2話 心の準備(脚本)
〇ミリタリー
第16偵察隊司令官「『物心両面』の準備をしてもらいたい! 以上!」
”物心両面”
即ち、『物と心の準備をせよ』とのことだ
なので僕は、
手始めに心の準備をする為
遺書を残すことにした。
〇宿舎の部屋
──陸上自衛隊駐屯地、営内──
木村英介「・・・」
木村英介「・・・ダメだ、何も思いつかない」
「うぃーす」
川島朋也「よぉ”エース”、な~にやってんだよ」
木村英介「川島、そのアダ名で呼ぶな」
こいつは『川島朋也』
僕の新隊員時代からの同期であり、
なおかつ相部屋のベッドバディだ。
因みに、”エース”とは
部隊でダメな奴を皮肉って使われるアダ名だ。
木村英介「”遺書”を書く途中なんだよ」
川島朋也「ハァ? 遺書だぁ?」
川島朋也「真面目だねぇ、 めんどくせぇから俺は書かねえぜ」
木村英介「おいおい、大事な事だろ?」
川島朋也「バーカ、そんな事考えてる時点で、 お前は負けてんだよ」
木村英介「どういうことだよ・・・」
川島朋也「いいか、遺書を書くってことは、要するに 死ぬ覚悟ができてるってことなんだよ」
木村英介「当たり前だろ? 何が言いたいんだお前」
川島朋也「ハァわかっちゃいねえな」
川島朋也「最初から”負ける気”でいるって雑魚ってことだよ」
木村英介「・・・は?」
川島朋也「まぁでも、お前は鈍臭くて戦場ですぐに死にそうだから遺書が必要か」
川島朋也「ギャハハハ」
木村英介「・・・」
木村英介「よし、今からお前と戦争だ」
川島朋也「ハッ、いいぜ。かかって来いよ」
???「お前ら、喧嘩すんな」
「は、班長!?」
〇ミリタリー
後藤3曹
この人は、
僕と川島の一つ上の階級の上司であり、
ついでに、僕達が普段生活する営内※(自衛隊の寮の部屋)の班長だ
因みに、
自衛隊の階級を旧軍の階級で表すと、
以下のようになる。
陸士長=上等兵=兵(一般兵)
3曹=伍長=下士官
そして最後が幹部。
少尉〜大将と呼ばれたが、今は陸尉〜幕僚長の呼び名である。以上。
〇宿舎の部屋
後藤3曹「・・・ところで、お前らの班長である俺が部屋に来てやったんだけど」
川島朋也(おい!)
木村英介(分かってる!)
木村英介「班長、コーヒーをお入れいたします!」
川島朋也「お菓子どうっすか?」
後藤3曹「おおー、お前ら気が利くなぁ(棒読み) サンキュー」
(ホッ・・・)
普段の生活で、僕達は上司の態度や発言の意味を探っている──
そして普段からこうする事によって、作戦行動中に、指揮官が何を求めているか察し
命令が届かない遠くの戦場でも、指揮官の意図を汲み取って行動するのだ。
所謂”阿吽の呼吸”の訓練みたいなものだ
──というのは建前で、
本当は様子を見るついでに食料をタカリに来たのだろう。
後藤3曹「うまうま・・・ところで、 様子を見に来たけど、お前ら大丈夫か?」
川島朋也「何がっすか?」
後藤3曹「メンタルだよ、メ、ン、タ、ル」
川島朋也「あ、いやその・・・」
後藤3曹「正直に答えろ。 俺達は”実戦”を経験したんだ」
後藤3曹「命を奪い奪われる地獄だった」
後藤3曹「アレから何日か経過して、 中には精神を病んだ隊員も現れ始めている」
〇荒廃したセンター街
一般女性「助けてー!!」
謎の兵士「ハハハ! しねええ!!」
「うわあああ!!! やめろおおおお!!!」
謎の兵士「!? なんだ貴様は!」
謎の兵士「ガハッ・・・!!」
敵が国民を◯すのを見ていられなかった
だから僕も敵を何人も撃って◯した
〇炎
こうして僕の”手は汚れた”
けれどこれが望まれこと──
誰かが”汚れ役”をしなければないけない
でなければ”国民の命と財産”を守る事ができない
「オノレ・・・」
マーガル兵の亡霊「ヨクモ殺シテクレタナ・・・」
被害者の亡霊「なんで・・・もっと早く駆けつけてくれなかったの・・・」
その他の声「この・・・人〇し」
・・・
〇宿舎の部屋
後藤3曹「木村、大丈夫か? ”コンバットストレス”を抱えてないか?」
木村英介「・・・大丈夫です」
川島朋也「班長、コンバットストレスってなんすか?」
後藤3曹「心的外傷後ストレス障害ともいう」
後藤3曹「要するに、戦闘によって受けた心理的衝撃がトラウマとなって、」
後藤3曹「心と身体に異常が出てしまう症状だ」
木村英介「・・・」
川島朋也「へへっ!」
川島朋也「そんなら大丈夫っすよ!」
川島朋也「寧ろ俺、早くまた戦場で活躍したいっす!」
後藤3曹「おいおい、 お前は危ない奴だな」
後藤3曹「言っとくけど、お前みたいな奴が戦場で真っ先に死ぬんだぞ」
