Ep.11 / THE ELUSIVE NIGHT WATCH #11(脚本)
〇未来都市
〇荒廃したホテル
郊外 ラブホテル カリオストロ
僕は唖然(あぜん)として見上げた。
久常紫雲「なっ。ここって・・・。ちーちゃん?」
根須戸智是「言ったでしょ。昼間の決闘で、辛うじて一本取れたごほうびも兼ねて」
根須戸智是「今夜はプレゼントがあるって」
久常紫雲「じ、実は今、ここにいる、とか?」
チラリと視線をホテルに泳がせると、ちーちゃんはハッとして赤面した。
根須戸智是「ちがーう! しゅーちゃんの助平!」
久常紫雲「す、助平って・・・死語」
根須戸智是「いいから、裏に回って! 従業員用の扉」
根須戸智是「ロックあけてあるから。はやく」
久常紫雲「もう、じゃあ、なんなんだよぅ」
〇黒
久常紫雲「ここ地下室だよね。まっ暗だけど」
根須戸智是「ふふ。いま、電気つけるね」
〇地下倉庫
チカチカと照明が瞬き、コンクリートうちっぱなしの広い地下室が現れた。
壁にはステンレス製の棚や巨大なロッカーが置かれ、全体的に無機質で殺風景。
奥にはアームロボットが鎮座している。
根須戸智是「じゃーん! ナイトウォッチの秘密基地よ! 凄いでしょ!」
久常紫雲「すげぇ! かっこいい! スタイリッシュ!」
久常紫雲「・・・でもなんでラブホの地下?」
根須戸智是「ここは郊外だし。 いまどきのラブホは全自動化が普通」
根須戸智是「お客は他人に関心をもたない。 秘密基地にはおあつらえむきなの」
久常紫雲「・・・確かに。出入りしてるところを目撃される危険は少なめかも」
久常紫雲「だからって、勝手にこんなん作っていいの」
根須戸智是「あ。ここのオーナー私だから」
根須戸智是「もちろん、名義はダミー。 偽装してあるけどね」
久常紫雲「うわぁ。マジか」
根須戸智是「ふふふ。マジついでに。 そこのロッカー、開けてみて」
久常紫雲「このロッカー? なんだろ」
中にはマヌカンに着せられた「ナイトウォッチ」のコスチュームが入っていた。
久常紫雲「おおお! カッコいい!」
根須戸智是「格好いいだけじゃないよ」
根須戸智是「軽量の防弾・防刃繊維を基本に、最新の通電硬化繊維と、厚い部分は通電硬化ジェル」
根須戸智是「攻撃を受けたら、サポートAIが瞬時に硬化させるの」
根須戸智是「拳銃やナイフじゃ、まず貫通しない」
久常紫雲「ひゃー。こんなの、どうやって」
根須戸智是「この程度、データと3Dプリンタ。 あと材料があればどうとでも」
根須戸智是「コストはかかるけどね。 その他、秘密道具も色々」
ちーちゃんが引き出しを一瞥した。
すると一斉にぞろりと開き、多数多様なガジェットが現れる。
根須戸智是「ヴィランハンターに出てきたアイテムも、可能な範囲でそろえてみたわ」
久常紫雲「乗り物は? ナイトモービルとか」
根須戸智是「ふふ。名前それでいいの?」
根須戸智是「専用の乗り物はさすがに足がつくから。 残念」
久常紫雲「足がつくって。犯罪者みたいな」
根須戸智是「何。今さら。 そもそも私たち法的には色々アウトよ」
根須戸智是「私、ハッキング常習犯」
久常紫雲「僕は、法的には暴行犯と・・・。 歩にバレたら怒られるなぁ。むむむ」
根須戸智是「歩君、意外と堅いよね」
久常紫雲「警察一家だし。正義感は強いんだよ」
久常紫雲「・・・にしてもこの装備」
久常紫雲「街のチンピラ退治には、オーバースペックじゃない?」
僕の疑問にちーちゃんは、にやりと笑った。
根須戸智是「ご明察。何でだと思う?」
久常紫雲「嫌な予感・・・僕の身を、守るため?」
根須戸智是「何から?」
久常紫雲「もっと、やばい連中から?」
根須戸智是「あたり。私の標的はね。 あの悪の多国籍企業ゼニス」
根須戸智是「私たちなら、奴らが法の目を逃れて行っている悪を暴けると思うの」
久常紫雲「・・・マジで?」
根須戸智是「大マジよ。チンピラ退治より、よっぽど、世のため人のためだと思わない?」
僕は呆然と、秘密基地を見回した。
久常紫雲「・・・マジか──」
〇怪しいオフィスビル
株式会社アルゴル・外観(夜)
株式会社アルゴル
そして気づいた時には、ビルの壁を登っていた。
手首のブレスレットから屋上に伸びたワイヤーをよじ登る。
ナイトウォッチ「・・・ここどういう所?」
根須戸智是「ゼニスの子会社。データセンターよ」
ナイトウォッチ「裏帳簿とかがあるわけだ」
〇ビルの屋上
ナイトウォッチ「建物のセキュリティは?」
根須戸智是「大丈夫。さくっと全部無力化済み」
ナイトウォッチ「・・・だと思った」
根須戸智是「意外と平気そうね」
ナイトウォッチ「色々ありすぎて、あきらめの境地。 毒喰らわば皿までって言うし」
根須戸智是「その調子で食べて食べて」
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