第3話『仲裁する旅人』(脚本)
〇草原の道
相馬一貴「・・・」
相馬貴宗「どうかしたか?」
相馬一貴「何でもない」
相馬一貴「もしかしたら、冥界に行けば 父さん母さんに会えるのかなって」
相馬一貴「ご先祖様は会ったことあるの?」
相馬貴宗「ないな」
相馬貴宗「冥界の住んでる場所が違う」
相馬貴宗「そして、無限に近い広さだ」
相馬一貴「そっか」
相馬貴宗「会いたいのか?」
相馬一貴「会いたい」
相馬一貴「だけど、ルルを守れなかった俺には 会う資格がない」
相馬一貴「会う時はルルと一緒だ」
相馬貴宗「なら、早く探そう」
相馬貴宗「もうじき冥界への入り口だ」
相馬一貴「ちょっと待って」
相馬一貴「あそこ、見てくれ!」
相馬貴宗「あれは!?」
〇巨大な城門
??「ひいい」
黄泉の住人「ここは通さない」
??「ちょっとぐらいいいだろ」
黄泉の住人「良くねえ!」
黄泉の住人「お前何回目だよ!」
??「ケチ臭えな」
??「向こうの世界の酒が美味いって聞いたんだ」
黄泉の住人「簡単に通さねえよ!」
??「他の連中は行ってるだろ」
黄泉の住人「あれは呼び出されてるんだ」
黄泉の住人「こっちだって大変なんだよ! 次から次へと向こうに呼ばれてよ!」
??「だったら、1人ぐらい変わらんだろ!」
黄泉の住人「お前、誰にも呼び出されてねえだろ!」
黄泉の住人「そう簡単にあっちに行かれたら困るんだよ!」
??「数千年前に死んだやつに子孫がいたとしても 呼び出してくれる面識のある身内がいるわけねえだろ!」
黄泉の住人「めんどくせえな!」
黄泉の住人「仕方ねえ」
黄泉の住人「言うこと聞かねえやつは 武力行使だ」
??「いたいけな老人をいじめるつもりか」
黄泉の住人「そう思うなら帰れよ!」
黄泉の住人「こっちの仕事増やすな!」
??「こんなとき、ショーカかシボーがいてくれればな」
相馬一貴「ちょっと待った!」
??「うお!面妖な格好したやつが来よった」
相馬一貴「確かにそっちからすれば、変な格好だね!」
黄泉の住人「そこじゃねえだろ!」
相馬一貴「そうだった」
黄泉の住人「邪魔する気か?」
相馬一貴「違います!」
相馬一貴「ちょっと尋ねたいことがあって」
??「まずは喧嘩を止めないんかい!」
相馬一貴「いや、楽しそうだから友達かと思いました」
??「どこをどう見たら 楽しそうに見えるんだ!?」
相馬一貴「何か仲良さそうですよ」
??「お前の目はどうなってんだ!?」
黄泉の住人「んなわけねえだろ! こっちは迷惑してんだよ!」
黄泉の住人「お前、さては向こうの世界の人間だな?」
相馬一貴「そうです」
??「ほー」
黄泉の住人「そういえば、この前も二組くらい来たな」
黄泉の住人「若い女が来るのは珍しいから覚えてる」
相馬一貴「それって銀髪の女の子ですか!?」
相馬一貴「それでもう1人は覆面の人間」
黄泉の住人「確かそうだったな」
相馬一貴「つまり冥界側に行ったってことですよね」
黄泉の住人「そうだな」
相馬一貴「道は間違ってなかった」
相馬一貴「そこを通してくれませんか?」
黄泉の住人「・・・・・・」
黄泉の住人「お前、生者だろ?」
黄泉の住人「ここを通すわけにはいかない」
相馬一貴「お願いします」
黄泉の住人「どういうことか分かってるのか?」
相馬一貴「はい」
??「肉体を持つ生者が通れば魂が乖離していく」
??「最終的にお前死ぬぞ」
相馬一貴「覚悟の上です」
??(探し人のためなら 死ぬことすら怖くないのか?)