木村英介「班長・・・」
木村英介「今回僕らが参加する作戦はどんな内容なんですか?」
後藤3曹「ん・・・そうだな」
後藤3曹「この際、作戦立案に至る背景も含めてお前らに教えておこう」
空気が緊張するのを感じた。
〇刑務所の牢屋
マーガル人捕虜「良く聞け! ”異世界人共よ”」
マーガル人捕虜「我々偉大なるマーガル帝国は、再び 『ホール』を通ってこの世界に侵攻する!」
マーガル人捕虜「その時は今回の比ではないぞ!」
マーガル人捕虜「もっと倍の兵力!もっと強力な魔獣を『ファージア』から呼び寄せるぞ! 覚悟しておけ!」
???(ふーむ・・・捕虜の尋問にきてみたが、 これは上に報告しといた方が良さそうだな)
日本政府は、マーガル兵捕虜の言葉を、本気と受け止め、
対策を練るために、まずはマーガル帝国が存在する異世界『ファージア』へと
自衛隊を派遣して、偵察することを決定した
〇宿舎の部屋
後藤3曹「──というわけで俺達”第16偵察隊”の出番だ」
後藤3曹「俺達はホールの向こう側に”潜入”してマーガル帝国の全貌を明らかにするのが任務だ」
川島朋也「なるほど、俺等”忍者”みたいっすね」
後藤3曹「そうだ」
後藤3曹「ホールに潜入したならば、」
後藤3曹「隠密に行動して、敵の”規模”そして”兵器の種類”」
後藤3曹「あとは追加で向こうの世界の”環境”まで調べるみたいだ」
川島朋也「うわぁ・・・、やること多いっすね」
後藤3曹「そうだ・・・」
後藤3曹「だが──、敵を知り己を知れば百戦危うからずだ!」
「けど班長・・・」
木村英介「一番先に潜入する僕達は、向こう側の情報を何も知らないからそうとは言切れないのでは?」
後藤3曹「そこは仕方がない、」
木村英介「・・・要するに僕達貧乏くじを引かされたって訳ですね」
川島朋也「おいエース! テンション下がる事言うんじゃねえよ!」
後藤3曹「おい喧嘩すんな」
後藤3曹「いいか?」
後藤3曹「確かに木村の言う通り俺達は貧乏くじを引かされた」
川島朋也「そんな・・・班長までそう言うんすか」
後藤3曹「だが──、俺達がやらなきゃ誰がやる!」
後藤3曹「”あとに続く者達の為に、俺達は魁(さきがけ)となるんだ!”」
「──了解!!」
後藤3曹「あと一つだけ注意だ」
後藤3曹「今回は極秘任務だ」
後藤3曹「ゆえにこの件を外部に漏らすな」
後藤3曹「そして勿論”家族””友人””恋人”にも言うな」
後藤3曹「わかったな」
木村英介(・・・)
木村英介「・・・了解、しました」
僕達は隠密に行動する為に、敵にも味方にも行動を悟られてはいけない。
そして記録や証拠も残してはいけない
だから僕は遺書を残すことをやめた
〇宿舎の部屋
消灯、就寝時間
木村英介「川島・・・、僕等って何なんだろうな」
川島朋也「ただの”駒”だろ」
木村英介「・・・」
川島朋也「けど、やり甲斐があるぜ」
川島朋也「なにせ誰も行った事がない異世界に、一番乗りでいけるんだからよ、ワクワクするぜ」
木村英介「そうか・・・そういう考え方もあるんだな」
木村英介「けど僕は怖いよ、 誰にも知られないまま異世界へと向かうのは・・・」
川島朋也「あっそ、だからエースなんだよお前は」
木村英介「・・・ああ、そうかい お休み」
〇祈祷場
眞来(まき)教本部
「異界におわす神、 眞来之尊(まきのみこと)よ、お頼み申す」
「どうか我らを迎え給う、帰らし給う」
「いざ我らの祖の住処」
「楽園『富和慈愛(ふわじあ)』へと──」
・・・
眞来教導師「あぁ・・・やっとこのときが来た。 異世界の軍勢」
眞来教導師「彼らの存在こそが僕達の信じる神様や世界が在ることの証明」
眞来教導師(この流れ・・・利用させてもらうよ)
続く。
コンバットストレス!
自衛隊の階級!目から鱗の知識がストーリーを盛り上げてますね
こちら凄く設定詰められている予感…
最後の団体のイケメンもちょっとやばそうできになります👍
今回主人公の取り巻く状況が出てきて楽しかったです。自衛隊の内情は全然わからないのでずっとへーの連続でした。先輩の意図を汲み取るというパワハラめいた関係性が多分今でもありそうですよね。前線に出るということに関して各々でモチベーションや捉え方が違ってるのも面白かったです。
積極的に攻めるということに自衛隊のあり方と矛盾を感じる人たちも居そうですね。
この主人公たち自衛隊員の様子が本当に生々しくて、異世界モノにもかかわらず地に足がついた物語の様子に惹かれます!
そして、謎の組織の登場で一層興味をそそられました!