〇断崖絶壁
海斗「直哉！」
海斗「待てよ」
海斗「・・・」
海斗「助けるんだろ。いつもみたいに」
海斗「俺が！俺が！俺だけが！そうだろう！」
海斗「はあ？」
海斗「何言ってんだ？」

〇断崖絶壁
海斗「無理に決まってんだろ」
海斗「この高さだぜ。もう死んだよ」
海斗「どけよ」
海斗「死んでるって」
海斗「地元の男だって度胸試しで何度も」
海斗「だからなんだ？」
海斗「・・・砂原君も」
海斗「俺だったら死ぬよ」
海斗「どけよ・・・」
海斗「なあ、もうやめようぜ。王子様ゴッコ」
海斗「どけ・・・」
海斗「もう逃げようぜ」
海斗「逃げちまおう・・・」
海斗「海の底にはアイツが・・・」
海斗「聖美が待ってる・・・」

〇黒
　　『聖美が・・・呼んでる』
　　『どうした！』

〇断崖絶壁
砂原「おい！何があった！」
海斗「直哉・・・直哉が・・・」
砂原「落ちたのか！海にちゃんと落ちたか？どこにもぶつかってないか？」
海斗「助けないと・・・」
砂原「答えろ！」
海斗「無理だ・・・」
砂原「しっかりしろコラァ！」
海斗「・・・」
砂原「助けるぞ。俺達で・・・」
砂原「アンタは救助隊を呼んで来い！俺が・・・」
海斗「・・・」

〇黒
　　『え・・・？』
　　『何だって？』
　　『・・・そうか』
　　『そうだな』

〇断崖絶壁
海斗「・・・」
海斗「悪かったよ・・・聖美」
砂原「ああ？」
海斗「俺が行く！すぐ救助隊を！」
砂原「お、おう！」

〇黒
海斗「いつも一緒にいてくれたんだな」
海斗「いつも励ましてくれてたんだな」
聖美「やっと気づいてくれたね」
聖美「救命王子だ何だって持て囃されてすっかり私の声が聞こえなくなったって思ってたよ」
海斗「悪い」
聖美「さあ助けるよ、直哉を」
海斗「ああ、もうしくじらない」
聖美「当り前でしょ」
聖美「今度は私も一緒なんだから」
　　『直哉！』
直哉「・・・！」
直哉「・・・海斗」
海斗「助けに来たぞ」
海斗「この救命王子様がな！」
直哉「・・・」
海斗「見えるか？聖美も一緒だ」
聖美「直哉」
直哉「聖美・・・」
聖美「ダメだよ。ちゃんとしないと」
聖美「私の分までちゃんと生きないと」
直哉「・・・そうだな」
直哉「聖美みたいに、ちゃんと生きないとな」
聖美「分かればよろしい」
直哉「海斗・・・」
海斗「何だ？」
直哉「笑ってるよ。聖美が・・・」
直哉「俺にも笑ってくれたんだ」
海斗「そうか・・・」
海斗「じゃあ戻るぞ！こんな暗闇から！」
直哉「ああ、三人で！」
聖美「三人で！」

〇白

〇海
海斗「はあっ！はあっ！はあっ！はあっ！」
救助隊「大丈夫ですか？」
海斗「大丈夫です！お願いします！」
救助隊「はい！男性一名、移送します！意識もはっきりしています！」
海斗「大丈夫です・・・直哉はもう」
海斗「俺達はもう・・・」
　　続く