第二話「極嬢男姿。だよ」(脚本)
〇黒
「あっ・・・あぁっ!」
「あっ!あっ・・・ア゛・・・」
「ア゛ア゛ァ゛ァ゛ッ──!!」
〇兵舎
ヤタラ「パンツ破れたッ!」
ヤタラ「絶望して破れたッ!」
ミオ「ケツ圧ですよ、女王様」
ミオ「あ、『元』女王」
ヤタラ「どういうことですの?」
〇立派な洋館
「破れたパンツを補修していたら・・・」
〇謁見の間
美少女男子に──
王位を簒奪されましたわぁッ──!!
↑ 美少女男子
タツモト「お品書きです・・・」
イケメンフルコース
三雨 (ササメ)「フレンチかぁ」
三雨 (ササメ)「これ」
三雨 (ササメ)「『イケメンのラタトゥイユ』」
三雨 (ササメ)「家庭料理だろ?」
三雨 (ササメ)「素朴なイケメンってことか?」
タツモト「口にすると甦る」
タツモト「懐かしく、優しい記憶──」
タツモト「そんな気分にさせてくれるイケメン」
タツモト「という意味だと思います (知らんけど)」
三雨 (ササメ)「はっ、そんな男・・・」
三雨 (ササメ)「俺の過去には──」
三雨 (ササメ)「あっ」
三雨 (ササメ)「ひとり・・・」
タツモト「?」
三雨 (ササメ)「いただこうかな・・・」
タツモト「はぁ」
三雨 (ササメ)「デザートは──」
三雨 (ササメ)「キミなの?」
タツモト「ははっ」
死ね
三雨 (ササメ)「!?」
〇黒
遡ること数時間前──
〇結婚式場の前
三雨 (ササメ)「方陣展開」
三雨 (ササメ)「超耽美──」
三雨 (ササメ)「RAY」
── 超耽美・RAY ──
『耽美道具』のひとつ
耽美道具とは──
太古に存在した『超耽美文明』
そのオーバーテクノロジーの結晶である
〇黒
〇飛空戦艦
〇黒
〇飛空戦艦
「魔導機関に損傷!」
「飛行維持できません!」
〇コックピット
ナオトラ「ササメぇ・・・」
ナオトラ「わっち、諦めないからぁ!」
〇黒
〇結婚式場の前
三雨 (ササメ)「気が向いたら──」
三雨 (ササメ)「また遊んでやるよ」
ネコニキ「やめとけ」
三雨 (ササメ)「ネコニキぃ〜」
ネコニキ「バナナに封印されるぞ?」
三雨 (ササメ)「あん時は」
三雨 (ササメ)「手ぇ抜いてやったんだよ──」
ルック「も、もし!」
三雨 (ササメ)「ん?」
ルック「そなたは──」
〇荒廃した市街地
〇結婚式場の前
ルック「そうだった!」
ルック「地蔵が!」
三雨 (ササメ)「ふーん」
三雨 (ササメ)「自律型致死魔法システムか」
ルック「お兄様!」
ルック「力を貸してくださらぬか?」
三雨 (ササメ)「ヤダ」
ルック「えっ」
三雨 (ササメ)「どーでもいい」
ルック「そんな!命が──」
三雨 (ササメ)「好物(イケメン)以外の──」
三雨 (ササメ)「命は、どーでもいい」
ルック「・・・」
ルック「猫どの」
ネコニキ「お、おう」
ルック「これが答えか?」
ルック「うっ!」
ネコニキ「おいおい」
ネコニキ「傷が・・・」
ルック「余は・・・」
ルック「こんな答えならいらん!」
ネコニキ「ぁ・・・」
三雨 (ササメ)「なんだあのガキ」
三雨 (ササメ)「最強耽美の俺さんが──」
三雨 (ササメ)「弱者相手にボランティアはねーだろ」
ネコニキ「ササメよ・・・」
三雨 (ササメ)「ん?」
〇崩壊した噴水広場
地蔵「ジゾッジゾッ──」
ヤタラ「ふん」
ヤタラ「ようやく──」
ヤタラ「『勘』が戻ったかしら?」
ルック「姉上!」
ヤタラ「え?」
ルック「ご無事ですか?」
ヤタラ「まっ、可愛い子ね」
ヤタラ「恋ですの? 戦場の恋ですの?」
ルック「ルックですよ、姉上!」
ヤタラ「まっ!?」
ミオ「殿下!」
ミオ「この辺りの市民は避難させました」
ミオ「殿下は学校に向かってください!」
ルック「うむ!」
ミオ「これを!」
ルック「かたじけない!」
ヤタラ「知ってましたの?」
ミオ「殿下の女装ですか?」
ミオ「指南したのは私ですから」
ヤタラ「!?」
〇荒廃した市街地
梱包のパワー
ガムテ「オモチ・・・」
ガムテ「あのヒス女め、余計なことを!」
ガムテ「我々まで地蔵に襲撃されて──」
地蔵「ジゾッ」
ガムテ「なにっ!?」
ガムテ「えっ」
ルック「危なかったな」
ガムテ「・・・貴様、なぜ助けた?」
ガムテ「私は──」
ルック「余は子供を助けに行くのだ」
ルック「その子達の前で──」
ルック「人命を見捨てて来たとは言えんだろ?」
ガムテ「・・・」
〇ファンタジーの学園
ルック「みな、無事か!」
ルック「逃げ遅れた者は──」
ルック「あっ!?」
ルック「あっちか!」
〇荒廃した教室
地蔵「ジゾッジゾッ」
生徒「ぁぁ・・・」
生徒「やだよ、やだ──」
「やめろぉ──!!」
生徒「誰!?」
ルック「余の生徒に手を出すな!」
ルック「ん!?」
ルック「弾が──!?」
地蔵「ジゾッ」
ルック「いかん!逃げるぞ!」
生徒「う、うん」
生徒(誰なのッ──!?)
