反抗(脚本)
〇住宅街
これは、みんなと出会う一年前の話。
森岡 涼恵「湊さん、最近どう?」
涼恵さんと買い物に出ていると、そう問いかけられた。
立花 湊「最近はマシになったよ」
立花 湊「やっぱりゆず君のことが気がかりだけど・・・」
森岡 涼恵「そうか・・・」
森岡 涼恵「本当にどうにかできないものか・・・」
立花 湊「ゆず君のあの性格はおばさん譲りだからね・・・」
森岡 涼恵「ふむ・・・」
涼恵さんは何かを考え込んでいるようだ。
立花 湊「どうしたの?」
森岡 涼恵「いや・・・現実を見せてやればいいのでは?と思ってな」
立花 湊「現実?」
森岡 涼恵「どんなことだろうと、かなりの苦労があって成り立つものだ」
森岡 涼恵「それを知らないから、あんなのんきなのことが言えるんだろう」
立花 湊「会社の経営者が言うと重みがあるね・・・」
森岡 涼恵「だから実際にやらせてみたらいいんだよ」
立花 湊「でもゆず君がやったら迷惑をかけるんじゃ・・・」
森岡 涼恵「それが目的だよ」
森岡 涼恵「他人に迷惑をかけていると分からないんだ」
森岡 涼恵「・・・手加減しなくていいと思わない?」
涼恵さんは時々、恐ろしいことを言い出す。
・・・でも。
立花 湊「・・・そうだね。身をもって知った方がこれからのためにもなるか」
それに乗ってしまう私も、なかなかの鬼畜なのかもしれない。
〇レトロ喫茶
その数日後、私はゆず君を呼び出した。
立花 湊「ゆず君、これ貸してあげる」
私は涼恵さんに言われたように、カメラをゆず君に渡す。
須藤 ゆず「なんだよ、これ?」
立花 湊「私が実写で撮る時に使ってるカメラ」
立花 湊「一か月間だけ貸してあげるから、それで動画投稿やってみたらいいよ」
須藤 ゆず「え、いいの!?ラッキー!」
彼はかなり喜んでいる。
きっと、動画投稿者ならではの苦労を何も分かっていないのだろう。
立花 湊「もう一回言うけど、貸すのは一か月だけだよ。ちゃんと自分で準備して返してよ」
そう言うけど、どうやら聞こえていないみたいだ。
立花 湊(本当に大丈夫かなぁ・・・)
・・・でも、これでいいのだ。
〇住宅街
喫茶店から出ると、私は涼恵さんに電話をかける。
立花 湊「今日、ゆず君にカメラを渡したよ」
森岡 涼恵「そうか、一か月後が楽しみだな」
涼恵さんに提案されたこと、それは世間の厳しさを教えてあげることだった。
立花 湊「どんな職業だって楽なものはないもんね」
森岡 涼恵「そうだな、私も祖父母の研究が基盤になって所長を務めていられるわけだし」
世間は私達を天才で、何でもできる人と認識しているけれど。
実際はいろんな人に支えてもらって続けることが出来ている。
立花 湊(ゆず君には分からないだろうけどね・・・)
本当に・・・一か月後が楽しみだ。