第3話 あたしより強い男(脚本)
〇ボクシングジム
チンピラ「ぐわっ!」
広瀬久美子「おらどうした!? もうへたばったのか根性無しが!」
広瀬久美子「さっきからヘロヘロのパンチ出しやがって! それで倒せるのはジジイくらいだぞ!」
チンピラ「く、クソっ! ナメてんじゃねえぞ!」
チンピラ「ぐえっ!」
広瀬久美子「もう音を上げたのか!? この腰抜け野郎が!」
広瀬久美子「あたしに勝って毎晩抱きまくるって言ってたのは嘘だったのか!?」
広瀬久美子「情けねえ奴だ! そもそもその小せえ金玉でどうやってあたしを孕ませるってんだ!?」
広瀬久美子「総入れ歯のジジイのほうがよっぽど腰を動かしそうだぜ! てめえの相手をしてくれるのはママだけだな!」
広瀬久美子「オラいつまで寝てんだ? やる気がねえならさっさと帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな!」
チンピラ「ち、ちくしょう! やってられるか!」
チンピラ「何がスパーリングで勝ったら好きにさせてやるだ! 雌ゴリラだって知ってたらナンパなんかしなかったぜ!」
広瀬久美子「何だ結局口だけかよ。もう帰っていいぜ。根性無しに用はねえ」
チンピラ「ちくしょう! 覚えてろ! このままじゃ済まさねえからな!」
広瀬久美子「やれやれ。最近は軟派な男ばかりだな」
広瀬久美子「どいつもこいつもなよなよしてていけねえ。どこかにガッツのある男はいねえのかよ」
新入り(練習生)「な、何だあの女。強えなんてもんじゃねえぞ」
先輩(練習生)「んっ? お前久美子のことを知っててこのジムに入ったんじゃなかったのか?」
新入り(練習生)「俺はK-TOPのウェルター級世界チャンピン本郷雄二がこのジムにいるって聞いて入ったんすよ」
先輩(練習生)「その本郷雄二のスパーリングパートナー兼トレーナーが久美子なんだよ」
新入り(練習生)「そうなんすか!?」
先輩(練習生)「それだけじゃねえ。本郷は久美子に一度も勝ったことがねえんだぜ」
新入り(練習生)「いやいやいや! 本郷雄二は24戦24勝23KOの絶対王者っすよ!? 女相手に負けるわけないじゃないすか!」
先輩(練習生)「本当に何も知らねえんだな。本郷が無敗のチャンピオンになれたのは久美子のおかげなんだ」
新入り(練習生)「な、何者なんすか、あの女」
先輩(練習生)「昔アフリカの地下格闘技大会の無敗のチャンピオンだったって話だ」
先輩(練習生)「それもただの地下格闘技じゃねえ。金持ちや政治家がお忍びで賭け試合をする何でもありの団体だったらしい」
先輩(練習生)「久美子が言うには虎やライオンと試合を組ませられることもあったらしいぜ」
新入り(練習生)「そ、そんなヤバイ団体で無敗だったんすか!?」
先輩(練習生)「そうだ。唯一KOできなかった相手はアフリカゾウだったそうだ。判定勝ちは勝ちじゃねえって悔しがってたぜ」
新入り(練習生)「もう完全に人間辞めてるじゃないっすか」
新入り(練習生)「いやいやいや! そんな話俺信じないっすからね! 全部嘘なんすよね?」
先輩(練習生)「嘘かどうかはお前の目で確かめればいいさ」
広瀬久美子「そういや雄二はどこへ行きやがった? 目を離すとすぐにこれだ」
広瀬久美子「ベルトを5度防衛したくらいで浮かれやがって。あたしが鍛えてやってんのにKOできなかった時点で負けなんだよ」
広瀬久美子「また一からしごいてやらねえとな!」
新入り(練習生)「──俺このジム辞めます」
〇渋谷のスクランブル交差点
広瀬久美子「雄二の奴、結局ジムに来なかったな」
広瀬久美子「ったく、男は金を手にするとろくなことにならねえな」
広瀬久美子「すぐに欲望と誘惑に流されて遊び惚けちまう。羽を伸ばす時間も大事だってのはわかるけどよ」
広瀬久美子「本当に強え男ってのは練習以外の時間も有意義に過ごしてるもんだ」
広瀬久美子「いや、そもそもあたしが厳しすぎるのかもしれねえな」
広瀬久美子「強い男への理想像が高すぎる。英雄にそう言われたことがあったな」
広瀬久美子「わかってるさ。この世界にあたしより強い男なんてそうそういねえ」
広瀬久美子「でもだからって諦めきれるかよ」
