救命王子

山本律磨

海(脚本)

救命王子

山本律磨

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〇新橋駅前
  『聖美・・・』
  『やっと微笑んでくれたな』
  『ありがとう』
  『そして・・・さよなら』

〇コンビニのレジ
  『なんてな』
直哉「・・・」
  『あんなのはただの幻覚』
直哉「・・・」
  『俺が勝手に作ったマボロシだ』
  『それでも・・・』
直哉「・・・!」
直哉「・・・」
直哉「・・・」
  『あの海の底で、ちゃんと生きていく力をくれたんだって都合よく思わせてくれよ』
  『こっちはこっぴどくフラれたんだから、それくらいいいだろ?』
直哉「あ、こちらの精算機をお使い下さい」
直哉「お弁当、温めますか?」

〇テントの中
  『わかりました。すぐに支度します』
海斗「・・・」

〇海水浴場
海斗「おいおい」
海斗「冗談だろ?」
海斗「芝居だろ?ドッキリだろ?目薬だろ?」
海斗「あるいは唐辛子を眼球に・・・」
田町「さすがにそれは言い過ぎです」
大倉「だって・・・だって・・・だってえええ~」
海斗(号泣って・・・)
田町「大丈夫だって。社長に呼ばれたつっても、そんな大袈裟なもんじゃないさ」
大倉「でも・・・でも・・・でもおおおお~」
田町「社長はあんなクソ雑誌を鵜呑みにするような人じゃない。炎上が収まるまでだ」
田町「むしろ今後経営に回るためのデスクワークでしょ?クーラーのきいた本社で羨ましい限りっすよ」
海斗「まあ今年は一足先にお疲れ様って事さ」
大倉「海斗さん・・・」
海斗「ここにはお前らがいる。青年団もいる」
海斗「ホラ。ゴミ拾いもしっかり頼むぞ」
大倉「これも捨てときます」
海斗「サンキュー」
大倉「マジ、現場復帰して下さいよ。海斗さんがいねえとナンパする暇作れないから」
田町「ははっ、コイツこんな事いってるけど」
田町「マジなんで」
海斗「だろうな」

〇堤防
海斗「・・・」
砂原「・・・」
海斗「お世話になりました」
砂原「・・・」
海斗「・・・」
砂原「あんた、海嫌いだろ」
海斗「・・・」
砂原「次ここに来んのは、海が好きになってからにしてくれよ」
海斗「・・・」
海斗「確かに・・・海は嫌いです」
海斗「でもこの町は好きです」
砂原「・・・あっそ」
砂原「じゃあ、またな」
海斗「・・・」

〇海辺
晴香「・・・」
砂原「おう」
砂原「もう夏も終わっちまうぞ」
砂原「いつまで座りこんでんだ?」
晴香「決まってるじゃん」
晴香「救命王子が戻ってくるまで」
砂原(筋金入りだな)

〇走る列車
海斗「よう、救命王子」
海斗「どうだ気分は?」
海斗「これでやっと逃げられるな」
海斗「ああ、やっと逃げられる」
海斗「いや、やっと消し去れる」
海斗「お前をな・・・」
海斗「・・・甘いぜ」
海斗「俺はいつまでも傍にいる」
海斗「お前を見つめ、纏わりつき、誘い・・・」

〇黒
海斗「闇に溺れさせる」

〇走る列車
海斗「・・・」
海斗「言ってろ・・・」

〇白
  NEXT SUMMER

〇沖合
海斗「はあっ!はあっ!はあっ!はあっ!」
大倉「海斗さん!大丈夫っすか?」
海斗「ははっ!俺を誰だと思ってる?」
海斗「救命王子だぜ!」
大倉「子供の方、心配してるんですよ!冗談言ってる場合ですか!」
海斗「悪い悪い。この子意識ちゃんとあるから」
子供「痛い~!クラゲ、いっぱい刺されたあ~!」
海斗「大丈夫大丈夫。ちゃんと治療してもらってね~」
大倉「海斗さん。今年、ちょっとチャラくなってません?」
海斗「お前こそ頭固くなってねーか?」
海斗「何ごとも一杯一杯ってのはよくねーよ」
海斗「いいか、闇に飲み込まれるんじゃねえ」
海斗「闇は飲み込むもんだ!」
海斗「なんつって!」
大倉「ちょっと何言ってるか分かんないっす」
大倉「あと『救命王子』ってフレーズ」
大倉「もう死語ですから」
海斗「・・・え?」
海斗「マジかよ」
海斗「うん?」
海斗「・・・」

〇沖合
  終わり

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