鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する

司(つかさ)

2話(脚本)

鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する

司(つかさ)

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〇黒
鈴木(家が全焼してしまった)
鈴木(冗談だったら良かったんだけど)
鈴木「なんで全焼しちゃったんだよ・・・・・・」

〇汚い一人部屋
  鈴木はその時の光景を思い出して頭を抱えていた
  現実にはあり得ない光景に声も出なかった
  しかし、その事実はもう元には戻らない

〇黒
鈴木(理由はわかってる。パンドラさんの薬の力を僕が見誤ってたからだ)
鈴木(よく言えば成功だったよ)
鈴木(作った薬の力で僕はちゃんと炎を吐けたんだから)
鈴木(でもそれはサーカスとかでやるパフォーマンスレベルの炎じゃなくて)
鈴木(夢にまで見た本物のドラゴンが口から出す『爆炎』だった)
鈴木(コンロの火ですらビビッてしまう僕が、6畳半の部屋を覆うほどの炎を一瞬で吐いたんだ)
鈴木「そりゃあ全焼もするよな」
鈴木(まぁなんとかその様子を動画には収めたし、データもあるから後はアップするだけなんだけど)
鈴木「機材が全滅しちゃったんだよな。ううううぅ」
  鈴木は声を押し殺して一人泣いた

〇走る列車
鈴木「はぁ・・・・・・」
鈴木(かくして僕とパンドラさんは根無し草となってしまった)
パンドラ「鈴木・・・お前また、ワシに黙ってデザートを・・・・・・むにゃむにゃ」
鈴木(あぶないあぶない。ため息がパンドラさんにかかって起こすとこだった)

〇汚い一人部屋
鈴木(まだあの部屋を使っていた時)
鈴木(部屋で眠ってるパンドラさんに気づかず、足を踏んだら彼女は飛び起きて)
鈴木(僕に3時間説教をした挙句)
鈴木(また怪しい薬を僕の飲み物に混入したんだ)

〇走る列車
鈴木「思い出すだけで震えが・・・・・・」
  鈴木は気分転換のために車両の窓を開けた
  心地いい風が車内を吹き抜ける
鈴木(今はなんとか家族に事情を説明して・・・姉の家へ行ける事になったけど)
鈴木(まさか・・・パンドラさんが来てからこんな事になるなんて思ってもみなかった)
  鈴木はパンドラの寝顔を見た
鈴木(すっかり安心しきって僕の膝を枕になんかしちゃって。普通逆でしょうに)
鈴木「まぁ、パンドラさんに膝枕されても嬉しくないし・・・・・・」
鈴木「むしろ怖いまであるな」
パンドラ「次は・・・溶岩をぉ・・・出してみせろぉ!・・・・・・鈴木ぃ」
鈴木「ひぃ!?」
鈴木(パンドラさんは起きてない。寝言だって分かってるのに反射的に悲鳴が)
鈴木「もう炎なんて出さなくていいよぉ」

〇走る列車
鈴木(外を見ていたら少し眠くなってきた)
鈴木(姉の家はまだ遠い。せっかくだから僕も休んでおこう)

〇黒
鈴木(朦朧とする意識の中、僕は思い出していた)
鈴木(全ての始まりの日・・・・・・パンドラさんが初めて家に来た日の事を)

〇汚い一人部屋
  3週間前
  鈴木は一人部屋でゲームをプレイしていた
  手にはコントローラー、机の上にはノートパソコンやマイク、カメラ等様々な機材が並んでいる
鈴木「・・・あーあーっと・・・・・・よし」
鈴木「・・・・・・」

