3話 街の様子(脚本)
〇宿舎の部屋
後藤3曹「さっそくだがお前ら、」
後藤3曹「コレなーんだ」
「そ、それは・・・『外出証』!!」
第三話
『街の変化』
〇宿舎の部屋
──『外出証』──
それは僕達自衛官が、駐屯地から外に出る際に必要な『許可証』である。
(喉から手が出るほど欲しい)
普段駐屯地から出られない僕達にとって、
外出が唯一の楽しみ
なので外出証とは、いわば”自由”への切符に等しいものなのだ
後藤3曹「作戦開始まで、まだ日数がある」
後藤3曹「──というわけで、」
後藤3曹「お前ら二人とも、 特別に休暇と外出を許可する」
後藤3曹「言っとくが外出証は肌見離さず持っとけよ」
後藤3曹「落としたりしたらヤバいからな」
仮に落としたら、どれくらいヤバイか
例をあげるとすると──
〇駅のホーム
カナメっち「どうしよう!」
カナメっち「会社の施設に自由に入れる『社員証』 落としちゃった!」
カナメっち「佐伯部長に叱られる! それどころか処分を食らっちゃうよ!」
──と、このくらいヤバイ
〇宿舎の部屋
後藤3曹「お前ら外に出たら自衛官として、 自覚ある行動をしろよ」
後藤3曹「あと”アレ”を忘れんなよ」
川島朋也「わかってるッスよ。 班長への土産っすね」
後藤3曹「そうそう! あとは?」
木村英介「任務に必要だと思う個人物品の用意」
後藤3曹「うむ、それもだ。 あとは?」
(他にあったっけ?)
後藤3曹「お前ら・・・、」
後藤3曹「”悔いが残らないように” 思いっきりやりたい事やってこい」
後藤3曹「コレが俺からお前らにできる 最大限の思いやりだ」
川島朋也「くぅ・・・班長・・・」
木村英介「ありがとうございます」
後藤3曹「お前ら、”自由な時間”が無くなるぞ! さっさと行って来い!」
「ハイ、了解しました!」
〇刑務所
川島朋也「ふぅ~、久しぶりのシャバの空気だぜ」
木村英介「・・・」
木村英介「川島・・・、 自衛官としてその格好はどうなんだ?」
木村英介「”チンピラ”にしか見えないぞ」
川島朋也「なっ!? うっせーな!」
川島朋也「お前なんか、冴えない野郎みたいな格好じゃねえか」
川島朋也「──ったく、それより何すっかなー。 自由な時間がまだまだありまくるぜ」
木村英介「・・・行きたい場所がある。 付き合ってくれないか?」
川島朋也「お前が行きたい場所があるなんて珍しいな」
川島朋也「まぁいいぜ、付き合ってやるよ」
〇渋谷駅前
渋谷。
まだ『渋谷紛争』の爪痕が残る
川島朋也「流石にまだ元通りって訳にはいかねえか」
木村英介「・・・」
自分が守った渋谷の街がどうなったのか確認したかった。
だが、まだ復興してない様子をみて悔しさが湧いてくる
木村英介(クソっ・・・! クソっ・・・! マーガルの奴らめ!)
