突破ァ!!!
妙高新太「おいおい・・マズい展開になってきた!」
妙高新太「共華団の連中か・・クソッ! 長岡妹だけでも早めに隠すか」
妙高新太「アガノさんに念押しを──・・」
妙高新太「──・・!? 病院から誰か出てくる!?」
妙高新太「長髪の男と──・・長岡妹? 長岡茉莉の知人か?」
妙高新太「いや、彼女の身辺調査では あんな男はいなかった・・」
妙高新太「まさかっ!?」
〇田舎の病院の病室
妙高新太「アガノさんッ!? 無事で──・・」
妙高新太「────ッ!?」
阿賀野さん「・・妙高さぁん」
阿賀野さん「ごめんなさぁい 思ったよりキツぐっ──!?」
妙高新太「すまない、アガノさん」
妙高新太「・・幸いなことにこココは病院だ すぐに誰か来るさ」
妙高新太「今のところ展開は最悪続きだが・・」
妙高新太「──主導権はまだ北米側だ」
1億3000万!
1億3000万ドルが入ったぁ!!!
〇コンサート会場
佐渡トキ子「1億3000万ドル! これに対し85番は──・・!?」
佐渡トキ子「ホントにない? ちょっと85番さんに再確認してきて」
〇コンサートホールの全景
運び屋ちゃん「・・・・・・・・・コングラッチュレーション」
〇コンサート会場
佐渡トキ子「・・・OK? OKなのね?」
佐渡トキ子「あとは・・」
佐渡トキ子「主調整室、聞こえますか?」
〇放送室
「佐渡さんより予定変更です ハナビちゃんのVTRは全カット!」
「競売終了後のクラファンは ナシでお願いします!」
柏崎ディレクター「当然だよ 募金の“ぼ”の字も出しちゃダメだ」
柏崎ディレクター「カケラでも匂わせたら大顰蹙だよ まさか、こんな顛末になるとは!!」
柏崎ディレクター「さ、落札演出入るよ! カウント!」
「了解です!」
〇コンサート会場
佐渡トキ子「え〜・・1億3000万ドル 他、ありませんか・・?」
佐渡トキ子「ありませんね・・?」
佐渡トキ子「おぉ〜〜めでとうございます!! 落札額1億3000万ドル!」
佐渡トキ子「日本円換算で、なんと・・ 約146億円です!!!!」
佐渡トキ子「ではっ!入札者番号51番の方! どうぞ壇上へ──・・」
ピークスキル「Hahhhhhhhhハァッ!!! めっちゃオーバーバジェットだゼ!!!」
ピークスキル「アップヒルバトルにファッキンビッド! やけっぱちのトーヘンボクってナ!!」
佐渡トキ子「あの、えっと・・」
佐渡トキ子「あ、あらためて伺います! 今のお気持ち──」
ピークスキル「い ま の お き も チィ!?」
ピークスキル「──────────── ────────────」
ピークスキル「──────────やったゼ!」
佐渡トキ子「・・で、ですよね! おめでとうございます!!」
佐渡トキ子「会場の皆さま! 改めて大きな拍手を〜!!」
長岡茉莉「おわっ・・・・た?」
長岡茉莉「146億円、だっけ ・・ぜんぜん実感湧かないや」
長岡茉莉「でも、これで」
長岡茉莉「ハナビは────!」
〇ホールの舞台袖
粟島研究員「とんでもない展開だな」
粟島研究員「落札したマッチョマン・・ たしかピークスキルつったか?」
〇研究開発室
〇ホールの舞台袖
粟島研究員「隕石を借りパク・・持って行く対価が 米アゾナ大での研究生活だった」
粟島研究員「たしか、案内役はあのマッチョマン・・」
粟島研究員「ってことは、アゾナ大関係者だよな?」
粟島研究員「でもイチ大学にしちゃ落札額が異常だ 大規模な研究施設が建つレベルだし・・」
粟島研究員「確かに全てが異常な隕石だけど」
粟島研究員「なぜあそこまで異常な執着を──」
粟島研究員「もしかして」
粟島研究員「あの腕みたく、隕石の異常性を 何か掴んでいた?」
粟島研究員「・・というか空港で逃げた手前 マッチョに見つかるのもマズイよな」
粟島研究員「最後まで見届けたいけど もっと奥に引っ込んでおくか」
〇放送室
粟島研究員「ここなら安心・・」
粟島研究員「ん?」
粟島研究員「慌ただしいな、取り込み中か?」
粟島研究員「なら別の部屋に・・」
アシスタントディレクター(AD)「そこ、そこの方!!」
アシスタントディレクター(AD)「隕石少女の関係者でしたよね!?」
粟島研究員「一応そうですが・・」
アシスタントディレクター(AD)「なら良かった! いや良くないんですが!!」
アシスタントディレクター(AD)「ちょっと私共では判断できかねるため 関係者さまに真偽を伺いたく!!」
粟島研究員「はぁ」
