声優 イン ポッシブル〜アラサー女が演技未経験で声優を目指したら〜

星名 泉花

voice【11】チャンスの前髪!? 賞賛とクラッシャー(脚本)

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〇女性の部屋
  一次審査まで残り10日。
  当日課題は詳細不明。
石動 凛子「自己PRに、指定の滑舌文、 舞台セリフに、当日課題・・・か」
石動 凛子(こっちも考えないとなぁ。 自己PRは・・・直さないとね)
石動 凛子「自己PR、頑張って考えたんだけどなぁ」

〇説明会場
小鳥遊 真緒「石動さんのは説得力がないかなぁ。 人に聞いたことを言ってるけど 具体的には?という感じ」
小鳥遊 真緒「もっと自分自分でいいと思うよ」

〇女性の部屋
石動 凛子「って、わかるかーいっ!!」
石動 凛子(とりあえず自己PRを考えて・・・)
石動 凛子「舞台のセリフ練習もしないとね」
石動 凛子「わああ! 発声練習とかもしっかりしないと 声の出が変わっちゃう!」
「あえいうえおあお! かけきくけ・・・」
「拙者、親方と申すは──ホホ敬ってういろうはいらっしゃりませぬか」

〇説明会場(モニター無し)
近藤 悠太「なんで今更引っ越してくるんだ。 呪いに怯えて逃げ出したくせに」
近藤 悠太「あぁ、でも本当に呪いがあるからあんな結末になったんだ」
近藤 悠太「もう終わった話だ。 俺はアイツとここで──」
九条 大志「ど、どーも。 い、妹がお・・・せわになってますねぇ」
近藤 悠太「義兄さん!? ノ、ノックくらい鳴らしてくださいよ!!」
九条 大志「ここは元々オレの家だ。 家に入るのはオレの勝手だろう」
近藤 悠太「・・・どの面下げて帰ってきたんですか?」
九条 大志「ああん? なんのことだぁ?」
近藤 悠太「とぼけないでくださいよ! あの日、アンタの両親が俺にどんな話を──」
石動 凛子「あら、兄さん来てたの」
「・・・・・・」
九条 大志「よ、よっ! 久しぶりだなぁ、じゅ、ずいぶん老けたなぁ!」
石動 凛子「あら、それは兄さんもよ? 誰だって歳をとるものなんだから」
九条 大志「ふん、これからは嫁共々よろしくな。 ・・・お互い子供はいないし気楽なもんだぜ」
近藤 悠太「・・・まったく君とは似てないな」
石動 凛子「そうかしら?」
石動 凛子「目元なんてよく似てると思うけど」
近藤 悠太「君は本当に明るいな」
石動 凛子(ふぅ・・・)

〇説明会場(モニター無し)
小鳥遊 真緒「・・・は」
小鳥遊 真緒「あははははっ! どうしたの、奥さん! インパクト強すぎてびっくりしちゃった!」
小鳥遊 真緒「そういうキャラにしたのは、何か理由があるんだよね? 教えてくれる?」
石動 凛子「えっと・・・」
石動 凛子「奥さんが何も知らないはずないと思って・・・」
石動 凛子「描かれてないですが、 奥さんと兄の両親は亡くなってる」
石動 凛子「不審なことだらけで、奥さんが明るく気さくな人でいられるとは思えなくて」
小鳥遊 真緒「なるほどね」
小鳥遊 真緒「いいんじゃない? あとはみんながどう思うかだけど」
石動 凛子(・・・やっぱり、イメージと逆行してるからおかしいよね)
廻 心春「・・・・・・」

〇説明会場(モニター無し)
石動 凛子(・・・わからないよ)
七海 さくら「石動さん! さっきの奥さん、めっちゃ面白かった!」
石動 凛子「・・・面白かった?」
七海 さくら「うん、グイグイ惹かれちゃうし 奥さんがすごい魅力的に見えたんよ!」
石動 凛子「あ、ありがとう」
木嶋 萌奈「私も、あの奥さん好きでした!」
石動 凛子「木嶋さん!?」
宇野 聖羅「あたしもあたしもー! 奥さんのキャラ、最高でした!」
石動 凛子「あ・・・」
石動 凛子(みんなが笑ってる。 私の演技が、みんなを楽しませてる!)
石動 凛子「ありがとう。 奥さんの魅力伝えられるよう頑張るよ!」
石動 凛子「最高の舞台にしようね!」
宇野 聖羅「こっちのチームも負けませんよ!」
宇野 聖羅「こうなったらあたしが有名声優として 最高にいい女になって、こっぴどく振ってやるんだから・・・」
石動 凛子(この子、復讐に走り出してる!?)
廻 心春「・・・・・・」

