エピソード7(脚本)
〇大会議室
警察署に戻った寺島は、長谷川と一緒に
防犯カメラの映像を食い入る様に見ていた。
長谷川「この男、倉田に違いねーよな?」
寺島「はい。間違いなく倉田本人です」
長谷川「お前が言ってた髪の長い女はいるか?」
寺島「いえ、ここには写ってません」
長谷川「寺島。聞き込みだが、再び 渋谷周辺に絞った方がいいかもしんねーな」
寺島「分かりました。明日、 再び渋谷周辺の店に聞き込みしてきます」
〇SHIBUYA109
10月29日
AM11:00
寺島は、再び捜査場所を渋谷に移し
聞き込みを始めた。
〇東急ハンズ渋谷店
寺島「すみません。県警の者ですが、 こちらの男性をご存知ないでしょうか?」
「すみません。見たことないです」
寺島「分かりました。ありがとうございます」
〇コンビニの店内
寺島「すみません。県警の者ですが、こちらの男性ご存知ありませんか?」
店員「いや、分からないですね」
寺島「そうですか。ありがとうございます」
寺島「そろそろ昼だし、一旦署に戻るか」
〇警察署の食堂
寺島は一人で、昼食を済ませる。
その時、長谷川が現れた。
長谷川「寺島、聞き込みお疲れさん。 どうだ、収穫はあったか?」
寺島「それが、全然収穫なしです」
長谷川「そうか」
寺島「ホントに犯人は、近くにいるんでしょうか」
長谷川「上の奴らが、そろそろ 指名手配犯にすると言っていた」
寺島「そうですか」
長谷川「悔しいかもしれんが、こうするしか今はない」
長谷川「だが、お前はお前で捜査を続けろ」
寺島「分かりました」
溜め息をついていると、
山林ボランティアの人から着信が入った。
寺島「長谷川刑事、山林ボランティアの方からです」
長谷川「電話に出ろ」
寺島「はい。寺島です」
「刑事さんですか? 山林ボランティアの山田です」
寺島「山田さん、お久しぶりです」
「お久しぶりです。 あの、前に言われてたトゲの件ですが」
「トゲの正体分かりましたよ」
寺島「ホントですか?」
「はい。あのトゲなんですが、 どうやらサボテンの棘の様です」
寺島「サボテン・・・ですか?」
「はい」
寺島「ですが、サボテンみたいな植物は あの山林にはなかった様に見えましたが──」
「これは、あくまでも私の推測ですが」
「月下美人が 何か関係してるのではないでしょうか?」
寺島「月下美人がですか?」
「はい。どうも、あの花弁の色が ずっと気になってまして・・・」
寺島「花弁の色ですか?分かりました」
寺島「こちらでも、月下美人について調べてみます」
寺島「山田さん、ご協力有難うございました」
「いえいえ。何か困ったことがありましたら、いつでも連絡して下さい」
寺島「はい。ありがとうございます」
長谷川「トゲの正体、何か分かったのか?」
寺島「はい。サボテンの棘みたいです」
長谷川「サボテンだと?」
長谷川「しかし、あの現場には サボテンなんぞ、咲いてなかったぞ?」
寺島「はい。なので、 山林ボランティアの人が言うには、月下美人という花が何か関係してるんじゃないかって言われてるんです」
長谷川「月下美人?何だそれは?」
寺島「ハセさん。俺、今から またあの現場に行ってきます」
長谷川「待て!!俺も行く」
〇森の中
PM16:00
寺島と長谷川は再び殺害現場を訪れる。
長谷川「で?お前が言ってた、 その月下美人ってのはどれだ?」
寺島「ハセさん、これがその月下美人です」
寺島は萎んだ花を指差し答えた。
長谷川「へぇ、これが月下美人って言うのか。 綺麗な花じゃねーか」
寺島「はい。今は萎んでますが、 夜になると咲くらしいです」
長谷川「なるほど・・・」
寺島「あっ!!」
長谷川「どした?寺島」
寺島「月下美人の花弁が、また赤く染まってます」
長谷川「ん?それはどういうことだ?」
寺島「山田さんの話しだと、この花は 白い花なんです」
