声優 イン ポッシブル〜アラサー女が演技未経験で声優を目指したら〜

星名 泉花

voice【8】鏡よ鏡、私の顔はなに? 忘れてしまった本当の顔(脚本)

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〇説明会場(モニター無し)
宇野 聖羅「こはるん、私服だー! かーわーいーいー!!」
廻 心春「ロングスカート履いたら ジェーンの気分になれるかなって」
宇野 聖羅「まるで女神のように美しい! 『流行りの服はお好きですか!?』」
廻 心春「『最近、都では髪飾りが流行ってるのよ?』」
宇野 聖羅「そう返されるとは・・・ 役が板についてるねぇ!」
石動 凛子(・・・かわいいな。 本当にキラキラしてて、芸能人みたい)

〇説明会場(モニター無し)
七海 さくら「ここどこ? ラピスお姉さま、ジェーンお姉さま・・・」
七海 さくら「や、やだ! こっちに来ないで!!」
石動 凛子「マリンに手を出すなあああ!!」
七海 さくら「お姉さまっ!!」
石動 凛子「マリン!」
石動 凛子「無事で良かった」
七海 さくら「お父さまが帰ってきたら、 ラピスお姉さまはお嫁に行けるでしょう?」
七海 さくら「あたしがお姉さまの分まで 働いて家事もします。 だから帰ってきてくださいって・・・」
石動 凛子「・・・私がバカだったわ」
石動 凛子「私にはジェーンとマリンほど大切なものはないわ。世界で一番、二人を愛してる」
木嶋 萌奈「わ、私だってお姉さまとマリンが一番よ!」
七海 さくら「お父さまがいなくても? お嫁にいけなくても?」
石動 凛子「まだお嫁さんになりたくないの。 姑にいびられるなんてごめんだわ」
木嶋 萌奈「ラシードのお母さま、とっても怖いものね」
木嶋 萌奈「私だったら隣町のクォーツ様の方がいいわ。 カッコよくてお金持ちだもの」
木嶋 萌奈「ラシードは優しいけど頼りないわ。 お姉さまが嫁ぐにはもったいない」
木嶋 萌奈「何か変なこと言ったかしら?」
石動 凛子「さ、帰りましょう」
木嶋 萌奈「その蛇持ってかえるの!?」
石動 凛子「蛇の肉は意外と美味しいのよ?」
七海 さくら「あたしも作るの手伝うね!」
小鳥遊 真緒「ずいぶん変わったね。 ラピスとマリンが仲良しなのが伝わってきたよ」
小鳥遊 真緒「でもラピスとマリンではなかったね。 すごく自然な感じ」
石動 凛子(それってどういう評価なの? 作ってると言われたかと思えば、 今度はキャラじゃないって・・・)
小鳥遊 真緒「うーん、気になるのはジェーンかな」
小鳥遊 真緒「勝ち気というより、気位が高い感じだったから 柔らかさを足したらいいかもね」
木嶋 萌奈「・・・はい」
「ありがとうございました!」

〇説明会場(モニター無し)
廻 心春「マリン! どこにいるの!?」
廻 心春「私だったら隣町のクォーツ様の方がいいわ。 カッコよくてお金持ちだもの」
廻 心春「その蛇持ってかえるの?」

〇説明会場(モニター無し)
「い、石動さん!」
七海 さくら「そ、その・・・」
七海 さくら「上手く言えんけど、その・・・ ありがとうございます!」
七海 さくら「同じ悩み抱えとる子がたくさんおって・・・ 仲間作ってみんなでがんばろって言われて。 ──それで」
石動 凛子「大丈夫。 みんな必死なだけだから」
石動 凛子「お互い、がんばろう。 努力したことも、悔しかったことも、 ムダなことなんてないから」
七海 さくら「・・・うん」
石動 凛子(──うそつき)
木嶋 萌奈「・・・なにあれ?」