広瀬久美子「あたしも女なんだ。自分より強い男じゃなきゃダメだって言って何が悪ぃんだ」
広瀬久美子「この調子じゃ一生結婚できねえかもな」
広瀬英雄「よう、姉貴。ジムの帰りか?」
広瀬久美子「英雄か。こんなところで何やってんだ?」
広瀬久美子「てかいつになったらジムに来んだよ!」
広瀬英雄「行かねえって! 姉貴にはガキの頃から散々ボコボコにされてんだ」
広瀬英雄「大人になってまで相手してやれるかよ」
広瀬久美子「何だよ。お前までそんなこと言うのかよ」
広瀬英雄「な、何だよ。急にしおらしくなって。姉貴らしくない」
広瀬久美子「別に。お前の腑抜けぶりに嫌気が差しただけだ」
広瀬久美子「あのレンカとか言う女に絆されやがって! あいつお前が持ってるエロ本の女にそっくりだもんな!」
広瀬英雄「な、何で姉貴がそのこと!? じゃなくて! それはたまたまだ!」
広瀬久美子「お前昔からああいう小さい女が好きだったもんな! このロリコン野郎!」
広瀬英雄「誰がロリコンだ! 大体レンカは子供じゃ──」
広瀬英雄「そういえばレンカっていくつなんだ?」
広瀬久美子「身内からこんな変態野郎が出るとは思わなかったぜ!」
広瀬久美子「捕まっても知らねえからな! ニュースでインタビューを受けたときは「いつかやると思ってた」って言ってやる!」
広瀬英雄「お、おい姉貴!」
広瀬英雄「俺はロリコンじゃねえからな! おーい!」
〇渋谷のスクランブル交差点
〇ビルの裏
広瀬久美子「ふう。一っ走りして良い汗かいたぜ」
広瀬久美子「──ちょっと言い過ぎちまったかな」
広瀬久美子「わかってるさ。英雄に嫉妬してるだけだってことくらい」
広瀬久美子「好きな女が敵の組織の幹部とか燃える展開じゃねえか」
広瀬久美子「愛は障害があればあるほど燃えるもんだ」
広瀬久美子「あたしもそんな燃えるような恋愛がしたいってのに、あたしより強い男は全然いやしねえ」
広瀬久美子「いっそのことゴリラと結婚でもするか?」
広瀬久美子「いやゴリラには地格時代に勝ったことあったな」
広瀬久美子「はあ」
広瀬久美子「この際あたしより強くなくていいからせめてガッツがある男はいねえかな」
チンピラ「よう、さっきは世話になったな」
広瀬久美子「誰だあんた?」
チンピラ「ふざけんな! 忘れたとは言わせねえぞ!」
広瀬久美子「もしかしてナンパか? いいぜ。付き合ってやるよ。その代わりスパーリングであたしに勝つのが条件だ」
広瀬久美子「あたしに勝ったらこの体を好きにしていいぜ。ジムはこっちだ。ほら行こうぜ」
チンピラ「それでノコノコ付いて行ってさっきボコられたんだよ!」
広瀬久美子「そうなのか? 悪ぃ。自分より弱え男の顔は覚えられねえんだ」
広瀬久美子「あっ! てことはリベンジか? 何だ根性あるじゃねえか! そういうことならとことん付き合ってやるよ!」
チンピラ「わかってるなら話は早え」
チンピラ「へへっ。さっきのお礼はその体できちんと払ってもらうぜ」
広瀬久美子「何だがっかりだぜ。ドーグを使うのかよ」
チンピラ「余裕こいてんじゃねえぞ!」
チンピラ「夜は始まったばかりなんだ! たっぷり楽しませてもらうぜ!」
広瀬久美子「そんなオモチャ効くわけねえだろ」
チンピラ「う、嘘だろ!? 何で鉄バットが曲がって──」
広瀬久美子「これでもう終わりか。ならさっさとケリつけるか」
チンピラ「く、クソ! こんな! こんなはずじゃ!」
寄生怪虫マダネ「けけけっ、面白いことになってるじゃねえか」
チンピラ「ひ、ひぃ! 何だこの化け物は!?」
広瀬久美子「お前! ロンリネスの怪人か!?」
寄生怪虫マダネ「ほう、誰だか知らねえがよくわかってるじゃねえか」
寄生怪虫マダネ「けけけっ、そこのチンピラの愛憎は中々に心地良い。その体利用させてもらうぜ!」
チンピラ「な、何をするつもりだ!? 止め──」
寄生怪人マダネ「けけけっ! ようやく手足を動かせる体を手に入れたぜ!」
寄生怪人マダネ「俺様は〈邪恋〉のサレンダ様の配下! 寄生怪人マダネ! 寄生した男に恋愛のトラウマを植え付ける能力を持っている!」
寄生怪人マダネ「この男、今までナンパしまくって全然ダメで、お前だけが相手をしてくれたからかなり嬉しかったようだな」
