Ep.8 / THE ELUSIVE NIGHT WATCH #8(脚本)
〇荒れた公園
僕の目の前には、ちーちゃん曰く「ヒーロー支援アプリ」のウィンドウが無数に展開されている。
久常紫雲「えっと。つまり、なに?」
根須戸智是「だから、ヒーロー支援アプリ!」
根須戸智是「しゅーちゃんが本物のヒーローになるための」
久常紫雲「イヤイヤイヤ! 無理無理無理!」
根須戸智是「・・・カワイイ彼女の頼みでも?」
久常紫雲「カワイイ彼女はそんな事言わない!」
根須戸智是「なに、かわいくないっていうの!?」
久常紫雲「かわいいけどっ! 話の流れに無理ありすぎでしょ!」
久常紫雲「そんな度胸ないし!」
根須戸智是「ヴィラハン国内トッププレイヤーってだけで、実力とセンスは十分だって!」
久常紫雲「あれはただのゲームだし!」
根須戸智是「・・・せっかく、しゅーちゃんのために作ったのに」
根須戸智是「・・・ヒーロー、嫌い?」
久常紫雲「いや、好きだけど。 ゲームとリアルじゃ大違いって・・・ん?」
そのとき、繁華街の防犯カメラの映像がクローズアップされた。
久常紫雲「朱丹(すに)!?」
久常紫雲「そうか。 確か、今日は友達と用事があるって」
久常紫雲「でもこんな時間まで」
根須戸智是「まずいね。 多分通報しても間に合わない」
根須戸智是「でもここからは近いよ。走ればすぐ。 ・・・どうする?」
ちーちゃんが、ウィンドウを操作しながら挑発するように微笑んだ。
久常紫雲「えっ。それって・・・まさか」
〇ビルの裏
安藤緑「朱丹。ごめん」
安藤緑「幻のスイーツのお店、SNSだと、この辺のはずって・・・」
久常朱丹「緑ちゃんは悪くない。 取材は、また今度ね。それよりも」
チンピラ3「ギャハハ! 幻の夜間限定!」
チンピラ3「バナナをふんだんに使った大人のスイーツがご希望なら、ここで間違いないぜェ!」
安藤緑「うそ。・・・じゃあ、SNSの情報は」
チンピラ3「釣りだぜ! ウェーイ!」
久常朱丹「最悪・・・!」
安藤緑「馬鹿っぽいのに、なんて狡猾!」
チンピラ3「この作戦は、親切なハッカーの人に教えてもらったのさぁ!」
久常朱丹「つまりあんたら自身は、お馬鹿と」
安藤緑「謎の天才ハッカーの関与!?」
安藤緑「これ、WEB配信のネタとしてイケてる!?」
久常朱丹「こらこら! 緑ちゃん、危機感!」
チンピラ1「うるせぇ! まぁいい! しっかり取材していきな!」
チンピラ1「お待ちかねの、大人のバナナスイーツタイムだぁ!」
チンピラが朱丹に詰め寄る。
久常朱丹「舐めないでよね!」
朱丹がチンピラの下半身を蹴りあげると、チンピラは泡を吹いて悶絶する。
チンピラ3「~~~~ッ!?」
朱丹が空手の構えを取る。
久常朱丹「こちとら、素人じゃないんだから!」
緑はすかさず、カメラを構えるジェスチャーをする。
彼女のメガネ型端末のランプが点き、レンズに「●REC(録画中)」の表示が浮かぶ。
安藤緑「でたー! 必殺のカラテ! やっちゃえ! 朱丹! かっこいい!」
チンピラの1人はナイフを構え、朱丹と対峙している。
久常朱丹「緑ちゃんは早く通報してっ!」
安藤緑「あ。うん。そうだった。コンピュータ。 ひゃくとーばん・・・」
チンピラ2「させるか!」
安藤緑「あ。あれぇ~~っ!?」
チンピラ2「動くな! 動くと、ブスっといくよ! そっちの赤毛も!」
久常朱丹「・・・くっ」
チンピラ2「残念だったな。お嬢ちゃん。 抵抗はやめときな」
朱丹は怒りに震えながらも、構えを解く。
安藤緑「朱丹。大丈夫」
安藤緑「さっきので端末のAIが察して、こっそり通報したから」
チンピラ2「!?」
久常朱丹「なんでそれ、言っちゃうの!」
チンピラ2「てめぇ、よくも!」
逆上したチンピラが、ナイフを振りかぶる。
安藤緑「しまったーーっ!」
そのとき。
彼らの上から、黒い人影が降り立った。
ゆっくり立ち上がったその姿こそ――
ナイトウォッチの、クオリティの低いコスプレをした、僕だ。
チンピラ2「な、なんだ、おまえ!?」
久常紫雲「ひ、ヒーローだ! 一応!」
僕は緑ちゃんを拘束したチンピラに、鋭く蹴りを放つ。
・・・が。
チンピラ2「うわぁっ!?」
久常紫雲「あッ! 外した! かっこわる!」
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