【追憶】おいてきたもの (脚本)
〇黒背景
『・・・・・・ラ、
カムラや。 カムラ。
そこじゃ風邪引くよ。こっちへおいで』
『おばあちゃん』
『他の話も聞かせてあげるから』
『ほんと~? わかった。そっちいく!
他の話、聞かせて~!』
〇先住民の村
おばあちゃんはわたしが寝る前にはいつも、
村に古くから伝わる民話を語り聞かせてくれた。
わたしはそのの時間がとっても大好きで、
毎日その時間が楽しみだった。
〇地下室
『・・・・・・その青年はある日、ゴホ! ゴホ! ゴホ!』
『おばあちゃん! 大丈夫?』
『心配させてごめんね。おばあちゃんは大丈夫だから』
『おばちゃん・・・・・・?』
おばあちゃんの身体の調子が良くない日は、
最初はたまにだったが、だんだん増えていった。
『カムラごめんね。 おばあちゃんね、
今日は疲れていて
お話聞かせてあげること無理そうなの』
『嫌だ~! おばあちゃん、お話聞かせて~!』
その頃のわたしはまだ老いるっていう意味がよくわからず、体調の悪いおばあちゃんに無理を言った。
わたしはその頃、おばあちゃんと二人で暮らしていた。
わたしには本当のお父さんとお母さんの記憶が無く、
わたしは物心ついた時におばあちゃんに聞いた。
しかし、二人は長い旅に出ているとしか教えてくれなかった。
わたしが12才になった年、ある日突然おばあちゃんがわたしに話しかけてくれなくなった。
『おばあ・・・・・・ちゃん?』
わたしが何度話しかけても返事をもらえなかった。
わたしは、呪術に詳しい村の長《おさ》の爺《じいじ》に汚《けが》れを払ってもらうようお願いに走った。
しかし、爺はおばあちゃんの姿をみても汚れを払おうとはしなかった。
翁はわたしに言った。
おばあちゃんは生まれ変わるために長い旅に出ると・・・・・・。
爺は涙を流しながら喜んでいた。
〇先住民の村
おばあちゃんは村人の手でどこか遠くに連れていかれ、わたしが何度お願いしても二度と会わせてはくれなかった。
わたしはその後、長の息子夫婦の家に預けられた。
しかし、その時のお父さんは乱暴で家族に暴力をふるう人だった。
お母さんはわたしをかばってくれたが、
わたしより1つ歳が上の実の息子のほうばかりいつも大事にしていた。
だから、わたしは家族の中で自分の居場所が無くて辛くて仕方なかった。
わたしは家出を決意した。
しかし、家出をして身寄りがない子供の孤独感をすぐに痛いほど痛感した。
〇空
『わたし、寂しいよ。おばあちゃん・・・・・・』
土砂降りのスコールから逃れる為、
わたしは路地裏の雨避けが出きる場所をみつけ、そこにじっとしていた。
実際は家出をした日から1日しか経っていなかったが、
わたしにはそれが何日にも感じられた。
そして、今の大好きなお母さんが現れた。
お母さんは凄く綺麗な服を着ていて、
わたしはそのお母さんに連れられて家に行った。
そして、わたしはその目を疑った。
〇大広間
そこは、もの凄く大きなシャンテ王の宮殿だった。
お母さんが何故、身分のわからないわたしをレージャーニアの寝居に連れてきたのか
わからなかった。
最初お父さんはお母さんに怒っていたが、
お母さんが説得してくれたおかげで、
わたしはお母さんの娘のお姫様として王宮で暮らせることになった。
しかし、お父さんや兄弟達は拾われたわたしに対してあからさまに
嫌な顔をしたり避けたりして差別した。
召し使い達も、わたしがいないところでは酷いことをいつも言っていた。
しかし、お母さんだけは違った。
わたしに厳しい時もあるけど、優しいときもたくさんあったから。
だからわたしはお母さんのことが大好きだった。
〇貴族の部屋
でも、お母さんだけは違った。
お母さんは、わたしに厳しい時もあるけど、優しいときもたくさんあった。
だからわたしはお母さんのことがとっても大好きだった。
お母さんは、昔おばあちゃんがわたしに話してくれたみたいに
寝る前に不思議な民話の話を聞かせてくる。
わたしは毎日その時間がくるのが凄く楽しみだった。
〇王妃謁見の間
あれから3年が経ち、わたしは15歳になった。
最近、お母さんはガイコウ問題とかでお父さんと頻繁に出かけて、何日も帰って来ない日が多くなってきた。
わたしが心を開いて何でも話せる人はお母さん以外はいなかった。それは、本当に辛くて寂しかった。
だから一昨日、わたしはお母さんに叩かれたとき、つい言ってしまった・・・・・・。
『あんたはどうして・・・・・・。どうして勝手に王宮を抜け出したの?
私だけじゃないのよ! お父さんや王宮の人達がどれだけあなたのことを心配して、必死で探し回ったと思っているの?』
『私はただ・・・・・・、会いに行きたかったから』
『会いにって、まさか私に内緒で動物でも飼っているって言うの?
あんたって子は本当にもう!』
『違うってば!
王族育ちでなに不自由無く生きてきたあんたに
私の気持ちなんてわかるの?
私の本当のお母さんでも無いくせに、
こんな時だけ母親 面《づら》しないでよ!
大っ嫌い! 』
大っ嫌い!
大っ嫌い!
大っ嫌い!
〇黒背景
「はっ!?
・・・・・・・・・・・・」
蓮姫が走馬灯のような思い出から目が覚めると、
また白く眩しい光に包まれた。