妖刀ハシキリ

いりうわ

幸せな家族(脚本)

妖刀ハシキリ

いりうわ

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妖刀ハシキリ
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〇黒背景
  妖刀ハシキリ・・・
  ハバシキリ、ハヂキリとも
  昔、死を悟った幼い武士が、家族を守るため咄嗟に抜いた刀が
  百を超える敵兵を、端から端まで切り殺したことがその名の由来とされる
  平時は鞘から抜くこともかなわぬが
  持つ者を刀が選び、あるべき時には怪しい光を放つという
  やがて、ハシキリは忌むべき刀として時代とともに人々の記憶からも消えていった
  一説によれば
  幼い武士が死んだのち、妖刀は二度と抜かれることなく遠い異国の地へ運ばれていったという・・・

〇綺麗な教会
ミサキ「・・・」
「ミサキ!」
ミサキ「・・・トーマ?」
トーマ「やっぱり、ここだと思ったよ」
ミサキ「ごめんなさい、探させてしまって」
トーマ「かまわないよ」
トーマ「ところで、式はまだ1週間以上あるんだぞ?」
ミサキ「そうだけど・・・」
トーマ「何か不安なことでも?」
ミサキ「ううん」
ミサキ「むしろ、幸せすぎて夢を見ているみたい」
トーマ「なら、よかった」
ミサキ「トーマ」
トーマ「おっと、忘れるところだった」
トーマ「ミサキ、左手を出して」
ミサキ「?」
ミサキ「これ・・・」
トーマ「気に入ってくれたかい?」
ミサキ「うん」
ミサキ「私、本当に幸せ」
トーマ「僕のほうこそ」
ミサキ「ふふ、あなたに出会えてよかった」
トーマ「ミサキ・・・」
「あー! いたいたぁ」
トーマ「迎えに来てくれたのか?」
ラクサ「「迎えに来てくれたのか?」じゃないよ!」
ラクサ「そりゃ、二人だけでイチャイチャしたいのはわかるけどさー」
トーマ「な、なにを言って・・・」
ミサキ「ふふ、ごめんなさいラクサ」
ラクサ「あはは、うそうそ」
ラクサ「皆もう待ってるから、二人とも早く帰ろう?」
トーマ「ああ、わかった」
ミサキ「楽しみだわ、今日は私たちの為に素敵な夕飯をご用意してくれるって」
トーマ「ああ、皆が僕たちをお祝いしてくれている」
トーマ「行こう、ミサキ」
ミサキ「ええ」

〇洋館の一室
マックス「やあ、遅かったな二人とも」
クレア「また、教会の下見に行ってたんですって?」
マックス「ははは、ミサキは結婚が待ち遠しくて仕方がないようだな」
ミサキ「お、お父様!」
クレア「ほほ、慌てなくたって教会は逃げないわよ」
ミサキ「もう、お母様まで・・・」
マックス「しかし、お前とトーマが結ばれることになるとはな」
マックス「身寄りのない子供たちを育ててきた我々夫婦のやってきたことも」
マックス「間違っていなかったということだ」
マックス「私は嬉しいよ」
ミサキ「お父様・・・」
リム「お姉ちゃん、結婚おめでとう」
ミサキ「ありがとう、リム」
ヤエ「・・・」
ミサキ「あら?」
ミサキ「ヤエはお祝いしてくれないの?」
ヤエ「う~」
トーマ「どうしたの、ヤエ?」
ヤエ「トーマ兄ちゃんは、ヤエと結婚するはずだったのに~!」
トーマ「い!?」
ミサキ「そっか、ごめんねヤエ」
ヤエ「う~、二人とも嫌いだよ~」
ミサキ「ああ、ヤエ」
トーマ「は、はは・・・」
ラクサ「まったく、モテる男はつらいね~」
トーマ「こ、こら!からかうんじゃない」
ラクサ「あははは!」
ミサキ「ふふふ」

〇洋館の一室
マックス「さて、みんな聞いてくれ」
マックス「この家に皆が来て、私たち夫婦を父母と呼んでくれるようになってから」
マックス「今まで、こんなに喜ばしいことがあっただろうか!」
マックス「皆も知っての通り、トーマとミサキが晴れて夫婦となる」
ラクサ「おめでとうございます!」
リム「おめでとう!二人とも」
ヤエ「お、おめでとぅ・・・」
クレア「たとえ、自分たちの家を持って二人で暮らすことになっても」
クレア「私たちは、いつまでも家族よ。 それを忘れないでね」
マックス「その通り!」
ミサキ「お父様、お母さま・・・」
ミサキ「今まで本当の娘のように育てて頂いたご恩は、一生忘れません」
トーマ「おいおい」
トーマ「だから、式はまだ一週間以上先なんだってば」
ミサキ「だって、だって・・・」
「あははは」