???「ねえ、どうしてもこの先に行ったら行けないんですか?」
遺族「お願いします。行かせてください」
遺族「この先で娘が殺されたんです。 だから慰霊にいきたいんです」
警備員「お気の毒に・・・ でもねぇ、ダメなんだよ」
警備員「ここから先は関係者しか通せないよ」
警備員「だから悪いけど帰ってくれ」
遺族「そんな・・・ううっ。 帰ります」
木村英介「・・・」
川島朋也「おい、どこもかしこもダメだ」
川島朋也「さっきの人みたいに、警備員に追い返されて街に入れねえ」
木村英介「そうか・・・。 少し話を聞いてくる」
川島朋也「あ、おい!!」
「警備員さん」
木村英介「聞きたい事があります」
木村英介「この先はどうなってるんですか?」
警備員「ん? この先がどうなってるかだって?」
警備員「なんか政府主導で”巨大な壁”の建築中さ」
木村英介「巨大な壁・・・いったいどうして?」
警備員「どうしてって言われても、おじさんはただの警備員だからわからないなぁ」
木村英介「あっ・・・そうですよね」
警備員「あっ、けどおじさん警備をしながら、よく人の噂を耳にすることがあるだけど」
警備員「なんかこの先に相当”ヤバイもの”があるらしくて」
警備員「そいつの存在を国民に隠すために巨大な壁を建築してるんだとか・・・」
木村英介(多分”ホール”のことだ)
木村英介(けど言えない)
警備員「まっ、噂話ってよりこりゃ、トンデモ陰謀論だな、アハハ」
木村英介「・・・そ、そうかもしれないですね」
木村英介「ほ、他に何かありますか?」
警備員「うーんそうだなぁ・・・」
警備員「あるとしたら、これはおじさんの愚痴なんだけどさぁ・・・」
警備員「ここ最近”変な集団”まで渋谷にやって来て、警備するのも大変だよねえ・・・」
木村英介「へぇ〜・・・」
木村英介「その集団ってどんなのですか?」
警備員「えーと、そうだな・・・」
木村英介「・・・なんだ? 騒がしくなってきた」
警備員「おっ、噂をすれば、その集団が向こうの方に集まって来やがったぞ」
警備員「言っとくけど、かなり”電波な集団”だからあまり近づかない方がいいよ」
木村英介「わかりました。色々教えてくれてありがとうございます」
木村英介(向こう側か・・・見てこよう)
〇荒廃したハチ公前
木村英介(居た! なんかやってる!)
「南無眞来、南無導師、南無眞来、南無導師・・・」
眞来教の巫女「渋谷に居る皆さん!」
眞来教の巫女「我々は眞来教(まききょう)と呼ばれる宗教を信じている団体です!」
眞来教の巫女「今日はここに集まった皆さんに聞いてもらいたいことがあって演説にきました!」
眞来教の巫女「我々の宗教の指導者──”導師様”は仰られております」
眞来教の巫女「曰く”渋谷紛争”は神『眞来之尊』による『選別』の儀式なのだと!」
木村英介(はぁ!!!??)
眞来教の巫女「なので神は再び”異界の扉”を開いて マーガル人をこの渋谷の地に派遣し」
眞来教の巫女「我々が楽園『富和慈愛』に招くのに相応しい信徒かどうか試しておられます!」
遺族「酷い! だとしたら私の娘はあなた達の神様のせいで命を奪われたというの!?」
眞来教の巫女「その通りです・・・」
眞来教の巫女「あなたの娘は神の”選別”を受けて失われてしまいました」
遺族「酷い! そんな事を言うなんて! 貴方は最低よ!」
眞来教の巫女「仕方ありません」
眞来教の巫女「我々の信じる神は”荒ぶる神”であり、かなり特殊なのですから」
眞来教の巫女「しかし、ちょっとお待ちください──」
眞来教の巫女「もしも貴方が今から我々の”眞来教”に入信していただけたら」
眞来教の巫女「娘さんは救われるかもしれませんよ?」
遺族「どういう事ですか?」
木村英介(おいおい、)
木村英介(なんか雲行きが怪しいぞ・・・)
〇キラキラ
──眞来教──
彼らは『眞来之尊(まきのみこと)』
と呼ばれる『荒ぶる神』を信仰している。
眞来之尊「人類ヲ、楽園『富和慈愛』へ・・・ 救イ上ゲタイ・・・」
眞来之尊「デモ・・・」
眞来之尊「全テノ人類救エナイ・・・」
眞来之尊「楽園来レルノ、良イ人類ダケ二スル・・・ ダカラ、マーガル人使ッテ、 悪イ人類排除スル・・・」
こうして神様は『選別之儀』を行ったのです
〇荒廃したハチ公前
木村英介(なんて理不尽な神様なんだ・・・)
眞来教の巫女「──というわけで大変! 神様は我々人類と考え方が異なり、良い人間と悪い人間の区別が付きません!」
