#1 エンジン始動(脚本)
〇ファンタジー世界
ここは科学の代わりに魔法が発達した世界『マジカラース』
人々は魔法の力を使って日常生活を営んでいた
そして、それは戦争でも同じこと
兵士たちは己の魔力を魔槍や魔剣に込めて武器を強化し
敵兵と斬り合った
魔力量=戦闘力となるこの時代。
圧倒的な魔力量を持つドヴィッヒ率いる
プロイデル公国の騎馬隊は
無類の強さを誇っていた
〇荒野
ドヴィッヒ「ぬっはっは!」
ドヴィッヒ「誰も我を止めることはできんぞ!」
フランツ兵「うわあああっ!」
ドヴィッヒ「さあ、我が勇敢なる騎馬隊よ!」
ドヴィッヒ「このまま一気にフランツ国を攻め落とそうぞ!」
おおおっ!
ブルードン「ドヴィッヒ、デンガ地区は制圧が済んだ」
ブルードン「後はこのズーラ地区を押し切れば我々の勝利だ!」
ドヴィッヒ「よし、ではこのまま馬で押し通す!」
ドヴィッヒ「ぜあっ!」
ヨージフ「ヒヒインッ!」
フランツ兵「くそうっ、さすがはプロイデル軍一の豪傑、ドヴィッヒ将軍」
フランツ兵「すさまじい迫力だ」
フランツ兵「諦めるな!」
フランツ兵「”アレ”が来るまでの辛抱だ」
フランツ兵「魔法壁を張れ!」
ドヴィッヒ「ぬはは、脆弱極まりない」
ドヴィッヒ「我が魔槍のチリとなれ」
ドヴィッヒ「はああっ!」
フランツ兵「な、なんて魔力量だ!」
ドヴィッヒ「逝ねい!」
ドヴィッヒ「ぜあぁっ!」
フランツ兵「ぐあぁぁぁっ!!」
ドヴィッヒ「どうした、この程度でもうお終い──」
ドヴィッヒ「ぬおおおおっ!」
ドヴィッヒ「な、なんだ、今の爆発は!?」
ヘルマー「ド、ドヴィッヒ将軍、あれを見てくださいであります!?」
ドヴィッヒ「ぬ?」
ブルードン「鉄の塊が動いている・・・?」
ヘルマー「あ、危ないであります!」
ドヴィッヒ「ぬああああっ!」
ブルードン「なんだ、魔力を圧縮して打ち出したのか!?」
ヘルマー「こちらへ向かってくるであります!」
ヘルマー「ドヴィッヒ将軍、ここは一時撤退するであります!」
ドヴィッヒ「なに、勝利を目前にして尻尾を巻いて逃げろだと!」
ブルードン「もう一発くるぞ!」
ドヴィッヒ「ぐううっ!」
ヘルマー「将軍、敵戦力が不明なまま進軍するのは危険すぎるであります!」
ブルードン「ドヴィッヒ、ヘルマー魔法参謀の言うとおりだ」
ブルードン「あの謎の兵器、ただ事ではない」
ドヴィッヒ「ぐううっ・・・おのれ、フランツ王国め」
ドヴィッヒ「この借りはデカいぞ!」
〇西洋の城
〇謁見の間
マルク王「それでおめおめと逃げ出してきたというわけか」
マルク王「豪傑ドヴィッヒの名も落ちたものだな」
ドヴィッヒ「はっ、返す言葉もございません・・・」
マルク王「いま開発部のエディントンに」
マルク王「フランツの使った兵器の詳細を調べさせておる」
マルク王「貴様は報告を待て」
ドヴィッヒ「次に相対した時は、必ずや我の力で打倒してみせます」
マルク王「ドヴィッヒよ、私はお前を買っている」
マルク王「それはお前が勝つ男だからだ」
ドヴィッヒ「・・・・・・」
マルク王「私を失望させるでないぞ」
〇兵舎
ドヴィッヒ「ブルードン、もっと酒を持ってこい!」
ドヴィッヒ「こんなものではまったく酔えんではないか!」
ドヴィッヒ「ヒック」
ブルードン「もうすっかり出来上がっているだろう」
ブルードン「やけ酒は体に良くないぞ」
ドヴィッヒ「自棄になどなっておらん!」
ドヴィッヒ「おい、ヘルマー!」
ヘルマー「は、はいであります!」
ドヴィッヒ「お前が撤退などと言い出さなければ、あのまま勝てていたのだ!」