〇けもの道
鈴木「さぁついにこのステージまで来ました!」
鈴木「実はここはちょっと特殊な仕様があるんですが・・・・・・」
鈴木「今回は特別に皆さんにお話ししちゃいます!」
鈴木「なんとこの迷いの森・・・」
鈴木「隠し場所があるんですよっ!」
鈴木「実を言うとこのゲーム、僕が一時期開発に関わっていたことがありまして」
鈴木「だから知ってるんですよね! ねっ? 僕ってすごくないですか!!」
  鈴木が横目で生放送の視聴者カウンターを確認する
  数字が1から2に増えていた
  鈴木の口元がにやける
鈴木「おっと、まだまだこれだけじゃ終わりませんよ」
鈴木「実はそこには・・・」
鈴木「特別なキャラクターがいるんです。だから・・・」
視聴者「うだうだうるせーよ。つまんねー配信だな」
鈴木「あ・・・・・・あの・・・ですね」
鈴木「あはは、これから見せるのは特別な」
視聴者「早く行けよ! もういいわ。つまらんしお前」
  鈴木が横目で視聴者カウンターをもう一度見る
  視聴者カウンターは1になっていた
鈴木「・・・・・・」
鈴木「ま、まぁためすぎるのは良くなかったですね。さっさと行きましょう」
  慌てた様子で鈴木は話すが、すでに視聴者カウンターは0になっていた
鈴木(最悪だ・・・・・・)
鈴木(このゲームで僕だけが知ってる一番の見せ場なのに誰もいないのかよ)
鈴木(生放送は生で視聴者とやり取りできる分、ファンが付きやすい)
鈴木(動画ももちろん出すけど、この前の動画パートの再生回数たった5回だったじゃないか)
鈴木(このままじゃ人気配信者なんて夢のまた夢だ)
鈴木「・・・・・・おっと」
鈴木(かと言って黙るわけにはいかない。この放送だってアーカイブとして残るんだから)
鈴木「・・・実はこの先にとある隠しキャラクターがいるんです」
鈴木「僕が仕込んだというと少し言い過ぎなんですけど、かなり強力なキャラクターで」
鈴木「ゲームのメインイベントには絡んでこないんですが、戦闘やサポートでは使用できます」
鈴木「あっ、見えてきましたね」
  鈴木のゲーム画面には、森の映像しか映っていなかったが
  突然森の一部が無理やり切り取られたような場所が表示される

〇森の中の小屋
  そこには小さな小屋がポツンと存在していた
鈴木「皆さんはRPGで、キャラクターの職業って言ったら何を思い浮かべますか?」
鈴木「剣士、魔法使い、僧侶、アーチャー、盗賊、武闘家・・・・・・色々ありますよね」
鈴木「その中で僕が思い浮かべたのは、今喋った中にはいないんです」
鈴木「というか少しマイナーな職業かもしれません」
鈴木「でも面白いゲームにしたかったから、使い方に幅があって魅力的なキャラクターがどうしても欲しかったんです」
鈴木「だから会社に内緒で作ってゲームに実装しました」
鈴木「この配信を見る皆さんと僕だけの秘密ですよ」
鈴木「今、当時のゲームディレクターに知られたら滅茶苦茶怒られちゃうと思いますけどね」
鈴木「僕の熱意に賛同してくれたプログラマーとデザイナーには今も頭が上がりません」
  鈴木は熱弁しつつキャラクターを動かし、小屋の前に立たせる
鈴木「紹介します。この家に住むのは・・・・・・」

〇黒
  その瞬間
  テレビからバチッバチッと波打つような電流が部屋の隅まで伝わった
  衝撃でブレーカーが落ちる
  鈴木は驚いて声も出せず、そのまま倒れてしまった