〇おしゃれな廊下
ルック「むッ!?」
「ジゾッジゾッ」
ルック「まずい、塞がれた・・・」
「ジゾジゾッジジゾ──」
梱包のパワー!
ルック「えっ」
ガムテ「こっちだ!」
ルック「そなたぁ〜」
ガムテ「早くこい!」
〇ファンタジーの学園
ルック「そなた、名は何というのだ?」
ガムテ「馴れ馴れしいぞコラ!」
生徒「うわッ!!」
「まっ──!?」
ルック「怖い・・・」
ガムテ「梱包のパワッ」
地蔵「ジゾ──」
ガムテ「ぐぅ」
地蔵「ッ!」
ルック「この状況なら・・・!」
地蔵「──!?」
ルック「方陣展開ッ!」
ルック「ァァ〜」
「ジゾゾゾッ──」
ルック「!?」
〇黒
〇ファンタジーの学園
ルック「・・・」
ルック「あれっ?」
三雨 (ササメ)「やーれやれ」
三雨 (ササメ)「品のねぇ魔法だぜ」
ルック「そなた!」
ネコニキ「ササメよ、数が多いぞ」
三雨 (ササメ)「しゃーねぇな」
三雨 (ササメ)「キメるか」
三雨 (ササメ)「『極嬢男姿』 (ごくじょうだんし)」
三雨 (ササメ)「『八方耽美閨塞』 (はっぽう たんび ねや ふさがり)」
〇屋敷の寝室
ルック「ッ!?」
ルック「な、どこだ・・・ここは?」
ルック「すももの匂い──」
ネコニキ「ここは『閨(ねや)』だよ」
ネコニキ「耽美な男の娘の秘密の部屋さ」
ルック「ひと部屋の中のようだが」
ルック「まるで巨大な空間にいるような──」
ガムテ「ん?」
ガムテ「魔力が・・・」
ガムテ「私の魔力が消えた!?」
ネコニキ「魔法使いの姉ちゃんなら感じるよな」
ネコニキ「この空間は──」
魔法にまつわる全てが
耽美に服従する──
『絶対耽美領域』
つまり
魔法は無効化されるってことだ
ま、それだけじゃないがな──
三雨 (ササメ)「いっちょあがり」
『極嬢男姿』
耽美使いの奥義さ──
ルック「すごい・・・」
ルック「魔法使いをただの人間にしてしまうのか」
ガムテ(耽美使い?)
ガムテ(伝説の──男の魔法使い?)