寺島「ですが、宮間と倉田殺害直後には また赤に染まってる」
寺島「一体何故だ?」
長谷川「ただ単に、 被害者の返り血でも浴びたんじゃねーのか?」
寺島「ハセさんっ!!」
長谷川「今度はどした?」
寺島「このトゲ、被害者の体内から出てきた棘に 似てませんか?」
長谷川「なにっ!?」
寺島は、長谷川にトゲの画像を見せた。
寺島「どうです?似てませんか?」
長谷川「まぁ、似てなくもないな」
寺島「ハセさん、急いで署に戻りますよ?」
長谷川「えっ?戻って何すんだよ?」
寺島「月下美人について調べるんです」
寺島と長谷川は、急いで署に戻った。
〇警察署の資料室
寺島は署に戻り、資料室で
月下美人について調べていた。
「確かに、山田さんの言ってた通りか」
腕時計に目をやると、時刻は
とっくに21時を回っていた。
寺島「今日はさすがに疲れたし、もう帰るか」
寺島は資料室を出て行き、
家に帰ろうとしていた。
〇渋谷のスクランブル交差点
PM22:00
遅めの夕食を済ませ、家に帰っていると
雨が降り出してきた。
寺島「やっぱ雨降ってきたか。傘持っててよかった」
寺島は傘を出し、降りしきる雨の中
家路を急ぐ。
その時
酔っぱらい「キレイなお姉さん、いい匂いしてるねぇ。 俺と一杯どう?」
一人の女性が、酔っぱらいのサラリーマンにしつこく絡まれていた。
酔っぱらい「そんな無視ばっかりしないでさ」
酔っぱらい「雨降ってるから、 どっかで雨宿りでもしようよ」
女はサラリーマンを無視し、歩き続ける。
酔っぱらい「おい!!俺の話し聞いてんのか?」
酔っぱらい「ちょっとキレイな顔してるからって、 調子に乗ってんじゃねーよ!!」
男は女の腕を掴み、無理矢理
どっかに連れていこうとする。
「痛い!!離して下さい」
酔っぱらい「やっと、口聞いたな?」
酔っぱらい「俺がこのまま手を離すと思うか?残念だな」
「ならば、あなたが痛い目に合いますよ?」
酔っぱらい「ふんっ。やれるもんならやってみろよ!!」
男は、半ば強引に
ホテルに女を連れていこうとする。
「だっ、誰か助けて下さい!!」
女は通行人に助けを求めた。
寺島「おいっ!!何してんだ!!」
寺島「彼女、嫌がってるだろ。手を離せ!!」
酔っぱらい「何だよ、兄ちゃん。部外者は黙ってろ」
酔っぱらい「警察呼ぶぞ?」
寺島「生憎、警察なら間に合ってます」
寺島「俺、県警の者ですから!!」
寺島は、酔っぱらいの腕を掴み後ろに捻った
酔っぱらい「イッテーな・・・分かったよ」
酔っぱらいは諦め、逃げる様に
その場から去って行った。
寺島「大丈夫ですか?ケガなどありませんか?」
女は呆然としていた。
寺島「あの、どうされました?」
花「いえ、何でもありません。 助けて頂き有難うございました」
寺島「それは良かったです」
寺島「女性の一人歩きは大変危険なんで、 家まで送りますよ」
寺島「家はどちらですか?」
花「家はすぐそこなので、もう大丈夫です」
寺島「そうですか。なら、この傘使って下さい」
花「いえ、そういうわけには・・・」
寺島「俺なら大丈夫なんで、 傘も返さなくて構いませんから」
花「なら、雨が止むまで どこかでお茶でもしませんか?」
寺島「えっ?お茶ですか?」
花「はい。助けて頂いたお礼に、 お茶でも奢らせて下さい」
寺島「ですが、何か申し訳ないです」
花「お願いします。 そうしないと、私の気が収まりませんから」
寺島「そうですか。 なら、一杯だけ奢って頂いてもいいですか?」
花「はい。喜んで」
女は満面の笑みで答え、
寺島と女は近くのカフェを目指し、
大通りを歩いた。
事件と月下美人との関係性について勘繰る警察、しかし花さんの存在はどう認知するのかと思っていたら、まさかの遭逢!? 次回、大きく物語が動きそうですね!
ようやくここで、出会うんですね。次の展開が楽しみです。