〇汚い一人部屋
鈴木「あいたたたた」
鈴木(さっきは一体何が・・・・・・停電?)
鈴木(椅子から落ちちゃったぽいな)
  鈴木の意識はまだはっきりとしていなかった
  彼は暗闇の中で思案する
  今まで自分はゲームをやっていただけだったと
  外は大雨が降っていたわけでもない
  電気を大量に使っていたわけでもない
  なのに停電とは一体何が起こってそうなったのか
鈴木(まさか・・・・・・)
  そんな最中、鈴木はさらに大きなショックを受けていた
鈴木「あーっ!!! パソコン死んでんじゃん・・・・・・」
鈴木「まじかよぉ。あのゲームオートセーブないのにぃ・・・なんでだよぉ〜」
  ショックで鈴木は駄々をこねる子どものような声を上げた
  全身の力が抜け、背中を後ろに投げ出してしまう
「おわっ!?」
鈴木「ん?」
  鈴木は上半身、具体的言えば頭部付近に違和感を感じた
  背中を投げ出した場所にはベッドがあると思い込んでいた
  だが・・・・・・
鈴木(何だこの感触??)
鈴木(クッション・・・は持ってなかったよな。枕とも違うし・・・というか暖かい・・・・・・ん?)
「お前・・・ワシの体に触ったな?」
鈴木「・・・え?」
  耳元で鈴木に声が掛かる。それはこの部屋に存在しない声だった
鈴木「うわぁ!?」
  鈴木は慌てて身体を起こした
鈴木(なになになに!?)
鈴木(今の・・・・・・明らかに女の子の声だった)
鈴木(っていやいやいやいや)
鈴木(僕に限ってそんな事はないはずだ!)
鈴木(こんな部屋にお、お、おおっ女の子なんてありえないっ!)
  鈴木は興奮していた
  彼は絶対にないとは思いつつも、ついつい良からぬ妄想が頭を巡っていた
「ほれ、選別じゃ」
  一瞬鈴木は何が起こったか分からなかった
  上半身が引っ張られそのまま抱き着かれる
  その感触は暖かく柔らかいと彼が感じたのも束の間
  口の中に何かが入って来る感覚
  急な出来事に動転して彼は少し液体を飲んでしまった
鈴木(なんだこれ・・・苦ぁ・・・おぇー)
鈴木「ひぃ!?」
  鈴木は慌てて何者かの手を振り払いその場を離れる
鈴木(なんなんだよぉもう・・・・・・)
鈴木(とりあえずブレーカーを上げないと)
鈴木(ま、まぁこんなのさ。ほらっ、ホラーゲームだと思えばいいんだから)
鈴木(もう大丈夫だよね・・・勘弁してよぉ)
鈴木「はぁ・・・はぁ・・・・・・」
  停電、女の子、柔らかい感触、口の中の苦み・・・
  鈴木は複雑な心持ちのまま、ブレーカーを探すため壁伝いに台所を目指した

〇汚い一人部屋
パンドラ「お前は・・・余命5分じゃ」
鈴木「余命5分って・・・・・・またまたぁ」
パンドラ「冗談など言わん」
パンドラ「身体にその証拠が出ているはずじゃ。確認してみるといい」
パンドラ「お前の胸のあたりの血管に・・・青色の筋が入っている」
パンドラ「違うか?」
  鈴木が上着の首元を前に引っ張り、胸の中を覗く
鈴木「いやいやそんなバカな・・・・・・」
  鈴木の身体にはパンドラが言う通り青色の筋が入っていた
鈴木「いつの間にこんなもの・・・・・・」
パンドラ「その青筋はこれから少しずつ上にあがっていく」
パンドラ「胸、首、顔、そして頭にたどり着いた時」
パンドラ「お前は絶命するのじゃ」
鈴木(目の前が一瞬真っ暗になった)
鈴木(そう)
鈴木(僕はいきなり絶対絶命の危機にさらされてしまったらしい)
鈴木(どうしてこんなことになったのか、自分でもわけがわからない)
鈴木(だからまずは、こうなった経緯から説明しようと思う)