ガムテ(もし、そうだとしたら・・・)
三雨 (ササメ)「チェックアウト」
〇黒
〇ファンタジーの学園
ルック「・・・」
〇崩壊した噴水広場
〇山の展望台(鍵無し)
〇ファンタジーの学園
三雨 (ササメ)「さてと」
三雨 (ササメ)「お食事(イケメン)の時間かな〜?」
ルック「お兄様」
ルック「なんと礼をすれば──」
ルック「あっ」
ネコニキ「おいおいっ!」
〇黒
〇要塞の回廊
MATO本部
ホシノ「・・・」
オモチ「あら、姉様」
オモチ「おはようございます」
オモチ「夜だけど」
ホシノ「星のイケメンは?」
オモチ「へぇ〜」
オモチ「さっそく『お楽しみ』ですか?」
ホシノ「・・・」
オモチ「冗談だってば・・・」
オモチ「イケメンは部屋にいるから」
ホシノ「よもや──」
ホシノ「傷など負わせておらんだろうな?」
オモチ「・・・自分の目で確かめれば?」
オモチ「私、”姉様の部下”じゃ無いので──」
ホシノ「・・・」
オモチ「失礼」
ホシノ「・・・」
〇城の客室
シャモジ「・・・」
シャモジ「!」
ホシノ「邪魔をするぞ」
シャモジ「あ・・・」
ホシノ「少しは落ち着いたか?」
シャモジ「そう・・・努めています」
ホシノ「・・・」
シャモジ「・・・」
シャモジ「あの・・・なにか?」
ホシノ「あぁ、すまぬ」
ホシノ「変わらぬな。と思って」
ホシノ「そなたは」
ホシノ「『あの頃』のまま──」
シャモジ「え?あの頃・・・」
シャモジ「目を治してくださった時ですか?」
シャモジ「当時は・・・もっと子供でしたよ?」
ホシノ「え、あっ」
ホシノ「・・・んんっ」
ホシノ「飲むか?」
シャモジ「あの・・・ここで」
シャモジ「僕は何をすれば──」
ホシノ「シャモジよ」
ホシノ「案ずるな」
ホシノ「私に、ついてこい」
シャモジ「ッ!?」
〇山の展望台(鍵無し)
ルック「案ずるな」
ルック「余に──」
ルック「ついてこい!」
〇城壁
その目隠しは?
ルック「これは──」
ルック「願掛けだ──」
ルック「シャモジの眼が──」
ルック「治るように──」
〇城の客室
ホシノ「どうした?」
シャモジ(ホシノも目隠しを・・・)
シャモジ(さっきの言葉も──)
シャモジ(いや、偶然だ・・・偶然に決まってる!)
シャモジ(でも・・・『何か』が・・・)
ホシノ「疲れたようだな」
ホシノ「今日はもう」
ホシノ「むっ!?」
シャモジ「あっ」
シャモジ(お腹の虫・・・)
シャモジ「・・・」
ホシノ「・・・」
ホシノ「は・・・腹ペコか?」
ホシノ「わんぱくだな」
シャモジ「えっと・・・」
シャモジ「僕じゃ、ないですけど?」
ホシノ「・・・」
シャモジ「・・・」
ホシノ「・・・ではない」
シャモジ「え?」
ホシノ「私・・・」
ホシノ「ではないッ!」
ホシノ「・・・ではないぃぃぃ」
シャモジ「・・・」
シャモジ「あぁ、そうでした」
シャモジ「お腹、空いてたんです」
シャモジ「育ち盛りなので」
ホシノ「ほう?」
ホシノ「ふん、仕方ない・・・」
ホシノ「何か持って来てやる」
シャモジ「・・・」
シャモジ「はぁ・・・」
シャモジ(でも)
シャモジ(やっぱり、何かおかしい)
シャモジ(この感じ)
シャモジ(まるで──)
〇黒
ルっくんが
そこにいるような
〇城の救護室
ルック「ん・・・」
ルック「あれ・・・」
魔法使い「あっ!」
魔法使い「尋問官どの!」
ガムテ「目が覚めたか」
ルック「そなた・・・」
ガムテ「銃創は深傷だったぞ」
ガムテ「よくあれだけ動けたものだ・・・」
ルック「あ、傷が・・・」
ガムテ「梱包のパワーを応用して」
ガムテ「医者の真似事をした」
ガムテ「傷を塞ぐ程度だがな──」
ルック「他の怪我人もそなたが?」
ガムテ「ああ」
ガムテ「幸い」
ガムテ「市民に死者は出なかったようだ」
ルック「・・・」
ガムテ「よかったな」
ルック「そなた」
ルック「本当は悪いヤツじゃなかろう?」
ガムテ「・・・」
「このクソ女ぁッ──!!」
市民「よくも私のカレを・・・」
市民「殺してやる!」
〇噴水広場
ガムテ「さっさと来い!」
市民「どうして・・・」
〇城の救護室
市民「なに・・・澄ましてんのよ?」
ガムテ「・・・」
市民「このっ!」
生徒「やめて!」
ガムテ「!?」
生徒「私はお姉ちゃんに助けてもらったの!」
生徒「みんなの怪我も治してくれたでしょ!」
市民「だ、だからって・・・」
ヤタラ「そこまでよ」
「女王様!」
「あ、元女王」
ヤタラ「あなたの婚約者ならここに・・・」
市民「ハニー」
ヤタラ(ハニー!?)
市民「ダーリン・・・」
ヤタラ(ダーリン!?)
