月下美人

ホマ

エピソード8(脚本)

月下美人

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〇レトロ喫茶
  PM 22:00
  寺島と女は、喫茶店に来ていた。
花「先程は助けて頂き、 ほんとに有難うございました」
寺島「いえ、当たり前の事をしただけです」
花「あの、本当に刑事さんなんですか?」
寺島「咄嗟に言った出任せです」
  俺は女に、刑事であることを伏せた。
花「じゃあ、本職は?」
寺島「ただのサラリーマンです」
寺島「えっと、名前まだ聞いてませんでしたね」
寺島「俺は寺島と言います」
花「私は花って言います」
花「寺島さん、帰りはいつも この時間なんですか?」
寺島「いや、今日はたまたま残業でして」
寺島「ところで花さんは あんな所で何されてたんですか?」
花「・・・私はただ一人で歩いていただけです」
寺島「そうなんですか。 でも、こんな雨の中寒くないですか?」
  寺島は花の服装に目をやった。
花「確かに寒いですけど、気にしないで下さい」
寺島「いいえ。よければ上着、使って下さい」
花「あ・・・有難うございます」
寺島「それにしても、花って素敵なお名前ですね」
寺島「やはり、お花が好きなんですか?」
花「はい。大好きです」
花「寺島さん、花には興味ありますか?」
寺島「そこまで興味はないんですが、今 ある花についてちょっと興味は持っています」
花「”ある花”ですか?」
寺島「はい。『月下美人』って言う花なんですが」
寺島「夜にしか咲かない、神秘的な花なんです」
寺島「花さん、ご存知ですか?」
花「・・・月下美人・・・」
寺島「花さん?」
花「何でもありません。私が一番好きな花です」
寺島「そうなんですね。実際に見たことは?」
花「──ええ、すごくキレイな花ですよ」
花「寺島さんに、一度見てもらいたいです・・・」
寺島「やっぱりそうなんですね」
寺島「けど、見る時間が限られているみたいなんで正直厳しいですよね」
花「時間が合えば、私がご案内しますよ」
花「都内でも見れる場所はありますから」
寺島「はい。その時は是非お願いします」
花「分かりました」

〇SHIBUYA109
花「雨、上がって良かったですね」
寺島「そうですね。 コーヒー奢って頂きありがとうございました」
花「いえ、 寺島さんと色んなお話が出来てよかったです」
寺島「俺も、花さんと 色んな話しが出来てよかったです」
花「あっ。上着、お返しします」
花「どうもありがとうございました」
寺島「では、気を付けて帰って下さいね」
花「──はい。寺島さんもお気を付けて」
  そう言って二人は別れた。
  花は寂しそうに遠くで寺島を見詰める。
  すると──
「寺島さん・・・」
  遠くで花が寺島の名前を叫んだ。
寺島「はい」
花「また、お会い出来ませんか?」
花「11月20日に・・・」
寺島「11月20日にですか?」
花「はい。どうしてもこの日しか会えなくて──」
花「無理でしょうか?」
寺島「いえ、決してそんなことは」
寺島「11月20日ですね。分かりました」
花「有難うございます」
花「じゃあ、18時に さっき助けてもらったあの場所で・・・」
寺島「はい」
花「必ずですよ?それじゃあ・・・」
  花は、会釈し去って行った。
寺島「はい、必ず」
寺島「しまった、 花さんの連絡先聞いとけばよかった」
  寺島は、スマホのスケジュールに
  花との予定を記入した。

〇警察署の入口
  翌日、寺島は
  いつもの様に事件の捜査を続ける。
  すると、長谷川が現れた。

〇警察署の廊下
長谷川「寺島、昨日はすまなかったな。 一人で調べものさせてしまって」
寺島「いえ、気にしないで下さい」
長谷川「で?何か分かったか?」
寺島「いえ。月下美人については、全て山田さんの 言ってた通りで間違いなかったです」
長谷川「そうか・・・」
寺島「体内に残ってたトゲも未だに気になりますし」
長谷川「まさか、月下美人が殺してたりしてな・・・」
寺島「ハセさん、さすがにそれは無いですよ。 植物に殺人はあり得ないですって・・・」
長谷川「ちっ、だよなぁ・・・」
寺島「さっ、冗談はこのくらいにして 仕事しますよ?仕事」
長谷川「ん?何か今日のお前、様子が変だぞ?」
長谷川「さては、昨夜何かあったな?」
寺島「べっ、別にそんなことないですよ!! いつもと一緒です」
長谷川「いや、長年お前といた俺には分かる」
長谷川「よしっ、今から試しに ウソ発見器でも付けてみるか?」
長谷川「それなら、ウソかホントか分かるだろ?」
寺島「やっ止めて下さいよ!!」
寺島「俺、今から捜査行って来ます」
  寺島は慌てて、部署から出て行った。
長谷川「ほっんとに、アイツは分かりやすいなぁ ハッハッハ」