〇汚い一人部屋
  3分前
鈴木(あの後ブレーカーを上げると無事電気が点いたので、僕はそのまま部屋に戻ったんだ)
鈴木(そしたら、思った通り部屋には女の子がいた)
鈴木(どこの誰かもわからない女の子・・・ドキドキが止まらなくて僕は足音を立てないように近づいた)
鈴木(女の子はなぜか僕のゲーミングチェアの上に立っていた)
パンドラ「なぜ回る? なぜ椅子が回るのじゃ!? どういう原理じゃこれはっ!!」
鈴木(女の子は僕の椅子で遊んでいた)
鈴木(可愛い女の子だなぁ。最近の女の子はコスプレが流行ってるのかなぁ)
鈴木(そんなアホな事を考えて僕は女の子に近づいた・・・そしたら)
パンドラ「あっ、お前は!」
鈴木「あっ、あ、ああの僕は、その・・・というかあのですね」
鈴木(女の子はこっちを指差していたから、驚いてなんて言っていいか分からなかった)
鈴木(でも相手は少女だ。僕は大人なのに初対面で挙動不審なのはカッコ悪いと思った)
鈴木(だからしっかり挨拶しなきゃってそう思っただけなんだ)
鈴木「初めまして! 僕は鈴木っていい」
パンドラ「──お前、もう死ぬぞ」
鈴木「へ?」
パンドラ「お前はワシにやってはいけない事をした」
パンドラ「だから死をもって償ってもらう」
鈴木「・・・・・・・・・・・・」
鈴木(女の子が何を言ってるか分からなかった)
鈴木(だって彼女は椅子で遊んでて、僕よりもきっと5歳以上は年下で、顔も髪も衣装だってかわいいのに)
鈴木「死をもって償うって、そんな・・・・・・」
鈴木(そんな言葉想像していなかった。でもその時にやっと気付いたんだ)
鈴木(僕の口にはまだ苦い後味が残ったままだった事に)

〇汚い一人部屋
鈴木「嘘・・・・・・でしょ?」
パンドラ「嘘ではない」
パンドラ「思い出してみい。お前は『何か』を口に含みそれを飲んだはずじゃ」
鈴木「やっぱりあの時っ・・・!」
鈴木「君は一体何を飲ませたの?」
パンドラ「君ではない。ワシはパンドラじゃ」
パンドラ「まぁ冥土の土産に話してやるか」
鈴木(パン・・・ドラ? あれ・・・・・・)
鈴木(なんだろう。何か引っかかる・・・)
パンドラ「あれはワシの国で調合した即効性の毒薬じゃ」
パンドラ「お前は暗闇の中で動転し無防備に隙をさらした」
パンドラ「ワシは小柄で非力じゃが、暗闇の中お前はワシの攻撃を警戒していなかった」
パンドラ「だから薬を飲ませる事が出来た」
パンドラ「そしてお前は死ぬ。簡単な話じゃろ」
パンドラ「のう、異国の愚かな人間よ」
鈴木(なんて・・・こった・・・・・・)
  鈴木の額に脂汗が滲んでいた
  もう一度鈴木が上着の中から青筋を確認すると・・・すでに首まで到達しようとしていた
パンドラ「フッフッフッフ」
  パンドラが不敵に笑う
  鈴木は目の前がだんだんと暗くなっていくような感覚に襲われた

〇汚い一人部屋
  鈴木の部屋に突如舞い降りたのは異国の少女だった
  彼女はただの少女ではない
  天才と称された最強の錬金術師パンドラだった
  様々な経験、知識、技量、感性を持ち合わせた彼女に作れない薬は存在しない
  鈴木はその力によって命を脅かされてしまう
  絶命絶命の中時間だけが刻々と過ぎていく
  泣き叫ぶ鈴木
  不敵に笑うパンドラ
  鈴木は為す術がない状況だったが
  パンドラはある一つの提案をする
  それが、鈴木とパンドラの運命を大きく変える事になるとは
  この時は誰も想像していなかった

次のエピソード:3話

コメント

  • 衝撃の出会いのシーンですね……
    暗闇の中ながらラッキースケベを想起させる内容からの、まさかの死の宣告!? ここから鈴木さんがどう挽回したのか続きが楽しみです!

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