アシスタントディレクター(AD)「おそらくイタズラ電話の類かと 思うのですが、万が一もあり・・」
アシスタントディレクター(AD)「先ほどこちらの写真と共に 番組に問い合わせがありまして・・」
粟島研究員「いったい何が・・」
粟島研究員「────え?」
〇コンサート会場
佐渡トキ子「・・それでは!会場の皆さま! そしてご覧いただいた全ての方々!!」
佐渡トキ子「逆転Bidder!これにて閉幕です!!」
佐渡トキ子「いま一度、大きな拍手をお願いいたします!!」
佐渡トキ子「なお本配信はTNネットでご視聴頂けます 「もう一度見たい!」という方は ぜひTNネットをご覧ください!!」
佐渡トキ子「ここまでは総司会兼ディレクターこと 佐渡トキ子がお送りしました〜〜!!」
〇コンサート会場
佐渡トキ子「────マツリちゃん!!」
長岡茉莉「トキ姐さん!!」
「大 成 功(でしたね)〜〜〜!!」
長岡茉莉「3億の治療費どころじゃないですよ!!」
長岡茉莉「えっと、いち、じゅう、ひゃく・・」
佐渡トキ子「1億3000万ドル・・日本円で146億円ね」
佐渡トキ子「トキ子的にも現実感なくて まだふわふわしてるけど・・」
佐渡トキ子「隕石史上、ダンッッッッットツ最高額の落札!!」
佐渡トキ子「間違いなく歴史に残る番組と成ったわ!!!」
佐渡トキ子「一面トップどころか世界ニュース 席巻しまくら千代の里よッッッ!!!」
長岡茉莉「素が出てますよ〜トキ姐さ〜〜ん!」
佐渡トキ子「あら、ごめん遊ばせ」
長岡茉莉「ハナビも、これで──・・」
佐渡トキ子「ほんと・・ よく頑張ったわね、マツリちゃん」
ピークスキル「HAHAHA!グッドスマイルガールズ!! カーテンコールにジャストフィット!」
ピークスキル「But、ディールの時間だゼ!! Metour(隕石)───」
ピークスキル「───『U-1の破片』はどこダ?」
長岡茉莉「・・ユーワン?」
長岡茉莉「あの隕石って名前あったんだ」
ピークスキル「マッチマニーでマストバイ! ウィナービッダーにミーティアカモン!!」
ピークスキル「Hurry up and bring it now!! もう待てないゼshout my hoooo!!」
ウィラメット代理人「Mr.ピーク,カームダウンですね」
ウィラメット代理人「ですが落札者の心境として はやく現物を確保したいですね」
佐渡トキ子「え、ええもちろん! 振り込みを確認したのち、速やかに」
佐渡トキ子「ですが額が額です 今は終わったばかりですし、改めて──」
ウィラメット代理人「そのつもりでしたがね 悠長に構えられなくなりましてね」
ウィラメット代理人「契約書が完了次第、すぐに 渡して欲しいのですね」
ウィラメット代理人「Mr.ピーク、ケースを」
ピークスキル「Yeah, here, sure!!」
ウィラメット代理人「3億円ありますからね 手付金代わりに取っといてくださいね」
佐渡トキ子「え、え、げ、現ナマ〜〜ッ!!?」
〇ホールの舞台袖
長岡茉莉「ハナビ、まだ起きてるかな〜?」
長岡茉莉「ねえちゃ、テレビ出たよ〜って 電話しちゃおっかな〜〜?」
長岡茉莉「・・・」
長岡茉莉「でも────・・ まだ終わりじゃないよね」
長岡茉莉「海外での心臓移植・・ ハナビの渡航費に、私の現地滞在費」
長岡茉莉「あと医療費の前払い金も必要だっけ? ドナーだっていつ巡り会えるか・・・」
長岡茉莉「ハナビの心臓のタイムリミットに 間に合わない可能性は──・・ まだ、ある」
長岡茉莉「だけどスタートラインには・・立てた!」
長岡茉莉「村上先生にまた相談しなきゃね お金は何とかなったんだし・・」
長岡茉莉「・・・・・明日でいっか!」
粟島研究員「マ、マツリさん!!!」
粟島研究員「マズイことになった!!! 隕石はまだ渡しちゃダメだ!!」
長岡茉莉「な、なんですか〜? また盗もうったってそうは──・・」
粟島研究員「『隕石ハンター』と名乗る男から 写真が届いた」
粟島研究員「・・・キミ宛だ」
長岡茉莉「写真って、何が────・・」
〇黒
?
何これ、自撮り?
え?
写真の奥に──・・
────第15話────
差し押さえ
思ったよりも落札価格がついて驚きましたが、こち亀なんかでもそうですが大き過ぎる金が手元に入った、めでたしめでたしとはたいていならないですよね。金額がついておおっ、となったものの同時に嫌な予感はうっすらいたしました。
そして今回、腕の謎が少しずつ明らかになってきておや、これはひょっとして・・・誘拐さえ何とかなれば何とかなるのでは。次回も楽しみにしてます。