海賊と海竜

キリ

オリジナル(脚本)

海賊と海竜

キリ

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海賊と海竜
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〇海
  突然、雷鳴が轟く──
  トゲトゲしさを増すカミナリは、
  とある海賊船を標的にした
「帆をたためえええええ! ! ! ! !」
「あ!やべえよ、船内まで海水が 流れ込んでやがる」
「ああ・・・もうこの世の終わりだぁ・・・」
「泣き言ほざいてんじゃねえよっ! ! !」
「生きる希望を捨てんじゃねえ!」
「俺様たちゃあまだ、 宝を見つけちゃいねんだからなあ!」
「来世よりもでけえお宝! 財宝を見つけ出すまで死ぬんじゃねえぞ! てめえらあああっっっ! ! ! ! !」
「うおおおおおおおおおっっっ! ! ! !」

〇黒
  周りに被雷していたカミナリは
  悲しいことに、海賊船を直撃した
「船長ぉおおおーー! ! !」

〇海辺
  "嵐のあとの残像"とでも現すかのように
  空は黒いままだった──
  なんとか波に流されて、無人島の砂浜で
  意識を取り戻した船長
  仲間たちとはぐれたか、あるいは
  仲間たちは波に飲み込まれてしまったのか
メレディス「くっそ、俺様のっ・・・仲間を・・・っ」
メレディス「俺様の、船をっ・・・・・・」
メレディス「は・・・どうしたらっ・・・」
メレディス「チキショーー! ! ! ! ! 海のばかやろぉおおおおおっ!」
メレディス「ぶぎゃあっ!」
メレディス「誰だよ、この俺様に水ぶっかけた奴 出てこい!」
海竜「カカカカッ♪」
海竜「クルルゥ」
メレディス「ぬっ? !」
メレディス「ええとぉ・・・・・・」
メレディス「おい!俺の目をごまかそうったって そうはいかねえぞ?誠の姿を見せろ!」
海竜「・・・クゥ」
海竜「カカカカッ♪」
メレディス「おいおい、おかしいだろ!おい!」
海竜「マネマネ♪」
メレディス「あ?マネ?って・・・」
メレディス「まさか俺様に寄せるために人間の姿に なってるってか? ? ?」
海竜「ヒトトン♪ヒトヒト♪」
海竜「カカカカッ」
メレディス「・・・っ」
メレディス「っふは、」
メレディス「アッハハハハ!」
メレディス「おかしなやつ」
メレディス「まぁ襲われる心配はねえようだ」
メレディス「好きにしろよ」
メレディス「俺様は一刻も早く、仲間たちを 助けに行かねえとっ!」
海竜「クルゥ?」

〇海辺
メレディス「うっし、こんなもんかな」
  船長・メレディスは、丸太を並べて
  風を読むための旗をかかげたイカダを
  短時間で作り上げた
メレディス「大昔だが、遊びで船造りしてたなぁ はあ〜腕は落ちてなくて助かったぜ」
メレディス「だが、ガキの頃と今の体重とかなりの差だ」
メレディス「俺様の今の体重で、浮かぶかどうか...」
海竜「う?」
メレディス「"浮かぶ"な、」
メレディス「だーーーくそっ もう少し丸太がありゃあ耐久性が・・・」
海竜「クク!」
海竜「クゥ!」
メレディス「まーた姿変わってやんの、お前どんだけ 変わり身あんだよ」
  海竜は、イカダの真下に
  身を隠すように待機していた
  その場所は、ちょうど丸太を追加したい
  と思っていたところだった
メレディス「お前っ、まさかそこにいるつもりか? ?」
「クルゥ」
メレディス「バカヤロウ!水圧と俺様の体重が 乗っかることになんだぜ? お前に負荷がかかりすぎだ!乗れねえよ」
「クルゥクルゥ!」
メレディス「チッ」
メレディス「すまねえ、」
メレディス「けど、この状況じゃあな」
メレディス「よしっ」
「ククッ!」
  メレディスがイカダに一歩踏み入れた瞬間
  海竜は苦しそうな一声を上げた
メレディス「うおっ!なんだ、やっぱ重かったか?」
海竜「クゥ...」
メレディス「あぁ、木のささくれが刺さったのか」
メレディス「少し痛かったな、待ってろ」
メレディス「これで大丈夫だ、ケガはねえし、な?」
海竜「・・・」
海竜「クク!」
メレディス「うう・・・こりゃあ、 またささくれがあると厄介になるなぁ」
メレディス「もう日も暮れる頃か、海に出るのはヤベえ」
メレディス「今日は止めだ」
海竜「・・・」
メレディス「お前のせいじゃねえから、そんな顔すんな」

〇海辺
メレディス(明日には、イカダのささくれを何とかして あいつに浮きになってもらうしかねえ)
メレディス(頼むぜ仲間たち、一人でも構わねえから みんな死なないでいてくれよ・・・?)
メレディス(にしても、さみぃ)
メレディス(服がびしょ濡れだもんな・・・)
メレディス(耐えるっきゃね・・・)
海竜「クルルゥ」
  海竜はメレディスの身体に巻き付き、
  体温を温めてくれているかのように
  身を寄せてきた
メレディス「・・・っ」
メレディス「ふふっ」
メレディス「あったけえよ」
メレディス「サンキュー」