眞来教の巫女「ですがご安心を・・・」
眞来教の巫女「そこで我々の『導師様』が神様を説得してくれるのです!」
〇キラキラ
眞来教導師「偉大なる眞来之尊よ、 畏みお頼み申し上げまする」
眞来教導師「我々は貴方様に仕え、敬い奉ります」
眞来教導師「ですから我々信徒を選別之儀から外し、その後楽園へとお迎えください」
眞来之尊「・・・」
眞来之尊「良イダロウ・・・ ナラバ、オ前ガ教団ヲ作リ、 良イ人類ヲ選べ」
眞来教導師「畏まりました」
〇荒廃したハチ公前
眞来教の巫女「──てなわけで、我々信徒は良い人類になれるように修行し、」
眞来教の巫女「やがて、導師様に選ばれた者だけが、楽園へと行けるのです!」
眞来教の巫女「貴方も是非入信しませんか?」
眞来教の巫女「貴方が我々と共に修行すれば、 お亡くなりになりなった娘さんの魂も一緒に楽園にいけますよ?」
遺族「えーと・・・」
眞来教の巫女「因みにですが、眞来教以外は悪い人類として選別されて地獄にいきます」
遺族「えっ!?」
〇炎
子供「ママ・・・タスケテ、 苦シイ・・・死ニタク無カッタ・・・」
〇荒廃したハチ公前
遺族「ううっ・・・、」
遺族「あの時、私が娘とはぐれてしまわなければ──」
遺族「あの子は地獄で苦しむことなんて無かったのに!」
眞来教の巫女「そうです・・・”貴方のせい”です!」
眞来教の巫女「ですがまだ救いだせます!」
遺族「はい・・・! 私は眞来教に入信して、娘を楽園に救い出します!」
眞来教の巫女「よくぞ決断しました! 我々と共に楽園を目指しましょう!」
眞来教の巫女「南無眞来(全てを眞来之尊と、眞来教へ)」
眞来教の巫女「南無導師(全てを導師にお任せします)」
木村英介「・・・」
〇渋谷駅前
川島朋也「・・・」
川島朋也「おい、そんな怒った顔してどうしたんだよ」
木村英介「別に・・・なんでもないよ」
〇荒廃したセンター街
木村英介「そんな・・・嘘だろ?」
木村英介「こんな小さい子まで命を奪われるなんて・・・」
〇渋谷駅前
あの日、
多くの命を救い出せなかった。
その結果が悲しみと不幸を生み、
人々が心を不安を抱え、
ナニかに癒やしと救いを求めるんだ。
木村英介(誰かが、 なんとかしなくちゃいけない・・・)
警備員「うわああ!! なんだお前ら!」
警備員「誰か助けてくれ!」
〇荒廃したセンター街
警備員「うわっ! よせ!」
マーガル軍残党兵「(奴等の警護は倒した!)※マーガル語」
マーガル軍残党兵「(次はあの箱型の乗り物をやれ!)」
マーガル軍残党兵(魔法使い)「『(エアストライク!)』」
マーガル軍残党兵「(やった! 今すぐ奴等の物資を奪うぞ)」
眞来信徒「おお! 神の選別が再び始まった!」
眞来教の巫女「だ、大丈夫です!」
眞来教の巫女「我々は信徒ですから選別から外れるはず!」
マーガル軍残党兵「(邪魔だ! 失せろ!)」
眞来教の巫女「えええ!!! なんでえええ!!??」
マーガル軍残党兵「(次はお前だ!)」
川島朋也「待てよこの野郎!」
川島朋也「女に手を出すんじゃねえ!!」
眞来教の巫女「あ、貴方は!?」
川島朋也「通りすがりの戦闘バカだ」
川島朋也「へへっ、ここで戦いができるなんて、 ワクワクするぜ!」
川島朋也「危ないから下がっときな」
眞来教の巫女「は、はい!」
〇渋谷駅前
木村英介「バカ! 川島のやつ・・・」
普段から喧嘩っ早い川島は丸腰で襲撃者の前に躍り出た
木村英介「くっ・・・」
助ける為に加勢しないといけないのに、
急に恐怖が増して動けない
木村英介(川島・・・すまない!)
〇荒廃したセンター街
川島朋也「おっしゃああ!!」
川島朋也「いくぞコラぁっ!!!」
続く
異界に取り入る、金を集める、災害が起こると必ず現れる新興宗教団体。嫌ですねぇ。
スポーツ選手もそうですが、プライベートな時間で自身の能力を使って事件に関わるともう出られなくなります。自衛官はどうでしょう。しかも異界人とのいざこざとなると?罰されるのかな?
川島くん格好良いし、ナイス相棒キャラ👍と思ってたら、女の子を助けてて更にナイス🙌
選別の為に遺族まで宗教に巻き込みますか
確かにこうゆう悲劇が起きた時って何かに縋りたくなるのかも…
リアリティある自衛隊員の様子に加えて、眞来教の宗教ロジックもリアリティ満載ですね……
そんな中で、カナメっちの姿に和んでしまいましたw