相馬一貴「だから、通してもらえませんか?」
黄泉の住人「確かに冥界からそっちに行くよりも そちら側から入るのは簡単だ」
黄泉の住人「また生者の世界に戻るつもりか?」
相馬一貴「探してる人間を見つけ次第、戻るつもりです」
黄泉の住人「だったら案内人が必要だ」
黄泉の住人「この世界にも秩序はある それを掻き回されては困るからな」
相馬貴宗「それなら問題ない」
相馬貴宗「私が案内人役を担う」
黄泉の住人「お前は冥界の人間か」
相馬貴宗「ああ」
??「どういう関係だ?」
相馬貴宗「あいつは子孫だ」
黄泉の住人「いいのか? その子孫が死ぬかもしれんのだぞ?」
相馬貴宗「覚悟は両者とも出来てる」
黄泉の住人「なら、いいだろう」
黄泉の住人「通れ」
??「じゃあ、わしは代わりにあっちへ」
黄泉の住人「おめえはダメに決まってんだろ!」
〇結婚式場前の広場
相馬一貴「ご先祖様のおかげで、すんなり入れた」
相馬貴宗「普通に死んだら、いきなり冥界にいるからな」
相馬貴宗「そして、生死の境を彷徨う人間が 今のように冥界の入り口に辿り着ける」
相馬一貴「あそこを普通に通ったら死んじゃうんだ?」
相馬貴宗「ああ」
相馬貴宗「そこで死ぬか生きるかを選択する」
相馬一貴「普通に怖い場所じゃん!」
相馬貴宗「一貴が言うと全然怖そうじゃないな」
相馬貴宗「だが、今回は体が生きているうちに またあの門をくぐればどうにかなる」
相馬一貴「だから、早くルルを見つけないと」
??「ちょっと待て」
相馬一貴「どうしたんです?さっきの人ですよね」
??「とぼけた顔をしていたが 本当は喧嘩を止めてくれたんだろ?」
相馬一貴「そ、そんなことないですよ」
相馬貴宗「ばれてたな」
??「やはりか。すっとぼけやがって」
??「礼を言っとくぞ」
相馬一貴「どういたしまして」
??「お前、良い面してるな」
??「ワシも昔は顔を褒められたもんだ」
相馬一貴「ありがとうございます」
??「その礼と言ってはなんだが 昨日ぐらいにお主の探し人が 向かった先を教えてやる」
相馬一貴「本当ですか?」
??「ああ、西門の方から都に向かっていった」
??「今なら急げば十分間に合うはず急げ」
相馬一貴「ありがとうございます!」
??「気にするな」
相馬貴宗「ご老人、もしよろしければ これを受け取ってください」
??「これは!?」
??「酒じゃねえか!? いいのか!?」
相馬貴宗「供えもんですがね ご老人の興味持たれてた向こうの酒です」
相馬貴宗「これも何かの縁」
相馬一貴「そういえば、この前 お墓にお酒掛けたっけ」
相馬貴宗「だから、あのような無理をなさらないように」
??「こんな初対面の人間に 義理堅い連中だな」
??「ワシは最期の方は人を疑うことしか出来ず 仲間を失っていったわ」
??「シケた話をしちまったな」
??「お主、名は?」
相馬貴宗「相馬貴宗」
??「良い名だ」
??「旅の幸運を祈るぞ」
相馬一貴「ありがとうございます!」
??「探し人が見つかればいいな」
相馬一貴「はい!」
相馬一貴「じゃあ失礼します」
相馬貴宗「では、御免」
??「面白い連中だったわ」
女「あれ? リューさんじゃない」
女「何してたの?」
??「久しぶりに面白い連中に会えたから 嬉しかったんじゃ」
女「王様だった時の気分が抜けてないのかしら?」
??「そうかもしれんな」
〇山道
相馬貴宗「さて、旅を急ぐか」
相馬一貴「必ずルルを助け出してやる!」
相馬一貴「ルル待ってろよ!」
相馬一貴「俺が絶対処女を守ってやるからな!」
〇おしゃれなリビングダイニング
ルル奈「私の将来の夢は」
ルル奈「お嫁さんになること」
ルル奈「それで、お姫様みたいな ウェディングドレス着るの!」
一貴「誰のお嫁さんになるんだよ」
ルル奈「えっとえっと」
相馬遙「でも、海外の言い伝えだと お嫁さんは悪魔に攫わされちゃうらしいよ」
ルル奈「怖いからやだ」
一貴「仕方ないな」
ルル奈「えっ?もしかして?」
一貴「骨ぐらい拾ってあげるよ」
ルル奈「そこは助けろよ!」
相馬遙「ほら、カズ、違うでしょ?」
相馬遙「女の子にはどうするの?」