〇警察署のロビー
寺島「ったく、ほんとハセさんって鋭いよな」
寺島「これからはバレない様にしないと・・・」
  ロビーの前を通り掛かると
佐藤はるひ「寺島刑事、お疲れ様です」
  振り返ると、交通課の佐藤が
  寺島を呼び止めた。
寺島「あっ、お疲れ様です」
佐藤はるひ「これから捜査ですか?」
寺島「はい」
佐藤はるひ「犯人の行方、まだ分からないんですよね?」
寺島「はい。かなり手こずってます」
佐藤はるひ「有力な情報もないと、逮捕は難しいですよね」
寺島「はい。ですが早く解決しないと、 警察の信用にも関わることですので 今は捜査を続けるのみです」
佐藤はるひ「あまり、無理しないで下さいね?」
佐藤はるひ「私に何か出来ることがあれば いいのですが・・・」
寺島「ありがとうございます。 では、捜査に行って来ますね」
佐藤はるひ「はい」
  佐藤は敬礼し、寺島を見送った。
  佐藤の表情は、どこか嬉しそうだった。

〇白
  事件は何の進展もないまま、月日だけが流れた。
  そして、11月20日。寺島は再び花と会う日を迎える。

〇渋谷のスクランブル交差点
  11月20日 PM18:00
寺島「久しぶりに女性と待ち合わせなんて、 何か緊張するなぁ」
  仕事を早く切り上げた寺島は、
  一足先に待ち合わせ場所を訪れた。
寺島「連絡先とか分かんないし、もしかしたら 今日のこと忘れてたりしてないかな」
  寺島は不安を募らせ、花を待つ。
  その時・・・
花「──寺島さん、遅くなってすみません・・・」
  花が姿を現した。
寺島「いえ、俺も今来たところですから。 花さん、お久しぶりです」
花「ほんとにお久しぶりですね。元気でしたか?」
寺島「はい。花さんは?」
花「私も元気でしたよ。 この日が来るのをずっと待ってました」
寺島「実は俺もです」
寺島「とりあえず、どこかで ご飯にでもしましょうか?」
花「そうですね」
寺島「花さん、何が食べたいですか?」
花「あったかいのなら、何でも」
寺島「そうですか。なら、 カフェとかレストランにしましょうか?」
花「はい」

〇レストランの個室
寺島「何か個室になってしまってすみません」
花「気にしないで下さい。それに、個室の方が 落ち着いてゆっくり話せますから」
寺島「それもそうですね」
店員「いらっしゃいませ」
店員「ご注文がお決まりになりましたら、 お呼び下さい」
  店員は水の入ったグラスを置き、
  去って行った。
寺島「花さん、何にされますか?」
  寺島は、花にメニュー表を見せる。
花「あの、私よく分からないので 寺島さんにお任せしても宜しいでしょうか?」
寺島「じゃあ、無難なのにしましょうか? この辺とかどうですか?」
花「はい。そちらでお願いします」
寺島「分かりました」
  寺島はチャイムを押し、店員を呼ぶ。
店員「お決まりですか?」
寺島「はい。こちらを2つお願いします」
店員「かしこまりました。少々お待ち下さい」
花「寺島さん、この様な お店はよく来るんですか?」
寺島「いえ、初めてです。だから 何か緊張してしまって・・・」
  寺島は、水を一口飲む。
花「それならよかったです」
寺島「それは、どういう意味ですか?」
花「私、女慣れしてる人は ちょっと苦手なので・・・」
寺島「そういうことでしたか」
花「けど、こんなに素敵な方でしたら 恋人もいらっしゃるのでは?」
寺島「いえ、俺は仕事人間なので・・・」
寺島「それに、職場は男性が多いですから 恋愛の方はさっぱりでして・・・」
花「じゃあ、お付き合いしてる人は?」
寺島「特定の女性はいません」
寺島「花さんこそ、お付き合いされてる方とか いるんじゃないですか?」
花「──私にはそんな人いません」
花「だから、寺島さんが私を助けてくれた時 すごく嬉しかったです。男らしくて・・・」
寺島「そう言われると、照れます」
  すると、会話の途中で店員が
  注文した料理を運んできた。
寺島「冷めないうちに食べましょうか」
花「そうですね」
  二人は美味しい料理を食べながら、
  会話を楽しむ。

〇警察署の資料室
  一方の長谷川は、
  寺島に代わって残業をしていた。
長谷川「寺島のやつ、俺より先に帰りやがって」
長谷川「さては、女でも出来たか?」
  長谷川は一人資料室で呟いていた。
長谷川「仕方ねぇ、たまには残業でもして 俺もあの花について調べてみるとするか」

〇公園通り
  PM20:00
  夕食を終えた二人は、大通りを歩いていた。
花「お料理、とても美味しかったですね」
寺島「そうですね」
花「寺島さん、今日は有難うございました」
寺島「いえ、俺の方こそ有難うございます」
寺島「ずっと残業ばかりでしたから、 いい気分転換になりました」
花「私、今日のこと忘れません・・・」
寺島「俺もです・・・」
  二人は黙ったまま、大通りを歩く。
寺島「花さん、 まだお時間大丈夫ですか?」
花「えっ?はっ、はい。大丈夫です」
寺島「なら、イルミネーション見に行きませんか?」
寺島「確か、この近くで毎年あってるんです」
寺島「俺、一度も見に行ったことなくて・・・」
花「いいですね。行きましょう」
花「私も一度見てみたいです」
寺島「ありがとうございます。 じゃあ、行きましょうか」
花「はい」
  二人はイルミネーションを見に、
  大通りを後にした。

次のエピソード:エピソード9

コメント

  • 花さんと寺島刑事、まさかの急接近でイイ感じに!? 花さんの「望み」は叶えられるのか、そして事件は、、続きが気になって仕方ないです

  • 花と寺島がいい感じになってきてますね。
    2人の恋の行方が気になります。

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