声優 イン ポッシブル〜アラサー女が演技未経験で声優を目指したら〜

星名 泉花

voice【10】主観と客観。誰の言葉が私を動かす?(脚本)

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〇仮想空間
アナスタシア「サーシャ? セリフ読みしないの?」
サーシャ(石動 凛子)「するよ〜? 発声練習とかも終わったから これから思いきりセリフ読むよ〜」
アナスタシア「そ、それじゃまた・・・」
サーシャ(石動 凛子)「アナっていいなぁと思って」
アナスタシア「な、なにを言って・・・」
サーシャ(石動 凛子)(だってあのイケメンが 美女に化けてるとは誰も思わない)
サーシャ(石動 凛子)(衣装が・・・。 ファンタジーの女の子って露出多いけど、 アナも好きなのかなぁ?)
サーシャ(石動 凛子)「ちょっと優越感♪ アナって本当にかわいい!」
サーシャ(石動 凛子)「あれ?」
アナスタシア「ごめん、ちょっと血が・・・」
サーシャ(石動 凛子)(表情リンク消されちゃった)

〇仮想空間
まもりん☆両声類「ぐすん、ぐすん」
サーシャ(石動 凛子)「まもりんさん?」
まもりん☆両声類「サーシャさああああんっ!!!!」
サーシャ(石動 凛子)「ど、どうしたの?」
まもりん☆両声類「もうどうしたらいいか全然わからなくて 困り果ててましたっ!!」
まもりん☆両声類「1位になってから聞いてくれる人、 すっごく増えたんですけど めちゃくちゃ叩いてくる人もいるんですぅ」
サーシャ(石動 凛子)「いつも同じ人?」
まもりん☆両声類「わかりません。 通報してもしても出てきて」
まもりん☆両声類「声がキモチワルイとか、 声優の▲▼さんの真似するなとか」
まもりん☆両声類「下手くそ、棒読み。 お前が1位になってランキングが荒れたとか」
サーシャ(石動 凛子)「そっか・・・」
サーシャ(石動 凛子)「相手にしなくていいよ」
まもりん☆両声類「でも・・・」
サーシャ(石動 凛子)「まもりんさんは何のために声を出してるの?」
まもりん☆両声類「嬉しかったから」
まもりん☆両声類「僕、変人って呼ばれてきて。 バイ菌扱いされてきたんです」
まもりん☆両声類「でもここに来て声を出したら 反応してくれる人がいて」
まもりん☆両声類「それで声で遊んでみたら どんどん褒められて」
サーシャ(石動 凛子)(この子は現実で叩かれて、 この場所に居場所を見出したんだ)
サーシャ(石動 凛子)「喜んでくれる人たちのために まもりんさんの声はある」
サーシャ(石動 凛子)「演技だって自分が思うようにやればいい」
サーシャ(石動 凛子)「悔しいなら見返すって考えもあるけど、 まもりんさんが生き生きと楽しく声活してるのが一番いいよ」
まもりん☆両声類「でも・・・」
サーシャ(石動 凛子)「知ってた? 性格の悪い奴には目をつけてる人の幸せが 一番のダメージなんだよ?」
サーシャ(石動 凛子)「口だけの奴だから 中身が薄っぺらいし、誰かを不幸にしてでしか自分を満たせないんだ」
まもりん☆両声類「悪く言われる度にズキズキして、目をそらそうとしてもそればかり頭を支配するんです」
サーシャ(石動 凛子)「相手への感謝が出来ないのは貧しい。 悪口を言うともっと困窮してる」
サーシャ(石動 凛子)「感想は”感じた想い”、 想いは相手への心と書く」
サーシャ(石動 凛子)「感じたと動かされたとき、相手への心を形にするのが”感想”だよ」
サーシャ(石動 凛子)「相手が求めてないのにダメ出しするのは、 相手への想いじゃない」
サーシャ(石動 凛子)「批判出来る自分に酔った行為だから」
まもりん☆両声類「うっ・・・はいっ・・・!! ありがとう、ございますっ──!!」
まもりん☆両声類「僕は、僕がすることで喜んでほしい。 喜ばれてるのが一番目に見えたから・・・それだけだったのに──!!」
サーシャ(石動 凛子)(また気づいちゃった)
サーシャ(石動 凛子)(私、養成所だと生き生きと台詞が読めない)
サーシャ(石動 凛子)(顔は見えてるはずなのに、 私の声は誰にも届かない)
サーシャ(石動 凛子)(世の中のニーズ。 そこに新しい価値観をもたらすくらいの人じゃないと、ダメなのかな・・・)
(言葉通り、年齢が関係ないのなら。 どうして誰も花を咲かせられないんだろう)
  声優はデビューしてから成功するまでの年数が恐ろしく長い。
  若い子にはニーズもあって、未来への時間もある。仮に私がとてつもない才能と実力をもっていたとしても──
  花が咲く頃には何歳なのかな?
  だって今、旬で活躍してる人たちの年齢って
  私と同じ年齢の人か、それ以下が多いんだよ