〇海辺
メレディス「あー、ムカつくほど晴れてやがる」
メレディス「ま、作業するにはもってこいか」
メレディス「作業開始だ!」
メレディス「スゥーーーーっ」
海竜「クルゥ?」

〇アクアリウム
  メレディスは、イカダの真下にある
  丸太のささくれを取り除こうとした
  だが陸上からイカダを逆さまにして
  作業することで、
  旗が折れてしまうことを恐れ
  水中で作業することに決めた
メレディス「うぐっ・・・」

〇海辺
メレディス「ぷはあ!」
メレディス「息が続かねえ、ったく」
メレディス「スゥーーーーっ」

〇アクアリウム
メレディス「・・・」
海竜「・・・」
海竜「(ガブッ)」
メレディス「!」
  見様見真似か、海竜は丸太のささくれ部分を鋭い牙で剥がしていた
メレディス「・・・」

〇海辺
  海竜の手も借り、メレディスは
  何回か潜りを繰り返し、
  危険なささくれを除くことができた
メレディス「よし、今度こそ頼むぞ」
海竜「クク!」
メレディス「・・・」
メレディス「・・・何も言わねえな、大丈夫か?」
「クルルゥ♪」
メレディス「そか、じゃああとはこれ付けねえと」
メレディス「おーい、一旦出てこい」
海竜「クルゥ」
メレディス「念のためだが、その辺にあった布切れを お前の身体に巻き付けるぞ」
メレディス「これでなんか刺さっても、痛くねえはず」
海竜「クク♪」
メレディス「頼むぜ!」

〇海
メレディス「島から出たものの、方向がさっぱりだ」
メレディス「ちなみに、お前は分かるのか?方角」
「クオ?」
メレディス「・・・なんでもねえよ」
メレディス「おおーーーーーーーーい!」
メレディス「メレディスだーーーーーーー!」
メレディス「返事よこせーーーごらあーーーーー!」
メレディス「だよな」
メレディス「音でも鳴らすもん作ればよかったか?」
メレディス「うお、恐ろしい鳴き声だな」
「・・・・・・・・・・・・ょう──」
メレディス「っ!」
メレディス「なあ、もう一発鳴いてくれ?」
「船長ーー!」
メレディス「お!」
  海竜の声が届いたのか、船員たちを乗せた
  船は傷だらけだったが
  どうにか船体は、浮かんでいる状態だった
「船長だ!」
「船長ーーー!無事で何より〜〜」
メレディス「お前らあぁ、会いたかったぜ!」
メレディス「全員無事かー?」
「まあね」
「5人は行方知れずだが、残りはみんな 元気ですぜ!」
メレディス「全員じゃねえのは悔しいが、」
メレディス「予想以上にピンピンしてて安心したわ」
メレディス「なあ、早く縄を下ろせ!船に上がれねえ」
「ああ!うっかりしてやしたイヒヒッ 今ロープ持ってきやすね、少々お待ちを」
メレディス「・・・」
メレディス「お前ともここで別れだ」
海竜「っ・・・クルゥ」
メレディス「きっと、もう会わねえだろうな...」
メレディス「あの島に宝があるかは疑問だが」
メレディス「あの島、お前の住処だろ?」
海竜「・・・っ」
メレディス「・・・お前は、人目に付かないほうが 幸せに暮らせるだろうよ」
メレディス「ましてや、いつ密売人たちに襲われるか 分からねえ世界だ」
メレディス「だから、船に乗せることはできねえよ」
海竜「・・・クルゥ」
メレディス「?」
海竜「・・・クルゥ」
メレディス「・・・」
メレディス「それでも、」
メレディス「俺様と、俺様たち海賊と、来るってのか?」
海竜「クク!」
メレディス「・・・」
メレディス「・・・はあ」
メレディス「変なのに懐かれちったな」
メレディス「しかも、ただの鳴き声のはずが お前の鳴き声はクルー、"仲間"って意味だ」
メレディス「こりゃ、仲間に出来ない理由なんて、 いらねえか」
メレディス「一緒に船に乗り込むぞ、スカー!」
海竜「!」
海竜「クルゥ!」

〇海
「えええーー?なんですか船長、そいつは」
メレディス「こいつはスカー、俺様たちの 新しいクルーだ!」
メレディス「お前ら!スカー連れて、宝目指して 出向しやがれーーーーー! ! ! ! !」
「うおおおおおおおおおっっっ! ! ! !」

コメント

  • 「猛暑なので涼しい作品を」とのことですが、作者さんの作品はいつも優しい雰囲気に包まれているので読み終わった後に心がポカポカとあったかくなります。海竜スカーのカタコトの日本語が可愛くてたまらないですね。ヒトトン♪

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