寄生怪人マダネ「それで鼻息を荒くして付いて行ったらボコボコにやられたんだ。こいつの恨みはお前が思ってる以上に根が深えぞ」
寄生怪人マダネ「けけけっ! 二度と恋愛ができないようにトラウマを植え付けてから他の宿主を探すとするか」
寄生怪人マダネ「その前にお前をぐちゃぐちゃにしてからな!」
広瀬久美子「へえ、さっきより男前になったじゃねえか」
寄生怪人マダネ「えっ、本当?」
広瀬久美子「あたしをぐちゃぐちゃにしてえって? 別にいいぜ」
広瀬久美子「あたしに勝てたらの話だけどな!」
広瀬久美子「変身!」
シスターイエロー「悪い奴はブン殴る! シスターイエロー! ここに参上!」
寄生怪人マダネ「なっ!? き、貴様ファミリ―レンジャーだったのか!?」
シスターイエロー「そういうことだ! ここで会ったが百年目! 悪さをする前に懲らしめてやるぜ!」
寄生怪人マダネ「お、おのれ! シスターイエローと言えばファミリ―レンジャー最強の女! まともに相手をしてられるか!」
シスターイエロー「あいつ逃げやがった! 待ちやがれ!」
〇街中の道路
〇ビルの裏通り
シスターイエロー「オラ待ちやがれ!」
寄生怪人マダネ「逃げてるのに待てと言われて待つ奴がいるか!」
寄生怪人マダネ「く、クソ! このままでは追い付かれる!」
寄生怪人マダネ「せっかく体を手に入れたのによりにもよってシスターイエローに出くわすとは!」
寄生怪人マダネ「俺様には人間どもに恋愛のトラウマを植え付ける崇高な使命があるんだ! このままやられてたまるか!」
ふぃー。飲んだ飲んだ。こんなに酔ったのは久しぶりだぜ
この間良いパンチもらってから気分が良いんだよなー。この調子で次回も頑張るか!
寄生怪人マダネ「人の声? こんな人気のない場所でバカな奴だ!」
寄生怪人マダネ「丁度いい! 人質に取ってやるぞ!」
寄生怪人マダネ「動くな! シスターイエロー! こいつがどうなってもいいのか!?」
戦闘員「えっ!? ちょ! なになに!?」
寄生怪人マダネ「う、うわっ! 何だお前は!?」
戦闘員「いやそれこっちの台詞だから!」
寄生怪人マダネ「待て。お前ロンリネスの戦闘員だな?」
戦闘員「あっ、もしかして上位怪人の人っすか? お疲れっすー」
寄生怪人マダネ「丁度いい! 俺様に手を貸せ! 今ピンチなんだ!」
戦闘員「勤務時間外なんで嫌っすよ。それに今日明日休みだし」
寄生怪人マダネ「そう言うな! 上には休日出勤で手当てを上乗せするように申請しておくから!」
戦闘員「いやいや、俺今酒飲んできたばかりなんすよ。そんな状態で働いたら怒られちゃいますよ」
寄生怪人マダネ「お、俺様は上位怪人だぞ! 言うことが聞けないのか!?」
戦闘員「そうは言っても部署違うっすよね? 俺の直属の上司はレンカ様なんで命令聞く義務ないっす」
シスターイエロー「あんたらさっきから何の話してんだ?」
戦闘員「えっ!? イエローちゃん!? こんなとこで何やってんの!?」
シスターイエロー「そこの怪人をブン殴りに来たんだよ」
シスターイエロー「どこへ行く気かと思ったら仲間のところへ誘導してたとはな。してやられたぜ」
シスターイエロー「まとめてかかって来やがれ!」
戦闘員「何だそういうことなら早く言ってくださいよ!」
戦闘員「ここは俺が引き受けるっす! 上位怪人の人は逃げてください!」
寄生怪人マダネ「す、すまん! この恩は必ず返す!」
寄生怪人マダネ「ここは逃げるのが最優先だ。この男にトラウマを植え付けるのは諦めるか!」
チンピラ「うっ」
寄生怪虫マダネ「これで良し。あとは任せたぞ!」
戦闘員「休日出勤の手当ての件忘れないでくださいよ!」
戦闘員「くぅー! 酒飲んだ状態でイエローちゃんに殴ってもらえて給料も出るとか最高だぜ!」
シスターイエロー「仲間を逃がすために囮になるなんて、中々根性あるじゃねえか」
戦闘員「おっといけね。口元が緩んじまってる」
戦闘員「気を取り直して──」
戦闘員「今日と言う今日は目に物見せてやる!」
シスターイエロー「かかって来やがれ!」
〇東京全景
おふっ!
イエス!
戦闘員「イエローちゃんのパンチ最高ーー♡♡」
恋の悩みは人生の悩み
強い男に出会えないシスターイエローの明日は如何に──
ネーちゃん人類最強!?😱
怪人は、即逃げ!?😅