〇女性の部屋

〇説明会場(モニター無し)
小鳥遊 真緒「それぞれ、一次審査の連絡は来たと思うので緊張してると思います」
小鳥遊 真緒「でもそれはそれ! レッスンの集大成として舞台をやります!」
小鳥遊 真緒「一回、自由にやってみて それから正式に役を決めます」
小鳥遊 真緒「はい、じゃあ役は早い者勝ちで!」

〇説明会場(モニター無し)
夫「兄の家族が引っ越してくる? 聞いてないぞ」
奥さん「あら、言ってなかったかしら? ごめんなさいね」
夫「お前の兄さんってほら・・・ すごい俺のこと嫌ってるだろ?」
夫「あまり関わりたくな──」
奥さん「あら、さっそく。 はーい!」
兄嫁「こんにちは、お久しぶりです」
奥さん「あら、若嫁さんじゃないの。 兄さんはどうしたの?」
兄嫁「旦那は家にいて、後から来るそうです。 先に私だけでもと思い、挨拶にきました」
兄嫁「これからよろしくお願いします」
奥さん「村に人が増えて嬉しいわね。 歳の近い人が来てくれて助かるわぁ」
奥さん「これからよろしくね」
兄嫁「・・・はい」

〇説明会場(モニター無し)
石動 凛子(私がやったのは 雪降る村に住む中年夫婦の奥さん)
石動 凛子(子どもはいない。 兄と兄嫁が田舎に引っ越してきたところから 物語がはじまる)
石動 凛子(奥さんって、田舎にいるズケズケしてるけど 優しい感じの人ね)
石動 凛子(台本を最後まで見たけど、 どこにでもいる普通の奥さんだったわ)
石動 凛子(兄嫁役は、暗いキャラよね。 自己肯定感のない疲れてる女って感じだった)
石動 凛子(どちらの役も面白そう。 他にもキャラはいるけど、 みんなは誰を希望するのかな?)
小鳥遊 真緒「はーい、じゃあ役を決めまーす。 基本的に早い者勝ちだけど、話し合いはもちろんおっけーだからね」
小鳥遊 真緒「じゃあまず、中年夫婦の夫役希望は?」
近藤 悠太「はいはーい、俺やりたいでーす」
小鳥遊 真緒「近藤くん以外にやりたい人ー?」
小鳥遊 真緒「あら、主役なのに」
小鳥遊 真緒「じゃあ近藤くんは旦那役で決まりね」
小鳥遊 真緒「じゃあ次、兄夫婦の旦那役ねー」
「はい!!」
小鳥遊 真緒「あら、こっちの方が人気。 枠は2人までだから話し合いしてねー」

〇説明会場(モニター無し)
小鳥遊 真緒「じゃあ、次は女性キャラね。 まずは中年夫婦の奥さんやりたい人」
木嶋 萌奈「はい」
小鳥遊 真緒「お、じゃあまず木嶋さんね。 他はー?」
小鳥遊 真緒「んー? いないのかなぁ?」
石動 凛子(兄嫁が気になる。 でも・・・奥さん役をやりたがる人がいない)
石動 凛子(私は一度読みだけはやった。 ・・・でも、兄嫁を面白そうと思ってしまった)
石動 凛子(まだ手を挙げてない子がたくさん。 メイン4人以外をやりたいのかしら?)

〇黒背景
ローズマリー「どうせ役にはなれないから大丈夫よ」
ラピス「兄嫁より、奥さんは年上役よ?」
ジェーン「ねぇ、考えてみて? 兄嫁より、奥さんの方がセリフ多いのよ」
「見てもらえる回数が多い。 目立つことが出来るんじゃないの?」
「講師に見てもらえる最後のチャンス。 一次オーディションはあるけど、 まだ間に合うかもよ?」