〇洋館の一室
トーマ「父さん、今日は本当にありがとう」
マックス「どうした?改まって」
トーマ「いや、ミサキじゃないけど、皆には本当に感謝してるんだ」
マックス「トーマ・・・」
マックス「お前たちはいつまでも私の自慢の息子と娘だよ」
マックス「いつでも好きな時に遊びに来い。兄弟たちが寂しがるからな」
トーマ「うん」
マックス「あ、そうそう」
トーマ「!?」
マックス「お前に話しておかなきゃならんことがあるんだった」
トーマ「なんだい?」
マックス「ミサキのことだ」
トーマ「?」
マックス「ミサキは異国の戦災孤児だった」
マックス「まだ幼かったミサキを母さんと一緒にこの国で育てようと決めた」
トーマ「うん、大体知ってる」
マックス「ミサキはもう忘れているかもしれんが、一緒に持ってきた古い荷がある」
トーマ「古い荷?」
マックス「ああ、昔は大事に抱えていたからな、もしかすると親の形見かもしれん」
トーマ「ミサキの本当の親か・・・」
マックス「そうだ」
マックス「結納と言っちゃ少し変だが、結婚前に全部ミサキに返してやるつもりだ」
トーマ「うん、そうしてくれると有難いよ」
マックス「それじゃ、私は先に休ませてもらうぞ」
トーマ「うん、おやすみなさい父さん」
トーマ(大きな荷か、そういえば天井裏に大切に保管されている荷物があったな)
「あっ、お兄ちゃんまだ起きてたんだ」
リム「ふ~、やっとヤエを寝かしつけたとこだよ」
トーマ「頼りになるなリムは」
リム「ミサキお姉ちゃんお嫁に行っちゃうんだもん、私がしっかりしないとね」
トーマ「助かるよ・・・あっ!」
リム「どうしたの?」
トーマ「昼間教会に行ったとき、門を閉め忘れたのを思い出したんだ」
リム「もう、ドジだな~」
トーマ「また神父様にどやされるな」
トーマ「今からひとっ走り行ってくるよ」
リム「私が行ってきてあげるよ」
トーマ「だめだめ、こんな夜中に女の子を行かせられないよ」
リム「平気よ、犬一匹いない田舎道だもの」
トーマ「しかしな・・・」
リム「いいの、お兄ちゃんは許嫁のそばにいてあげて」
トーマ「・・・すまない」
リム「それじゃ、ちょっと行ってくるね!」
トーマ「ふふ、本当に頼りになる妹だ」

〇黒背景
トーマ「うう」
トーマ「ここは?やけに暗いな」
トーマ「おーい、誰かいないのかー」
トーマ「なんだあの気味の悪い光は・・・」
  トーマ・・・
トーマ「ミサキ、 そこにいるのか?」
  ・・・なえ
トーマ「ん?なんだって」
  血を・・・て・・・なえ
トーマ「何? 今なんて言ったんだ?」
トーマ「あ、おいミサキ!」

〇洋館の一室
トーマ「はっ!」
トーマ「いつの間にか寝てしまったか」
トーマ「何か大きな音がしたと思ったんだが、明かりはどこだ・・・」
トーマ「なんだか床がヌルっとしているな」
トーマ「ヤエ・・・?嘘だろ・・・」
トーマ「一体、何が起こったんだ?」
トーマ「ミサキは!?」
トーマ「ミサキー!!どこだー」
トーマ「この指輪は!」
トーマ「ミサキか!?」

〇古い洋館
トーマ「ミサキ!無事か?」
トーマ「え?」
トーマ「なんだ、これ・・・は、血?」
ミサキ「・・・」

〇黒背景
  しっかりして!!
  ーマ・・・!
  ミサキ?
  トーマ・・・てば!
  ああ、そうか
  全部、夢だったんだな・・・
  よかった・・・
  もう朝飯か・・・ミサ・・・キ

〇草原
  しっかりして!トーマ・・・ちゃん
  トーマお兄ちゃん!
リム「トーマお兄ちゃんってばぁ!!」
リム「トーマお兄ちゃん!!」
リム「お願い、お兄ちゃん・・・」
リム「一体何が・・・」
リム「何が起きたのよー!!」

〇古い洋館

次のエピソード:残されたもの

コメント

  • 慈善事業家なんて裏のある人間しかやってないと思ってますが、果たして刀を持ったのはミサキか…。トーマの夢を見る限りミサキの気がしますね。

  • 和洋折衷なのがいいですね。
    ハリウッドスターがいろんな人種の子供たちを養子にしてるように、差別意識なく子供を育ててる素敵な親御さんなのでしょう!
    ミステリアスで刺激的でゾクゾクしますね!!

  • いりうわさんこんにちは!
    衝撃の展開で次の話が気になりすぎます!
    幸せな結婚式前の穏やかなシーンが一変してしまいました!
    妖刀とミサキには関係があるのか?
    謎がたくさんですね

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