市民「僕は大丈夫だから」
市民「うん・・・」
ヤタラ「尋問官さん」
ヤタラ「何も伝わりませんわよ?」
ヤタラ「黙っていては──」
ヤタラ「誤解を解くこともね」
ガムテ「・・・」
ヤタラ「でも今はまず」
ヤタラ「次の一手を・・・ですわ」
ガムテ「ああ、場所を変えよう」
ヤタラ「ルック、同席なさい」
ヤタラ「シャモジのことも関係があるわ」
ルック「シャモジ!」
生徒「お姉ちゃん、またね!」
ガムテ「え、あぁ・・・」
ガムテ「うん」
〇黒
〇要塞の回廊
「よし」
「あとは握るだけ・・・」
〇時計台の中
ホシノ「おいしくなーれ、おいしくなーれ」
ホシノ特製 『塩(砂糖)むすび』
ホシノ「ふむ」
ホシノ「よき出来っ」
オモチ「姉様、なにしてんの?」
ホシノ「ぽっ!?」
〇要塞の回廊
「星のパワーァァァッ──!!」
ホシノ「・・・」
ホシノ「・・・」
〇時計台の中
オモチ「くっそ・・・痛ぇなコラ・・・」
オモチ「・・・」
オモチ「ふーん」
オモチ「姉様ったら、かわいいのね」
オモチ「はぁ」
オモチ「バカな女──」
オモチ「2週間後には『石』にするってのに」
〇黒
〇立派な洋館
「今すぐ助けに行くぞぉッ──!!」
「待ちなさッ──ア゛ァ゛ッ!?」
〇城の廊下
「シャモジ!シャモジシャモジぃー!」
「まっ!? パンツ破れた!」
「この2人うるさい!!」
ネコニキ「なんだ」
ネコニキ「騒がしいな」
〇城の会議室
ミオ「便利な魔法ですね」
ガムテ「つまり」
ガムテ「2週間後──」
ガムテ「シャモジは死ぬことになる」
ガムテ「『賢者の石』を」
ガムテ「作り出すためにな」
〇城の廊下
ネコニキ「ッ!」
ネコニキ「賢者の石・・・!」
ネコニキ「つーことは」
ネコニキ「目的は、アレの復活・・・か」
〇古い本
『星の魔女』
〇城の廊下
ネコニキ「再び──」
ネコニキ「死が振り撒かれる・・・か」
ネコニキ「・・・」
ネコニキ「出番が来たってわけだ」
ネコニキ「魔女の天敵──」
〇未来の店
『耽美のアルテ』
12人の
耽美使い
〇城の廊下
ネコニキ「今こそ」
ネコニキ「全員に召集──」
「姉さん!」
「姉さん、大変だよ!」
〇城の会議室
タツモト「姉さん!」
ミオ「ちょっと、何?」
ミオ「耽美王のお世話(意味深)は済んだの?」
タツモト「その・・・耽美王のことだけど」
ミオ「ど〜?」
タツモト「死んだ」
ミオ「は?」
タツモト「突然、苦しみ出して──」
タツモト「倒れたんだ・・・」
タツモト「『イケメン』 という言葉には微かに反応していたけど」
タツモト「それも無くなって・・・」
タツモト「死んだっぽい」
ミオ「・・・」
〇城の廊下
ネコニキ「・・・」
ネコニキ「いやいや」
『耽美のカルテ』
耽美道具のひとつ
耽美使いのカラダをチェックできる
ネコニキ「・・・え?」
ネコニキ「えぇ?」
〇白
参ノ香 ── 李(すもも)
『耽美の夜』 三雨 (ササメ)
現況 : シグナル・ロスト
〇黒
重厚で濃密なストーリーと、丁寧に紡がれた言葉のひとつひとつ、王道路線を歩むべき内容にも関わらず笑いが込み上げてくるこの不思議な世界😂
「イケメンのラタトゥイユ」「塩(砂糖)むすび」「耽美王のお世話(意味深)」と、想像力をトンデモ方向に喚起される絶妙の匙加減に感動と爆笑が🤣
とにかく大好きすぎて『耽美』のフレーズが現れるたびに腹筋がヤバいです🤣
土台となっているシナリオとしては、主人公はヒロインを助けに行くヒーローであり、敵かと思われた人物が実は良いやつだったり、サポート役として喋る謎のネコがいたり、王道中の王道で誰もが心踊る物語なのに…!!😆
随所に盛り込まれた“男の娘”が終始絶妙なスパイスとして笑かしに来よるwwww
伏線の出し方まで最高にワクワクする展開✨️
内容は先が尖ってますが、いつもながら読みやすい台詞で癒されます。
ウマウマ。しかしパッと見何故この世界は女子より男子が集まってるんだ。耽美と言えば女子が好むものではないのか。それはまあともかく。
ホシノ匂わせ大好物です。ルックが第一形態というキャラ紹介から察するに…今後も楽しみです。
お世話係(意味深)とか、細かい楽しみも散りばめてあって面白いです。魔法のエフェクトの混ぜかたも綺麗でいいですねー。