1 カンデラ × = q.e.d.

きせき

エピソード3-秋色の刻-(脚本)

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〇畳敷きの大広間
秋川「すみれ様はあの子を助けていただけますか?」
  そう、切り出した秋川さん・・・・・・
  そんな、真摯な言葉に私は・・・・・・
黒野すみれ「・・・・・・」
黒野すみれ「(勿論、春刻を助けられるなら助けたい。でも、私には何の力もない)」
黒野すみれ「(「助ける」なんて簡単に気安く言えない)」
秋川「助けられるのか・・・・・・と考えるのは悪いことではありません」
黒野すみれ「え?」
秋川「ただ、時に「助けられるか」より「助けたい」という気持ちが重要なのです」
黒野すみれ「・・・・・・私、そんなに考えていること、分かりやすいですか?」
  ちょっと前、春刻や青刻さんにも
  考えていたことを見透かされたことがあった。
  自分のことをこんな風に言うのも変だが、
  私は口数も少ない方だし、
  表情も乏しい方だとよく言われている。
  ・・・・・・という訳で
  考えていることが分かりにくいと言われる方だと思う。
秋川「うーん、凄い分かりやすい訳じゃないですよ。ただ・・・・・・何て言うんでしょう」
秋川「貴方は不用意なことを言わないでしょうし、徒に誰かを傷つけるような人ではない」
秋川「そんな人間ならどう考えるか。それを言っているに過ぎないだけです」
秋川「妻も、あの子もそうだったように・・・・・・」
黒野すみれ「(刻世さんと春刻も・・・・・・)」
  話は逸れてしまったが、私は答えた。
  可能な限り、春刻を助けると・・・・・・
秋川「ありがとうございます。それでは、こちらに来ていただけますか?」
  秋川さんに連れられて向かった場所。
  それは私がかつて命を落としかけた場所だった。

〇屋敷の書斎
黒野すみれ「ここは・・・・・・」
秋川「はい、春刻様の書斎です。ただ、あまり活用はされていないようでしたが・・・・・・」
黒野すみれ「ハハハ・・・・・・」
秋川「では、電気をつけますから少々お待ちを」
黒野すみれ「あ・・・・・・」
  爆発する・・・・・・と思った瞬間、
  スイッチ横の隠し蓋を開き、その中のボタンを押す。

〇屋敷の書斎
秋川「ふふふ、ここには大事なものを隠しているので」
黒野すみれ「(そのせいで私は死にかけたことがあるんだけど・・・・・・)」
  私はそんなことを考えると、秋川さんは箱を持ってくる。
黒野すみれ「この箱は?」
秋川「この箱の中にあるのは私が亡き妻から譲り受けたもの」
秋川「彼女が自らの1年間と引き換えて生み出したもの」
黒野すみれ「それってもしかして・・・・・・」

〇貴族の部屋
リエ「あ、やっぱり、結納品ってあの例の蝋燭なんですか?」

〇屋敷の書斎
秋川「そう・・・・・・」
秋川「明石家当主のみに継がれる秘術でしか作れないと言われている過去を確定する蝋燭」
黒野すみれ「・・・・・・」
黒野すみれ「(まさか、またこの蝋燭を見ることになるなんて・・・・・・)」

〇黒
  明石家の当主のみに継がれていく秘術。
  多くのあったかも知れない過去から任意の過去を選り、
  確定する秘術。

〇屋敷の書斎
黒野すみれ「(私は何度も死にかけたけど、その過去はなかったことになった)」
黒野すみれ「(明石家の当主の・・・・・・春刻の寿命を引き換えにして・・・・・・)」
秋川「すみれ様?」
黒野すみれ「あ、すみません・・・・・・」
秋川「いえ、先程、貴方にしていただいた話が本当に起こったのならさぞ複雑でしょう」
秋川「私が受け取ったのは1本でしたが、それでさえ彼女から譲り受けた時は複雑でした」
秋川「1年とはいえ、彼女の命を、生きるべき時間を奪って、作られたもの」
秋川「愛した女性から結納の証としてそんなものを受け取らなければならなかった」
秋川「仮にそれが彼女の情や思いが込められたものだとしても・・・・・・」
黒野すみれ「・・・・・・」
  淡々と語る秋川さんの言葉が終わる。
  そして、また淡々と始まった。
秋川「私はね、すみれ様」
黒野すみれ「はい」
秋川「これを今まで使うつもりはなかったんです」
秋川「使ってしまえば、彼女とは永遠に会うことは叶わなくなりそうでしょう?」
黒野すみれ「・・・・・・」
黒野すみれ「(そう、この蝋燭は過去に行けるが、行きっぱなしになる訳じゃない)」
黒野すみれ「(終わりが来る。過去が確定した瞬間、留まりたい時は過ぎ去った時間でしかなくなる)」
秋川「だから、私はあの子の為に遺すのが1番と考えていました」
黒野すみれ「春刻・・・・・・さんに?」
秋川「えぇ、あの子なら大切に使ってくれる・・・・・・」
秋川「何せ、彼女の1年分の寿命なのだから」
秋川「でも、気が変わりました。こちらはすみれ様・・・・・・貴方に託しましょう」
黒野すみれ「え?」
秋川「本来なら私自身が彼を助けるの筋でしょう。しかし、貴方も知っている筈だ」
秋川「私の身体は既に明日も知れぬ身であること・・・・・・」
秋川「まぁ、それは生きとし生けるもの皆でしょうが、」
秋川「少なくとも私よりは貴方の方が彼を助けられる可能性が高いでしょう」
秋川「さぁ、これを使って、彼を助けてもらえませんか?」
黒野すみれ「・・・・・・」
  私の手は蝋燭を受け取るか、どうか、迷っていた。
  ▼受け取る
   →そのまま読み進めてください
  