〇説明会場(モニター無し)
石動 凛子「奥さん役、やります」
小鳥遊 真緒「じゃあ奥さん役は石動さんと木嶋さんで」
小鳥遊 真緒「兄嫁役と、その他の──」

〇説明会場(モニター無し)
  チームA
  夫 近藤 悠太
  奥さん 石動 凛子
  兄 九条 大志
  若嫁 廻 心春
  その他複数 七海 さくら
石動 凛子「それ、兄さんに命令されて?」
廻 心春「・・・はい」
石動 凛子「そんなのっ── あなたにやらせるなんて酷なことを」
廻 心春「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
九条 大志「・・・・・・」
石動 凛子「兄さん、なんてことをしたの。 そんな状態で何故ここに引っ越して」
九条 大志「へっ・・・呪いだよ。 この家の男はなぁ、しょ、 すぉういう呪いにかかっちまってるんだ」
九条 大志「お前と俺が似てねーのはすぉういうこったぁ。 お前は生き残ったが」
九条 大志「この家はそうやってに、に、贄を作って 繁栄してきたんだ」
石動 凛子「何なの? 兄さんの言ってる意味がわからないわ」
廻 心春「ああ、もういや・・・」
廻 心春「私、耐えられないっ・・・!」
石動 凛子「あなたたちは──」

〇説明会場(モニター無し)
石動 凛子「嘘でしょう? あんた、私と何年一緒だったと思って」
近藤 悠太「・・・そう、何年も共にいた。 情が湧かないはずがねぇ」
近藤 悠太「出会ったときに殺していれば良かった。 そうすればこんなことには」
石動 凛子「大丈夫だよ、あんた。 だって私は生きているじゃないか」
石動 凛子「二人で、ゆっくりと滅んでいく。 この雪村にはピッタリの終止符じゃないかい」
石動 凛子「私はあんたが大事だよ。 いままでも、これからも、ずーっと」
近藤 悠太「・・・お前」
小鳥遊 真緒「とりあえずそこまで!」
小鳥遊 真緒「よく出来てたんじゃないかなー。 近藤くんもだいぶ読みが柔らかくなったし」
小鳥遊 真緒「石動さんは大分肩の力が抜けたね。 まぁ、役かって言われたら難しいけど」
小鳥遊 真緒「どういうキャラ設定なの?」
石動 凛子「奥さんは温厚で、明るい性格です。 相手のために感情をあらわにする ものをハッキリいう女性です」
小鳥遊 真緒「そう演じてたの?」
石動 凛子「はい」
小鳥遊 真緒「そっかぁ。 あんまりそうは見えなかったなぁ」
小鳥遊 真緒「むしろ奥さん、どす黒かった気がする」
石動 凛子(どす黒い!?)
石動 凛子(そんなつもり全くなかったのに!?)

〇女性の部屋
石動 凛子(どす黒い・・・。 そんな演技してるつもりはなかったのに)
石動 凛子(セリフから伺える奥さんのキャラは 穏やかなお節介のあるズケズケな人)
石動 凛子「どうして・・・どす黒いなんて言われたのかしら?」
石動 凛子(原作はない)
石動 凛子「セリフだけで、世界観やキャラ設定、 性格も外見もわからない」
石動 凛子「言葉だけでキャラクターを作る。 台本のセリフは温厚な奥さん。 どす黒い感じではない・・・けど」
石動 凛子(温厚な奥さんを目指して修正すべきなんだろうけど・・・)
石動 凛子「これをどす黒い奥さんでやったらどうなるのかしら?」
石動 凛子(なんだろう、これ)
石動 凛子(セリフだけではこんなキャラにならない。 だけど、セリフに隠れた裏側の気持ちをむき出しにしたらどうなる?)
  裏側を演じろと書かれてない。
  表面に出すと相手の受け取り方も変わる。
  これは・・・キャラ殺しかもしれない。
  私のエゴで改変される役作り。
  なのに何故、私はワクワクしているの?
  こんなの役に寄り添ってないなんて
  声優としてあるまじき行為だ。
(練習・・・するだけしてみようかな)
  声優を目指す上で開いてはいけない
  パンドラの箱に、鍵が差し込まれた。

次のエピソード:voice【11】チャンスの前髪!? 賞賛とクラッシャー

コメント

  • 凛子ちゃん、パンドラの箱を開けようとしてますね~😁
    私はそういうの好きですが、そうか、声優業界ではタブーなのか😵💦
    もう最終章なのですね!
    アラサー凛子ちゃんのお仕事と恋の終着点を楽しみにしています🍀

  • おお…!パンドラの箱。
    設定に無いキャラ殺しってパワーワードですね😱
    昔、会社でパーソナリティ講習を受けたのですが、自分が思っている性格と他人に思われている性格が一致すると、人気が出るらしいのです。
    大概違うんですけどね。
    凛子もこれをやろうとしているのかなと思い出しました。

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