ヘルマー「しかし、敵戦力も分からぬまま突撃するのはリスクも高く」
ヘルマー「全滅していた可能性も──」
ドヴィッヒ「貴様、我が騎馬隊の力を信じていないというのか!」
ドヴィッヒ「ここで、根性を、叩き直して・・・」
ドヴィッヒ「うっ!」
ドヴィッヒ「おろろろろ」
ヘルマー「うわああああ、ドヴィッヒ将軍が嘔吐されたであります!」
ブルードン「やれやれ。こいつは弱いくせにいつも飲みたがるんだ」
ヘルマー「ううっ、将軍にお叱りを受けてしまったであります・・・」
ブルードン「酔っぱらいの言うことだ、気にするな」
ブルードン「お前はお前の強みを生かせばいい」
ヘルマー「はい、であります・・・」
ドヴィッヒ「グゴゴゴ、グゴゴゴ」
〇西洋の城
〇古い倉庫の中
ドヴィッヒ「ぐうう、頭が割れる・・・」
ドヴィッヒ「いずれ酒もこの我の力で屈服させてやるぞ」
ブルードン「適量を覚えればいいだけのことだろ」
ドヴィッヒ「それにしても開発部がこんな朝早くから」
ドヴィッヒ「我らになんの用があるのだ」
「エディントン様の、お通りだーーー!」
ドヴィッヒ「うっ、うおおお!」
ドヴィッヒ「こ、この鉄の塊は!」
魔法戦車「砲身、ドヴィッヒへ向けろ!」
ドヴィッヒ「や、やめろ!」
ドヴィッヒ「エディントンどこにいる!」
ドヴィッヒ「隠れてないで出てこい!」
エディントン「ここだよ~」
ドヴィッヒ「中にいたのか・・・」
ドヴィッヒ「まさか、お前が操縦していたのか」
ブルードン「一体なんなんだ、これは?」
〇白
「こいつの名は魔法戦車」
「人が乗り込んで操縦する装甲兵器だ」
「燃料は搭乗者の魔力」
「魔力で動く兵器だと、そんなもの初めて見た!」
「機動力」
「耐久性」
「パワー」
「どれをとっても馬の比じゃない」
〇古い倉庫の中
エディントン「魔力が強いほど、機動力も耐久性も上がる」
エディントン「それに魔力を圧縮してこの砲身から」
エディントン「魔法弾として打ち出すことも可能なのだ」
エディントン「その威力は半端じゃない!」
ドヴィッヒ「魔法弾・・・」
ドヴィッヒ「たしかにいままで味わったことのない衝撃だった」
ブルードン「ドヴィッヒ、こいつはお前のためにあるような兵器だぞ」
ブルードン「何せ魔力量が多ければ多いほど」
ブルードン「威力を発揮するのだ」
ブルードン「世界広しといえども」
ブルードン「お前ほどの魔力量を持つ者は他にいない」
エディントン「これからの戦争は間違いなく」
エディントン「魔法兵器による戦闘がメインになる」
エディントン「より強い魔法兵器を使いこなした者が」
エディントン「生き残る世界になるのだ」
ドヴィッヒ「これに乗ればフランツの奴らを」
ドヴィッヒ「蹴散らすことができるのか・・・」
ブルードン「それどころか、世界を我がプロイデルの」
ブルードン「手中に収めることも夢じゃない」
エディントン「操縦に関しては心配ご無用」
エディントン「極めて簡単」
エディントン「バカでもできる」
ドヴィッヒ「ふっ、いいだろう」
ドヴィッヒ「魔法戦車とやら」
ドヴィッヒ「貴様の能力を存分に俺に見せてみるがいい!」
ブルードン「さあ、行け!」
魔法戦車(ドヴィッヒ)「魔法戦車、発進!」
〇炎
ギュオオオオオオォォ!
ズガガガガガ、ズガ、ズガンッ!
バリバリバリッ!
ゴゴゴゴゴッ、バギィッ!
ブルードン「・・・・・・」
ブルードン「え?」
〇古い倉庫の中
ブルードン「えー・・・」
ドヴィッヒ「ゲホッゲホッ・・・」
ドヴィッヒ「なんだ、いったい何が起きた?」
ブルードン「ドヴィッヒ、お前・・・」
ドヴィッヒ「む?」
ブルードン「運転が下手過ぎる」