〇オフィスビル前の道
石動 凛子「近藤くん?」
近藤 悠太「ちょっと、話があるんスけど、 時間いいっスか?」
石動 凛子「・・・うん、大丈夫だよ」
石動 凛子(なんだか少し、怖いわ)
近藤 悠太「・・・紫亜もいるんで」
石動 凛子「・・・紫亜くん?」

〇レトロ喫茶
穴星 紫亜「凛子さんっ!」
石動 凛子「紫亜くん、どうしたの? その、近藤くんまで・・・」
石動 凛子(やだ、なんか今日オシャレ。 そんなずるいの見せないでよー)
穴星 紫亜「会えて嬉しいです。 凛子さんに会えると元気出るっていうか」
石動 凛子「会うってわかってたら もう少しちゃんとした格好できたのに」
穴星 紫亜「あー・・・凛子さんのイメージだから 気にしたことなかったけど」
穴星 紫亜「凛子さんならアナスタシアの衣装着こなせそう」
石動 凛子「バカッ! 常識を考えなさい、常識を!!」
穴星 紫亜「凛子さん、真面目」
近藤 悠太「・・・そろそろ俺の存在思いだしてほしいっス」
石動 凛子「あぎゃーっ!!!!」
(恥ずかしいーっ!!!)

〇レトロ喫茶
近藤 悠太「はい、では本題に入りましょー」
近藤 悠太「いや、お前が言えよ!」
穴星 紫亜「いたい・・・」
近藤 悠太「無口キャラを都合よく使うなー。 俺も石動さんもお前の本性は知ってるから」
石動 凛子(ほ、本性?)
穴星 紫亜「り、り、凛子さんっ!!」
石動 凛子「ひゃわいっ!!」
石動 凛子(声が裏返っちゃった)
穴星 紫亜「えっと、その・・・俺と・・・」
穴星 紫亜「俺たちと組んで作品作りませんか!?」
石動 凛子「へ、ええっ!?」
石動 凛子(さ、作品?)
石動 凛子「ど、どういうこと?」
穴星 紫亜「あ・・・」
穴星 紫亜「お、俺が脚本家目指してるのは知ってますよね?」
石動 凛子「う、うん」
穴星 紫亜「だけど考えたんだ。 俺が本当になりたいのは脚本家なのかって」
穴星 紫亜「原作ありきのものには 俺が惹かれる言葉なんてなくて」
穴星 紫亜「共感はするものもあるけど、 それは俺の言葉じゃねーって思ったわけです」
石動 凛子(ちょっと、わかるなぁ。 私、役になれず自己解釈が強いから)
石動 凛子(本当はこうすべき、のところに心がない。 気持ちがわかっても、役らしくとなると気持ちが入らないんだよね)
穴星 紫亜「だからその・・・俺、原作を兼ねた人になりたいんだ! オリジナルの脚本で作品が作れる奴になりたい!」
穴星 紫亜「色々描いてみてわかったんだ! 俺の作品には凛子さんが必要不可欠だって!」
石動 凛子「え、ええ?」
穴星 紫亜「凛子さん! 俺とパートナーになってくれませんか!?」
(パパ、パパパパ、パートナー!?)
穴星 紫亜「え・・・」
「凛子さーんっ!!!?」
  若い子の破壊力。
  ストレートすぎるピュア男子。
  そうか、これが尊死ね。
  一つ、私は学びを得た・・・。