〇オフィスビル前の道
木嶋 萌奈「石動さん!」
石動 凛子「木嶋さん?」
石動 凛子(珍しいな、この子が話しかけてくるなんて)
木嶋 萌奈「七海さんから話、聞きました。 ・・・よく、止められましたね」
石動 凛子「えっと・・・止めたわけではないよ? 判断は七海さんがしたことだから」
木嶋 萌奈「善人ぶってるんですか!? 自分はいい大人だって、余裕ぶってるんですか!?」
石動 凛子「そんなつもりはないよ。 何もせずに見過ごすのは嫌だっただけで」
木嶋 萌奈「汚い大人がこれ以上、七海さんを傷つけないでくださいっ!!」
木嶋 萌奈「・・・石動さんが悪いわけじゃない。 でも納得出来ないことってたくさんあるんです」
木嶋 萌奈「高いお金払って夢を叶えようと 努力しても、叶えられるのはほんの僅かな人」
木嶋 萌奈「そこから更に振り落とされ、 食べていけるようになるまでまた落とされて」
木嶋 萌奈「生き残れるのは 元手がある環境で、才能と努力がある人」
木嶋 萌奈「みんな、生き残ろうと必死なんですよ」
石動 凛子「・・・そうだね。 私たちは夢に焦がれて、ゴールの見えない努力をし続ける」
木嶋 萌奈「七海さん、家庭の事情で遠方から通ってるんです。それでも夢を抱いてここまで来てる」
木嶋 萌奈「私たち、若いけど夢があるんです! なのになんでこんな・・・」
木嶋 萌奈「搾取されてる気持ちになるんですか?」
石動 凛子「・・・木嶋さんは、年齢制限があるオーディションが実在するなか、どうして声優養成所の年齢制限はそれより上だと思う?」
木嶋 萌奈「・・・ナレーションの出来る人が欲しいから?」
石動 凛子「それは若い子が眼中に無いだけで、 声優の仕事にはナレーションもあるのよ」
石動 凛子「これはビジネスなの。 お金を払ってでもなりたがる人が多い」
石動 凛子「露骨な年齢制限はないように見せて、 かつ男女平等だと語る」
石動 凛子「義務教育のあとは、すべてがお金なの。 私のような人間はね、養成所や声優事務所の人のお金になるんだよ」
石動 凛子「声優が事務所の人を潤すほど、お金を稼げる仕事だと思う?」
木嶋 萌奈「・・・いいえ」
石動 凛子「最初は役者の仕事の一つだった。 けれどそこに魂が込められ、憧れが夢に育った」
石動 凛子「今の声優業界は、 そこに魂を注いだ人たちが夢を魅せられるにまで育て上げた業界なのよ」
石動 凛子(理想と現実のギャップが激しい。 憧れが膨張した世界)
木嶋 萌奈「・・・すみません。 私、言い過ぎました」
木嶋 萌奈「石動さんは何も悪くないのに。 大人だから汚いんだって思ってた」
木嶋 萌奈「だから若さでしかマウントとれなくて。 そんなことしても虚しいだけなのに」
石動 凛子(あぁ、やだなぁ。 思い知らされるよ)
石動 凛子「夢は平等だよ。 そして夢を掴むために努力する」
石動 凛子「木嶋さんは木嶋さんで頑張ればいい。 腹が立つなら仕組みを変える側になる道もある」
石動 凛子「夢は一つじゃなくてもいいんだから」
木嶋 萌奈「ごめんなさい。 ごめんなさいごめんなさい・・・」
「うああああああんっ!!!!」

〇駅の出入口
石動 凛子(どうしてそれだけ答えをわかっていながら 私はここにいるの?)
石動 凛子「はじめから、私には戦えるフィールドじゃなかった」
石動 凛子(ライバル視する相手も、嫉妬する相手も、 私とは違う場所にいるのに)
石動 凛子(それはまるで白雪姫。 鏡が選ぶのは若くてかわいくて、心の綺麗な白雪姫なのよ)
石動 凛子「私は、養成所ビジネスの駒でしかない! 用意されたレールにはじめから立たせてもらえてないんだ!!」
  それでも「前例がないなら作ってみせる」と
  自分を奮い立たせた。
  前例を作れるくらい、私は声優になるのが正しいのだと思っていた。
  たくさん苦しいことがあって、
  声を褒められた事実が私に夢を魅せた。
  私の声が誰かの幸せになる。
  私が前例を作れば、同じ思いをする人の道を作れる。
  甘い世界ではないとわかっていながらも、
  努力して努力して努力して──!!!!!!
  すべてを覆すほどの『声優ドリーム』を手に入れたかった。

〇黒背景
  努力して、応援されて。
  だけどそこに支えはなかった。
  あの時の喜び、感動は嘘じゃないのに
  結局、見てるだけで
  誰一人助けてくれなかったと叫ぶ私は
  最低だ
  優しい人はいる。
  お金やビジネスに縛られない人もいる。
  わかってるのに、
  その優しさをかすめてしまうほど残酷なんだ。