一貴「じゃあ、仕方ないから守ってあげる」
ルル奈「うん」
ルル奈「何か引っかかるけどいいや」
相馬遙「良かったわね、ルルちゃん」
相馬遙「あと、バージンロードがあるから そこを歩けば大丈夫よ」
「バージンロード?」
相馬遙「そう」
相馬遙「バージンロードには 魔除けにもなるらしいの」
相馬遙「あとウェディングドレスにも 悪魔から守ってくれる効果があるのよ」
ルル奈「そうなんだ、良かった」
一貴「じゃあ、俺は必要ないな」
一貴「1人で頑張れよ」
ルル奈「責任放棄すんなし」
ルル奈「1人でウェディングドレス着たくない!」
一貴「それでバージンロードって どういう意味なの?」
相馬遙「そうね、日本で作られた言葉らしいけど」
相馬遙「花嫁の過去、現在、未来といった人生を 意味してるらしいわ」
ルル奈「そうなんだ」
相馬遙「本当は違う意味もあるんだけど あなたたちには早いわね」
一貴「意味?」
ルル奈「気になる」
〇一人部屋
一貴「バージンは”処女”を意味するのか」
一貴「処女?よく分からないな」
一貴「結婚式に使われているぐらいだから」
一貴「大切ってことか」
一貴「それを守ればいいんだな」
相馬遙「ほら、カズ、明日は朝早いんだから お風呂入って早く寝なさい」
一貴「うん、分かったよ!」
〇車内
相馬遙「さあ、今日はみんなで遊園地よ」
ルル奈「楽しみ」
吉良朱里「2人ともはしゃぎ過ぎないようにね」
一貴「分かってるよ」
ルル奈「由美姉さんも来れば良かったのに」
吉良朱里「あの子はインドアだから来ないわよ」
〇車内
相馬貴行「今日は晴れて良かったよ」
吉良明「本当ですね」
吉良明「運転してもらっちゃってすみません」
相馬貴行「気にしないでくれよ」
相馬貴行「その代わり、向こうで子守りは頼んだよ」
吉良明「任せてください、兄さん 俺、子供大好きですから」
相馬貴行「それにしてもカーブが続くなぁ」
吉良明「ちょっと待ってください!」
吉良明「様子が変です!」
相馬貴行「前の車が急ブレーキ!?」
相馬貴行「間に合わない!!」
〇混雑した高速道路
〇混雑した高速道路
〇おしゃれなリビングダイニング
午前8時頃、◯◯高速道路で車数十台が絡む追突事故が起こった模様です
行方不明者も出ており、現在警察消防による救助活動が今も懸命に続いております
相馬由美「まさか、みんな巻き込まれてないよね」
〇血しぶき
吉良ルル奈「またこの夢だ」
吉良ルル奈「私はあのとき 取り返しのつかないことをした」
吉良ルル奈「ごめんね、パパ、ママ 一貴のパパとママもごめんなさい」
吉良ルル奈「私が遊園地に行きたいって ワガママ言わなければ あんなことにならなかったんだ」
吉良ルル奈「そして、ごめん、一貴」
吉良ルル奈「私が君から大切なものを奪い去ったんだ」
吉良ルル奈「恨んでほしい」
吉良ルル奈「このまま消え去りたい」
〇明るいリビング
吉良朱里「るるちゃん」
吉良明「本当にもうすぐくるのかな」
吉良朱里「菅原さんの言うことが 本当ならそうよね」
吉良朱里「これで3人仲良く暮らせるんだよね?」
事故シーン…コレはかなりキますね……😭 幸せからの急転直下だけに、生き残った面々への精神的・人格的影響が大きいですよね🥲 その一方で、深掘りしてほしいキャラやシーンが絶妙に配置されていて、物語への興味が一層増していきます😊
生者と冥界、そしてその境については様々な神話・伝承・説話で描写されてきていますが、ぽんたろうさん一流の表現の鋭さに見入ってしまいました✨
まさかっ!あのセリフに心温まるエピソードが隠れていたなんてっ!✨☺️良いですねぇ✨☺️
幼き頃の約束を守ろうとしてるのですか✨まっすぐな性格ですね✨けど鈍感なところもあって、ヒーロー体質バッチリですね✨👍
おじいさま!?まさかの!?わー!!驚きました!!
悲しい過去も明かされて、今後またどうなって行くか気になります!!
処女を守るという台詞に素敵な理由が隠されていて感動しました。子供の頃の主人公の本当は優しいところが大好きです😊
冒頭に出てきた爺ちゃんのまさかの役職にびっくりしました。