救命王子

山本律磨

闇(脚本)

救命王子

山本律磨

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〇断崖絶壁
海斗「・・・救命王子か」
海斗「王子じゃない。ピエロだ」
直哉「ククッ・・・よく分かってるじゃないか」
海斗「ピエロでいいと思ってる」
海斗「どんな形でも海で人を助けられるなら」
直哉「それで償ってるつもりか?」
海斗「こうすることしか思いつかないんだ」
直哉「ふざけんなよ。何十人何百人助けようと」
海斗「ああ、聖美は戻ってこない」
直哉「・・・」
海斗「あの時、俺は聖美を助けたかった」
海斗「心配だったからじゃない。自慢したかったからだ」
海斗「自分の手で恋人を救った男になれるって」

〇海水浴場
  『だから聖美が溺れてるのに、それすらもイベントみたいに感じてた』
  『ずっとそうだった。あいつの想いに対してすら・・・ずっと』
  『スカしてはぐらかして。カッコつけて』
  『どこまでも真剣になれない』
  『ふざけてるよな』

〇断崖絶壁
海斗「俺は・・・」
海斗「取り返しがつかない程ふざけていたんだ」
直哉「海斗!」
直哉「うおおおおおっ!」
海斗「人を助け続ければ償えると思って・・・」
直哉「黙れ!」
海斗「いや・・・違う」
海斗「それも違う」
海斗「忘れようとしただけだ」
海斗「消そうとしただけだ。過去の自分を・・・」
海斗「ふざけていた人生を・・・」
直哉「・・・」
海斗「でも消えねーんだ・・・」
海斗「消えねえんだよ!」
直哉「海斗・・・」
海斗「助けても助けても・・・助ければ助ける程」
海斗「救命王子だなんだって持て囃されればされるほど思い出すんだ・・・」
海斗「聖美の顔を!」
直哉「どうだ?苦しんでるか、聖美は・・・」
直哉「泣いてるか?ああ?」
直哉「お前にあいつの苦しみが分かってたまるか」
海斗「・・・笑ってんだ」
直哉「・・・」
直哉「・・・え?」

〇海辺
  『聖美は笑ってるんだ』
  『あの月の下で笑ってる』

〇断崖絶壁
海斗「なんでだよ・・・」
海斗「俺が殺したのに何で・・・」
海斗「ゴメン・・・」
海斗「ゴメンな・・・聖美」
海斗「ごめん・・・ごめん・・・ごめん・・・」
直哉「・・・」
直哉「・・・助けてやろうか?」
海斗「・・・」
直哉「お前も殺してやろうか?」
海斗「・・・」
直哉「・・・嘘だよ。バーカ」
直哉「聖美の所になんか行かせない」
直哉「これからも苦しみ続けろ」
直哉「聖美と『俺』を殺した罪に」
海斗「・・・え?」
直哉「いいよな、お前は・・・」
直哉「俺には笑ってくれないよ、聖美は」

〇黒
聖美「ゴメンね・・・」
聖美「私・・・海斗のことが・・・」

〇断崖絶壁
直哉「きれいだったな、月」
直哉「でも今はずっと曇っててさ」
直哉「夜も昼も真っ暗でさ」
直哉「苦しいんだよ・・・」
海斗「直哉・・・」
直哉「苦しいんだ・・・助けてくれよ」
海斗「やめろ・・・」
直哉「救命王子なんだろ」
海斗「やめろ」
直哉「助けてくれ・・・海斗」
海斗「・・・!」
海斗「直哉!」
  続く

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