〇駅の出入口
石動 凛子「・・・アナ?」
穴星 紫亜「俺は口下手だから、 アナスタシアの言葉として聞いて」
穴星 紫亜「石動 凛子。 サーシャ、型破りな女」

〇仮想空間
アナスタシア「昔からなんでもストレートに言いすぎて 人を傷つけてきた」
アナスタシア「だから喋らないようにしようと、 クールキャラを装っていた」
アナスタシア「なんとなくはじめたこのアプリ。 そこで最初に聞いたのがサーシャの声だった」
アナスタシア「すごく凛として、キレイだった。 白黒で綴られた言葉がカラフルになるのを見た」
アナスタシア「内側に溢れる物語の言葉を書いてみた。 そしたらサーシャの声が入って」
アナスタシア「物語がどんどん膨らんで! 言葉が溢れ出して!」
アナスタシア「穴星 紫亜が言えない言葉を サーシャが優しい色に変えてくれる」
アナスタシア「ずっとサーシャの声が聞きたくて。 その声を聞く度に夢が大きくなった」
アナスタシア「絶対に自分の物語を出すって。 サーシャに読んでもらうんだって」
アナスタシア「言葉を受け止めて、 生きた言葉にしてくれる」
アナスタシア「サーシャが好きだよ。 その声が、言葉をカラフルにするんだ」
アナスタシア「穴星 紫亜が言うと冷たくなる言葉も、 サーシャの声で聞くと違って聞こえるんだよ」
サーシャ(石動 凛子)「うっ・・・うあ、うわああああああん!!!!」
サーシャ(石動 凛子)「そんな、キレイな心で読んでない!!」
サーシャ(石動 凛子)「私は役の気持ちがわからない! だから自分の内側にある気持ちを叫んでただけだもん!!」
サーシャ(石動 凛子)「一度たりとも、役に寄り添ったことがない。 憑依なんて出来ない」
サーシャ(石動 凛子)「セリフには感情の波や盛り上がる部分があって、聞く側にちゃんと伝えないといけないんだって思って」
サーシャ(石動 凛子)「ちゃんと読まなきゃって。 テクニックとかがないとダメだって! 一番にならないと聞いてもらえないから!!」
アナスタシア「知ってる。 サーシャが頑張ってきたの、誰よりも知ってる」
アナスタシア「ねぇ、サーシャ。 声の道、諦めないでよ」
サーシャ(石動 凛子)「アナ?」
アナスタシア「型破りな女。 声優になる道はひとつじゃない」
アナスタシア「お互いまだ勉強中の身だけどさ。 一緒に道、作っていこうよ」
アナスタシア「前例にない脚本家と声優って、 おもしろいじゃん?」
サーシャ(石動 凛子)「・・・うん」
サーシャ(石動 凛子)「アナと二人なら怖くないね! アナの言葉は私に勇気を与える!」
サーシャ(石動 凛子)「私は”言葉に救われた”。 だから”声で返したい”と思ったんだ」
サーシャ(石動 凛子)「これが私の初心だった! やっと思い出せた! ありがとう、アナ!」
アナスタシア「・・・かわいすぎかよぅ」
サーシャ(石動 凛子)「アナ!?」
「ここからは穴星 紫亜として言う」

〇駅の出入口
穴星 紫亜「好きなんで、やめないでください」
穴星 紫亜「・・・声、聞けなくなるの嫌というか」
穴星 紫亜「その、俺・・・す、す──」
石動 凛子「ありがとう、紫亜くん」
穴星 紫亜「凛子さ──」
石動 凛子「私、がんばるよ! 何歳になっても声を軸に生きる!」
石動 凛子「まだ役になるってわからない。 だけど私は私の想いをのせて言葉にしていくよ!」
石動 凛子「本当にありがとう! 私、”アナ”が大好きだよ!」
穴星 紫亜「・・・あざっす。 俺も、サーシャが好きだ・・・」
石動 凛子(今、出来ることを精一杯やろう)
石動 凛子(私には私だけの武器があるのだから!)

〇幻想2

次のエピソード:voice【9】自己PR! 個性カラフル大爆発★

コメント

  • 紫亜!!!!!😍💓じれじれだ!!すきですよぉ!!!こういうのぉー!!!✨🥰

    これからどうなっていくのか楽しみですね💓🥰

    凛子さんのリアルな心の叫びもすごく好きですよ✨
    色々と、引っ張られちゃう時ってありますよね…

    けど、ふとしたことがきっかけで救われたりしますよね✨☺️

    本当は一気読みしたいのですが、完走賞とプロジェクトでなかなかですが、隙を見てまた読みにきますね✨🥰

  • 今…凛子ちゃん逃しちゃいましたね……🤣
    いいよ、いいよ〜こういうすれ違いラブコメ大好きっすよ〜😇(趣旨が違う)

  • ラブ💗が……💦
    凛子ちゃん、今大きいの逃しちゃったよーーー😭
    サーシャとアナではなく、いつか結ばれるといいですね✨
    そしてジェーン、ラピス、マリンの回、お疲れ様でした😊
    様々な感情が動く回、楽しませて頂きましたよ〜(´。✪ω✪。 ` )
    うちの子も上手に使って頂き感激です😭
    そして星名さんの立ち絵は表情が豊かで見ていてワクワクします。続きも楽しみにしていますね🥰

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