僕の変わった家族(脚本)
〇玄関の外
僕の名前は神堕(かんだ)天地神明夫(てんちしんめいふ)。
あだ名は てちお 11歳。小学五年生
僕の家族は普通じゃない。
母さんは生まれつき転生体質らしくて、何度も何度も異世界に飛ばされてしまうらしい。
転生しても、わりとすぐに帰ってくる。最短で1分、最長で1年くらいだ。当の本人達は数十年は異世界で過ごしているらしい。
しかも、やっかいな事にどうやら遺伝してるみたいだ。
僕の姉、陀瑠玖(だるく)姉さんは15歳の時に異世界へと聖女として転生してしまった。数時間で家に帰ってきたけれど
神に祈りを捧げる癖がついてしまい。暇があれば、いもしないであろう神に祈りを捧げていた。痛い姉だ。
僕の兄の六連星(むつらぼし)兄さんは最近になって転生体質が発症してしまったようで、まだ家に帰ってない。無事だといいけど。
父さんは多分普通。何の力もなさそうな一般人。ただ、色々と不器用すぎる。
料理をすれば手を切るし、洗濯物を干せば飛ばすし
僕もいずれは転生病が発症してしまうかもしれないけれど、今はこの平和がずっと続けばいいのになーって思ってる。
これは僕のちょっと変わった体質を持つ家族の物語。
〇おしゃれなリビングダイニング
てちお「ただいまー」
父「おかえり、てちお。学校は順調かな?」
てちお「うん。順調だよ」
父「そうか。今日は珍しく母さんが帰ってるんだ。悪いけど和食を頼めるかな?」
てちお「珍しいね。わかったよ」
僕がもっと小さい頃は家事が苦手なお父さんが頑張ってくれていた。だけど、毎日といっていいほど怪我をしていた
だから僕は一生懸命家事を練習した。
お父さんよりはマシに家事ができるようになったから、僕が家事をしている
〇おしゃれなキッチン
てちお「母さんはいつも転生から帰還した後に和食を食べたがるなぁ。帰ってくるって分かってたら色々買ってたのになぁ」
てちお「鯖しかない。鯖の味噌煮と適当な具材でお味噌汁でも作るか」
1時間後
ママ「うーん・・・とっても良い匂い」
てちお「母さん、久しぶり。もうすぐご飯できるよ」
ママ「あら、ママの為にありがとね」
てちお(どちらかといえば家事ができない父さんの為だけど)
てちお「うん。そういえば、今度はどこへ行ってたの?」
ママ「母さん気づいたら、アステガサーガ王国ってところの路上で倒れててね、いきなり魔物に襲われたのよ~」
てちお「へぇ~。で、どうなったの?」
ママ「魔法が使えたし筋力低下も見られなかったから拳でワンパンよ!」
てちお「流石母さんだね」
てちお(母さんは人生で2回目の転生をした時に、能力を引き継げる力を授かったらしく、それ以来異世界へ行くたびに無双して帰ってくる)
ママ「でも、てち君 や むっ君とダルちゃん、それにパパに会いたくて会いたくて仕方がなかったわ」
てちお「大変だったね。今回は何年くらい滞在してたの?」
ママ「50年くらいね。ずっと家族写真を眺めて暮らしてたわ。てちる、今夜は一緒に寝ましょうか」
てちお「ん?僕はいいや。父さんと寝なよ」
ママ「え?」
てちお「さ、ご飯ができたよ。むつ兄はまだ異世界から帰ってないから、母さんはだる姉を呼んできてくれる?」
ママ「わーい!やっとご飯ね!ダルクー!!!」
てちお「危ない危ない」
てちお(前に母さんと姉さんと川の字になって寝てたら母さんの異世界転生に姉さんが巻き込まれて、姉さんが大変なめにあってたからね)
〇おしゃれなリビングダイニング
てちお「良かった。姉さんも母さんもちゃんといる」
ママ「そんなすぐに転生したりしないわよ」
ダルク「えぇ。一度転生したらしばらくは家にいられるわ」
てちお「しばらくね。前は1週間くらいで旅立ってたよね」
父「さて、いただこうじゃないか。冷めてしまう。それにしても急に頼んだのに良くこれだけ作れたね」
てちお「うん。頑張ってみた」
ママ「いっただきまーす! ん~!!おいしー!!久しぶりの和食!!」
てちお「母さんはともかく、ダル姉も転生後は和食が食べたいものなの?」
ダルク「そうね。私は肉・・・が一番食べたいわ。 毎度毎度、聖女に転生するおかげで草と豆しか食べられないのだもの」
てちお「そっか。じゃあ次からダル姉が帰ってきた時は肉を出すようにするね」
ダルク「てちお・・・。ありがとう、たまには私が食事を作るわ」
てちお(まずい。ダル姉は前に料理途中に転生しちゃって軽く火事を起こしそうだった。父さんが見つけてくれたから良かったけど)
てちお「ううん。僕、料理が大好きなんだ。僕にやらせてよ」
ダルク「そう?わかった。私もてちおの料理大好きよ」
てちお(危なかった。なんとか逃げれた)
ママ「ママもたまには何か手伝おうかしら」
てちお(もっとヤバイ奴がきた!!! 一番危険だ。母さんの転生タイミングは異常だから何をされても終わる!!)
てちお「ううん。母さんは長い間父さんと離れ離れだったんだからさ、少しでも父さんと一緒にいてあげてよ」
ママ「あら、なんて優しいの!なら、お言葉に甘えようかしら」
父「・・・」
てちお(ごめん。父さん。ちゃんと後でマッサージするから母さんの相手しといてね)
こうして神堕家の一日が終わろうとしていた。
〇おしゃれなリビングダイニング
夜中の3時。
母さんと父さんが煩すぎて目を覚ましてしまって、ホットミルクでも飲もうとリビングへ
てちお「あれ!?兄さん、帰ったの?」
むつ兄「てちおか。皆には黙ってて。 まだ行かないといけないんだ」
てちお「え!?行くってどこへ?」
むつ兄「俺のお姫様がいるところへ・・・かな」
てちお「待って兄さん!少しだけ待ってて!!」
むつ兄「??」
〇おしゃれなキッチン
てちお(せっかくだから何か持たせてあげないと)
〇おしゃれなリビングダイニング
てちお「お待たせ、むつ兄。 これ、持って言って!」
むつ兄「これは?」
てちお「ちょっとしたお菓子と、レシピと、夕飯の余りだよ。向こうで役立つか試してきてよ」
むつ兄「あぁ、わかった。ありがとう。 それじゃあ行ってくる」
てちお「うん。気を付けてね」
てちお「うわ。母さんや姉さんとは違う転生の仕方だな」
てちお(兄さん、凄く切なそうな顔してたな。 向こうで何かあったのかな?)
普通の世界で暮らす読者から見れば、てちおの今の状況が既に一番ハードな異世界転生に思えるほどですね。出入りの激しい家族に対する気遣いとお世話がすごすぎて。魔王と戦うよりもハードかも。もしてちおが転生病を発症してどこかへ行っちゃったら家庭崩壊しちゃうかも。とにかく家事の苦手なお父さん頑張って!