俺様王子と小悪魔王子、だけど私はバンが好き。

朝永ゆうり

第2話 歓迎パーティーなんていらない(脚本)

俺様王子と小悪魔王子、だけど私はバンが好き。

朝永ゆうり

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〇西洋の城
  王宮前──
バン「到着いたしましたよ」
  私は馬車の窓から、目の前にそびえ立つ城を見上げた。
エリカ「今日からここで・・・はぁ」
バン「参りますよ、お嬢様」
  私はバンに背中を押され、しぶしぶ馬車を降りた。
ロイド「ようこそ我が城へ」
ロイド「我が名はロイド。 よろしくな、エリカ」
ジャック「あ、兄貴抜け駆けっ!」
ジャック「私はジャックと申します。 どうぞよろしく、プリンセス」
  目の前には、恭しくひざまづいて私に手を差し出す二人の王子。
  けれど、私はそれを無視してバンの腕を掴んだ。
エリカ「バン、行きましょう」
バン「王子、申し訳ございません」
バン「エリカ様は、少々緊張しておられるようで・・・」
バン「ご無礼、どうかお許しください」
エリカ「バン、行くわよっ!」
  私はさっさと歩き出す。
  バンは荷物を片手に、私のエスコートも忘れなかった。
「・・・・・・」

〇城の客室
  城の客室──
エリカ「バン、なぜあんなことを王子に言ったのよっ!」
バン「あんなこと、とは?」
エリカ「私は疲れてなんていなかった」
エリカ「どちらの王子の手をとるつもりもないっていう、意思表示だったのに」
バン「分かっておりますよ、エリカ様」
バン「ですが、彼らは王子です」
バン「事を荒立てないためには、あれが最良の選択だったかと」
エリカ「別にいいわ。 嫌われてしまった方が楽だったのに」
バン「またそのような事を・・・」
エリカ「・・・」
バン「エリカ様、そういう訳にはいかないこと、貴女も分かっているのでしょう?」
バン「ご自身の置かれている立場、きちんとお考えください」
エリカ「でも、私は貴方が・・・」
  言いかけた私の言葉を遮るように、
  バンは用意していたティーポットをカチャリと鳴らした。
バン「紅茶をお淹れしますね」
  ふんわりと、部屋中に温かい紅茶の香りが広がった。
バン「どうぞ」
エリカ「バンの淹れる紅茶、一番好き」
  カップにそっと口をつければ、甘く香る紅茶──もとい、バンの香り。
エリカ(バンがいてくれれば、私は何もいらないのに・・・)
バン「エリカ様、本日のご予定ですが──」
バン「夜、エリカ様の歓迎パーティーがございます」
エリカ「そんなの、いらないわ」
バン「王子の伴侶となるのですから、 当然のことです」
エリカ「・・・」
バン「私はこのままパーティーの準備に向かいますが──」
バン「後程メイドがドレスを見立てに参りますので、 エリカ様はそれまでおくつろぎください」
エリカ「ねえ、バン・・・」
バン「はい、何でしょう?」
エリカ「パーティーへのエスコートは、バンじゃなきゃ嫌よ?」
バン「お嬢様・・・はいはい」
  バンはティーセットを片すと、部屋を出ていった。
エリカ(綺麗におめかしして、バンに見てもらうの)
エリカ(そして、 パーティーでバンとダンスを踊るのよ!)

〇空

〇空

〇城の客室
メイド「エリカ様、とってもお美しいですわ!」
メイド「これなら、王子たちもメロメロですわね!」
エリカ「・・・」
  私は鏡に映った自分に驚き、頬を染めた。
エリカ(さすが王宮のメイドだわ! これならバンも・・・)
  ──コンコン
エリカ(バンだわっ!)
  ガチャ──
ロイド「迎えに参ったぞ、エリカ──」
ロイド「その・・・とても美しいな・・・・・・」
エリカ「ロイド様・・・」
ロイド「なんだ、そんながっかりした顔をして・・・」
ロイド「弟の方が良かったか?」
エリカ「い、いえ、そういう訳では・・・」
ロイド「ならば、参ろう」
ロイド「堂々としていろ。 お前は、とても美しいのだから」
エリカ(バンでなきゃ嫌だと言ったのに・・・)
エリカ(王子の手を二度も拒むなんてできないこと、 分かってるはずなのに)
  重たい気持ちのまま、私はロイド様にエスコートされてパーティー会場に向かった。

次のエピソード:第3話 心はいつもバンを探して

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