  ▼受け取らない
   →暫くお待ちください

〇屋敷の書斎

〇屋敷の書斎
黒野すみれ「分かりました。必ず・・・・・・助けると約束できないですが・・・・・・助けます」
秋川「ありがとうございます。すみません、最後までこんなことを頼んでしまって」
  秋川さんは笑う。春刻と似た顔で、表情で・・・・・・
黒野すみれ「(お父さん似なんだろうな、春刻は・・・・・・)」
  それは顔立ちとか、表面的なことだけではない。
  雰囲気。
  人を大切にする仕方のようなもの。
  確かにこの人とともに過ごしてきた・・・・・・
  育ち、生きてきた・・・・・・というような
  感じがする。
黒野すみれ「(あぁ、春刻だ・・・・・・)」
  私はいつの間にか、訳も分からずに泣いていた。
  彼がいなくなる未来を思うも、
  それは考えることはできない。
秋川「すみれ様、こちらをどうぞ」
黒野すみれ「ありがとうございます」
  私は秋川さんからハンカチを受け取る。
  洗って返せないことを詫びる。
秋川「お気になさらずに。古いハンカチです。それこそ、10年以上前の・・・・・・」
黒野すみれ「10年以上前・・・・・・」
秋川「はい。あれは春刻様が8歳の頃でございました」
秋川「私の誕生日に、春刻様がくださったものです」
秋川「あの頃は幸せだった・・・・・・病もなく、あの子の側にずっといれる気がしていた」
黒野すみれ「・・・・・・」
秋川「あ、おかしなことを申しました。お忘れください。病が見つかるのは時の運・・・・・・」
秋川「時を戻したところで、私の天命を望むように変えることはできません」
秋川「まぁ、すみれ様は聡明な方・・・・・・」
秋川「このようなこと、差し出がましいことかと思いますが」
黒野すみれ「(そう・・・・・・過去を変えることは不可能ではない)」
黒野すみれ「(ただ、どのように時が進み、どんな風に確定されるかは分からない)」
黒野すみれ「(無理のない修復を経て、確定する未来・・・・・・)」

〇近未来の病室

〇配信部屋

〇地下室

〇屋敷の書斎
黒野すみれ「(戻るのならあの火事が起こる前・・・・・・)」

〇森の中
  明石朝刻と
  来見二夕菜が
  出会うのを阻止すれば良い

〇宮殿の門
黒野すみれ「(あとは刻世さんに春刻を後継者にしないように頼む・・・・・・)」

〇屋敷の書斎
黒野すみれ「(それなら少なくとも、春刻は本来あった寿命分を生きることができる)」

〇新緑
黒野すみれ「(その結果、私とトキのように朝刻さんと来見さんが出会えなくても・・・・・・)」
黒野すみれ「(朝刻さんが後継者に選ばれて、東刻さんが朝刻さんを亡きものにしても・・・・・・)」
黒野すみれ「(仮に私の父や秋川さんが亡くなっても・・・・・・春刻はこの世に存在できる)」
黒野すみれ「(考えられる、残酷すぎる結末・・・・・・)」

〇屋敷の書斎
  私は意を決すると、
  ペンを取り、
  ノートに明石朝刻と来見二夕菜が接触する日を書く。
秋川「こちらをどうぞ」
秋川「蝋燭には彼女の力が宿っているので、」
秋川「蝋燭の火でそちらの紙を燃やせばすぐに過去に飛びます」
黒野すみれ「分かりました」

〇魔法陣2
秋川「すみれ様。貴方にお会いできて良かった・・・・・・」
黒野すみれ「秋・・・・・・いや、夏坂さん」
  秋川さん、夏坂さん、春刻のお父さん・・・・・・
  目の前の彼をなんて呼んで良いのか、
  戸惑いながら呼ぶ。
黒野すみれ「私も会えて良かったです」
黒野すみれ「(だから・・・・・・)」
  私は間を置くと、最後の言葉を彼に言った。

〇屋敷の書斎
秋川「・・・・・・あの子を守る為に、死なないでください・・・・・・か」
秋川「確かに死にたくないですよ。私もしても・・・・・・」

〇風流な庭園

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