デス・パレードは祈りと共に

はじめアキラ

エピソード18・涙の中(脚本)

デス・パレードは祈りと共に

はじめアキラ

今すぐ読む

デス・パレードは祈りと共に
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇研究施設の廊下
峯岸輪廻「・・・・・・!」
須藤蒼「・・・・・・」
須藤蒼「・・・それが、僕が知ってることの、すべて」
須藤蒼「このゲームはすべて、僕のおばあちゃんが・・・ おばあちゃんが作る教団が仕組んだこと」
須藤蒼「僕が、余計なことを言ってしまったがために、こんなことになってしまいました」
須藤蒼「僕が、救われたかったがために」
須藤蒼「思いつきで、神様の予言を捏造したがために」
須藤蒼「そして・・・独りぼっちが嫌だなんて、そんなことを思ってしまったがために」
須藤蒼「ごめんなさい、輪廻さん」
須藤蒼「貴方はずっと、僕のことを、命がけで助けてくれようとした。他の人達がそうしてくれたように」
須藤蒼「でも、おばあちゃんが選んだ“優しくて強い、救世主になりうる人達”はみんな、死んでいった」
須藤蒼「優しすぎたせいで。僕っていう、か弱い子供を命がけで守ろうとしたせいで」
須藤蒼「でも、本当は僕にはそんな価値なんかない。だって、全て僕のせいで起きた惨劇なんだから」
須藤蒼「僕は全部知ってて、黙ってました。貴方の記憶が失われている理由も、ゲームの目的も答えもわかっていながら」
須藤蒼「おばあちゃんに逆らって、自分が“神様の子供”でないとバレるのが怖かったがばかりに」
須藤蒼「本当に・・・本当に、本当にごめんなさい。輪廻さんはここまで生き残れたけど、次はどうなるかわからない」
須藤蒼「もう、いいんです。もう、いいんだ。もう、僕なんか、守らなくていい」
須藤蒼「もう、僕のせいで、優しい人達が犠牲になるのは見たくない。今更遅いかもだけど、せめて、輪廻さんだけは・・・」
峯岸輪廻「な、なんで・・・」
須藤蒼「え?」
峯岸輪廻「何でそんな大事なこと、ここで話すんだ!?」
須藤蒼「え!?」
峯岸輪廻「おい、大丈夫なのか、この通路!?カメラとか本当にないのか!?」
峯岸輪廻「蒼お前、それを俺に絶対に話すなって言われてるんだろう!?バレたらお前だってただじゃ済まないんだろう!?」
峯岸輪廻「尋ねたのは俺だが、まだ言い逃れはできただろうが!自分の命が危ないってわかってるならなんで俺に話すんだ!!」
峯岸輪廻「もしお前のバアさんとやらがこの話を全部聞いてたら、お前も粛清されるかもしれないだろ!?危険すぎると思わないのか!?」
須藤蒼「な、なんで・・・」
須藤蒼「なんで?なんで、怒るのがそこなの?」
須藤蒼「僕、嘘ついてたんだよ?輪廻さんのこと騙してたんだよ?」
須藤蒼「こうなったのも全部自分のせいで・・・僕のせいでもう、何人も優しい人が殺されてて・・・」
須藤蒼「それなのに、なんで?なんで心配するのが、僕のことなの?僕のこと責めないの?ねえ、なんで?」
峯岸輪廻「お前の立場で、カルト教団に逆らえるわけないだろ、当たり前だ!」
峯岸輪廻「おい、この廊下は、本当にっ・・・」
須藤蒼「そ、それは、大丈夫。・・・監視の人が見てるの、建物の出入り口と・・・ゲーム会場だけ。間の通路は、実はカメラがなくて」
峯岸輪廻「そ、そうなのか?・・・よ、良かった・・・。すまない、急に怒鳴ったりして」
須藤蒼「・・・」
須藤蒼「本当に、貴方はお人よしなんだね」
須藤蒼「貴方は僕の身勝手な一言のせいで、デスゲームに巻き込まれて、記憶まで消された」
須藤蒼「僕が考えるよりずっと辛かったはず、恐ろしかったはず」
須藤蒼「貴方には、僕を責める権利もあるし、なんなら僕は・・・貴方に殺されたって文句が言えない立場だ」
須藤蒼「それなのに、どうして、貴方は・・・」
峯岸輪廻「・・・」
峯岸輪廻「救世主って言葉を聞いた時点で、多少の予想はしていたってのもある」
峯岸輪廻「随分とまあ、宗教めいた言葉だったしな」
峯岸輪廻「でもそれ以上に、思うのは。やっぱり、子供を見捨てたらそれはもう俺じゃないなってこと」
須藤蒼「・・・なんか、今までの人達と同じこと言うんだね。子供って、そんなに大事にされるべきもの?」
須藤蒼「命の重さに、男も女も大人も子供もないよ。本来ならみんな平等に生まれて、誰かに愛されて、幸せに生き抜く権利がある」
須藤蒼「僕が“殺して”しまった人達はみんなそうだった。むしろ、他人の為に命を賭けられる・・・僕なんかよりずっと貴い人達だった」
須藤蒼「子供以前に、僕は自分可愛さだけでたくさんの人を見捨てた人殺しだ。そんな人間のどこに、生きる価値があると?」
峯岸輪廻「そんなものは知らん」
峯岸輪廻「なんせ、俺が知っているのは、このゲームで出会ったお前だけだからだ」
峯岸輪廻「俺と一緒に頑張ってゲームの答えを考えてくれたお前。俺の料理を美味しいって言ってくれたお前。そんなお前だけだ」
峯岸輪廻「だから究極的に言えば、お前が子供かどうかなんてもう俺にはどうでもいいんだよ」
峯岸輪廻「俺はお前のことが好きだ。だから助けてやりたい。もう面倒だから、理由はそれでいいってことにした!」
須藤蒼「・・・!」
須藤蒼「な、なんか・・・いっつも理論的な輪廻さんっぽくない答え・・・」
峯岸輪廻「お、俺だってたまには、感情論でものを言うんだよ。わ、悪いか?」
須藤蒼「・・・ううん」
須藤蒼「・・・ありがとう、輪廻さん」
峯岸輪廻「・・・」
峯岸輪廻「今日まで、よく頑張ったな」
峯岸輪廻「辛かっただろうに」
須藤蒼「!」
須藤蒼「う、ううっ、あ・・・」
須藤蒼「あああああ・・・!」

〇黒背景
「うわああああああああああん!」
  かつて、こんな言葉を聞いたことがある。
  “地獄はもぬけの殻だ。
   全ての悪魔は地上にいる。”
  と。
  どんな怪物より、幽霊より、悪魔より、妖怪より。
  恐ろしいものはいつだって、生きた人間だ。
  わかっていても俺達は、立ち向かうしかないのだ。
  その、最も恐ろしい者達に。
  己を正義と疑わない亡者達に。
  自分達の、命と。
  そして、誇りを守る、そのために。

次のエピソード:エピソード19・整の中

コメント

  • 2人の腹の中の感情を全て吐露する今回、本当に痺れました!そして蒼くんの号泣にもらい泣きしそうになりました!(何て心に訴える泣き声…)

成分キーワード

ページTOPへ