〇レトロ喫茶
石動 凛子「と、取り乱しちゃってごめんなさい」
近藤 悠太「だいたい、紫亜が悪いから大丈夫っス」
石動 凛子「それであの、パートナーというのは?」
近藤 悠太「オレたち、会社立ちあげることにしたんス」
石動 凛子「えっ!?」
近藤 悠太「まぁ、クリエイティブ集団の制作会社といったところッスね」
石動 凛子「自分たちで、作品作るってこと?」
近藤 悠太「そういうことっス! やるなら今しかないと思って」
穴星 紫亜「お金はなんとかします! やりたいときにやらないと意味ないですから」
穴星 紫亜「未来まで待ってたら、 チャンスの神様の前髪掴めませんので」
石動 凛子「そうだね。 素敵なことだと思う。 チャンスは今しか掴めないって、あるから!」
穴星 紫亜「だから凛子さんが欲しいんです」
石動 凛子「・・・え?」
穴星 紫亜「俺の創作は、全部凛子さんが源なんだ。 凛子さんがいなければ成り立たない」
石動 凛子「えっと・・・」
近藤 悠太「コイツ、ずっとサーシャサーシャって言ってて。凸ればって言っても恥ずかしがってたんスよ」
石動 凛子「こ、近藤くん知って!?」
近藤 悠太「サーシャさんもいいですよねぇ。 紫亜ってばゾッコンで・・・」
石動 凛子(こ、近藤くんが・・・!?)
穴星 紫亜「と、とにかく・・・」
穴星 紫亜「俺は自分の作品には凛子さん以外、 起用する気がありません!」
穴星 紫亜「凛子さんがいるから書ける。 凛子さんがいなければ成り立たない」
穴星 紫亜「・・・創作家と声優が一緒に作品を作るって、ただ作品に収録ってわけにはいかないから時間もかかる」
穴星 紫亜「だけど俺は凛子さんと一緒に作品作りたい! 創作家と声優の新しいあり方、見つけたいんだ!」
石動 凛子「・・・・・・」
穴星 紫亜「凛子さ・・・」
石動 凛子「私の声は、必要とされる?」
石動 凛子「声優としてスタートするには若くもない。 特別華がある容姿でもない」
石動 凛子「演技初心者だからまだまだ技術も足りない」
石動 凛子「紫亜くんに応えられるころ、 私は声優として求めてもらえるの?」
穴星 紫亜「凛子さんは声優だよ」
穴星 紫亜「事務所声優みたいに、簡単に地上波にはのれないけど」
穴星 紫亜「必ずすげー作品作って、 オレたちの集団を世の中に浸透させる」
穴星 紫亜「声に優れた人、石動 凛子。 声優も一緒にスタートから作品作りに関わって、世に出すんだ」
穴星 紫亜「何度でも挑戦してやる! 事務所声優じゃなきゃ成功出来ない? いきなりフリーでは大型作品に出れない?」
穴星 紫亜「オレはそんな常識ぶっ壊したい!」
穴星 紫亜「一人で壊せない壁は、みんなで壊そう」
穴星 紫亜「こういうの、惚れた弱みって言うんだ」
穴星 紫亜「あ、これ、変な勧誘じゃないからね!? 凛子さんが欲しいだけで誰でもというわけじゃ・・・」
穴星 紫亜「り、凛子さん?」
石動 凛子「私は型破りな女、サーシャ」
石動 凛子「ありがとう・・・」
石動 凛子「ちゃんと・・・ちゃんと考える。 向けられた誠意にこたえたいもの」
穴星 紫亜「・・・うん」
近藤 悠太「・・・俺の存在、忘れてるな」
近藤 悠太「ま、金稼ぐ方法も考えつつっスな。 投資家に甘えてられないってね。 色々と山積みですなぁ」
近藤 悠太「ま、それも楽しむとしましょう」

〇女性の部屋
石動 凛子(これで・・・よかったのかな)
  紫亜くんはやさしい。
  私の声をとても好いてくれて、生かしたいとまで名乗り出てくれた。
石動 凛子「あまりに甘すぎて・・・」
石動 凛子(私、混乱してるのかな? びっくりするくらい自分の気持ちがわからない)
  幸せだからこそ、
  このままではいられない。

〇アパートのベランダ
  私は頑張りたい。
  けれど、私は演技をしていて役がわからない。
  いつまでも違和感を感じている──。
  どうすれば言葉を返すことが叶うのか・・・

次のエピソード:voice【12】スクラップアンドビルド。星の中のスター。

コメント

  • 久しぶりに続きを読みに来させていただきましたっ!!✨☺️凛子の迷う様子が響きますね…やはり迷ったり、悩んだり、葛藤がありながらも頑張ろうとする凛子に励まされます✨☺️

    紫亜くんは癒しですね✨惚れた弱みって!!もう告白したようなものですが、凛子の決断はいかに??

    続けて読ませていただきます✨☺️

  • ラブが進展した~✨🥰
    そして3人の新しい道が広がる⁉️
    凛子ちゃんはどうするのかなぁ。
    次話に進みまーす✨

  • 甘すぎない展開◎
    いや多分、紫亜くんは惚れてるよね…🤭って考えるのが楽しいです✨
    凛子さんが悩めば悩むほど、先生が厳しいほど何故か面白いし、応援したくなるんですよね、この作品。
    少しずつ周りも打ち解けてきて、イイ感じ!

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