エピソード13 日日是絶好日(にちにちこれぜっこうじつ)(脚本)
〇教室
クラスメイトA「お前の親父、下着泥棒なんだってな」
クラスメイトB「お母さん言ってたよ、男として最低だって」
クラスメイトA「俺の親父なんか笑ってたぜ。バカな奴だって」
クラスメイトB「もう近づかないでね。気持ち悪いから」
クラスメイトA「お前、パンツ見ようとしてただろ!」
クラスメイトA「やっぱ変態の息子は変態なんだな!」
クラスメイトB「気持ち悪い。こっち見ないで」
クラスメイトA「変態」
クラスメイトB「変態」
〇古いアパートの部屋
タケル「違う!」
タケル「僕は! 僕は!」
タケル「はぁ・・・はぁ・・・」
タケル「夢か・・・」
母親「大丈夫? タケル」
母親「大きな声出してたけど・・・」
タケル「大丈夫・・・」
母親「・・・・・・」
母親「学校、お休みする?」
タケル「・・・・・・」
タケル「ううん、大丈夫」
母親「・・・そっか」
〇住宅街の道
タケル「・・・はぁ」
タケル(行きたくないなぁ・・・)
〇公園の入り口
タケル「・・・・・・」
気づけば、僕の意思とは裏腹に足が公園の中へ踏み入っていた。
そして、引き寄せられるようにブランコへと座る。
タケル「・・・はぁ」
タケル(何やってんだろ、僕)
タケル(お母さんには大丈夫とか強がっておきながら、結局このざまだ)
タケル「・・・はぁ」
来栖 誠司「お、おさぼりくん発見」
タケル「え、な、なに、急に」
来栖 誠司「いや、何してるのかなって」
タケル「・・・・・・」
タケル「別に、ただちょっと」
来栖 誠司「ちょっと?」
タケル「・・・なんでもない」
来栖 誠司「そっか」
見知らぬお兄ちゃんは、突如として僕の隣のブランコに乗り出した。
来栖 誠司「うひょー、たのしー」
しかも全力の立ち漕ぎで。
タケル「あの、僕に何か用?」
来栖 誠司「なんで、そう思うの?」
タケル「え、いや、その・・・」
来栖 誠司「俺はただ久しぶりにブランコ乗りたかっただけだよ」
来栖 誠司「いやぁ、この年になって乗っても案外楽しいなぁ」
そう言って漕ぎ続けるお兄ちゃん。今や百八十度のふり幅で、ブランコは揺れている。こっちがはらはらしてくるくらいだ。
来栖 誠司「せっかく乗ってるならさ、君も楽しんでみたら?」
タケル「・・・そんな気分じゃないよ」
来栖 誠司「ふーん、勿体ないねぇ」
常世 零「なにやってるんだお前」
来栖 誠司「常世!」
来栖 誠司「うわっ!」
来栖 誠司「いってぇー」
来栖 誠司「お前、ブランコ乗ってるやつにいきなり声かけるなよ」
常世 零「そんな真剣に怒られても困るんだが」
常世 零「だいたい、何だってブランコなんか──」
タケル「・・・・・・」
常世 零「君か・・・」
来栖 誠司「え、なになに? 知り合い?」
常世 零「いや、知り合いというか何というか・・・」
タケル「・・・お兄ちゃんはさ」
タケル「どうして、お父さん捕まえちゃったの?」
常世 零「それは・・・」
来栖 誠司「た、ただならない雰囲気だね」
来栖 誠司「俺、お邪魔?」
「・・・・・・」
常世 零「いや、いてくれていい」
来栖 誠司「あー、そう?」
来栖 誠司「だったらさ、とりあえず何があったか教えてくれる?」
説明中・・・
来栖 誠司「なるほど、ね」
来栖 誠司「で、現在君はいじめにあっていると」
タケル「・・・うん」
タケル「お父さんが捕まらなければ、こんなことにはならなかったし」
タケル「お父さんとお母さんも離婚しなかった」
タケル「全部・・・全部お父さんを捕まえたお兄ちゃんのせいだよ」
来栖 誠司「それはちょっと違うんじゃない?」
来栖 誠司「だって、常世が捕まえなくてもきっと他の誰かが捕まえていたんじゃない?」
来栖 誠司「だから多分、結果はそう変わらないよ」
タケル「・・・それって、どうあがいても僕はいじめにあうってこと?」
来栖 誠司「あー、いや、そういうことじゃなくてさ」
来栖 誠司「そもそも、お父さんの問題と君の問題は無関係ってこと」
タケル「でも、確かに原因になってるよ?」
来栖 誠司「うーん、それはそうなんだけど・・・難しいよなぁ」
常世 零「来栖、もういいよ」
来栖 誠司「え、何が?」
常世 零「俺が悪かった」
来栖 誠司「常世・・・」
〇住宅街の道
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)